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積水ハウス地面師事件「複雑な地面師グループ」の全貌が分かった さらに10名近くが逮捕予定者
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58126
2018.10.25 伊藤 博敏 ジャーナリスト
過去の地面師事件との連関
大手住宅メーカー・積水ハウスが、「70億円の土地取引において事件が発生、捜査当局に刑事告訴する」という発表を行なった17年8月2日の翌日、私は本サイトで「積水ハウスから63億円をだまし取った『地面師』の卑劣な手口」と題して、「成りすまし女」の偽造パスポートなどを公開、犯人が地面師グループであることをスクープした。
それから1年2ヵ月が経過した10月16日、警視庁は旅館女将に成りすましていた羽毛田正美容疑者(63歳)らを逮捕した。主犯格のカミンスカス(旧姓小山)操容疑者(58歳)は、逮捕直前、フィリピンに逃亡し、取り逃がしたものの、これまでに9名を逮捕、全容解明へ向けた捜査が続いている。
JR五反田駅から徒歩3分の好立地にある「海喜館」という敷地面積600坪の旅館を巡る地面師事件は、「地面師という詐欺師グループが世の中にはいて、積水ハウスのような大会社もだましてしまう」ということを、世に知らしめたことが、唯一の“功績”だった。
私は、この事件を継続取材した。積水ハウスは調査対策委員会を立ち上げ、「だまされるに至った理由」を解明、所有権移転の仮登記をめぐる民事訴訟も始まっている。
もちろん、警視庁は被害金額が大きく、ワイドショーなども取り上げる事件となったことで捜査を急ピッチで行なっていた。
そうした動きのなかで判明したのは、この事件が都心の地価高騰に連動した地面師ブームの集大成であること、忖度が働くと大企業の堅固と思われる危機管理も、容易に突破されるもろいものであることだった。
指摘したいのは、積水ハウス事件は刑事的には単独犯罪として立件されるものの、構造としては人脈が幾重にも重なり合い、過去の地面師事件との連関のなかで起きているという点だ。
その複雑な事件模様は、海喜館の積水ハウス事件を含む6つの地面師案件をチャートにし、「数十億円を騙し取る集団…これが『地面師村』相関図だ!」と題して、本サイトで記事化した。
10億円内外といわれる報酬
不動産業界には「地面師村」が存在、不動産登記簿謄本が電子化される前の「紙の時代」には、こっそりバインダーから謄本を抜き取り、和文タイプで書き換える手合いが存在した。
偽造の偽が人偏であることから「ニンベン」と呼ばれる偽造屋、「成りすまし」を連れてくる手配師、物件を探すブローカー、情報屋、交渉役、信用を与える司法書士や弁護士などで構成される。
地面師村は、何十年も前から存在、代を重ね、メンバーを入れ替え、烏合離散を繰り返してきた。
今回の事件で羽毛田容疑者を手配した秋葉紘子(74歳)は、東京・高輪の217坪を舞台にした高輪案件、東京・赤坂の土地でAPAホテルから12億6000万円をだまし取った事件で、成りすまし男を手配、世話係を務めている。
また、今回、連絡調整係として逮捕された永田浩資容疑者(54歳)もAPAホテル事件で同様の役割を果たし、逮捕されている。
「成りすまし」を用意、本人確認のパスポートや運転免許証を偽造、土地をだまし取る地面師グループが、これまでそれほど注目を集めなかったのは、数千万円から数億円の規模で行なわれる「チンケな犯罪」として、メディアが大きく扱わなかったからだが、積水ハウス事件はその規模に相応しい人脈の広がりを誇っている。
「売られない土地」として知られた「海喜館」の女将が、高齢(当時72歳)のためもあって売却の打診を始めたと伝え聞いたのは、大物地面師として知られるM(65歳)である。
現在、別の地面師事件で刑務所で服役しているMは、公判中の一昨年秋、その情報をもとに計画を立て、永田容疑者を連絡係に、秋葉容疑者に「成りすまし」となる羽毛田容疑者を手配、旧知の「ニンベン」に偽造パスポートなどを発注した。
地面師グループにとって“幸運”だったのは、病気がちで病院通いが続いていた女将が、昨年2月に入院したことだった。ここから一気に地面師グループの売り込みが始まるが、最初は複数の主謀者がいた。
「偽女将は羽毛田ひとり。でも、それを連れ回していたのは何人もいた。売却だけでなく、土地を担保提供するという『協定書』をもとに、20億、30億、40億円と借り歩いていたブローカーもいた。ただ、有名案件なんで『条件が良すぎる』と、逆に不審がれて成約には至らなかった。町内会長など近隣にパスポートなどを見せて本人確認。偽物と気付いて難を逃れた業者もいた」(事情通)
結局、今回、うまくいったのは、主謀者のカミンスカス容疑者が、積水ハウスにパイプを持つIKUTAホールディングスの生田剛容疑者(46歳)につながったからだ。
逆にいえば、積水パイプを確保したことで、カミンスカス容疑者は主犯格となって10億円内外といわれる報酬を手にした。他の地面師のなかには、「優先権は私にある」と、契約成立後に積水ハウスにねじ込む業者もいた。
さらに10名近くが逮捕予定者
生田容疑者は、アパレル、芸能分野の会社経営者で不動産は素人。積水ハウス東京マンション事業部次長のOと知り合ったのは異業種交流会だった。逆に、素人だったことが、Oが信用する原因だった。
生田がOに、「五反田の土地(海喜館)が売りに出ているけど買わないか」と、持ちかけたのは昨年3月30日だった。Oは、「ブローカーが持ち歩いている有名案件。まず、交渉相手が所有者かどうか確認すべき」と、生田にアドバイスしたほどだった。
ところが、4月3日、2000万円という少額手付で売買契約が締結され、公証人役場でパスポート、印鑑証明などで本人確認ができたという生田の報告を受けたOは、俄然、やる気を見せる。
社内の根回しをし、不動産取得の合意を取り付けるのだが、一気に進むのは、4月18日に予定していた都内マンション用地の阿部俊則社長(当時、現会長)の視察予定地に、海喜館を入れたことだった。
視察の結果、社長の反応もいいことから20日には阿部のもとに稟議書を持ち込み、決裁を得た。「社長案件」となったことで交渉はさらに加速、その日のうちに、「成りすまし」の羽毛田、カミンスカス、生田、積水ハウスのOとその部下、司法書士などが同席して初顔合わせ。24日には同じメンバーで契約書が交わされて14億円の手付金が支払われ、4月29日に仮登記手続きが完了した。
そこから更に加速、7月31日に残代金支払いだったのに、それを前倒しして6月1日に49億円を払い込んだ。女将に7億5000万円分のマンションを売却、それを相殺したので被害は55億5000円となったが、なぜ振込を急いだのか。
入院している女将名で「所有権の移転は無効」であることを伝える内容証明郵便が4通も届き、ほかにも前述の「優先権」を主張するブローカーなどが訪問や手紙で抗議。それを積水ハウス側は“雑音”と捉えた。
残代金支払いの前日の5月30日、海外出張に向かう阿部社長の車のなかで、マンション事業本部長が口頭で報告、了解を得た「社長案件」だという社内事情もあった。
6月6日、書類不備などを理由に法務局は本登記の申請を却下。積水ハウスは、史上最大の地面師事件の被害者になるべくしてなった。そのミスは、社長に着せられるとして、今年1月24日、取締役会で阿部氏を解任しようとした和田勇会長を、逆に阿部氏が多数派工作を進め、和田氏を退任に追い込むという人事抗争もあった。
ともあれ、地面師村ではそれほど大物ではないカミンスカス容疑者は、とんとん拍子で進んだ巨額資金の収奪に小躍りして喜んだに違いない。そこから先は、散財を繰り返している。前妻をフィリピンに、現在の妻をリトアニア(カミンスカスは妻の姓)に、それぞれ住居など生活基盤を与えた上で、子供とともに返している。
自身は、浅草とお台場に億ションを購入、悠々自適の暮らし。行きつけのフィリピンクラブでは、毎晩、数十万円を浪費していた。
55億5000万円は、十数口座に分けられ、それぞれの役割に応じて、地面師グループに分配された。その解明はこれからだが、現在の9名に加えて10名近くが逮捕予定者とされる。詐欺罪の量刑は重い。カミンスカス容疑者を始め、その収支決算がプラスになる容疑者は少ないだろう。
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