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コラム2018年10月18日 / 13:41 / 4時間前更新
サウジ記者不明事件、大手邦銀は「漁夫の利」狙うか
Una Galani
3 分で読む
[ムンバイ 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本の大手銀行は、海外のライバルがサウジアラビア政府との取引から手を引こうとしている事態が自分たちにプラスに働くと期待しているかもしれない。
サウジ政府を批判してきた記者が行方不明になった事件を巡り、同国が殺害に関与したのではないかとの観測が高まっている。これを受け、欧米の大手銀行首脳は、来週サウジで開催される経済投資フォーラム「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ」への不参加を相次いで表明した。
しかしこれは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(8306.T)やみずほフィナンシャルグループ(8411.T)にとって、サウジで手数料収入を拡大する好機になる可能性がある。
JPモルガン(JPM.N)のジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が先鞭を付けた形で、欧米大手行首脳の大半は同フォーラムを欠席して倫理観の高さを示し、顧客や従業員、社外取締役、金融エリートの仲間内などからの反発を避ける行動を選んだ。
HSBC(HSBA.L)のジョン・フリントCEO、スタンダード・チャータード(STAN.L)のビル・ウィンターズCEO、BNPパリバ(BNPP.PA)のジャン・ルミエール会長、クレディ・スイス(CSGN.S)のティージャン・ティアムCEOらは同フォーラムに出席しない。
一方でMUFGやみずほが持つ大きな利点は、日本では企業による抗議という文化が存在しないことだ。
世界のどこかでモラル上の危機が起きて企業が行動を迫られたとしても、日本企業は欧米のように社会からの圧力は感じずに済む。憲法改正や原発など国内で賛否がはっきり分かれる問題でさえ、公然とデモを行う人々は変わり者扱いされる。
その意味で、日本企業は株主など利害関係者からの圧力に屈しにくいのは間違いない。
サウジがソフトバンクグループ(9984.T)の「ビジョン・ファンド」の大口出資者である点を踏まえれば、同フォーラムに出席予定の邦銀はむしろ、同国との良好な関係を維持する方により関心を向けるだろう。
複数の報道によると、MUFGとみずほもビジョン・ファンドに出資している。
そして最終的に、サウジが同国に恥辱を与えた人々に敵意を持つようになれば、MUFGとみずほは「味方」にとどまった恩恵にあずかれる。両行は既に、今年のサウジにおける手数料収入ランキングでトップ10入りしており、過去5年ベースではトップ5に食い込んで1億2300万ドルを稼ぎ出している。
サウジで得た手数料の大半は債券とローンに由来する。また今後、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子による経済改革の進展に伴ってより大きな果実が手に入る可能性がある。いずれ国営石油会社サウジアラムコの上場計画が復活してもおかしくないからだ。日本側はアラムコの東京上場を熱心に働き掛けていた。
日本企業の立場では、サウジ政府の機嫌を引き続き取り結ぶことは、道義的には問題かもしれないが、リスクは小さい。
●背景となるニュース
・HSBC、クレディ・スイス、スタンダード・チャータードの首脳は来週の経済投資フォーラムの出席を取りやめた。各行の広報担当者が16日、BREAKINGVIEWSに語った。
・MUFGとみずほは17日、この件についてBREAKINGVIEWSへのコメントを拒否した。のちにウェブサイトから削除されたフォーラムの出席者リストにおいて、真っ先に確定したのはMUFGとみずほの首脳だった。
・JPモルガンのダイモンCEOが先鞭を付けた形で、欧米大手行首脳が欠席する流れが生まれた。
Mitsubishi UFJ Financial Group Inc
692.2
8306.TTOKYO STOCK EXCHANGE
+2.40(+0.35%)
8306.T
8306.T8411.TJPM.NHSBA.LSTAN.L
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/saudi-japan-banks-breakingviews-idJPKCN1MS0DD
コラム2018年10月18日 / 16:26 / 4時間前更新
サウジ問題で表面化する「米国凋落」
Peter Apps
4 分で読む
[17日 ロイター] - サウジアラビアを巡る米国の板ばさみ状態を説明した際のトランプ米大統領の表現は、極端に「もうけ最優先」だった。
もし米政府がサウジ政府との緊密な関係を手放して武器の売却をやめれば、サウジはロシアや中国に頼るだろう。米大統領は11日、執務室で記者団にこう述べたのだ。
これを前提に、トランプ氏は、サウジへの1100億ドル(約12兆円)規模の武器売却を計画通りに実行すべきとの考えを示唆しているようだ。トランプ氏は、この売却により45万件の雇用が生まれるとしている。
トランプ氏の発言には一理ある。だがこれは同時に、より広い地政学や倫理の問題と絡む難題でもある。
トルコからイラク、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプトなどの中東一帯では、米国が意思を押し付けようとすればするほど、独裁色を強めがちな各国政府はそっぽを向いてしまう。
いわゆる「アラブの春」に続く混乱で民衆の抗議活動に直面したこの地域の国は、オバマ米政権に裏切られたと感じ、米国の影響力は急落した。そして、米国が民主化を促したり自制を求めたりすることはもちろん、単発の出来事に影響力を及ぼすことすら困難になっている。
だが本当の問題は、この地域と関わり続ける意欲がどれほど米国にあるか、だろう。
同盟国、敵対国を問わず、この地域の拷問部屋や監獄で恐ろしいことが行われてきたことは疑う余地がない。それでも、イスタンブールのサウジ領事館で今月、サウジ人反政府記者のジャマル・カショギ氏が拷問を受けて殺害され、切断されたとされる事件の目を見張るような残虐さは、ゲームチェンジャーとなるかもしれない。
米国には、まだ影響力がある。サウジのサルマン国王やムハンマド皇太子が、訪問したポンペオ米国務長官と速やかに面会したことを考えれば、少なくともそれは明らかだ。
この産油国と世界の超大国は、まだお互いを必要としていると明らかに考えている。ポンペオ氏が会談後に語ったように、カショギ氏失踪を巡る事実関係については双方とも触れたがらず、サウジ政府の独自調査の結果を待つ構えだ。
トランプ政権とサウジ王室はこの2年、緊密な相互関係の構築に力を注いできた。だがカショギ事件により、このような関係の価値や将来についてのあらゆる懸念が一気に噴出したかに見える。
以前から、すでに米議員の間では武器売却の凍結を求める声が高まっており、対サウジ制裁も公に議論されていた。米国の有力ロビー企業2社も今や、サウジ政府との関係を解消している。
一部では、カショギ氏が尋問の過程で誤って死亡したとサウジが認める方針だとの報道もあるが、同国政府関係者は、現段階では殺害行為への関与を全面的に否定している。
だがもし、指摘されているように権力の座にある人間が関与していたとすれば、彼らが米国や西側の懸念を気にも留めていない証しといえるだろう。
とはいえ、西側がサウジから支援の手を引けば、少なくともある側面では事態が悪化する。例えばイエメンでは、イラン勢力下の武装勢力に対してサウジ主導の攻撃が行われているが、もしサウジがロシア式の無差別兵器や戦術を使ってシリアで行われているような空爆を実施すれば、現在1万人程度とされる民間人の死者はさらに増える結果となるだろう。
かつては比較的穏健な西側同盟国と見られていた中東の国ですら、次第に独自のルールで行動するようになっている。
ニュースサイトのバズフィードは16日、UAEが、イエメンで失敗に終わった暗殺計画のために米国の傭兵を雇っていたと報じた。UAEは同日、研究旅行中の博士課程の英国人学生を拘束し、スパイ容疑で起訴したと発表した。このような行動は英米で波紋を広げているが、地域の指導者が気にする様子はない。
中東政治は今や、ほぼすべての面でこうした傾向が見られる。
2011年にシリアで抗議活動が活発化したとき、オバマ政権はどうすれば米国の力を最善の方法で発揮できるかに苦しんだ。そして、恐らく最悪の選択肢を選んだ。結果を出すために十分な支援を提供することなく、反政府勢力を応援したのだ。現在では、戦場でほぼ勝利を収めたロシアとアサド政権が明らかに主導権を握っている。米国は、傍観者的な立場でしかない。
最近では、トルコが拘束していた米国人牧師を釈放した件が大きく報じられたが、エルドアン政権下のトルコは入念に米国と距離を取り始めており、ロシアから対空防衛システムまで購入している。
ペルシャ湾岸地域で、オバマ、トランプ両政権はともに、同盟国であるカタールとUAE、サウジの関係を改善させようと努力してきたが、イエメン内戦と同じくらい効果は出ていない。米国の軍事支援にいまだ依存した状態のイラクですら、ロシアやイランの影響を以前より受け入れるようになっている。
今後何年か、こうした傾向は加速する一方だろう。
この先誕生するかもしれない米国の民主党政権は、誰が大統領であっても、歴代政権と比べて軍事行動や地域の強権的指導者に歩み寄ることに関心を示さなくなるだろう。
欧州諸国の政府は、さらに慎重だ。イラク戦争やリビアでの軍事行動の経験が、イラクやシリアで行われた過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦のようなものを超えた深入りを戒める、強力な警告となっている。
倫理的な境界線、さらには実際上の境界線ですら、どこに位置するかは不明瞭だ。
筆者はよく、2006年にスリランカで再発した内戦を取材したときのことを思い返す。われわれが政府側の蛮行を報じ、西側による軍事支援の縮小につながった。だがその穴を中国などがより無差別的な兵器を供給することで埋め、結果として死傷者数が爆発的に増えた。
多くの面で、中東、中でもイエメンは、こうした根本的なジレンマの実験場となっている。西側は一切関与すべきでないと断言したい誘惑にかられるが、関与しなければそのこと自体が代償を生むことになる。
西側のサウジに対する忍耐は限界に近づいていた。イスラム過激派に対する国内からの支援に長年目をつぶり、国外で交戦に及んできたことが大きい。
もしカショギ氏の失踪が決定打とならないのなら、イエメンで進行している人道上の危機がそれになるかもしれない。
状況を説明したトランプ氏の表現はひどかったかもしれない。だが一方で、彼とその後継者にとっていかに選択が困難で、また同時に無意味なものかを、正確に指摘したものともいえる。
*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。
https://jp.reuters.com/article/apps-khashoggi-idJPKCN1MS0W1
ワールド2018年10月18日 / 05:25 / 4時間前更新
トランプ米大統領、サウジとの関係断絶望まず 記者失踪巡り
2 分で読む
[アンカラ/ワシントン 17日 ロイター] - トランプ米大統領は17日、サウジアラビア政府を批判してきた米国在住のサウジ人著名記者ジャマル・カショギ氏の失踪問題を巡る懸念はあるものの、中東の友好国であるサウジとの関係を絶つことは望んでいないと述べた。
カショギ氏は今月初旬、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館に入った後に消息を絶ち、総領事館内で殺害されたとの観測が強まっている。
トランプ大統領はFOXビジネスニュースとのインタービューで、真相の解明を望んでいるとした上で、カショギ氏の失踪に「サウジの国王や皇太子が関与していないことを願っており、これは私にとっては重要なポイントだ」と語った。
米国の共和、民主両党の議員からは、カショギ氏失踪問題を踏まえ米国は強硬な措置を取るべきとの声が上がっているが、トランプ大統領は米国がサウジとの関係を断絶するかとの質問に対し、「それは望んでいない」と応じた。
たとえ米国がサウジへの武器の売却を停止しても、サウジは購入先を他国にシフトさせるにすぎないとし、サウジに対する強硬措置に懐疑的な考えを示した。「テロとの戦いやイラン問題などに対処する上で、サウジアラビアは必要な存在だ」と強調した。
トランプ大統領は、サウジとトルコに派遣したポンペオ国務長官からのカショギ氏の消息に関する報告を待っていると述べた。大統領は米東部時間18日午前10時(1400GMT、日本時間午後11時)にポンペオ長官から報告を受ける予定。
ポンペオ長官は、米国は事実の判明後に対応措置を検討する際、サウジとの重要な政治・経済上のつながりに留意すべきだとの考えを示した。
トルコの関係筋は、カショギ氏が領事館内で殺害されたことを示唆する音声記録を当局が入手したとロイターに明らかにしている。
親政府のトルコ紙イェニ・シャファクは17日、カショギ氏の拷問と尋問の音声記録とされるものの詳細を伝えた。それによると、カショギ氏は尋問中に指を切断され、10分以内に死亡した。その後、頭部を含めて遺体は切断されたという。
米国と欧州の治安当局者7人はロイターに対し、トルコは音声や映像の証拠を欧米諸国の政府と共有していないことを明らかにした。米国と同盟国は独自に情報を入手し、このうち一部は音声記録に基づく報道を確認する内容だという。
米ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙によると、トルコ政府高官はイェニ・シャファクが報じた詳細を確認した。
トルコの捜査当局は、サウジ総領事公邸で捜索を実施。屋根やガレージのほか、ドローンを飛ばすなどして周辺地域も含め9時間近くにわたって調査した後、サウジの捜査当局者と同様に18日未明に公邸を去った。
米ワシントン・ポスト紙はカショギ氏による最後のコラムを掲載した。同氏が消息を絶った翌日にアシスタントから送られてきたもので、アラブ諸国政府によるジャーナリスト弾圧と国際社会がそれに対応できていないことを非難する内容だった。
NYTは関係者などの話として、カショギ氏を殺害したとされる容疑者4人がサウジのムハンマド皇太子とつながりがあると報じた。
ムニューシン米財務長官は、来週サウジの首都リヤドで投資会合に出席する計画について、ポンペオ国務長官が米当局者らと協議した後、18日に再検討すると述べた。
*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/saudi-politics-dissident-trump-idJPKCN1MR2YV
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