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派遣労働地獄から抜け出せない35歳男性の職歴「夢は月給20万円」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181102-00000072-sasahi-soci
AERA dot. 11/2(金) 17:40配信
※写真はイメージです(写真/getty images)
「名の知れた大手の派遣会社でさえ、手の届かない存在。正社員になるなんて、夢のまた夢ではないか」
埼玉県に住む木村正則さん(仮名、35歳)は、正社員になることへのハードルの高さを感じている。
都内で生まれ育った正則さんは、留年したことをきっかけに2年生で大学を中退。学生時代からアルバイトをしていたスーパーで配達のアルバイトを続けたが、2〜3年もすると店が潰れてしまった。
本格的に就職を考え、公的機関が運営する職業訓練学校に入って半年間、印刷の技術を学んだ。もともと大学では日本文学を専攻していたくらい本が好きだったため、本に関係する仕事に興味を持っていた。
職業訓練校では「印刷ならつぶしが効く。どこかに就職できるだろう」助言されて、選り好みしなければ就職できるだろうと期待したが、訓練校を卒業するころには出版不況が著しくなり、就職先を紹介してもらえなかった。都内にある実家に住んでいたが、親からは「一人暮らしをして社会勉強しなさい」と発破をかけられ、家を出た。
アルバイト時代の友人を頼り、埼玉県川越市に引っ越して友人とルームシェアして生活を始めた。それまで日雇い派遣の経験はあったが、初めて派遣会社で長期の仕事を紹介してもらった。書籍を扱う倉庫での仕事。勤務時間は10時から18時まで。3か月おきの契約更新で、時給950円でのスタート。手に職をつけよう、スキルアップしようと、働きながらフォークリフトの免許を取った。すると時給が40円上がったが、現場では「初心者はフォークリフトに乗らせない」とはねつけられ、「これでは経験が積めない」と悩んだ。
派遣会社は契約更新の手続きが杜撰で、契約書が送られてくることもなく、なし崩しで働き続け、1年以上が過ぎた。ある時、担当者に有給休暇はあるかと尋ねると「ない」とサラリと答える。
本来、労働基準法によって派遣社員でも正社員でも変わりなく、6カ月以上継続して働いていれば有給休暇を取ることができる。また、派遣社員は3年以上同じ派遣先で働いていた場合、その職場での直接雇用されるチャンスがある。労働者派遣法の第30条で「派遣元事業主の講ずべき措置等」が定められ、1年以上の派遣労働が見込める人に対して、派遣元から派遣先に対して直接雇用を申し入れるよう求める努力義務が、3年間働いている場合は「義務」とされている。
ちなみに、厚生労働省の「平成28年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」によれば、1年以上の派遣労働となる対象者は102万2866人、うち3年見込みが3万5881人だった。3年見込みのうち派遣先への直接雇用の依頼があったのは4180人で、実際に雇用されたのは、わずか1824人。派遣からの直接雇用は狭き門だ。
派遣社員に関する労働法を調べた正則さんは、「3年経っても何も言われないまま。辞めてともさえ言われない。この派遣会社にいても先が見えない」と悟り、派遣を辞めた。
辞める手続きをするうち、雇用保険に加入されていなかったことが分かった。交渉すると派遣会社が遡って保険料を支払ってくれたが、市民税なども給与から天引きされておらず、4年間で総額20万円の税や保険料の自己負担分を支払うこととなった。
「給与明細をきちんと見ていなかったのは、うかつだった。ただ、月収14万円なのに保険料が引かれていたら、暮らしていけなかっただろう」と、身震いした。
それから半年以上、就職活動をしたが、辛酸をなめるような思いを味わった。ハローワークで見つけた企業の面接では、「食い下がってくるなら雇ってあげる。給与もそれなりに出すよ」と上から目線の言葉を投げかけられた。求人の条件には「勤務時間は8時間に残業が1〜2時間。月給20万円以上」と書かれていた。屈せずに条件を聞いていくと、実際の拘束時間はもっと長く、夜勤もあることが前提だと分かった。何社受けても、経験のない正則さんの採用は見送られた。ぺーパードライバー状態でフォークリフトを扱える就職先は見つからなかった。
食つなぐため日雇い派遣も経験した。工場の現場で資材を運び、引っ越しの仕事する日もあった。1日8時間働いて9000円。日々、違う場所に派遣されることがストレスとなったが、行くしかない。もっと、経験を積んで付加価値のある仕事を覚えたい。そう思うと焦った。
流通業に強みのあるという派遣会社を探して得たのが、量販店の商品が置かれる倉庫での仕事だ。自宅から片道で約1時間、山奥にある倉庫では携帯電話の電波が届かない。最寄り駅から送迎バスが運行される。
勤務時間は8時から17時まで。契約は3か月更新という条件で、社会保険はきちんと加入される。時給1100円で交通費も別に支給される。繁忙期は残業もあり、残業代は働いた分だけきちんと支払われた。月の手取りは平均17万円だが、今までを考えると良い条件に思えてくる。実際にフォークリフトを使って家具の入った梱包を積み下ろしするのは想像以上に難しいが、日々、勉強だ。
働く合間にも、もっと良い仕事はないか探している。月給17万円以上の求人を探すが、「職歴がない自分が月に20万円は手が届かない。夜勤をするか、何か資格がないと難しい。35歳を過ぎると、正社員の求人は見つからない。面接にこぎつけても、年齢に見合うようなベテランであることを求められる。けど、自分には職歴がないから無理だ」と、行き場のない気持ちを抱える。
評判の良い大手の派遣会社はホワイトカラーの仕事の紹介が多く、「残念ながら毛色が違う」と感じてしまう。派遣社員でも大手なら、保養所が使え、健康診断も受けられるなど福利厚生もしっかりしているが、正則さんにとってデスクワークは縁遠い職業だ。
「派遣先の倉庫の管理職は正社員だが、朝8時から夜10頃まで働くことが当たり前。そんな働き方ができるだろうか。正社員は大変なばかりで魅力を感じなくもなっている」と、あきらめ顔だ。
現在の生活といえば、家賃3万5000円と光熱費の約1万5000円を友人と折半するため、ひと月の生活費は約2万5000円。節約するため、弁当や総菜が半額になる閉店間際を狙ってスーパーに行く。いつも決まって定価が400〜500円の弁当を半額で買う。たまの贅沢は、900円の刺身が半額であれば買うくらい。1本100円の発泡酒とつまみを買い物かごに入れ、“自宅呑み”するのが気分転換となる。お金のかかる居酒屋には行けない。
昼ごはんは、倉庫に出入りの弁当屋を利用する。弁当は300円、カレーや蕎麦は200円と格安だ。最初は「まずい」と食べられたものではなかったが、いつの間にか舌が慣れてしまった。時給で働く派遣社員では、風邪をひくのが怖い。休めばその分、収入ダウンだ。この生活をしながら、どうして将来を考えられるだろうか。
正則さんは「就職はタイミングが重要なのではないか。いったん、その年齢なりのレールから外れるとやり直せない。自分は自業自得だ、失敗したな。という気分になる」という呪縛から逃れられない。
総務省の「就業構造基本調査」では、2017年時点で35〜44歳のうち、初職(初めて就いた仕事)が非正規雇用労働者の場合、現在の雇用形態が正社員は76万6500人、非正規雇用が164万100人で、非正規が正社員の倍以上となる。同様に、初職が正社員の場合は、正社員が779万6300人、非正規が187万9700人で正社員であるほうが3倍以上となる。社会人のスタートが非正規か正社員かで、分かれ道となるケースが多いことが伺える。
正則さんは、「もしも戻れることなら、10年くらい前に戻って、最初からフォークリフトの仕事をしたかった。地道にやっていれば、それなりのキャリアを積めたのではないだろうか」と、思えてやまない。そして、今後について「フォークリフトに乗ってまだ半年。まだちゃんと地面を踏みしめてもいないのに、ステップアップなど考えられない。仕事の精度を上げて、きちんと地面を踏みしめないと。それで時給が少しでも上がればいい。望みは、それくらいかな」と静かに語った。
派遣社員でも担当エリアを任され、配置や荷物のスケジュール管理を行っている人もいる。いつか、その立場になることができるだろうか。しかし、倉庫が広すぎて全体が見えないように、先が見えない。目の前のことを一生懸命やるしかない――。正則さんは、もう、正社員という道は諦めている。
35〜54歳の非正規雇用労働者は「中年フリーター」とも呼ばれる。就職氷河期に煽りを受けた世代だ。2015年に三菱UFJ総合研究所が試算したところ、既婚女性を除く中年フリーターは273万人に上るという。政府は、外国人労働者の受け入れ拡大を目指しているが、それよりも先に打つべき雇用対策があるのではないだろうか。中年フリーターを諦めや絶望から救い出さなければならない。(ジャーナリスト・小林美希)
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