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GPIF運用益「3カ月で5兆円の黒字」でもやっぱり気になること
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58366
2018.11.08 磯山 友幸 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
株価上昇でGPIFも大幅黒字
国民の年金資産を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の第2四半期(7〜9月期)の運用成績は、5兆4143億円の黒字となった。期間収益率は3.42%のプラスとなった。日本や米国など、世界的な株価上昇が保有資産の価値を押し上げたことが大きい。
GPIFは165兆円の運用資産を持つが、このうち国内株式と、外国株式にそれぞれ25%を投じ、資産の半分が株式運用になっている。7〜9月期は国内株が2兆4230億円の黒字、外国株式が2兆8823億円の黒字だった。かつては日本国債での運用が圧倒的に大きかったが、安倍晋三内閣の方針もあって運用資産構成割合(ポートフォリオ)を見直し、株式に大きくシフトした。
第2次安倍内閣が発足した2012年12月末には全体の60.1%を国内債券で運用、日本株と外国株はそれぞれ12.9%だった。9月末段階で、国内債券での運用は25.26%にまで低下、過去最低の比率となっている。国内債券の運用は7〜9月期の実績で、3365億円の赤字となっており、これまでのところ、株式シフトの効果が出ていると言える。ちなみに外国債券は4412億円の黒字だった。
9月末の日経平均株価は2万4120円04銭で、前の期の期末(6月末2万2270円39銭)に比べて8.3%も上昇した。米国株も史上最高値を更新するなど、株高に沸いた。
株価をつり上げているわけではないが
GPIFは「基本ポートフォリオ」として、それぞれの運用資産の割合を決めているが、日本株と外国株はそこで定めた25%に達している。国内株は上下9%、外国株は上下8%の乖離幅が認められていることから、理論的には国内株は34%まで買い進むことができるが、現実には運用資産の分母が増えない限り、新規に買い増すのは難しい情勢だ。
一時はGPIFの年金資金が日本株を市場で買い支えているとの見方があったが、もはや限界点に近づいている、とみて良さそうだ。
そんな中で10月以降、米国株の大幅な下落などを受けて、日経平均株価も軟調が続いている。10月初めには27年ぶりの高値である2万4270円62銭(10月2日終値)を付けたが、その後つるべ落としとなり、10月26日には一時、2万1000円台を割り込む場面もあった。
GPIFは長期運用を目的としており、相場の上下で大幅な売り買いをするわけではないものの、前述の通り、大幅に買い出動する余力には乏しいとみられる。
そこで注目されたのが日本銀行。金融緩和の一環として市場から国債などを買い入れて資金を供給しているが、ETF(上場投資信託)も買い入れ対象になっている。ETFは様々な企業の株式で構成されている。
これを10月に日銀は何と8700億円も買い入れたのである。もちろん単月の買い入れ額としては史上最大だ。結果的に日銀のETF買いが、相場を下支えする格好になっている。
誰が日本株を買っているかを示す投資主体別売買動向の週間データをみると、10月初めに高値を付ける過程では海外投資家が9月後半から3週連続で買い越していたが、その間、信託銀行が大きく売り越していた。
GPIFの資産を運用する投資顧問会社などが市場で売買する場合、信託銀行経由になる。このため、株価が上昇したタイミングで利益確定の売りを出した可能性もある。
その後の下落局面では、海外投資家が3週連続で売り越したのに対して、個人投資家と信託銀行が買い向かっていた。個人投資家の買い越しは4週連続で、今年1月から2月にかけて7週連続で買い越して以来の長さだ。個人投資家は景気の先行きに意外と強気だとみることもできそうだ。
公的年金が企業に物言う株主へ
年金のような長期の運用が求められる資産は、長期にわたる成長が見込める企業への投資が向いている。とくに、現状のようにゼロ金利時代となり、国債での運用が難しくなる中、海外の年金基金なども株式運用に大きなウエートを割くようになっている。そういう意味ではGPIFが債券中心から株式にシフトしたのは正しいだろう。
だが、問題は、日本企業が期待通りに成長を遂げ、株価の上昇をもたらすかどうかだ。安倍晋三首相はアベノミクスの実行と共に、「経済好循環」を掲げている。その好循環が始まる「原資」は企業に稼ぎを増やさせる事で生み出される。
大胆な金融緩和で円高が修正され、大幅に収益を改善させた企業が多い。政府はさらに法人税減税を進めたこともあり、過去最高益を更新する企業も少なくない。
ところが、一方で、その収益が「利益剰余金」として内部留保に回り、設備や人になかなか再投資されていない。
安倍内閣はコーポレートガバナンスの強化も進め、経営者への圧力を強めるために社外取締役の導入を実質的に義務付けた。本来はそうした効果で、株主資本に対する利益率(ROE)が向上し、その結果、株価が上昇するというシナリオを描いた。
確かに、ひと昔まえ比べれば、コーポレートガバナンスは改善されたようにみえるが、日本企業の収益性改革はまだまだだ。GPIFが長期にわたって株式を保有する「長期投資」を考えるならば、企業の収益性改善に向けて、株主としてもっと厳しく経営者に圧力をかける「モノ言う株主」に変わっていくことが不可欠だろう。
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