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食品メーカーブランドの商品が「絶滅の危機」に瀕している理由
https://diamond.jp/articles/-/184433
2018.11.6 森山真二:流通ジャーナリスト ダイヤモンド・オンライン
大手のスーパー、コンビニでは、「定番」商品以外のNB商品はほとんど並ばなくなるかもしれない… Photo:PIXTA
ナショナルブランド(NB)商品が小売店頭から消える日がくる!?加工食品の世界で圧倒的なシェアを持っている銘柄を始めとして2番手、3番手につけるNB商品は将来的に、生き残れない可能性が濃厚となっている。食品業界で今、何が起こっているのか――。(流通ジャーナリスト 森山真二)
○○○ヌードル、○○ビールは
なくなってしまう
「NBの需要は今後、急速にしぼむとみている。脱NBが進む」。こんな衝撃的な見通しを披露するのは、ほかならぬ大手小売業、イオン社長の岡田元也氏である。岡田社長の今後に見通しに基づけば○◯○ヌードル、○○ビールはなくなってしまうのだろうか。
NB商品の行方は小売業界やネット通販業界の動向と密接に関係している。現在のコンビニの店頭を見ればその将来像が透けて見える。
セブン-イレブン・ジャパンに一歩足を踏み入れると、親会社のセブン&アイ・ホールディングスが開発しているグループのプライベートブランド(PB)、「セブンプレミアム」がこの売り場、あの売り場に目立つ。
セブン&アイでは20年2月期をめどにPBセブンプレミアムの売上高を1兆5000億円にまで引き上げる計画を推進中だ。
この計画のうち、大部分がセブン-イレブンでの販売になるとみられる。セブン-イレブンの2017年度のチェーン全店売上高は約4兆6780億円だから、仮にセブン-イレブンでの「セブンプレミアム」の取り扱いが1兆円とすれば売上高の2割を占める計算になる。
「うちのPB(セブンプレミアム)を作りたいというメーカー(大手を含めて)が列をなしている」と鈴木敏文セブン&アイ名誉顧問が会長当時に言っていたが、大手メーカーとしては、4兆円超の売上高があるセブン-イレブン店頭で販売してもらうのは魅力である。
NBメーカーというプライドをかなぐり捨ててPB製造を引き受けるメーカーも多く、PBの商品概要を示す製造者欄には大手メーカーの名前がズラリと並ぶ。
PBを受託しなければ
“棚”を確保できない
なぜ、食品業界では有名メーカーが次々と大手小売業のPBを手掛けるのか。
それは、コンビニという限られた売り場ではPBを受託しなければ“棚”を確保できないからだ。
セブン-イレブンなどコンビニ大手ではカテゴリーによっても違うが、カップ麺など種類が多い商品ならば10種類以上の商品がそろっているものの、少ない商品の場合2〜3種類ということがザラにある。各カテゴリーの限られた商品数のなかで棚を獲得するためには、PBを受託せざるを得ないのだ。
圧倒的に強い日清食品のカップヌードルのようなブランドは「定番」として入る。だが、ブランドが確立していない商品はPBを受託しなければ、PB以外の商品も跳ねられてしまう可能性もある。
しかもコンビニは新商品の売れる期間が短い。発売後、POS(販売時点情報管理)システムのデータで売れ行きが芳しくない商品はすぐに売り場から外されてしまう。しかし、PBならば継続して売ってもらえる。
イオンだって同じ構図だ。
コンビニとスーパーの違いはある。スーパーの方がコンビニに比べて品数がそろっているし、商品を見直すサイクルは長い。
しかし、イオンもPB「トップバリュ」を、現在の約7200億円を2020年2月期までに1兆2000億円に引き上げる計画だから、今後、大手小売業によるPB開発には拍車がかかり、その分、NBからPBへのシフトは進む。
それに加えイオンは10月、グループの食品スーパーを地域ごとに再編する計画を発表。全国6地域で14社を統合・再編し、現状の各地域で2000〜3000億円の売上高を5000億円に引き上げるという計画だが、この再編が小売業のPB作りを加速する可能性も高い。
日本の実店舗を持つ小売業は「プレーヤーが多すぎる」(大手スーパー首脳)といわれるが、イオンの再編に触発された地域のスーパーが対抗上再編へと打って出る可能性が指摘されており、再編で売上規模を拡大した小売業は利益率の高いPBを増やし、収益をかさ上げする戦略を加速するのは間違いない。
ドラッグストアもPB開発に拍車
キリンもイオンで低価格PB受託
もはや売上高6000億円、7000億円のプレイヤーが出現しているドラッグストアもPB開発に拍車がかかっている。
しかも、最近では「久世福商店」などといった、独自ブランドを中心としたセレクトショップも増加している。確実にNBの“生存領域”は狭まっており、「NB包囲網」は着実に築かれている。
今年6月ビール業界にちょっとした衝撃が走った。
というのもキリンビールがイオンの主力のPB「バーリアル」の製造を始めたからだ。
価格は350ミリリットルで84円。第三のビールの相場価格(約110〜120円)と比べても2〜3割程度安い。
キリンが低価格のPBの製造を受託するのは、人口動態の変化によるビール市場の縮小への危機感があるとみられる。それ以前に、小売業の棚を獲得できなければ、シェア低下は一段と避けられないし、ビールのような装置産業は工場の稼働率を上げていかなければ、採算は悪化するばかりだからだ。
キリンはイオンにとどまらず、今年の春以降、ローソン、ファミリーマートのPB製造を受託し小売業の棚取りに打って出ている。
一方のキリンの宿敵のアサヒグループホールディングスの小路明善社長は、今年8月18日付の日本経済新聞のインタビューで「ビール系飲料でアサヒブランドを冠さないPBは、私が経営者でいる限り1本も出さない」としており、キリンとスタンスの違いを明確にしている。
どちらに軍配が上がるかは別の機会に譲るとして、すでにキリンのようなコーポレートブランドが確立しているNBメーカーとて、“PBを手掛けなければならない時代”ということだ。つまり今後、商品は小売なのかメーカーなのか、どこが主導して作ることになるかという問題をはらんでいる。
イオンの旅行会社であるイオンコンパスによれば日本の流通市場におけるPB比率は10%とまだ低いが、ヨーロッパではイギリス、ドイツが45%超、また米ウォルマートでは27%となっているという。
ネットでPB比率が高まれば
加速度的に高まる可能性
この日本のPB比率の低さも、アマゾンなど、ネット通販企業のPB比率が高まればさらに加速度的に高まっていくはずである。
というのも実店舗を持つ小売業がアマゾンに対抗できる有力、かつ最後の武器は“商品の差別化”であり、小売業側もNB商品ばかり売っていては、まさにレッドオーシャンで戦うことになるから、オリジナル商品に傾斜せざるを得ないのだ。
もちろん、アマゾンだって今後はオリジナル商品の開発に力を入れていくことになるのは必至とみられ、最終的に流通は「オリジナル商品対オリジナル商品」の戦いに突入していくことになろう。
もはやNBメーカーも、商品を作るのは我々の役割というオールドパラダイムの発想では、今後の流通の変革は乗り切れない。
NBメーカーがブランドの維持に血道を上げ、流通の変化を見誤れば現在、有力ブランドとして君臨する商品も“消え去る日”がくるかもしれないのだ。
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