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日銀金融政策、「正常化」とは言えない理由 日銀は物価見通しを一段と下方修正 貿易摩擦の影響懸念 黒田総裁「世界経済に影響
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/232.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 10 月 31 日 21:34:16: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

外為フォーラムコラム2018年10月31日 / 08:04 / 32分前更新

日銀金融政策、「正常化」とは言えない理由

井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
4 分で読む

[東京 31日] - 世界の金融市場に不安定性が目立つようになってきた。米国では、インフレ率の上昇を受けて長期金利が不安定化し、それを機にトランプ大統領が米連邦準備理事会(FRB)による利上げを批判し始めたことが市場心理を冷やした。

欧州でも、英国の欧州連合(EU)離脱に向けた調整が迷走を続け、2019年予算を巡るイタリア政府と欧州委員会との対立がエスカレートしただけでなく、ドイツでも政権基盤に揺らぎが生じたことに不安が高まっている。これらに加え、貿易摩擦を巡っては、中国の国内総生産(GDP)が減速しただけでなく、日米欧の大手企業がビジネスの先行きに慎重な見方を示したことで、具体的な影響が顕在化しつつあるとの懸念が台頭している。

このように、株式市場を中心に世界の金融市場が不安定化する中では、日銀も「金融政策の正常化」を進めるべきではないというのが一般的な見方であろう。特に為替レートについては、保護主義の姿勢を強めるトランプ政権がドル高懸念を強めているほか、欧州でも政治的混乱を嫌気した通貨安圧力が生じやすいだけに、日銀の政策に過剰反応するリスクは無視できない。

<「正常化」ではなく「調整」>

しかし、こうした一見わかりやすいロジックには見落とされている点がある。第1に、日銀が7月末の金融政策決定会合で行った政策変更は、「金融政策の正常化」ではなく、「金融緩和の調整」だという点である。

この点で興味深いのは、7月末に日銀が「量的・質的金融緩和」の運営を変更してから時間が経つにつれ、金融市場では、日銀のフォワードガイダンス(将来の金融政策指針)よりも10年国債利回りの変動容認幅の拡大や国債の買入れ額の柔軟化に着目し、「正常化の第一歩」と受け止める見方が台頭していることだ。米欧における「金融政策の正常化」とのシンプルな連想や、日銀自身が認めている「量的・質的金融緩和」の副作用に対する懸念など複合的な裏付けを有しているだけに、こうした見方を巡る議論は勢いがつきやすく、「正常化の次の一歩」を巡る思惑も生じている。

しかし、米欧のようにインフレ目標の達成にめどをつけた中央銀行が政策スタンスを中立化することを指す「金融政策の正常化」とは本質的に異なり、日銀の対応は、インフレ目標の達成にはなお距離を残すものの、副作用を含む金融経済の状況に照らして金融緩和の強さを調節するものだ。「金融政策の正常化」の一環と理解される国債買入れ額の減少も、次の景気後退における量的緩和の発動余地を若干なりとも拡大する意味合いを持っている。

第2に、日銀は国債買入れ額を減らすことができても、政策金利を変えることは少なくとも当面は難しい。米国で金融市場が不安定化する契機となった長期金利の上昇は、その後の株価調整の中で皮肉にも反転し、抑制的な動きとなっている。ユーロ圏でも、イタリア国債の利回り上昇に対する「質への逃避」の動きもあって、ドイツ国債利回りはむしろ低下方向にある。このように海外からの金利上昇圧力が低下した分、日銀が国債買入れを増やして利回り上昇を抑えこむ蓋然(がいぜん)性は低下している。

一方、7月末に導入したフォワードガイダンスによって、日銀は長短双方の目標金利を現状のまま維持することを示唆し、その期間として、少なくとも明示的に言及している2019年10月の消費税率引上げの影響を見極めるまでを指しているとみられる。

フォワードガイダンスは政策運営の「予想」を示しただけなので、目標金利の変更も不可能ではない。しかし、それには理由が必要であるし、金融市場が不安定化する中で、利上げ方向の変更については尚更にそうである。

つまり、「金融政策の正常化」という理解に沿って、今後の日銀が、10年国債利回りの変動容認幅をさらに拡大し、その結果を確認しつつ目標金利を引き上げると予想することはロジカルではあるが、少なくとも「当面」の間、大きな可能性があるとは思われない。

<良好なファンダメンタルズが支えに>

第3に、米欧ともに経済のファンダメンタルズはなお良好である。米国は本年の第2・四半期、ユーロ圏は昨年の第4・四半期とみられるピークに比べて足元では減速感もあるが、ともに潜在成長率を上回るペースで拡大している。また、雇用や賃金、企業収益や設備稼働率など、内需を支える基盤の良好さにも変化がなく、これまで後退が目立つのは企業のセンチメントに関するアンケート調査や決算見通しなどのソフトデータが中心である。

日本経済のファンダメンタルズも相応に良好である。天候要因等のせいで経済成長率は上下しているが、内閣府と日銀は共にマクロの需給ギャップがプラス圏を維持していると推計している。雇用や賃金、企業収益や設備稼働率といった基盤の堅実さも米欧と共通している。

この間、中国では生産や投資といったハードデータにも影響が及んでいるが、金融と財政の双方で政策対応に余力があり、成長率が切り下がっても、マクロ的に大きな失業が生ずるリスクは小さい。金融システムの「正常化」が先送りされる懸念は残るが、成長率を多少切り下げた上で経済安定を維持することは十分に可能とみられる。

このように、国際金融市場の現在の不安定化に対しては、世界経済のファンダメンタルズの堅調さがいわばセーフティネットとして存在する。

<日銀の政策対応>

これらを考え合わせると、日銀が10年国債利回りの変動容認幅の拡大や国債の買入れ額の柔軟化といった「金融緩和の調整」を慎重に続けることは可能であるし、今後の政策対応力や副作用の面でメリットも存在する。

もちろん、こうした対応を円滑に進めるには、政策変更が「金融政策の正常化」ではないことについて、金融市場と共通の理解を再構築することが日銀に求められる。同時に、アプリオリ(自明的)に金融緩和の縮小を目指す訳でないことについて金融市場の理解を得るため、金融経済に下方リスクが高まった場合は必要な追加緩和を行うというコミットメントを強調することも併せて重要だ。そうした観点から、フォワードガイダンスの意味合いを確認することも必要になるだろう。

井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。  

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/boj-column-inoue-idJPKCN1N42Y4


 


 

日銀は物価見通しを一段と下方修正−金融政策は現状維持
日高正裕、藤岡徹
2018年10月31日 12:19 JST 更新日時 2018年10月31日 17:12 JST
2018〜20年度の物価見通しをすべて下方修正−展望リポート
米中貿易摩擦が世界経済に与える下方リスクに一番注目−黒田総裁

黒田日銀総裁 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行は31日、消費者物価の見通しを7月に続き一段と下方修正した上で、さらに下振れリスクの方が大きいとの判断を示した。日銀が目標としている2%の達成がさらに遠のいた。同日の金融政策決定会合では、現行金融政策をすべて据え置いた。

  同日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で日銀は、消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比上昇率見通し(政策委員の中央値)を2018年度から20年度まですべて下方修正した。18年度が0.9%(前回7月は1.1%)、消費増税の影響を除く19年度は1.4%(同1.5%)、20年度が1.5%(同1.6%)。実質国内総生産(GDP)成長率はおおむね不変とした。


金融政策決定会合、会見する黒田総裁(31日)
  黒田東彦総裁は同日の会見で、「経済、物価共に下振れリスクの方が大きい」とし、米中の貿易摩擦のエスカレートが「米中のみならず世界貿易、世界経済全体に与える下方リスクに一番注目している」と説明。「大きな下方リスクが顕在化して、経済物価見通しに大きな影響が出てくることになれば、金融政策自体を調整するということになる」と語った。

金融面の不均衡リスク
  展望リポートでは、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続く下で金融機関収益の下押しが長期化すると、「金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある」と指摘。「先行きの動向には注視していく必要がある」とした。日銀が13年4月に異次元緩和を開始して以来、展望リポートで金融面の不均衡リスクを「注視していく必要」と明記したのは初めて。

  黒田総裁は、金融機関収益の低下について、「地域金融機関は潤沢な自己資本を持ち、流動性も十分あるので、直ちに問題が生じることはない」としながらも、「長い期間では影響が出てくる恐れがある」との見方を示した。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは発表後のリポートで、金融面の不均衡リスクの点検で留意コメントが付いたことは「黒田日銀の金融政策判断において、従来よりもマクロプルーデンス(信用秩序維持)の観点を重視していく可能性を示した」と指摘した。

2人が反対
  日銀は31日の会合で、誘導目標である長期金利(10年物国債金利)は「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)は「マイナス0.1%」に据え置いた。長期金利の変動を認める方針にも変更はない。「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」としたフォワードガイダンス(政策金利の指針)や長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持した。

  指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針にも変更はなかった。引き続き市場の状況によって「買い入れ額は上下に変動しうる」としている。片岡剛士、原田泰両審議委員は長短金利操作とフォワードガイダンスに反対した。日銀は7月会合で導入した市場機能改善策の効果を引き続き見極める構えだ。

  ブルームバーグがエコノミスト46人に行った事前調査では、全員が現状維持を予想していた。日銀は7月会合で、19年10月の消費増税の影響を含めた不確実性を踏まえ、フォワードガイダンスを初めて導入するとともに、長期金利やETF買い入れ額の変動を容認。その後の市場動向を注視してきた。

  ドル・円相場は結果発表後も小動きで1ドル=113円前半で取引されている。

ブルームバーグの事前調査の結果はこちら

(黒田総裁の会見での発言を追加して更新しました.)

11月オペ方針、中期ゾーンの回数減や入札翌日オペ一部見送り(1)
山中英典、三浦和美
2018年10月31日 17:22 JST 更新日時 2018年10月31日 18:00 JST
徐々にボラティリティー上がる要因にー三井住友トラストAM
先物は夜間取引で150円51銭まで下落、長期金利0.13%に上昇
日本銀行は11月の国債買い入れ計画で、中期ゾーンのオペ実施回数を減らし、1回あたりの買い入れ額のレンジを引き上げた。一方、慣行となっていた国債入札の翌日のオペは一部について実施せず、翌営業日以降にずらした。

  日銀の発表内容は以下の通り。

残存1年超5年以下が4回に減少ー10月は5回
他の年限は10月から回数据え置き
残存1年超3年以下は2500億〜4500億円程度ー10月は2000億〜4000億円程度
残存3年超5年以下は3000億〜5500億円程度ー10月は2500億〜4500億円程度
他の年限は10月からレンジ据え置き
30年国債入札翌日の14日は残存10年超オペなし
5年国債入札翌日の16日は残存1−5年オペなし
20年国債入札翌日の21日は残存10年超オペなし
40年国債入札翌日の28日は残存10年超オペなし
  三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也主任調査役は、「残存1年超5年以下の回数を減らして、買い入れ額レンジを引き上げており、全体的に買い入れ量が減っていくようなオペレーションになるだろう」と指摘。超長期ゾーンは入札翌日のオペを外したことで、「大きく利回り曲線がスティープ化するというよりは、徐々にボラティリティーが上がる要因になる見通し」だと分析した。

  今回のオペ運営方針発表を受けて、先物中心限月は夜間取引で一時150円51銭と日中取引終値より12銭安まで下落。長期金利は0.13%と1週間ぶりの高水準を付けた。

  野村証券の中島武信シニア金利ストラテジストは、「入札からオペまでの間隔が広がることでタームプレミアムが上がって金利上昇要因になる」と指摘。半面、「生保は下期運用計画で超長期債の購入意欲を示しており、日銀の肩代わり役が期待できるため、過度な金利上昇の恐れは小さい」と述べた。


(第2段落以降を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PH2ZEM6TTDS401


 


 

ビジネス2018年10月31日 / 17:46 / 29分前更新
日銀、貿易摩擦の影響懸念 黒田総裁「世界経済に影響の可能性」と指摘
2 分で読む

[東京 31日 ロイター] - 激化する米中貿易摩擦の影響について、日銀は懸念を深めている。31日に公表した経済・価情勢の展望(展望リポート)では「海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい」と明記。金融政策決定会合後に記者会見した黒田東彦総裁も「米中貿易摩擦が世界経済に与える下方リスクは、一番着目している」と述べるなど、懸念を表明した。

7月の展望リポートでは「18年度はリスクはおおむね上下にバランスしているが、19年度以降は下振れリスクの方が大きい」としていた部分について、今回は「海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が強い」と表現を変え、海外経済のリスクを明記した。

海外発のリスクについて、総裁は、保護主義と新興国経済をあげた。なかでも、米中貿易摩擦に代表される保護主義については「各国経済の相互依存関係が深まる中で、保護主義的な政策は、当事国だけでなく世界経済全体に影響を及ぼす可能性がある」と指摘。

さらに「保護主義的な動きの帰すうとその影響については、わが国経済の先行きに関するリスクのひとつとして認識しており、今後とも注意深く見ていく」述べ、注視する姿勢を示した。

また、現在は下方リスクは顕在化していないと断ったうえで「具体的に大きな下方リスクが顕在化して、経済・物価見通しに大きな影響が出るとなれば、金融政策自体を調整することになる」とした。

<物価見通しを引き下げ>

同日の金融政策決定会合では、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和政策の現状維持を賛成多数で決定した。

貿易摩擦は、先行きの懸念材料ではあるものの、現状では「これまでのところ、米中間の貿易摩擦の影響は限定的にとどまっている」(黒田総裁)という状況。

景気判断についても「所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している」とし、先行きについても「緩やかに拡大を続ける」との見通しを据え置いた。

同時に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、2020年度までの消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)見通しを下方修正し、先行きは経済・物価ともに下振れリスクが大きいとした。

展望リポートでは、18年度のコアCPIを前年比0.9%上昇とし、前回7月の同1.1%上昇から下方修正。19、20年度もそれぞれ同1.4%上昇、同1.5%上昇と、前回から0.1ポイント引き下げた。

実質国内総生産(GDP)は18年度が同1.4%増となり、前回の同1.5%増から小幅下方修正。19、20年度は同0.8%増に据え置いた。

18年度の物価見通しの引き下げについて、総裁は「足元の物価がやや弱めだった」と説明したが「物価全体のピクチャー、状況は大きく変わったと考えてない」と述べた。物価上昇のモメンタムについても「維持されている」とした。

このため、展望リポートでは、物価の先行きについて「2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる」との見通しを維持している。

<一部国債買入予定日、入札の翌々日以降に後ずれ>

日銀は午後5時に11月1日から適用する「当面の長期国債買い入れの運営について」を発表。「残存1年超5年以下」と「残存10年超」の国債買入予定日を入札の翌々日以降に後ずれさせた。従来は翌日だった。

また、「残存1年超5年以下」の国債買入回数を5回から4回に減らしたほか「残存1年超3年以下」の買入額レンジを500億円引き上げ、「残存3年超5年以下」の買入額レンジを3000─5500億円に修正した。

みずほ証券・チーフ債券ストラテジストの丹治倫敦氏は「日銀買い入れの減額方向は変わらないことが確認できた。超長期ゾーンについては、買い入れの後ずれにより入札が流れやすくなる分、調整が起こりやすくなる」と述べた。

日銀は7月、国債市場の機能度を高めるために、長期金利の変動幅について、従来のプラスマイナス0.1%の倍くらいの幅を念頭に広げる措置を発表した。その後の市場機能度について、総裁は「機能度という点からは、ひところより改善してきている」と評価した。

総裁は、YCC政策は長短金利を低位に安定させることを通じて経済活動を刺激することを目的としており「市場機能に一定の負荷を掛けて、金利変動を抑制する面があることには留意が必要」と指摘。そのうえで「副作用が大きくなりす過ぎて、政策効果を阻害することにならないように、市場動向をよく点検していく」とした。

*内容を追加しました。

清水律子
https://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-tradewar-idJPKCN1N50Z0  

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コメント
1. 2018年10月31日 21:45:04 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[97] 報告
リスク顕現化しても日銀の手段は限定的、景気下振れや金融不均衡
日高正裕
2018年10月31日 18:45 JST
経済・物価の見通しは「ともに下振れリスクの方が大きい」
「緩和手段が世界で最も枯渇しているのは日銀」と東短の加藤氏
米中の貿易摩擦や金融市場の混乱を受けて、日本銀行は「海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい」との見方を示した。金融面の不均衡についても「注視していく必要がある」と警戒感を高めている。いずれのリスクが顕現化しても日銀がとれる手段は限られているとの見方が強い。

  日銀は31日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、これまで「リスクはおおむね上下にバランスしている」とした2018年度も含め、経済・物価の見通しは「ともに下振れリスクの方が大きい」との判断を示した。

  黒田東彦総裁は同日の会見で、貿易摩擦のエスカレートが「米中のみならず世界貿易、世界経済全体に与える下方リスクに一番注目している」と説明。大きな下方リスクが顕在化して経済・物価見通しに大きな影響が出れば「金融政策自体を調整する」と語った。

  手段については「金利引き下げやマネタリーベース拡大、資産買い入れ拡大などいろいろな手段があり得る」と述べたが、実際にとれる手段は多くないとみられている。東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは29日付のリポートで、次の景気後退時の政策発動余地が乏しいことが世界的に心配されているが、「緩和手段が世界で最も枯渇しているのは日銀だ」と指摘した。

金融面の不均衡
  展望リポートは金融面の不均衡についても点検。低金利の下で金融機関収益の下押しが長期化し、金融システムが不安定化するリスクを「注視していく必要がある」との見方を示した。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅エコノミストは会合後のリポートで、長期化する低金利環境が金融システムに与える累積的影響を「日銀がこれまで以上に気にしている印象を受けた」と指摘する。

  景気が後退すれば金融面の副作用が一気に顕在化する恐れもある。日銀は金融システムリポートで、リーマン級のショックを想定したストレス試験について、地域金融機関が株式投資信託を増やしてきたため、株式関係損が「リーマンショック時よりも大きくなる」との試算を示した。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは同リポート発表を受けて、通常、金融機関の資本劣化に対して中央銀行ができることは、短期金利を引き下げてイールドカーブ(利回り曲線)を立てて利ざや確保の機会を提供することだが、大きなショックが訪れるとイールドカーブを立てる余地はなく、金融機関の「過小資本状態が長期化する恐れがある」と指摘する。

  野村証券の美和卓チーフエコノミストは会合後のリポートで、金融政策は現状、「副作用対応も含め正常化に向け徐々に微修正される方向にある」一方で、「金融市場の不安定化や景気下振れに対する政策対応余地は極めて限定されている」と指摘。その必要が生じた場合、日銀は「難しい判断を迫られる可能性が高い」としている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PHGHDW6KLVR901?srnd=cojp-v2
 
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PHC9UQ6JTSEA01?srnd=cojp-v2


 
2018年10月31日 高田 創 :みずほ総合研究所 専務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト
高齢化で銀行のビジネスモデルは「大転換」を迫られている
 高齢化はさまざまな形で経済社会を大きく変えようとしているが、金融システムや銀行もその例外ではない。戦後一貫して当たり前のものとして前提にしてきた金融仲介の在り方は大転換を迫られている。
 本論は、戦後、「人生60年時代」の局面で作り上げられた今の金融のインフラが、その後、高齢化に伴い「人生100年時代」を迎えるなか、実態に合わなくなっているとの問題提起である。
 それは、今日の銀行の在り方そのものを問うものとなる。
高齢化がもたらす
マネーフローの転換
 高齢化は2つの面で、金融システムや銀行のビジネスモデルの転換を迫っている。
 第1が、現役世代を対象にした金融・ビジネスから高齢者に向けたサービスへのシフト。
 第2は、老後、多様化するライフスタイルに対する対応だ。
 図表は、今日の高齢化に伴うライフステージや金融ニーズの変化を示す概念図である。
 横軸で、高齢者に向けたサービスのシフトを、縦軸で多様化するライフスタイルに対する金融サービスの変化を示し、2次元にわたる大きな転換を指摘したい。
◆図表1:高齢化に伴うライフステージや金融ニーズ

(資料)みずほ総合研究所作成 拡大画像表示
「波平さんモデル」から
平均寿命は20年延びた
 ここに示した高齢化に伴う環境変化を筆者は「波平さんモデル」の転換として議論してきた。それは、つまり「人生60年時代」の転換を示す。
 戦後の国民的アニメの「サザエさん」に登場する波平さんの年齢は、54歳という設定だとされる。このアニメの原作の漫画が始まった1950年代当時、サラリーマンの定年の多くは50歳代半ば、男性の平均寿命は60歳程度だった。
 今、我々の生活を取り巻く制度設計の前提の多くは「サザエさん」が誕生したころに生まれ、年金などの社会保障制度の設計もその頃の状況がベースになっている「波平さんモデル」である。
 同様に、金融機関のビジネスモデルも当時の状況を想定したものといっていい。
 だが現在、男性の平均寿命は81歳と、過去60年の間に20歳程度も延びた。当時の波平さんをベースに設計された「波平さんモデル」は、今の実情と全くかけはなれている。
 かつての「波平さんモデル」なら、ほとんどの人の人生は現役の時代だけで完結し、老後に必要な経済的保障である年金のニーズも生まれなかった。また、健康面では老人医療の必要もなく、介護のニーズも生じない。
 すなわち、「老後」の存在がほとんどない、「現役世代完結型」のモデルだった。
「現役世代完結型」から
「世代間資金仲介型」に
 ここで金融の仲介機能に目を向けよう。
「波平さんモデル」、「現役世代完結型の金融」での資金の仲介は、社会の現役世代における資金過不足の金融仲介が中心になる。
 すなわち、戦後長らく、旺盛な資金需要を伴う企業セクターが存在し、家計でも現役世代に住宅投資を中心に資金ニーズがあった。銀行の機能は、企業や現役世代への資金仲介を行うことにあった。
 その資金需要額は貯蓄額を超える投資過剰の状況のなか、商業銀行が、貯蓄を集める効率的なインフラの中核として存在した。
 その環境のもとで銀行のビジネスモデルは、画一化したライフスタイルの現役世代を中心に、さまざまなライフステージ(就職−結婚−子育て−住宅購入−定年)に対応した金融ニーズを提供することだった。
 銀行はそうしたライフステージの入り口の就職段階から顧客を捉えれば、その後も安定した営業基盤が構築でき、預金を集めれば自動的に収益につながった。こうしたことが暗黙裡に前提とされていた商業銀行モデルの成功体験が長く続いた。
 次に、老後の生活が20年以上ある「人生100年時代」への転換を考えよう。
 この時代での資金の仲介は、顧客の現役の時から老後まで、社会全体の現役世代から老後への世代をつなぐ金融、「世代間資金仲介」だ。それは年金をはじめとする資産運用に他ならない。
 人々は公的年金制度などで不十分と考えれば、現役の時の支出を減らしても老後に備えることになる。さらに、「人生100年時代」の掛け声のなか、さらに老後が長くなるとの不安は、節約志向を強め、資産運用のニーズを増やす。
 同時に、企業の旺盛な資金需要も減退するなか、商業銀行のビジネスモデルは大幅な転換を余儀なくされる。
 とりわけ現在のように日銀による「マイナス金利」政策が続き、金利収入が激減している状況では、戦後一貫して続いた預金と貸し出しをベースとした商業銀行のビジネスモデルは再考を迫られる。
 同時に、新たに資産運用ビジネスの重要性が高まることになる。
企業の資金余剰時代
エクイティ市場が中心に
 図表2で貯蓄投資バランスの変化を見てみよう。
◆図表2:日本の貯蓄投資(IS)バランス推移

(資料)内閣府よりみずほ総合研究所作成 拡大画像表示
 戦後一貫して続いた非金融法人の資金不足は、90年代以降は資金余剰に転換した。
 商業銀行などの金融機関にとっての「波平さんモデル」は、企業が資金不足であることが前提だった。だが、資金余剰になったなか、高齢化における資金仲介は現役世代から高齢者への資金仲介、資産運用が中心になる。
 さらに、ライフスタイルが多様化するなかでは、多様なライフスタイルのニーズに即した金融サービスが重要になり、そこでは商業銀行が担うビジネスに加え信託業務の重要性も高まりやすい。
 さらに、従来の企業金融は銀行中心の貸出市場から資本市場が中心になる。
 今や上場企業の6割近くが実質無借金だ。金余り時代では、必要な資金はデットよりもエクイティ性資金で調達することが主になる。
 資金仲介機能もデット市場からエクイティ市場が中心となる。金融庁など金融当局が金融機関の経営状況を判断する際の事業性評価も、今後は、デット性の貸し出しにとどまらず、エクイティ性の出資機能も重要になるのではないか。
 高齢化が金融仲介システムに大きな転換をもたらしていることを、改めて認識する必要がある。
(みずほ総合研究所 専務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト 高田 創)

https://diamond.jp/articles/-/183824

 


 
2018年10月31日 Al Root
【バロンズ】
貿易戦争、米企業の業績に影響

Photo:Reuters
企業業績や世界経済への波及
 トランプ大統領が貿易を通じて中国との対決姿勢を示した当初、この問題は軽視されがちだった。企業利益に影響を及ぼしていなかったからだ。しかし、もはやそのような状況ではない。

 第2四半期の決算発表の期間中は、どの企業も基本的には同じことを言っていた。つまり、関税を注視しているということだ。市場は貿易をめぐる懸念を受け流し、株価は上昇した。第2四半期の決算説明会の多くは7月に行われたが、2000億ドル相当の中国製品に追加関税を課すという直近の措置が取られたのは9月である。そして今、第3四半期の決算説明会では、多くの企業がその影響を詳しく説明し始めている。

 関税がもたらす最終的な影響を正確に予測するのは容易なことではない。コストだけでなく、需要の変化やサプライチェーンが混乱する可能性などを計算に入れると、重大な結果になる恐れがある。国際通貨基金(IMF)は、最近発表した「世界経済見通し」で世界経済の成長率の予測を引き下げ、その要因の1つとして「貿易摩擦の激化」を挙げている。

製品価格への転嫁
 10月に決算発表を行った製造業者のほとんどが関税に言及している。建機大手キャタピラー(CAT)は、関税による材料費の増加が、値上げによる利益を5000万ドル上回ったと述べた。5000万ドルという金額は、同社の第3四半期の売上総利益の約1.2%に相当するという。一方、空調機メーカーのレノックス・インターナショナル(LII)は、第3四半期における2.5%の値上げは、インフレと関税の影響を補って余りあると述べている。

 今のところ、多くの企業はコスト負担を受け入れようとしている。そうなると、企業の最終利益に影響が及ぶ。バークレイズのストラテジスト、マニーシュ・デシュパンデ氏が考える最悪のシナリオは、中国からの全輸入品への25%の課税である。デシュパンデ氏によると、その場合のコスト増を企業が負担すると、現在10%と予想するS&P500指数構成企業の2019年の利益成長率が3%ポイント押し下げられるという。もちろん、圧力が高まり続ければ、企業は値上げを迫られるだろうが、航空電子部品大手ハネウェル・インターナショナル(HON)の決算説明会では、値上げ、コスト削減、代替調達など、新たな関税措置への対応について問われた経営陣が、「準備は整いつつあるが、直ちに実行することはない」と述べている。

 資産運用会社JOハンブロのポートフォリオマネジャー、アルン・ダニエル氏は、「企業は、問題解決を当てにして、今後2〜3四半期のコスト増の難局を乗り切るつもりだ。部品調達に関する長期的な決断をする様子はない」と述べている。また、全米製造業協会(NAM)は本誌の取材に対し、迅速な解決を望むと語った。NAMは、市場開放、知的財産権保護、規制の近代化のための協定を強く求めている。

両国の歩み寄りは可能か
 ダニエル氏によると、ウォール街では貿易に関する見通しが2つに分かれているという。既に一部のアナリストは2019年の経済成長率の低下を予想しているが、成長が鈍化するとは考えていないアナリストもいる。「事態が落ち着けばチャンスも生まれるが、それにはきっかけが必要だ」とダニエル氏は指摘する。

 11月に開かれる20カ国・地域(G20)サミットでのトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談は、そのきっかけになるかもしれない。緊張緩和の認識や交渉の枠組みの発表は、貿易をめぐる懸念の影響をまともに受けてきたセクターの急反発につながる可能性がある。貿易関連銘柄への打撃は他のセクターを上回り、今月は、情報技術(IT)、資本財、小売りが市場全体よりも大幅に下げている。

 有効な枠組みとはどのようなものだろうか。資産運用会社コニングの投資戦略責任者、リッチ・セガ氏が引き合いに出すのは、世界貿易機関(WTO)のデータである。そこに示されている全輸入品の平均関税率は、米国が約3.5%であるのに対し、中国は約9%だ。考えられる解決策は、妥協点を見つけることだ。「両国が勝利を宣言するために必要なのは、その差を少しばかり縮めることだけだ」と、セガ氏は述べている。
https://diamond.jp/articles/-/183877

 

11月オペ方針、中期ゾーンの回数減や入札翌日オペ一部見送り(1)
山中英典、三浦和美
2018年10月31日 17:22 JST 更新日時 2018年10月31日 18:00 JST
• 徐々にボラティリティー上がる要因にー三井住友トラストAM
• 先物は夜間取引で150円51銭まで下落、長期金利0.13%に上昇
日本銀行は11月の国債買い入れ計画で、中期ゾーンのオペ実施回数を減らし、1回あたりの買い入れ額のレンジを引き上げた。一方、慣行となっていた国債入札の翌日のオペは一部について実施せず、翌営業日以降にずらした。
  日銀の発表内容は以下の通り。
• 残存1年超5年以下が4回に減少ー10月は5回
• 他の年限は10月から回数据え置き
• 残存1年超3年以下は2500億〜4500億円程度ー10月は2000億〜4000億円程度
• 残存3年超5年以下は3000億〜5500億円程度ー10月は2500億〜4500億円程度
• 他の年限は10月からレンジ据え置き
• 30年国債入札翌日の14日は残存10年超オペなし
• 5年国債入札翌日の16日は残存1−5年オペなし
• 20年国債入札翌日の21日は残存10年超オペなし
• 40年国債入札翌日の28日は残存10年超オペなし
  三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也主任調査役は、「残存1年超5年以下の回数を減らして、買い入れ額レンジを引き上げており、全体的に買い入れ量が減っていくようなオペレーションになるだろう」と指摘。超長期ゾーンは入札翌日のオペを外したことで、「大きく利回り曲線がスティープ化するというよりは、徐々にボラティリティーが上がる要因になる見通し」だと分析した。
  今回のオペ運営方針発表を受けて、先物中心限月は夜間取引で一時150円51銭と日中取引終値より12銭安まで下落。長期金利は0.13%と1週間ぶりの高水準を付けた。
  野村証券の中島武信シニア金利ストラテジストは、「入札からオペまでの間隔が広がることでタームプレミアムが上がって金利上昇要因になる」と指摘。半面、「生保は下期運用計画で超長期債の購入意欲を示しており、日銀の肩代わり役が期待できるため、過度な金利上昇の恐れは小さい」と述べた。

(第2段落以降を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PHEIY16KLVRF01


 


2018年10月31日 高田 創 :みずほ総合研究所 専務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト
高齢化で銀行のビジネスモデルは「大転換」を迫られている
 高齢化はさまざまな形で経済社会を大きく変えようとしているが、金融システムや銀行もその例外ではない。戦後一貫して当たり前のものとして前提にしてきた金融仲介の在り方は大転換を迫られている。
 本論は、戦後、「人生60年時代」の局面で作り上げられた今の金融のインフラが、その後、高齢化に伴い「人生100年時代」を迎えるなか、実態に合わなくなっているとの問題提起である。
 それは、今日の銀行の在り方そのものを問うものとなる。
高齢化がもたらす
マネーフローの転換
 高齢化は2つの面で、金融システムや銀行のビジネスモデルの転換を迫っている。
 第1が、現役世代を対象にした金融・ビジネスから高齢者に向けたサービスへのシフト。
 第2は、老後、多様化するライフスタイルに対する対応だ。
 図表は、今日の高齢化に伴うライフステージや金融ニーズの変化を示す概念図である。
 横軸で、高齢者に向けたサービスのシフトを、縦軸で多様化するライフスタイルに対する金融サービスの変化を示し、2次元にわたる大きな転換を指摘したい。
◆図表1:高齢化に伴うライフステージや金融ニーズ

(資料)みずほ総合研究所作成 拡大画像表示
「波平さんモデル」から
平均寿命は20年延びた
 ここに示した高齢化に伴う環境変化を筆者は「波平さんモデル」の転換として議論してきた。それは、つまり「人生60年時代」の転換を示す。
 戦後の国民的アニメの「サザエさん」に登場する波平さんの年齢は、54歳という設定だとされる。このアニメの原作の漫画が始まった1950年代当時、サラリーマンの定年の多くは50歳代半ば、男性の平均寿命は60歳程度だった。
 今、我々の生活を取り巻く制度設計の前提の多くは「サザエさん」が誕生したころに生まれ、年金などの社会保障制度の設計もその頃の状況がベースになっている「波平さんモデル」である。
 同様に、金融機関のビジネスモデルも当時の状況を想定したものといっていい。
 だが現在、男性の平均寿命は81歳と、過去60年の間に20歳程度も延びた。当時の波平さんをベースに設計された「波平さんモデル」は、今の実情と全くかけはなれている。
 かつての「波平さんモデル」なら、ほとんどの人の人生は現役の時代だけで完結し、老後に必要な経済的保障である年金のニーズも生まれなかった。また、健康面では老人医療の必要もなく、介護のニーズも生じない。
 すなわち、「老後」の存在がほとんどない、「現役世代完結型」のモデルだった。
「現役世代完結型」から
「世代間資金仲介型」に
 ここで金融の仲介機能に目を向けよう。
「波平さんモデル」、「現役世代完結型の金融」での資金の仲介は、社会の現役世代における資金過不足の金融仲介が中心になる。
 すなわち、戦後長らく、旺盛な資金需要を伴う企業セクターが存在し、家計でも現役世代に住宅投資を中心に資金ニーズがあった。銀行の機能は、企業や現役世代への資金仲介を行うことにあった。
 その資金需要額は貯蓄額を超える投資過剰の状況のなか、商業銀行が、貯蓄を集める効率的なインフラの中核として存在した。
 その環境のもとで銀行のビジネスモデルは、画一化したライフスタイルの現役世代を中心に、さまざまなライフステージ(就職−結婚−子育て−住宅購入−定年)に対応した金融ニーズを提供することだった。
 銀行はそうしたライフステージの入り口の就職段階から顧客を捉えれば、その後も安定した営業基盤が構築でき、預金を集めれば自動的に収益につながった。こうしたことが暗黙裡に前提とされていた商業銀行モデルの成功体験が長く続いた。
 次に、老後の生活が20年以上ある「人生100年時代」への転換を考えよう。
 この時代での資金の仲介は、顧客の現役の時から老後まで、社会全体の現役世代から老後への世代をつなぐ金融、「世代間資金仲介」だ。それは年金をはじめとする資産運用に他ならない。
 人々は公的年金制度などで不十分と考えれば、現役の時の支出を減らしても老後に備えることになる。さらに、「人生100年時代」の掛け声のなか、さらに老後が長くなるとの不安は、節約志向を強め、資産運用のニーズを増やす。
 同時に、企業の旺盛な資金需要も減退するなか、商業銀行のビジネスモデルは大幅な転換を余儀なくされる。
 とりわけ現在のように日銀による「マイナス金利」政策が続き、金利収入が激減している状況では、戦後一貫して続いた預金と貸し出しをベースとした商業銀行のビジネスモデルは再考を迫られる。
 同時に、新たに資産運用ビジネスの重要性が高まることになる。
企業の資金余剰時代
エクイティ市場が中心に
 図表2で貯蓄投資バランスの変化を見てみよう。
◆図表2:日本の貯蓄投資(IS)バランス推移

(資料)内閣府よりみずほ総合研究所作成 拡大画像表示
 戦後一貫して続いた非金融法人の資金不足は、90年代以降は資金余剰に転換した。
 商業銀行などの金融機関にとっての「波平さんモデル」は、企業が資金不足であることが前提だった。だが、資金余剰になったなか、高齢化における資金仲介は現役世代から高齢者への資金仲介、資産運用が中心になる。
 さらに、ライフスタイルが多様化するなかでは、多様なライフスタイルのニーズに即した金融サービスが重要になり、そこでは商業銀行が担うビジネスに加え信託業務の重要性も高まりやすい。
 さらに、従来の企業金融は銀行中心の貸出市場から資本市場が中心になる。
 今や上場企業の6割近くが実質無借金だ。金余り時代では、必要な資金はデットよりもエクイティ性資金で調達することが主になる。
 資金仲介機能もデット市場からエクイティ市場が中心となる。金融庁など金融当局が金融機関の経営状況を判断する際の事業性評価も、今後は、デット性の貸し出しにとどまらず、エクイティ性の出資機能も重要になるのではないか。
 高齢化が金融仲介システムに大きな転換をもたらしていることを、改めて認識する必要がある。
(みずほ総合研究所 専務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト 高田 創)

https://diamond.jp/articles/-/183824

 

富裕層の海外資産をガラス張りに 国税庁、55万件入手
2018/10/31 15:09
日本経済新聞 電子版
国税庁は31日、約100カ国・地域が自国内の金融機関にある外国居住者の口座情報を交換する新制度により、同日時点で日本居住者が海外に持つ口座情報約55万件を入手したと発表した。富裕層の海外資産の把握に苦心してきた国税当局にとってはまさに「宝の山」。国境をまたぐ脱税や租税回避を防ぐため、入手した情報を活用して税務調査を進める方針だ。

画像の拡大
国税庁によると、9月以降入手した口座情報55万件は64カ国・地域にまたがり、租税回避地(タックスヘイブン)も含まれる。地域別ではアジア・オセアニアが29万件、欧州など20万件、北米・中南米4万件、中東・アフリカ1万5千件。今後も増える可能性がある。
日本からは58カ国・地域に対し約9万件の情報を提供した。
新制度はCRS(Common Reporting Standard=共通報告基準)と呼ばれ、各国の税務当局が自国の金融機関に外国に住む顧客(非居住者)の口座情報を報告させ、年1回、参加国間で情報交換する仕組み。
国際的な脱税や租税回避を防ぐために経済協力開発機構(OECD)で策定された。2017年に初の情報交換が行われ、日本は今回、18年の交換から参加した。
交換で得られる情報は顧客の氏名、住所、口座残高、利子・配当の年間受取総額など。国税庁は今後、国外に5千万円超の財産を持つ人に提出が義務付けられた「国外財産調書」など既存の情報と突き合わせ、未申告の資産があれば適正な徴税、徴収につなげていく方針だ。
国税庁は従来、各国の税務当局と相対で情報交換はしており、個人や法人を特定して情報を求めたり、日本人が海外で得た利子・配当について情報提供を受けたりしてきた。これに対し、多くの国が参加するCRSは「自動的、電子的、義務的であることがこれまでと大きく違う」と国税庁の担当者は説明する。
国税当局は近年、富裕層の海外資産への課税に力を入れており、10年には私立大学の元総長の遺産を巡り遺族に15億円の申告漏れを指摘したことが明らかになった。タックスヘイブンにある遺産を把握できたのは「たまたまドイツ当局から寄せられた情報が端緒となった」と当時を知る国税関係者は明かす。
16年には、パナマの法律事務所の内部資料「パナマ文書」が公開され、資料に記載があった日本人の追徴課税にもつながった。これも「暴露があったからこそ可能になった」(国税関係者)。
2000年代後半から顧客の情報を開示しない金融機関やタックスヘイブンなどへの批判が高まり、OECDやG20などでの議論を経て、CRSには、以前は情報の開示に消極的だったスイスやタックスヘイブンなども参加することとなった。
他方、米国はFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)に基づき、米国人などの口座情報を世界各地の金融機関から集める仕組みを持っており、CRSには参加していない。
国税庁で国際業務課長を務めたKPMG税理士法人の角田伸広税理士は「CRSにより長年当局が把握、特定できていなかった口座情報が投網にかけられたように出てくる可能性がある」と指摘。「税務調査の端緒として活用するなど、国税当局にとって大きな武器になることは間違いない」と話している。
手に入った55万件に上る膨大な口座情報をどう整理し、分析し、徴税につなげていくか。国税当局にとっては活用の仕組みを築き、実績を積み重ねていくことが課題となる。
国税庁、海外の隠し資産調査 40万件の口座情報を...[有料会員限定]
2018/10/14 20:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37164730R31C18A0CR8001/

 
日本株、配当込みで見たら意外な高値(平山賢一) 東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長

2018/10/30
写真はイメージ=123RF
「個人投資家は配当を含まない指数に注目しがちだが、機関投資家は配当込みの指数で判断する」
 10月に入ってから世界的に株式相場の変動率が高くなっています。米中貿易戦争への懸念から中国の上海株は安値を更新し、米国株も乱高下を繰り返しています。米中間選挙が控えているほか、サウジアラビアを巡る地政学リスクもあり、相場は上昇しにくい環境といえるでしょう。
 一般的に株式相場は数十年単位の長期では上昇する傾向があるとされていますが、我が国の場合は少し違うようです。
 日本株は1989年にピークアウトしてからは高値を更新することなく推移しています。今後の相場を占う上では、このような状況がいつまで続くのかが最大の焦点といえます。
■東株は四半世紀にわたって不調だった
 しかしながら、歴史を振り返ると実は過去にも同様の動きが確認できます。明治期以降から現代までの期間で見ると、一貫した株価指数が存在しません。そこで明治から第2次世界大戦までの時期を東京証券取引所のルーツである東京株式取引所の株価で計測してみます。
 東京株式取引所は1878年(明治11年)の開所以来、1943年(昭和18年)まで上場企業としてその株式が同取引所で取引されていました。通称は東株といい、株式相場が活況となり、売買高が増加すると取引所の利益が膨らむため、東株も大きく上昇しました。

 景気見通しが良好になると、投機マネーが東株に流れ込み、他の銘柄以上に上昇する傾向が強まりました。それだけに、相場の指標として重宝されてきたわけです。
 東株は23年の関東大震災時を含め、取引が成立しない時期がありますが、1878年9月を1とすれば、日清戦争終了後の96年6月に最高値(6.03)を記録しました。その後は、日露戦争終了後の1907年1月に4.49、第1次世界大戦終了後の20年1月に3.51というピークを付け、それ以降、低下基調で推移しています。日本証券取引所に統合され、東株が上場廃止になる43年4月には0.66まで低下したのです。

 つまり、東株は明治から大正にかけて好調だったものの、第1次世界大戦後にピークを打った後は、関東大震災、金融恐慌、世界大恐慌の影響もあり、四半世紀にわたり不調でした。
■現代も相場は30年近く高値を上回らず
 現代も日本株は日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)ともに89年12月の高値を上回ることなく、30年近く経過しています。80年代までのバブル時代は今や夢物語ですが、日本株が20年から30年という長期間において不調なことは珍しい現象とはいえないわけです。
 ここで面白い事実を紹介しましょう。修正株価で見ると、風景が一変するのです。戦前の市場では既存株主への割り当てによる新株発行増資が行われていました。東株も創業以来、9回にわたって増資をしているため、新株発行に伴う権利落ちを調整して、修正株価を算出しなければなりません。
 この修正株価は1878年9月を1として1920年1月に254まで上昇しました。43年4月には74まで低下したものの、単なる株価とは桁違いの上昇です。修正株価では64年超の期間における年率換算収益率(幾何平均)は6.9%であり、かなりの投資成果であったわけです。
■配当込みの指数は最高値に一時4%まで接近
 実際の投資成果には、配当も勘案する必要があります。配当分を再投資したと仮定し、修正株価に加えると32年12月には8990まで上昇し、43年4月に5357になっているのです。この間の年率換算の収益率は14%を上回っており、注目に値します。
 実は現代においても配当込みの株価指数で見ると、アベノミクス以降は89年12月の最高値にさほど遠くない位置に近づいてきていたのです。

 例えば、配当込みTOPIXの最高値は89年12月の2898.33ですが、2018年10月26日時点では2369.64で、その開きは18%となっています。18年1月には2781.89と、あと4%というところまで接近しました。一方、通常のTOPIXの1989年12月の最高値は2884.80で、18年10月26日時点の1596.01との開きは45%に達しています。
■指数によって相場の景色はがらりと変わる

 個人投資家は配当を含まない指数に注目しがちですが、年金などを運用する機関投資家は配当込みの指数で判断します。投資家の受け取るリターンは値上がり益と配当の合計だからです。一部の企業は統治強化の一環で株主配分を強化しており、配当を重視するようになっています。日経平均株価と配当込みの指数である日経平均トータルリターン・インデックスの過去10年の動きを見ても、配当込みの指数の優位性は明らかです。
 足元では水準を切り下げた相場が再び上昇基調に入れば、バブル期に付けた高値を約30年ぶりに更新するかもしれません。見方を変えると、日本株は歴史的節目を超えるか否かの正念場を迎えているわけです。
 それにしても、指数によって相場の景色ががらりと変わるのは興味深いことです。数十年にわたる低迷を嘆くこともできれば、新時代の到来を前向きに評価することもできるのです。これが金融の歴史を探る面白さでもあります。
プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
平山賢一
 東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長。1966年生まれ。横浜市立大学商学部卒業、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。89年大和証券投資信託委託入社、97年東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)入社、2001年に東京海上アセットマネジメント投信(現在の会社)に転籍。29年にわたり内外株式や債券を運用する。
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2. 2018年10月31日 23:15:47 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1518] 報告

ゼロ金利から大きく離れず、ECBに北大西洋から寒風−PIMCO
Piotr Skolimowski、Carolynn Look
2018年10月31日 15:29 JST
欧州の政策金利がゼロを大きく上回るとは思わない−ボソムワース氏
まずは中銀預金金利の0.15ポイント引き上げからと予想
欧州中央銀行(ECB)は米経済が減速し始めるのと同時に利上げをすることになるので、あまり大きな金利引き上げはできない。米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のマネジングディレクター、アンドルー・ボソムワース氏はこう指摘する。

  同氏はフランクフルトでの今週のインタビューで、「欧州の政策金利がゼロを大きく上回るとは思わない」と述べた。米国の減速が「貿易という経路を通じて欧州に波及してくる前に欧州が成長を続けECBが政策正常化を進めていける期間は非常に短いだろう」と説明した。

  投資家はECBが来年後半に利上げを始めると予想している。ボソムワース氏はECBが中銀預金金利を現在のマイナス0.4%からマイナス0.25%に引き上げてから、次に3つの政策金利を同時に引き上げ、主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利を現行のゼロから0.25ポイント引き上げると見込んでいる。

  「そこから先は恐らく、北大西洋から寒風が欧州に向けて吹き始めるだろう」と語った。

Rate Path
Economists see ECB raising borrowing costs gradually through 2020


Source: Bloomberg survey conducted Oct. 12-17

原題:ECB Won’t Get Far Above Zero When Rate Hikes Start, Pimco Says(抜粋)



東京外為市場ニュース2018年10月31日 / 21:36

イタリア中銀総裁、国債利回り上昇の悪影響を警告

[ローマ 31日 ロイター] - イタリア中央銀行のビスコ総裁は31日、借り入れコストが高止まりすれば家計や企業が苦しくなるとして政府に財政の安定確保を求めた。

ビスコ総裁は講演で、ここ数カ月上昇している政府債利回りが下がらなければ、高水準の公的債務に影響が及び来年、50億ユーロ程度の負担が生じると予想した。

総裁は「イタリアの公的債務は維持可能だが、それ維持する明確な決意が必要」とし「イタリアの欧州連合(EU)および単一通貨への革新的な参加を巡る不確実性は払拭しなければならない」と述べた。


外国為替2018年10月31日 / 22:52

ECB理事会メンバー3人、刺激策縮小方針確認 成長率軟調でも

[ヘルシンキ/タリン/ウィーン 31日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバー3人が31日、ユーロ圏経済が予想を超えて減速するなかでもECBが金融刺激策を縮小していく方針であることを改めて確認した。

こうした見解を示したのはノボトニー・オーストリア中銀総裁、ハンソン・エストニア中銀総裁、レーン・フィンランド中銀総裁の3人。

欧州連合(EU)統計局が前日に発表した第3・四半期のユーロ圏域内総生産(GDP)速報値は、前期比0.2%増と4年超ぶりの小幅な伸びだった。前年比は1.7%増。いずれも第2・四半期から伸びが鈍化した。ただユーロ圏のインフレ率は10月は2.2%と、食品・エネルギー価格の上昇でECBの目標を5カ月連続で上回った。

こうしたなか3総裁ともに、インフレはなお上向いていることから今回のGDP統計の結果でECBの金融引き締めが軌道から外れることはないとの見方を表明。

ハンソン総裁はタリンで行った記者会見で「政策の見通しを根本的に変えるには見通しが非常に大きく変化する必要がある」とし、「差異がわずかで、おおむね軌道に乗っている場合、どちらの方向にも調整は必要ないと考えている」と述べた。 ハンソン氏と同様にタカ派的と見なされているノボトニー総裁は、景気減速の一部は特に独自動車業界に影響を及ぼすような一時要因によるものだったため、政策の路線を変更する必要はないとの立場を示した。

レーン銀総裁はヘルシンキで行った記者会見で「例外的な措置が約10年にわたり実施されてきたが、より通常の金利環境、およびより正常なユーロシステムのバランスシートに回帰する見通しは緩やかながらも強まっている」と指摘。ただコアインフレは1%を若干上回る水準にとどまっており、物価圧力がなお弱いことが示されているとの見方も示した。


ビジネス2018年10月31日 / 20:01 / 3時間前更新
ユーロ圏CPI、10月は前年比2.2%上昇 コア指数は予想上回る
1 分で読む

[ブリュッセル 31日 ロイター] - 欧州連合(EU)統計局が発表した10月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比2.2%上昇し、市場予想と一致した。9月は2.1%上昇、8月は2.0%上昇だった。

一方、エネルギーと未加工食品を除くコアインフレ率は1.3%と、予想の1.2%を上回った。9月は1.1%だった。

年末で債券買い入れを終了する欧州中央銀行(ECB)の決定を裏付ける内容となった。

エネルギーは10.6%上昇、未加工食品は2.1%上昇だった。

エネルギーと未加工食品に加え、アルコールとたばこも除いたコアインフレ率も1.1%と、9月の0.9%から加速。予想の1.0%も上回った。

EU統計局が同時に発表した9月のユーロ圏の失業率は8.1%で横ばい。失業者は1315万3000人で、前月の1315万1000人をやや上回った。



コラム2018年10月31日 / 21:00

コラム:米中摩擦の長期化、両国への輸出依存高い日本に打撃 生産に前兆
田巻一彦

[東京 31日 ロイター] - 米中間の貿易摩擦が長期化した場合、両国への輸出に依存する割合が高い日本経済へのダメージがジワジワと広がり出す懸念がある。9月鉱工業生産にその前兆が早くも透けてみえるほか、日銀の黒田東彦総裁も同日の会見で、米中間の摩擦がエスカレートした場合のリスクに言及した。11月末に開催されるG20(20カ国・地域)首脳会談に合わせて予定されている米中首脳会談で大きな成果がない場合、波紋が広がりそうだ。

<生産・出荷・在庫にみえる中国向けの影響>

経産省が31日に発表した鉱工業生産速報では、9月生産が前月比マイナス1.1%と大きく減少した。自然災害の影響が大きいとみられているが、それだけが原因なのか即断できない。

たとえば、数値制御ロボットなどを含む汎用・生産用・業務用機械工業が、前月比マイナス1.4%と落ち込んでいる。中国向けの設備投資需要が落ち込んだ結果という可能性も捨て切れない。

同様に電子部品・デバイス工業が同マイナス0.6%、電気機械工業が同マイナス0.6%となっており、中国関連需要の弱さとも推計できる。

出荷をみると、汎用・生産用・業務用機械工業が前月比マイナス3.0%、電子部品・デバイス工業が同マイナス4.5%、電気機械工業が同マイナス2.4%と落ち込みが目立つ。

さらに在庫は、汎用・生産用・業務用機械工業が前月比プラス5.2%、電子部品・デバイス工業が同プラス9.6%、電気機械工業が同プラス1.9%と急速に積み上がっている。

これらを全てを自然災害で説明するのは、かなり無理があるのではないか。11月末に公表される10月分のデータで、今回の推理が正しいかどうか、ある程度はっきりすると考える。

<米中向け輸出割合、38%の日本>

10月15日のコラム『「覇権」争う米中、貿易戦争は長期化か 世界経済の曇天続く』で指摘したように、両国の主張が折り合って早期に緊張が収束するのは、難しいと予想する。

市場には、米中は最悪の事態を回避するという「確信」が根強く存在するが、もし、11月下旬に開催が見込まれる米中首脳会談で、目立った「成果」がない場合、市場の失望感はかなり大きくなるのではないか。

ブルームバーグは、米中首脳会談で成果が出なかったと米国が判断した場合、12月初旬までに中国製品に対して新たな追加関税発動を発表する用意を整えていると伝えた。

特に対米、対中の輸出比率がともに19%程度、合わせて38%となる日本にとって、関税引き上げ合戦の結果、貿易量が減少することは、かなりのマイナスになりかねない。

<警戒される心理面へのダメージ>

また、現実に貿易量が減少し、生産・出荷に打撃となる前に、株価下落などを通じ、企業や個人の心理を下押しし、そのルートで景気を冷やすリスクが最も警戒すべき事態だろう。

日銀の黒田総裁は31日の会見で、保護主義的な動きが顕在化し、米中貿易摩擦がエスカレートした場合は「世界経済に与える下方リスクがある」と指摘した。

日本経済はアベノミクスが発動された6年弱で、デフレとはいえない段階まで景気が回復してきたが、その間の世界経済が3%台の順調な成長を維持してきたという「追い風」にも助けられてきた。

拡大する外需を取り込みつつ、内需を立て直してきた構図があったが、米中摩擦が越年し、19年になっても収束しないとなれば、世界経済の成長テンポも減速が避けられないだろう。

不幸にも、そのコースを歩んだ場合、日本経済にとって久々の「向かい風」が吹くことになる。

足元で佳境を迎えつつある3月期企業の決算発表で、多くの企業幹部が「米中摩擦の影響は今のところない」と発言している。

しかし、それも米中摩擦が長期化すれば、どうなるか分からない。11月末の米中首脳会談は、とても「対岸の火事」とは言っていられないだろう。

米雇用コスト指数:第3四半期は予想上回る上昇−賃金増が加速
Katia Dmitrieva
2018年10月31日 21:36 JST
更新日時 2018年10月31日 22:41 JST
7−9月(第3四半期)の米雇用コスト指数(ECI、季節調整後)は、市場予想を上回る伸びとなった。民間部門の賃金・給与の増加ペースが加速した。

  米労働省の31日発表によると、第3四半期の雇用コスト指数は前期比0.8%上昇。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は0.7%上昇だった。前年同期比では2.8%上昇と、前期と同率の伸びで、2008年以来最大。


  民間部門の賃金・給与は前年同期比3.1%上昇。教育・医療サービスや運輸・倉庫、情報サービスといった分野で特に大きく伸びた。

  一方で民間部門の諸手当は前期比0.4%上昇と、前期(0.9%上昇)から伸びが鈍化。前年同期比でも2.6%上昇と、前期(2.9%上昇)を下回った。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:U.S. Employment Costs Rise More Than Forecast as Pay Jumps (1)(抜粋)

(統計の内容を追加し、更新します.)



東京外為市場ニュース2018年10月31日 / 21:31
BRIEF-第3四半期の米雇用コスト指数は+0.8%(予想:+0.7%)=労働省

[31日 ロイター] -

* 第3四半期の米諸手当は+0.4%=労働省

* 第3四半期の米雇用コスト指数は+0.8%(予想:+0.7%)=労働省

* 第3四半期の米賃金・給与は+0.9%=労働省


東京外為市場ニュース2018年10月31日 / 21:16
再送-BRIEF-10月米ADP民間雇用者数は227,000人増(予想:189,000人増)

(見出しの字句を修正して再送します。)

[31日 ロイター] -

* 10月米ADP民間雇用者数は227,000人増(予想:189,000人増)



ビジネス2018年10月31日 / 21:01
中国、景気支援措置を強化へ=中央政治局常務委

[北京 31日 ロイター] - 中国共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会は31日、強まる圧力を受けている経済を支援するため、より時宜を得た措置を講じる方針を示した。新華社が伝えた。

ここ数カ月、景気の急減速を阻止する目的で、銀行の預金準備率の引き下げや減税、インフラ投資拡大などの措置が発表されている。

新華社によると、中央政治局常務委員会の会議では「経済の下押し圧力が強まった。一部企業では経営が一段と厳しくなり、長期にわたり蓄積されたリスクが表面化している」と指摘。「われわれはこれを重大な問題とし、予想可能性を高め時宜を得た措置を講じなければならない」とした。

同委員会は、中国政府が雇用、金融、対外貿易・投資を安定させるとし、積極的な財政政策と穏健な金融政策を再確認。海外からの投資を活用し、外国企業の利益を保護する方針を示した。

また、政府は小規模な民間企業が抱える問題を解決し、資本市場の長期的で健全な発展を促進していくとした。

この日、国家統計局が発表した10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、国内外の需要鈍化で約2年ぶりの低水準となった。[nL3N1XB1M7]

第3・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.5%増と世界金融危機以降で最も低い伸びを記録。アナリストは企業を取り巻く状況はさらに悪化するとみている。

3. 2018年11月01日 19:01:33 : UGd5uG6y2Q : _7yrpMxYnqY[707] 報告
調整に 努めて隠す 肌の荒れ

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