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米国、山口組に経済制裁発動…すでに司忍組長や高山清司弘道会会長の資産を凍結
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25196.html
2018.10.22 文=編集部 Business Journal
米財務省は10月2日、マネーロンダリング(資金洗浄)などにかかわったとして、日本の指定暴力団山口組の幹部4人と関連の不動産会社2社を経済制裁の対象にすると発表した。米国内に持つ資産が凍結され、米国の個人や企業との取引が禁じられる。
米財務省は同日、「我々はヤクザが管理する企業に狙いを定め、合法的に見える企業の実際の所有権を明らかにしている。性的搾取から武器密輸、ゆすりなどあらゆる犯罪で(利益を)得ている日本の危険な犯罪組織と幹部らに圧力を強める」と声明を出した。
「制裁の対象になったのは、森尾卯太男(Utao Morio)山口組本部長ら幹部4人と、神戸の山口組本部がある土地を所有する株式会社山輝(Yamaki KK)および、本部や同組織の多様なビジネスで使われている不動産の運営・管理を行う東洋信用実業株式会社(Toyo Shinyo Jitsugyo KK )の2社」(10月3日付AFP通信記事)
米財務省はこれまでに指定暴力団山口組や住吉会などに経済制裁を科しており、今回の追加で暴力団関連の制裁対象は21個人、9団体となった。
オバマ政権は2011年7月、国際的な組織犯罪への対策を強化する「国際的組織犯罪に対する戦略」を発表。その一環として、国境を越えた犯罪組織の撲滅を狙う大統領令を出した。
米財務省は12年2月23 日、薬物の密輸や人身売買など国際的な組織犯罪に関与しているとして、指定暴力団山口組と山口組の篠田建市(通称:司忍)組長と、山口組ナンバー2の高山清司弘道会会長を経済制裁の対象に指定し、米国内の資産凍結や商取引停止などを行った。大統領令に基づく初の措置である。
米財務省は「ヤクザである山口組は暴力団や極道の名前で知られる」と紹介。“ゴッドファーザー”である組長を筆頭にピラミッド型の組織を持ち、日本や海外で薬物密輸や人身売買のほか、「恐喝や売春、詐欺、資金洗浄に関与している」と指摘した。
続いて同年9月27日に指定暴力団住吉会と西口茂男総裁(17年9月死去)、福田晴瞭会長の2人を経済制裁の対象に指定した。
16年12月30日には、山口組から分裂した指定暴力団神戸山口組と傘下の山健組、神戸山口組トップの井上邦雄組長ら幹部3人を経済制裁の対象に指定した。
■国際的な金融ヤクザに変質した
日本のヤクザを取り締まるのに、なぜ米財務省が乗り出すのか。反社会的勢力と対峙するのはFBI(連邦捜査局)の仕事と思われがちだが、証券取引などの金融犯罪は財務省の所轄だからである。日本の暴力団が金融ヤクザとして米国の証券市場に進出してきたことで、危険組織としてターゲットにしたのだ。
元山口組系組長で金融ヤクザだった猫組長と、エコノミストの渡邉哲也氏が『山口組分裂と国際金融』(徳間書店)で、ヤクザと国際金融のつながりを解説している。
それによると、株式市場の国際化などグローバリズムの波がヤクザの世界を一変させたという。豊富な資金を持つ山口組が最初に手を出したのは、株式の仕手戦だった。仕手筋のスポンサーとなって稼いだ。
次に手がけたのはIPO(新規株式公開)だ。上場前に株式を仕入れ、高値を演出して売り抜け巨額を懐にする。香港、シンガポールなどの複数のファンドを経由して投資。真の資金の出し手はわからない。ヤクザのシノギは、カネがカネを生む証券に変わった。
さらに、エクイティファイナンスの世界に進出した。エクイティファイナンスとは、新株発行、CB(転換社債型新株予約権付社債)の発行などエクイティ(株主資本)の増加をもたらす資金調達を指す。タックスヘイブン(租税避難地)で債券を発行する手法に飛びついた。
日本で海外の有価証券を買い、海外に持って行って換金する。原油取引にまつわる先物相場や為替FXへの投機に参入。ヤクザは国際金融市場の有力プレーヤーとなった。
米ニューヨークや英ロンドンをマネーロンダリングの拠点とし、きれいなカネに変えて投資を続けてきた。いわばハゲタカファンドならぬ、ヤクザファンドだ。
こうしたマネーロンダリングはまかりならぬと、米財務省が立ち塞がった格好だ。ヤクザの国際的な資金ネットワークを解体することを目指し、金融ヤクザを標的にした。
■世界2位の資金力を誇る“金融ヤクザ”
山口組の資金力は驚異的だ。2014年、米経済誌「フォーチュン」は「最も収入が多い5つの犯罪組織」を紹介した。ダントツだったのが日本最大の暴力団、山口組の800億ドル(約8兆6800億円)だった。
これを受けて、「この数字はおかしい」といった批判がネット上に殺到した。当時の東京都の税収は5兆円強。山口組が東京都より収入を得ていることなどあり得ない、桁が間違っているのではないかといった指摘が多かった。
その後、「フォーチュン」は急いで修正。9月18日付で、山口組の収入は800億ドルから66億ドル(約7150億円)へと大幅に下方修正された。修正の理由は、「元資料からの誤訳」と説明している。
同誌は改めて上位5位を公表。山口組は2位となった。「世界でも類をみないほど高度な組織体制をもっているのが特徴」と評した。
1位はロシアンマフィア最大の犯罪組織ブラトヴァの85億ドル(約9200億円)。その収入源の多くはアフガニスタンで栽培されたヘロインの密売によるものだとした。
山口組の収入源は違法薬物(麻薬)密売、賭博、恐喝などの古典的シノギに加え、金融ヤクザとして稼ぎを加味した。
グローバル化の進展によって日本企業は国際市場のプレーヤーになったが、勝ち組となった例はほとんどない。そのなかで、山口組が世界を股にかけた金融犯罪組織のトッププレーヤーとして国際的に認知されたことになる。
(文=編集部)
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