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外為フォーラムコラム2018年10月31日 / 08:04 / 32分前更新
日銀金融政策、「正常化」とは言えない理由
井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
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[東京 31日] - 世界の金融市場に不安定性が目立つようになってきた。米国では、インフレ率の上昇を受けて長期金利が不安定化し、それを機にトランプ大統領が米連邦準備理事会(FRB)による利上げを批判し始めたことが市場心理を冷やした。
欧州でも、英国の欧州連合(EU)離脱に向けた調整が迷走を続け、2019年予算を巡るイタリア政府と欧州委員会との対立がエスカレートしただけでなく、ドイツでも政権基盤に揺らぎが生じたことに不安が高まっている。これらに加え、貿易摩擦を巡っては、中国の国内総生産(GDP)が減速しただけでなく、日米欧の大手企業がビジネスの先行きに慎重な見方を示したことで、具体的な影響が顕在化しつつあるとの懸念が台頭している。
このように、株式市場を中心に世界の金融市場が不安定化する中では、日銀も「金融政策の正常化」を進めるべきではないというのが一般的な見方であろう。特に為替レートについては、保護主義の姿勢を強めるトランプ政権がドル高懸念を強めているほか、欧州でも政治的混乱を嫌気した通貨安圧力が生じやすいだけに、日銀の政策に過剰反応するリスクは無視できない。
<「正常化」ではなく「調整」>
しかし、こうした一見わかりやすいロジックには見落とされている点がある。第1に、日銀が7月末の金融政策決定会合で行った政策変更は、「金融政策の正常化」ではなく、「金融緩和の調整」だという点である。
この点で興味深いのは、7月末に日銀が「量的・質的金融緩和」の運営を変更してから時間が経つにつれ、金融市場では、日銀のフォワードガイダンス(将来の金融政策指針)よりも10年国債利回りの変動容認幅の拡大や国債の買入れ額の柔軟化に着目し、「正常化の第一歩」と受け止める見方が台頭していることだ。米欧における「金融政策の正常化」とのシンプルな連想や、日銀自身が認めている「量的・質的金融緩和」の副作用に対する懸念など複合的な裏付けを有しているだけに、こうした見方を巡る議論は勢いがつきやすく、「正常化の次の一歩」を巡る思惑も生じている。
しかし、米欧のようにインフレ目標の達成にめどをつけた中央銀行が政策スタンスを中立化することを指す「金融政策の正常化」とは本質的に異なり、日銀の対応は、インフレ目標の達成にはなお距離を残すものの、副作用を含む金融経済の状況に照らして金融緩和の強さを調節するものだ。「金融政策の正常化」の一環と理解される国債買入れ額の減少も、次の景気後退における量的緩和の発動余地を若干なりとも拡大する意味合いを持っている。
第2に、日銀は国債買入れ額を減らすことができても、政策金利を変えることは少なくとも当面は難しい。米国で金融市場が不安定化する契機となった長期金利の上昇は、その後の株価調整の中で皮肉にも反転し、抑制的な動きとなっている。ユーロ圏でも、イタリア国債の利回り上昇に対する「質への逃避」の動きもあって、ドイツ国債利回りはむしろ低下方向にある。このように海外からの金利上昇圧力が低下した分、日銀が国債買入れを増やして利回り上昇を抑えこむ蓋然(がいぜん)性は低下している。
一方、7月末に導入したフォワードガイダンスによって、日銀は長短双方の目標金利を現状のまま維持することを示唆し、その期間として、少なくとも明示的に言及している2019年10月の消費税率引上げの影響を見極めるまでを指しているとみられる。
フォワードガイダンスは政策運営の「予想」を示しただけなので、目標金利の変更も不可能ではない。しかし、それには理由が必要であるし、金融市場が不安定化する中で、利上げ方向の変更については尚更にそうである。
つまり、「金融政策の正常化」という理解に沿って、今後の日銀が、10年国債利回りの変動容認幅をさらに拡大し、その結果を確認しつつ目標金利を引き上げると予想することはロジカルではあるが、少なくとも「当面」の間、大きな可能性があるとは思われない。
<良好なファンダメンタルズが支えに>
第3に、米欧ともに経済のファンダメンタルズはなお良好である。米国は本年の第2・四半期、ユーロ圏は昨年の第4・四半期とみられるピークに比べて足元では減速感もあるが、ともに潜在成長率を上回るペースで拡大している。また、雇用や賃金、企業収益や設備稼働率など、内需を支える基盤の良好さにも変化がなく、これまで後退が目立つのは企業のセンチメントに関するアンケート調査や決算見通しなどのソフトデータが中心である。
日本経済のファンダメンタルズも相応に良好である。天候要因等のせいで経済成長率は上下しているが、内閣府と日銀は共にマクロの需給ギャップがプラス圏を維持していると推計している。雇用や賃金、企業収益や設備稼働率といった基盤の堅実さも米欧と共通している。
この間、中国では生産や投資といったハードデータにも影響が及んでいるが、金融と財政の双方で政策対応に余力があり、成長率が切り下がっても、マクロ的に大きな失業が生ずるリスクは小さい。金融システムの「正常化」が先送りされる懸念は残るが、成長率を多少切り下げた上で経済安定を維持することは十分に可能とみられる。
このように、国際金融市場の現在の不安定化に対しては、世界経済のファンダメンタルズの堅調さがいわばセーフティネットとして存在する。
<日銀の政策対応>
これらを考え合わせると、日銀が10年国債利回りの変動容認幅の拡大や国債の買入れ額の柔軟化といった「金融緩和の調整」を慎重に続けることは可能であるし、今後の政策対応力や副作用の面でメリットも存在する。
もちろん、こうした対応を円滑に進めるには、政策変更が「金融政策の正常化」ではないことについて、金融市場と共通の理解を再構築することが日銀に求められる。同時に、アプリオリ(自明的)に金融緩和の縮小を目指す訳でないことについて金融市場の理解を得るため、金融経済に下方リスクが高まった場合は必要な追加緩和を行うというコミットメントを強調することも併せて重要だ。そうした観点から、フォワードガイダンスの意味合いを確認することも必要になるだろう。
井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。
*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。
(編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/boj-column-inoue-idJPKCN1N42Y4
日銀は物価見通しを一段と下方修正−金融政策は現状維持
日高正裕、藤岡徹
2018年10月31日 12:19 JST 更新日時 2018年10月31日 17:12 JST
2018〜20年度の物価見通しをすべて下方修正−展望リポート
米中貿易摩擦が世界経済に与える下方リスクに一番注目−黒田総裁
黒田日銀総裁 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行は31日、消費者物価の見通しを7月に続き一段と下方修正した上で、さらに下振れリスクの方が大きいとの判断を示した。日銀が目標としている2%の達成がさらに遠のいた。同日の金融政策決定会合では、現行金融政策をすべて据え置いた。
同日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で日銀は、消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比上昇率見通し(政策委員の中央値)を2018年度から20年度まですべて下方修正した。18年度が0.9%(前回7月は1.1%)、消費増税の影響を除く19年度は1.4%(同1.5%)、20年度が1.5%(同1.6%)。実質国内総生産(GDP)成長率はおおむね不変とした。
金融政策決定会合、会見する黒田総裁(31日)
黒田東彦総裁は同日の会見で、「経済、物価共に下振れリスクの方が大きい」とし、米中の貿易摩擦のエスカレートが「米中のみならず世界貿易、世界経済全体に与える下方リスクに一番注目している」と説明。「大きな下方リスクが顕在化して、経済物価見通しに大きな影響が出てくることになれば、金融政策自体を調整するということになる」と語った。
金融面の不均衡リスク
展望リポートでは、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続く下で金融機関収益の下押しが長期化すると、「金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある」と指摘。「先行きの動向には注視していく必要がある」とした。日銀が13年4月に異次元緩和を開始して以来、展望リポートで金融面の不均衡リスクを「注視していく必要」と明記したのは初めて。
黒田総裁は、金融機関収益の低下について、「地域金融機関は潤沢な自己資本を持ち、流動性も十分あるので、直ちに問題が生じることはない」としながらも、「長い期間では影響が出てくる恐れがある」との見方を示した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは発表後のリポートで、金融面の不均衡リスクの点検で留意コメントが付いたことは「黒田日銀の金融政策判断において、従来よりもマクロプルーデンス(信用秩序維持)の観点を重視していく可能性を示した」と指摘した。
2人が反対
日銀は31日の会合で、誘導目標である長期金利(10年物国債金利)は「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)は「マイナス0.1%」に据え置いた。長期金利の変動を認める方針にも変更はない。「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」としたフォワードガイダンス(政策金利の指針)や長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持した。
指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針にも変更はなかった。引き続き市場の状況によって「買い入れ額は上下に変動しうる」としている。片岡剛士、原田泰両審議委員は長短金利操作とフォワードガイダンスに反対した。日銀は7月会合で導入した市場機能改善策の効果を引き続き見極める構えだ。
ブルームバーグがエコノミスト46人に行った事前調査では、全員が現状維持を予想していた。日銀は7月会合で、19年10月の消費増税の影響を含めた不確実性を踏まえ、フォワードガイダンスを初めて導入するとともに、長期金利やETF買い入れ額の変動を容認。その後の市場動向を注視してきた。
ドル・円相場は結果発表後も小動きで1ドル=113円前半で取引されている。
ブルームバーグの事前調査の結果はこちら
(黒田総裁の会見での発言を追加して更新しました.)
11月オペ方針、中期ゾーンの回数減や入札翌日オペ一部見送り(1)
山中英典、三浦和美
2018年10月31日 17:22 JST 更新日時 2018年10月31日 18:00 JST
徐々にボラティリティー上がる要因にー三井住友トラストAM
先物は夜間取引で150円51銭まで下落、長期金利0.13%に上昇
日本銀行は11月の国債買い入れ計画で、中期ゾーンのオペ実施回数を減らし、1回あたりの買い入れ額のレンジを引き上げた。一方、慣行となっていた国債入札の翌日のオペは一部について実施せず、翌営業日以降にずらした。
日銀の発表内容は以下の通り。
残存1年超5年以下が4回に減少ー10月は5回
他の年限は10月から回数据え置き
残存1年超3年以下は2500億〜4500億円程度ー10月は2000億〜4000億円程度
残存3年超5年以下は3000億〜5500億円程度ー10月は2500億〜4500億円程度
他の年限は10月からレンジ据え置き
30年国債入札翌日の14日は残存10年超オペなし
5年国債入札翌日の16日は残存1−5年オペなし
20年国債入札翌日の21日は残存10年超オペなし
40年国債入札翌日の28日は残存10年超オペなし
三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也主任調査役は、「残存1年超5年以下の回数を減らして、買い入れ額レンジを引き上げており、全体的に買い入れ量が減っていくようなオペレーションになるだろう」と指摘。超長期ゾーンは入札翌日のオペを外したことで、「大きく利回り曲線がスティープ化するというよりは、徐々にボラティリティーが上がる要因になる見通し」だと分析した。
今回のオペ運営方針発表を受けて、先物中心限月は夜間取引で一時150円51銭と日中取引終値より12銭安まで下落。長期金利は0.13%と1週間ぶりの高水準を付けた。
野村証券の中島武信シニア金利ストラテジストは、「入札からオペまでの間隔が広がることでタームプレミアムが上がって金利上昇要因になる」と指摘。半面、「生保は下期運用計画で超長期債の購入意欲を示しており、日銀の肩代わり役が期待できるため、過度な金利上昇の恐れは小さい」と述べた。
(第2段落以降を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PH2ZEM6TTDS401
ビジネス2018年10月31日 / 17:46 / 29分前更新
日銀、貿易摩擦の影響懸念 黒田総裁「世界経済に影響の可能性」と指摘
2 分で読む
[東京 31日 ロイター] - 激化する米中貿易摩擦の影響について、日銀は懸念を深めている。31日に公表した経済・価情勢の展望(展望リポート)では「海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい」と明記。金融政策決定会合後に記者会見した黒田東彦総裁も「米中貿易摩擦が世界経済に与える下方リスクは、一番着目している」と述べるなど、懸念を表明した。
7月の展望リポートでは「18年度はリスクはおおむね上下にバランスしているが、19年度以降は下振れリスクの方が大きい」としていた部分について、今回は「海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が強い」と表現を変え、海外経済のリスクを明記した。
海外発のリスクについて、総裁は、保護主義と新興国経済をあげた。なかでも、米中貿易摩擦に代表される保護主義については「各国経済の相互依存関係が深まる中で、保護主義的な政策は、当事国だけでなく世界経済全体に影響を及ぼす可能性がある」と指摘。
さらに「保護主義的な動きの帰すうとその影響については、わが国経済の先行きに関するリスクのひとつとして認識しており、今後とも注意深く見ていく」述べ、注視する姿勢を示した。
また、現在は下方リスクは顕在化していないと断ったうえで「具体的に大きな下方リスクが顕在化して、経済・物価見通しに大きな影響が出るとなれば、金融政策自体を調整することになる」とした。
<物価見通しを引き下げ>
同日の金融政策決定会合では、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和政策の現状維持を賛成多数で決定した。
貿易摩擦は、先行きの懸念材料ではあるものの、現状では「これまでのところ、米中間の貿易摩擦の影響は限定的にとどまっている」(黒田総裁)という状況。
景気判断についても「所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している」とし、先行きについても「緩やかに拡大を続ける」との見通しを据え置いた。
同時に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、2020年度までの消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)見通しを下方修正し、先行きは経済・物価ともに下振れリスクが大きいとした。
展望リポートでは、18年度のコアCPIを前年比0.9%上昇とし、前回7月の同1.1%上昇から下方修正。19、20年度もそれぞれ同1.4%上昇、同1.5%上昇と、前回から0.1ポイント引き下げた。
実質国内総生産(GDP)は18年度が同1.4%増となり、前回の同1.5%増から小幅下方修正。19、20年度は同0.8%増に据え置いた。
18年度の物価見通しの引き下げについて、総裁は「足元の物価がやや弱めだった」と説明したが「物価全体のピクチャー、状況は大きく変わったと考えてない」と述べた。物価上昇のモメンタムについても「維持されている」とした。
このため、展望リポートでは、物価の先行きについて「2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる」との見通しを維持している。
<一部国債買入予定日、入札の翌々日以降に後ずれ>
日銀は午後5時に11月1日から適用する「当面の長期国債買い入れの運営について」を発表。「残存1年超5年以下」と「残存10年超」の国債買入予定日を入札の翌々日以降に後ずれさせた。従来は翌日だった。
また、「残存1年超5年以下」の国債買入回数を5回から4回に減らしたほか「残存1年超3年以下」の買入額レンジを500億円引き上げ、「残存3年超5年以下」の買入額レンジを3000─5500億円に修正した。
みずほ証券・チーフ債券ストラテジストの丹治倫敦氏は「日銀買い入れの減額方向は変わらないことが確認できた。超長期ゾーンについては、買い入れの後ずれにより入札が流れやすくなる分、調整が起こりやすくなる」と述べた。
日銀は7月、国債市場の機能度を高めるために、長期金利の変動幅について、従来のプラスマイナス0.1%の倍くらいの幅を念頭に広げる措置を発表した。その後の市場機能度について、総裁は「機能度という点からは、ひところより改善してきている」と評価した。
総裁は、YCC政策は長短金利を低位に安定させることを通じて経済活動を刺激することを目的としており「市場機能に一定の負荷を掛けて、金利変動を抑制する面があることには留意が必要」と指摘。そのうえで「副作用が大きくなりす過ぎて、政策効果を阻害することにならないように、市場動向をよく点検していく」とした。
*内容を追加しました。
清水律子
https://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-tradewar-idJPKCN1N50Z0
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