WSJ社説】トランプ氏のFRB批判は逆効果 パウエル議長はかえって低金利を維持しづらくなる ホワイトハウスで演説するパウエル氏を見つめるトランプ大統領(2017年11月2日) ホワイトハウスで演説するパウエル氏を見つめるトランプ大統領(2017年11月2日) PHOTO: CARLOS BARRIA/REUTERS 2018 年 10 月 26 日 09:44 JST ドナルド・トランプ氏は不動産マンだ。当然ながら低金利を好む。しかし、同氏は大統領でもある。最近は低金利を維持するよう連邦準備制度理事会(FRB)を公然と脅しているが、これは逆効果になる。FRBを取り巻く政治の基本だ。 「われわれが何か素晴らしいことをするたびに彼は金利を引き上げる」。トランプ氏は23日にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が行ったインタビューでジェローム・パウエルFRB議長についてこう述べた。「彼は低金利派のはずだったが、結局そうではなかった」 *** パウエル氏について誰がそんなことを言うのか。ほかでもないスティーブン・ムニューシン財務長官だ。当時WSJが報じたように、ムニューシン氏は2017年にFRB議長の選定を仕切り、トランプ氏にパウエル氏を選ぶよう助言した。他の候補者よりも影響されやすい可能性があるというのが主な理由だった。トランプ氏は他のアドバイスを受け入れることもできたはずだ。 現実には、誰がFRB議長であれ、ホワイトハウスから金利について指図を受けていると市場にみなされるわけにはいかない。実際に指図を受け入れた場合、失敗に終わるのが常だ。ニクソン政権下のアーサー・バーンズ議長しかり、カーター政権下のウィリアム・ミラー議長しかり。アラン・グリーンスパン、ベン・バーナンキ両議長も時の政権とかなりなれ合い状態にあったが、その影響は主に舞台裏でのものだった。 パウエル氏は気の毒にも、金融政策史上最大の実験の幕引きをかじ取りするという過酷な任務を帯びている。バーナンキ氏と後任のジェネット・イエレン議長は、短期金利をほぼゼロに抑え、長期金利を人為的に低く保つために先例のない国債買い入れ措置を行うという道のりを満喫した。こうした政策は投資家を株などのリスク資産に向かわせたが、オバマ政権下でゆっくり成長していた実体経済には大した効果をもたらさなかった。 WSJ NEWSLETTER What's News A digest of the day's most important news to watch, delivered to your inbox. Enter your email SIGN UP トランプ氏の減税と規制緩和を組み合わせた政策は経済成長とアニマルスピリッツをよみがえらせた。パウエル氏は今、金融政策の正常化という、より危険な道のりを進まなければならず、トランプ氏の公の批判は何の助けにもならない。FRBは12月に今年4回目となる利上げを行うことを示唆している。たとえ経済指標が利上げを思いとどまらせるような内容であったとしても、パウエル氏は政治的圧力に屈して引き下がったと見られたくはないだろう。
FRBを批判するとすれば、まず巨額の保有国債の圧縮をもっと速いペースで実施すべきだった点だ。そうすれば長期国債市場に対するFRBの支配力が緩み、早めに調整が行われ、FRBが利上げに踏み切る前にリスク資産からの移行が促されたはずだ。 FRBは今、両方を同時に実施しており、資産価格に対するリスクとFRBにとっての政治的リスクの両方を高めている。24日の米株急落がいい例で、今や正式な調整局面(直近の高値から少なくとも10%下落)に近づいている。 最初にFRBの保有国債をもっと迅速に圧縮するという政策は、ケビン・ウォーシュ元FRB理事が提案していた。トランプ氏が同氏をパウエル氏らと共にFRB議長の最終候補に選ぶ前のことだ。しかし、ムニューシン氏はパウエル氏の方を好み、大統領は「低金利派」を選ぶことに賛成した。 FRBを取り巻く政治はさておき、本質的な疑問は、トランプ氏が言う通りFRBの利上げは急速過ぎるのかどうかだ。現時点ではそうではないとわれわれは考えている。短期金利は依然インフレ率と同じか、それを下回っている。4%近い成長をしている経済環境にあっては、金利を歴史的低水準から引き上げるべきだ。 しかし、成長減速を示す兆しはある。特に住宅市場はそうだ。9月の新築一戸建て住宅販売件数は前月比5.5%減、前年同期比13.2%減となった。この一因はハリケーンにあるが、住宅ローン金利上昇で住宅購入が難しくなっていることも原因だ。企業景況感や消費者信頼感は依然、高水準にあるが、株やその他資産価格の下落が続く場合は要注意だ。 より大きな経済リスクは米国外の成長減速だ。トランプ氏はこの点を気にすべきだが、それはしないと公言している。米国の景気加速と金利上昇を受け、他市場から資本が流出している。トランプ氏の関税措置は貿易フローに悪影響を及ぼし、企業は一部投資を先送りしている。ピーター・ナバロ大統領補佐官(通商担当)がトランプ氏に何と言おうとも、国境税には決して「ただ飯」はない。 ホワイトハウスの経済顧問を務めるラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長は、トランプ氏が単にFRBに関する自らの意見を述べているにすぎず、パウエル氏に指図しているわけではないと説明している。トランプ氏が景気減速に関する非難をホワイトハウスからそらそうとしているのは間違いない。トランプ氏は他のほとんどの政治家よりも引き立て役を必要としている。だからこそFRBはトランプ氏を無視して正しい政策運営に集中すべきである。それが12月の利上げを意味してもしなくてもだ。 関連記事 トランプ氏、FRBは「米経済に最大のリスク」 トランプ氏の相次ぐFRB批判、政策決定を複雑に トランプ氏のFRB批判に勇気づけられる訳 トランプ氏の利上げ批判「賢明でない」=イエレン前FRB議長 FRBは「退屈な孤島 」、 党派争いの波かぶらず 米中貿易交渉、手詰まり状態の裏側 11月末の米中首脳会談が実りのないものになる可能性 ドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席(2017年11月) PHOTO: ANDREW HARNIK/ASSOCIATED PRESS By Bob Davis and Lingling Wei 2018 年 10 月 26 日 09:40 JST 米国は中国との貿易交渉に関し、強制的な技術移転などの懸念に中国政府が具体的な提案を示さない限り、再開に応じない姿勢を見せている。両国の当局者らが明らかにした。 こうした手詰まり状態は、11月末の主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて予定されているドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談を実りのないものにする恐れがある。両国はこれまで、ブエノスアイレスで開催されるG20での会談が貿易摩擦の緩和につながることを期待していた。 米産業界は首脳会談で協議が進展し、トランプ政権が中国からの輸入品2000億ドル相当への関税(現在は10%)を来年1月1日に25%へ引き上げるのを見送ると期待していた。関税が引き上げられれば米国の輸入業者や消費者にとって打撃となる。 米中交渉は9月半ばから中断されたままになっている。この時は、米国が中国からの輸入品に対する追加関税を発表したことを受け、中国側の交渉団が訪米をキャンセルした。それ以降、中国政府はデービッド・マルパス米財務次官に交渉再開を働きかけるなど、足掛かりを見つけようとしてきた。しかし、米当局者らによると、マルパス氏はホワイトハウス通商チームの意向を受け、中国側が正式な提案を示すまで交渉は再開できないと突き返した。 米政府高官は「もし中国が(G20での会合を)意味あるものにしたいと望むなら、下準備が必要だ」と指摘。「彼らが何の情報も提供しないなら、会合が実りあるものになるとは思えない」と述べた。 中国側の懸念 中国側から説明を受けた関係者によると、中国政府にとっては、正式な提案を行うことは多くのリスクをはらんでいる。まず第1に、交渉の手の内を明かしてしまうことになる。そして中国が懸念する第2のリスクは、トランプ氏が中国側のあらゆる譲歩を確定させようとして、どんな内容でもツイートなど通じて明らかにしてしまうことだ。 中国側の懸念には歴史的背景がある。中国の世界貿易機関(WTO)加盟交渉が進んでいた1999年、当時のクリントン大統領は朱鎔基首相の提案を拒否した。この提案には、大幅な譲歩と中国経済の再編が盛り込まれていた。クリントン政権は中国側が後戻りするのを防ごうと、この提案内容を公表した。しかし、代わりに起きたことは、中国国内の強硬派による朱鎔基氏のつるし上げだった。そして、最初の提案と似た内容の合意を中国に受け入れさせることができたのは、それから何カ月も後のことだった。 崔天凱駐米大使は先に行われたWSJとのインタビューで、中国は具体的提案を提示する前にさらに協議することを望んでいると説明。「まず席に着くことが必要だ。その後、双方がそれぞれ提案を示すべきだろう」と述べた。 同大使によれば、中国はトランプ政権との交渉に慎重になっている。なぜなら、以前の協議で米側の交渉担当者が中国の提案について受け入れ可能と示唆したものの、トランプ大統領が拒否したことが複数回あるからだ。大使は「暫定合意に達した翌日にそれを拒否するようなことは認められない」と語った。 WSJ NEWSLETTER What's News A digest of the day's most important news to watch, delivered to your inbox. I would also like to receive updates and special offers from Dow Jones and affiliates. I can unsubscribe at any time.I agree to the Privacy Policy and Cookie Policy. SIGN UP 米大手企業で構成される貿易団体、米中ビジネス評議会のクレイグ・アレン会長は中国高官らと最近会談し、書面での提案を示すよう要請した。同会長によると、中国側は提案の準備がまだできておらず、提案した場合の「保証」を探っている段階だという。中国側が提案した場合、米国が関税を引き下げるという保証だが、米当局者はその意思があるかどうか示していない。 米国側の懸念 一方、米国は中国側が交渉を長引かせ、米中首脳会談の席上でトランプ大統領からの誓約を引き出そうとすることを懸念している。米政府高官は、そうした場面での合意は「一見良さそうだが、意味のない項目にコミットするようなものだ」と指摘。その上で、トランプ氏がそうしたわなに陥ることはないと付け加えた。 米中両国は今春以降、交渉合意に向けて協議してきた。北京で5月に行われた交渉では、米国は中国側に8項目からなる要求リストを手渡した。この要求には米国の対中貿易赤字3億7600万ドルの半減、中国のハイテク産業に対する補助金の削減などが盛り込まれていた。 同協議について説明を受けた関係者によると、中国側は米国の要求8項目を142項目に分割し、これらを3つの分野に分類した。こうして細分化された要求のうち30〜40%は直ちに実施が可能、別の30〜40%は時間をかけて交渉可能、残りの20%は安全保障あるいはそれ以外の重要な問題に関係するとして交渉の対象外とする内容だったという。米中当局者によれば、この提案は「80/20プラン」あるいは「60/20/20プラン」と呼ばれ、8月中旬の交渉の際に米側に提示された。 しかし、中国の交渉担当者は、142項目のうち122項目が交渉可能と述べるのみで、各項目が3つの分類のどこに入るのかを明らかにせず、各項目がどのように扱われるかについても語らなかった。米当局者は、この提案が本質的に「概念的」であり十分ではないと主張する。米国の交渉当局者は、米国の懸念に対応する詳細で具体的な提案が欲しいのだ。 「リストを示すべきだ」。ホワイトハウスの高官はこう述べ、そうでなければG20前に交渉は行われないだろうと話した。 一方、中国側は順番が逆だとし、提案は交渉後になされるべきだと反論している。崔大使は「われわれは米国側がこれら全ての構造的問題の細部まで真剣に捉えているか否か確信が持てない。会合がないからだ」と語った。 埋まらない溝 こうしたこと全てが、今の行き詰まりにつながっている。いかなる交渉も多くの障害に直面する公算が大きい。例えば、米国は中国が約束を実行するまで一部の関税措置を残しておくような取引を検討している。中国の対応が不十分な場合は、関税措置を強化する可能性もある。 ホワイトハウス高官は「われわれは信頼するが検証もする方法を探す必要がある」とし、「交渉終了時に全ての影響力を放棄しないよう注意する必要もある」と話した。 11月5日から国際輸入博覧会が開かれる上海の会場 PHOTO: ZUMAPRESS.COM 中国政府は通商政策に対する不満を真剣に受け止めていることを示そうともしており、来月には上海で輸入促進のための大型見本市を開催する計画だ。同見本市では20を超える米大手企業がすでにスペースを確保している。ただ、北京の米大使館は、米政府による大きなプロモーション活動を行う計画はないとしている。 米当局者らは非公式見解とした上で、同見本市が中国の強制的な慣行を裏付けていると指摘している。彼らは、中国当局者が米大手企業の幹部に対し、このイベントに参加しなければ後で苦労する可能性があると脅したとしている。ワシントンの中国大使館の報道官は、その主張を「根拠のない非難」だと一蹴した。 関連記事 • 中国と新冷戦時代へ、 動き出した米国 • 輸出大国の中国、「輸入国」をPR • 【オピニオン】米副大統領の「第2次冷戦」宣言 • 【バロンズ】貿易戦争、ノーベル経済学賞の教授に聞く
中国の景気刺激策、インフラから減税へシフトか 対GDP比で米国の減税規模を上回る可能性も 中国政府は2019年にGDPの1%以上に相当する減税やその他の措置を立法化する可能性がある By Nathaniel Taplin 2018 年 10 月 26 日 13:07 JST ――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」 *** ドナルド・トランプ大統領の機先を制する術に、諸外国の首脳たちは慣れてきた。いまや中国もトランプ氏のやり方に一枚加わろうとしている。 中国人民銀行(中央銀行)の元主席エコノミストである馬駿氏によると、中国政府は2019年に国内総生産(GDP)の1%以上に相当する減税やその他の措置を立法化する可能性がある。それが本当であれば、対GDP比で昨年の米国の減税措置を上回ることになる。 中国政府が金融政策の緩和と地方自治体の支出拡大という従来通りの景気刺激策を今回も実施するのは難しそうである。というのも、銀行は不良債権で圧迫されており、資金調達機関である融資平台(LGFV)は最大6兆ドルの債務(分析会社ロディアム・グループの見積もり)にあえいでいるからだ。 そうなると、減税措置しかない。それが中国の新たな景気刺激策の主要部分を占めることになれば、世界の市場と中国財政の安定に大きな影響を及ぼすだろう。 中国の消費者は今や強大な力を持っているという単純な理由からも中国政府が税金に焦点を当てるのは理にかなっている。消費が中国の成長に占める割合は2018年1-9月期で80%近くとなり、2010年同期間の45%から急拡大している。対する米国は70%前後だ。8万元を超える月間所得に最高税率45%が課されていることを思うと、政策立案者には税率を軽減する余地がまだありそうだ。 もちろん、馬駿氏が誇張している可能性もある。米金融大手バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、発表された改正税法(個人所得税率区分の大幅な変更を含む)は来年、GDPの0.4%前後に相当する約3000億元の景気刺激効果を生むという。政策立案者が税率をさらに軽減する余地は、地方自治体を救済しなければならない可能性や、国の年金財源の穴埋めといった迫りくる負担によって制限されてしまうかもしれない。さらに言うと、減税措置には政府支出拡大ほどの短期的な成長押し上げ効果がない場合が多い。というのも納税者には減税分の一部を貯蓄に回す傾向があるからだ。 それでも、中国政府が景気を浮揚させる上で金融緩和政策への依存度を下げれば、人民元と中国の銀行のバランスシートへの圧力も弱まるはずだ。それは景気刺激策が実施された過去の時期と比べると、コモディティー(商品)は大規模なインフラ投資の大きな恩恵を受けないということにもなる。反対に、財政刺激策が拡大すれば、財政赤字を埋め合わせるための国債発行が増えることになる。それもあって中国債の利回りは今年に入って大きく低下していない。 この1年間は米国の減税措置が市場を動かしてきたが、向こう1年間は中国が大きな要因となるかもしれない。 関連記事 中国の巨額投資、たどり着いたのは「先のない道」 中国経済減速、「バズーカ期待」は時期尚早 中国企業、逆風下の好業績の謎 しわ寄せはどこに 消えた中国実業家とNY高級不動産の関係 中国で捜査対象になった葉簡明氏 葉簡明氏に関連した企業はバークレイズの元CEOボブ・ダイヤモンド氏のペントハウスを5055万ドルで購入 葉簡明氏に関連した企業はバークレイズの元CEOボブ・ダイヤモンド氏のペントハウスを5055万ドルで購入 PHOTO: DOROTHY HONG FOR THE WALL STREET JOURNAL By Katherine Clarke 2018 年 10 月 26 日 15:08 JST 中国石油会社の会長で人民解放軍とつながりのある葉簡明氏に関連した複数の会社は、ニューヨーク有数の高級不動産に約8300万ドル(現行レートで約93億円)を投じ、さらに8000万ドルの購入を予定していた。葉氏が今年早くに姿を消す前のことだ。 複数の関係者によると、葉氏関連のある会社が2017年5月、バークレイズの最高経営責任者(CEO)を務めたボブ・ダイヤモンド氏のペントハウスを5055万ドルで購入した。セントラルパークウエスト15にある約490平方メートル、4寝室の物件だった。ダイヤモンド氏は広報担当者を通じてコメントを控えるとした。 関係者によると、その1カ月後には、葉氏に関連したある会社が、パークアベニュー432のマンションの86階にある約370平方メートルの物件に約3300万ドルを投じた。その物件は、ある有限会社がデベロッパーのマックロウ・プロパティーズおよびCIMグループから購入。不動産サイトのストリートイージーによれば、その後、月額8万ドルの賃貸物件として掲載されていた。 両物件の売却に関連した公式記録には、資金調達の記録はない。 その後17年12月には、葉氏関連の会社がビンセント・ビオラ氏の8000万ドルのタウンハウスを購入する契約を結んだ。ビオラ氏はナショナル・ホッケーリーグ(NHL)のフロリダ・パンサーズを保有する富豪で、一時はドナルド・トランプ大統領から陸軍長官に指名された人物だ。ビオラ氏はコメント要請に返答しなかった。 この物件は東69丁目12に位置し、ホームシアターやパニックルームもある約1800平方メートルの豪邸だ。取引が実現していれば、ニューヨーク市でのタウンハウス売却額の記録を塗り替えていたはずだった。 関係者らによれば、この契約は18年の早い時期に白紙になった。葉氏が行方不明になった頃だ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は3月に、葉氏が中国で当局の捜査対象になっていると報じた。葉氏のコメントは得られていない。ストリートイージーによれば、この物件は8800万ドルで再び売りに出された。 2つの取引は、アジアの資本家ゴンウェン・ドン氏のロングアイランドの家を所在地とする複数の有限会社の名義で執行された。事業登録の書類に葉氏の名前はないが、取引について知る複数の関係者によれば会社を支配しているのは葉氏だ。ドン氏のコメントは得られていない。 葉氏は上海の複合企業、国華信能源(CEFCチャイナ・エナジー)の会長だ。同社は近年、積極的に海外拡大を進めていた。ロシアのエネルギー大手ロスネフチの株式90億ドル相当を取得する契約、10億ドルを超えるチェコへの投資、シンガポールやルーマニアやアブダビでのエネルギー取引などだ。上海で最高クラスの不動産も購入した。その過程で、葉氏は多くの国の有力政治家や企業幹部と親しくなった。 葉氏の近況は分からず、そのビジネス帝国は危うい状況にある。CEFCは契約を解消したり資産を売却したりしている。同社はコメント要請に返答しなかった。 17年11月、葉氏の腹心で元香港当局者のパトリック・ホー氏が米司法省に起訴された。CEFCが資金拠出する慈善団体を通じたアフリカの指導者2人への贈賄を指揮したとされる。葉氏の名前は挙げられておらず、裁判所の書類によるとホー氏は公判で起訴内容を否定する意向を示している。ホー氏の弁護士はコメント要請に返答しなかった。 関連記事 習氏の中国、成功企業には危険な時代に 中国政府を糾弾、「亡命」富豪の強気の戦い ビジネス2014年4月27日 / 12:42 / 4年前 焦点:中国富裕層がNY不動産市場を席巻、海外勢最大の買い手に 3 分で読む [ニューヨーク/シドニー 25日 ロイター] - 米ニューヨーク・マンハッタンでは、不動産の海外投資家として中国人が最大のプレーヤーに浮上。一方、これまで市場を主導してきたロシアからの投資はウクライナ危機以降、米国による対ロシア制裁などで鈍化している。 中国の富裕層は、安全な投資先や欧米諸国で子どもが教育を受けるための拠点として、ニューヨークのほかにもロンドンやシドニーなど世界の主要都市で不動産市場に資金を注ぎ込んでいる。 ニューヨーク市の物件について、ロイターが不動産仲介大手5社に海外投資家ランキングを尋ねたところ、5社すべてが販売件数および販売価格で中国人をトップに挙げた。 米国では差別防止を目的とした公正住宅法により、住宅購入者の国籍や民族的背景に関する情報を収集した公式なデータはない。 不動産専門家によると、中国人投資家の関心は主に物件が割安かどうかという点にあるという。2007─2010年の米住宅バブル崩壊で米国内の主要都市の住宅価格は魅力的な水準に下落。価格は回復しつつあるものの、世界の他の都市と比べると依然として割安だ。 上海や香港、シンガポールなどの物件価格が高騰し、バブルの兆候が懸念されるなか、多くの中国人投資家はこうした市場からシフトしている。英不動産大手ナイト・フランクの「世界の高級住宅価格指数」によると、香港の高級アパートは1平方フィート当たり4100─5000ドル(約42万─52万円)。一方、マンハッタンやシドニーでは約2100─2500ドルと、その半分ほど。ロンドンも割安で、1平方フィート当たり3300─4100ドルだ。 不動産ブローカーらによると、多くの中国人が海外不動産に投資するのは、主要な教育機関の近くに物件を所有という目的もある。こうした物件購入者の中には、子どもがまだ歩けないほど小さいときから一流校の近くに住宅を購入する人もいるという。 上海を拠点とする雑誌「胡潤百富」によると、中国人富裕層の80%以上が、子どもを海外の学校で学ばせたいと考えている。 サザビーズ・インターナショナルの米国ブローカー、ディーン・ジョーンズ氏は「中国人は最も急速に拡大している投資家層だ。不動産の最大の需要家であり、ニューヨークはその中心的な存在だ」と語った。 また、ニューヨークの有名不動産会社コーコラン・グループのパメラ・リーブマン最高経営責任者(CEO)は、数字を見る限り、市場のどの区分においても中国人の投資がロシア人を上回っていると指摘した。 <ロシアの後退> マンハッタンでは、最近までロシアの実業家らが高級不動産市場を主導していた。しかし、ウクライナ情勢が悪化し、政治的なつながりを持つロシアの富裕層に対する制裁を米国が強化するといった懸念などで、ロシアからの投資は少なくなっているという。 サザビーズ・インターナショナルのブローカー、ニッキー・フィールド氏は「彼らはクリミア問題が起きて以降、いなくなってしまった」と語った。 同氏は、自身の国際事業に占める中国人の比率が2014年第1・四半期に28.5%と、前年の19%から高まったと指摘。その上で「中国人からの需要のほんの一角に触れたにすぎない」との見方を示した。 ブローカーらによると、中国人はこれまでニューヨークの100万─500万ドルの物件を、投資目的で2、3件同時に購入することが多かった。しかし、最近ではより高級な物件に手を伸ばしている。 現在、中国人に人気の物件は、セントラルパークに近い富裕層向け超高層マンション「One57」だという。 この物件は、「建築界のノーベル賞」ともいわれるプリツカー賞をフランス人として初めて受賞した建築家クリスチャン・ド・ポルザンパルク氏が設計。価格は3ベッドルームの部屋で1885万ドル、81階の全フロアを占める部屋は5500万ドル。建物には5つ星ホテルのアメニティーがそろっている。 ナイト・フランクのパートナー、リアム・ベイリー氏は「中国人の物件購入者は今後もさらに増え、市場での存在感はもっと増すだろう」と指摘している。 <ニューヨーク以外でも> ナイト・フランクが実施した販売調査によると、中国人は昨年、オーストラリアのシドニーでも高級新築住宅の購入者ランキングでトップとなった。 電話取材に応じた上海のビジネスマン、Wang Jiguang氏は、シドニーにアパート1室、メルボルンでも2軒の住宅を購入。「子どもが海外で学ぶ予定で、比較的リスクの低い海外資産を子どものために用意しているところだ」と話す。 豪外国投資審査委員会(FIRB)によると、昨年の豪不動産市場への海外投資家ランキングでは、本土の中国人がトップだった。投資額は59億ドルで、不動産市場への海外からの投資全体の11.4%を占めた。 高級不動産に特化したシドニーの不動産会社ブラック・ダイヤモンズ・プロパティー・コンシェルジェのブローカー、モニカ・チュー氏は、この1年間で同社の事業に占める中国人の割合が80%に拡大したと指摘。同氏は「高級物件に関しては国内のマーケットはほぼ存在しない」と述べる。 ロンドンも有名大学などが数多くあり、中国人にとって魅力的な投資先だ。ナイト・フランクによると、同市場で昨年、海外購入者トップに立ったのは中国人だった。100万ポンド(約1億7000万円)を超える購入物件全体に占める割合は6%と、ロシアの5.2%を上回った。 ベイリー氏は「ロシアからの投資は成熟市場で、中国からのようには伸びていない」と説明した。 (Michelle Conlin記者 Maggie Lu Yueyang記者、翻訳:佐藤久仁子、編集:橋本俊樹) https://jp.reuters.com/article/analysis-chinese-realestates-ny-idJPKBN0DD01520140427
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