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年金収入の多い人が老後にハマる「医療費負担」の落とし穴
https://diamond.jp/articles/-/182447
2018.10.17 深田晶恵 ダイヤモンド・オンライン
同じがんの治療費でも
年金生活になると負担額はぐっと減る!
先日、年金生活者向け雑誌の依頼で「年代別のがん治療費自己負担額」の試算をしたところ、興味深い結果になったのでみなさんにもお伝えしたいと思う。
「もし、がんになったら」という特集の中で、がん治療費の一例の表が欲しいという編集部のリクエストがあった。しかし、他誌でよく見る表はどれも現役世代の人の自己負担額であり、年金生活になると、5歳刻みで自己負担額は変わる。
そのことを担当者に伝えたところ「それ、他で掲載されていないから、ぜひ欲しいです!」と目がキラリ。編集者は「初おろしのネタ」が大好物なのである。私にとっても初めての試算で、ちょっと大変だったがやってみて良かった。
まずは、その試算結果の表をご覧いただきたい。
女性雑誌なので患者数の多い「乳がんの治療費」を例にとることにした。横軸に「診断確定、手術前検査などの検査費用」、「入院・手術の費用」、「抗がん剤治療」、「放射線治療」と時系列でまとめ、縦軸に「世代別」を置き、治療グループごとに自己負担額を試算している(健康保険の被保険者の収入の前提条件は表欄外を参照)。
同じ治療なのに、年齢を重ねるとともに自己負担額が減っていくのが興味深い。自己負担額の最も差が開くのは、6ヵ月間にわたる抗がん剤の治療費で、現役世代はトータル約28万円、75歳以上になると約9万円。その差は19万円にもなる。
がんの3大治療費、現役時代は約54万円、
75歳を過ぎると約20万円!
世代により自己負担額が変わる要因は3つある。少し解説しよう。
ひとつ目は、窓口負担割合の変化によるもの。
69歳まで:3割負担
70歳前半:原則2割負担
75歳以降:(前提条件のように220万円程度の公的年金収入だけなら)1割負担
このように高齢になると窓口負担割合が減る。
ふたつ目は、高額療養費制度(医療費の自己負担額が一定額を超すと超過分が払い戻される制度)の自己負担額は70歳を境に異なるから。詳しくは後述するが、70歳以降の高額療養費の自己負担額は69歳までのもの比べ、かなり抑えられている。
3つ目は収入の変化。年金生活になると、現役時代の給与ほどの収入が得られないから、高額療養費の所得区分が変化し、自己負担上限額が下がる。
前述の乳がんのケースでみると、診断確定と手術前検査の費用+がんの3大治療(手術、抗がん剤、放射線)の治療費の合計額は以下のようになる。
65歳までの現役世代:約53.5万円
60代後半:約43.8万円
70代前半:約24万円
75歳以上:約20.1万円
同居の義母が3年前に81歳で乳がんになったとき、後期高齢者だと医療費は少ないなと思ったことはあるが、今回他の世代と比較して治療グループごとに試算してみると、大きな差になることがあらためてわかった。後期高齢者は現役世代の半分以下の負担で済む。
世帯年金収入が680万円の
Aさんの治療費は?
ここまでの治療費は、65歳からの年金収入が220万円程度の公的年金だけの例である。公的年金のほかに、退職金の年金受け取りや企業年金、加えて個人年金の収入があると、自己負担額がどうなるのかを見てみよう。
たとえば、まもなく定年を迎える会社員のAさんは、リタイア後の安心を得るには年金収入を増やすことと考え、若いうちから夫婦で個人年金に加入している。企業年金も一時金受け取りはせずに年金受け取りを希望し、65歳からの収入として次のようなプランを立てた。
・公的年金収入:Aさん230万円、妻90万円
・企業年金(65歳から15年間の受け取り):Aさん年120万円
・個人年金:Aさん、妻ともに年120万円の年金を65歳から15年間の確定年金
世帯の年金収入は、680万円にもなる。公的年金以外は終身受取りではないにせよ、Aさんが80歳までは夫婦2人分で680万円の収入が続くため、プランとしては万全のものと考えていた。
では、Aさん、もしくは妻が病気になった場合の自己負担はどうなるだろう。Aさん夫婦の年金収入は多いため、70歳以降の窓口負担割合は3割が続き、自己負担限度額は「現役並み所得者」の区分となる。
つまり、先のがん治療費の例で言うと、65歳を過ぎても自己負担額は現役世代のままということ。検査費用+3大治療の合計額は、ずっと約54万円だ。
65歳までの現役世代:約53.5万円
60代後半:約43.8万円→約53.5万円
70代前半:約24万円→約53.5万円
75歳以上:約20.1万円→約53.5万円
図2は70歳未満の高額療養費制度の表である。給与収入がある現役時代は(ウ)一般所得者に該当し、220万円前後の公的年金だけの収入になると、(エ)に該当し自己負担が下がるのが一般的。しかし、Aさんのように年金収入が多いと(ウ)となり、負担額は増える。
次は、70歳以上の高額療養費の表だ。220万円前後の公的年金だけの収入なら「一般」に該当するが、年金がたっぷりあるAさんは「現役並み所得者」となる。
70歳以上の所得区分「一般」の外来の自己負担が月1万8000円であることに注目したい。先の例で、6ヵ月にわたる抗がん剤治療の自己負担が現役と高齢者で大きな差になったのは、外来での自己負担額が1万8000円に抑えられているからだ。
抗がん剤治療は、数年前までなら入院して投与を受けるのが一般的だったが、現在はほとんどが外来で行われる。同じ治療でも、外来だと自己負担限度額が低く抑えられているため、結果として負担額は軽減することになった(その分、税金が多く使わることになったので、将来的にはどのような制度変更があるかわからない)。
Aさんが介護サービスを利用すると
1割ではなく3割負担!
負担額がアップするのは、病気になったときの治療費だけではない。仮にAさんが、年金収入の多い80歳までの間に要介護状態になったとすると、公的介護保険の負担割合は1割ではなく、3割となる。
たとえば、公的介護保険で在宅介護と通所介護を組み合わせて、月15万円の介護サービスを受けたとする。自己負担額は、1割負担なら月1万5000円、年金の多いAさんは3割の4万5000円。その差は月3万円で、年間36万円にもなる。その介護状態が5年続くと、180万円もの差がつくことになる。これは大きな負担だ。
もちろん、介護保険にお世話にならない可能性は十分にあるし、Aさんの年金収入が減る80歳以降なら、自己負担割合は1割で済む。ここで知っておきたいのは、金融資産が多額にあったとしても、医療費や介護費の自己負担額は多くならないが、年金収入が多いと大きな負担アップになることなのだ。
加えて、年金収入が増えると税金と国民健康保険料・介護保険料の負担割合が重くなり、額面の収入に対する手取りの率が減る。医療費と介護利用料は、病気になったとき、介護状態になったときに発生する支出だが、毎年の税金と社会保険料は、確実にかかるもの。
老後に向けて綿密な準備をしてきたAさんとってみると、税金と社会保険料の負担の重さと、医療費・介護費の負担割合が増えることは、大きな誤算となった。
しかしAさんは、まだ年金生活に入っていないので軌道修正は可能である。企業年金の受け取り方法を、全額一時金、もしくは一時金と年金に組み合わせて、年金収入を減らす。または個人年金を一括で受け取ったり、働いて給与収入のある60歳前半に受け取ったりと対策を立てるといい。
60歳前半に働いて給与収入があるときに年金(企業年金、確定拠出年金、個人年金)を受け取ると、年金収入には社会保険料はかからないというメリットがある。社会保険料は給与に対して計算されるため、60代で働いている間に個人年金を受け取るのは手取りを増やす裏技なのである。
(株式会社生活設計塾クルー ファイナンシャルプランナー 深田晶恵)
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