http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/834.html
Tweet |
金融庁が本気で調査に乗り出す結果、「大家さん業」に厳冬到来の予感 簡単には売り抜けられなくなる
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58006
2018.10.17 加谷 珪一 現代ビジネス
金融庁が地方銀行などを対象に投資用不動産ローンの実態調査に乗り出すことになった。直接的な理由はスルガ銀行による不正融資だが、同行だけでなく地方銀行全体がアパートローンに過度に依存しているとの指摘は以前から存在していた。
定期的なモニタリングを行うことで不良債権化を防ぐ算段だが、場合によっては融資が一気に縮小する可能性がある。アパートなど一棟モノへの投資を行う、いわゆる「大家さん業」の個人投資家にとってはいよいよ厳しい時代の到来となるかもしれない。
沈静化していたアパート建設が再び加速
金融庁は2018年9月26日、2018年度(2018年7月〜2019年6月)の金融行政方針を公表した。この中でもっとも目を引いたのが投資用不動産向け融資のモニタリングである。
ここ数年、アパート建設ラッシュとも呼べる状況が続いており、各地で需要をはるかに超える数のアパートが建設されてきた。背景にあるのは相続税対策と量的緩和策による低金利である。税制上、更地で土地を持っているよりも、アパートなどを建てた方が相続税の財産評価額を下げることができるので、土地を保有している資産家にとっては、積極的にアパートを建てるインセンティブがある。
こうした状況に日銀による超低金利政策が加わったことから、各行はアパート向けローンを急拡大。融資先の開拓に苦慮している地方銀行は特にその傾向が顕著となり、地域によっては賃貸需要をはるかに上回るアパートが建設されるという異常事態になった。
過剰なアパート・ローンは、将来の不良債権予備軍になる可能性があることから、金融庁は2017年から金融機関に対して過度な融資を実施しないよう、事実上の行政指導をスタートしていた。国土交通省が毎月発表している住宅着工の動向を見ると、2017年12月には主にアパートを中心とする貸家の建設が10%近くのマイナス(季節調整済み前月比)に落ち込むなど、ローンが抑制される傾向が見て取れた。
しかし2018年に入って再び建設が加速し、4月には8.5%の高い伸びを示している。金融庁は危機感を強めており、モニタリングの方針を強く打ち出すことになった。
実態調査では、シェアハウス向け融資で行われたような抱き合わせ販売についてもチェックが入ることになるが、不動産関係者が本当に気にしているのはこの問題ではない。金融庁が本格的にモニタリングに乗り出すことで、事実上の総量規制のような状況となり、不動産向け融資が一気に萎んでしまうリスクを懸念している。
投資には常に出口が必要
日本では十数年前から、個人投資家が銀行から多額の融資を受けてアパート1棟をまるごと購入し、賃貸収入を得る、いわゆる「大家さん業」がちょっとしたブームになっている。不動産投資は決して不労所得などではないが、一般的なビジネスと比較すれば、ある程度、時間は自由になる。このためサラリーマンを続けながら、多額のアパート投資を行う「兼業大家さん」も多い。
あらゆる投資に共通した課題だが、最終的に投資を成功させるためには、出口(イグジット)をどう確保するのかが重要なポイントとなる。
株式投資の世界においても、「株を売ることは、株を買うことの10倍難しい」などと言われたりする。アパートへの投資は値上がり益(キャピタルゲイン)を主眼としたものではなく、毎月、得られる家賃収入(インカムゲイン)を収益源にしているので、高く売却することそのものを目的にしているわけではない。
だが、購入したアパートを未来永劫持ち続けるのかというと、そうとは限らない。
資産全体のバランスを考え、今後の融資がスムーズに進むよう、物件の入れ換えは常に行っていく必要がある。仮に入れ換え対象にならない場合でも、物件には寿命があるため、どこかのタイミングでリニューアルや建て替えを実施することになる。その際には、資金捻出のため一部の物件を売却する可能性は高い。
売却できる環境が整っていないと投資がうまくいかないという点においては、賃貸収入を目的としたアパート投資も、高値で売り抜けることを目的とした投機的な不動産投資もそれほど違わないのだ。
日本では過去20年以上にわたって低金利が続いており、リーマンショック以降は量的緩和策の導入によってその傾向がさらに顕著となった。その間、不動産市場は決して活況というわけではなかったが、銀行の融資は常に積極的だったことから、ローンが付かないことで買い手がいなくなるという事態は発生していなかった。
有名不動産会社が廃業
だが今回、金融庁が本格的なモニタリングに乗り出してきたことで、一部の関係者はアパートローンの急激な縮小について懸念し始めている。
かつて日本の金融行政は、護送船団方式と呼ばれ、監督官庁を頂点とする完全なピラミッド構造になっていた。金融市場のオープン化によって、こうした慣行はだいぶ薄れたが、現在でも、金融当局の顔色をうかがってばかりという金融機関は少なくない。
こうした金融機関ほど、他行と横並びで融資を行うので、アパートローンが伸びれば、アパートローンに注力し、金融庁が引き締めに転じると、今度は問答無用で融資を打ち切ってしまう傾向が強い。
同じアパートローンといっても、地主が相続税対策で需要を無視して建設する物件への融資と、賃貸需要を前提とした投資家への融資とではその中身はまるで異なる。だが、こうした中身の違いを無視して、一括で融資を縮小するという事態になれば、新規の融資が付かないことで買い手が激減し、一部の投資家は出口に苦慮することになる。
先日、六本木の一等地にオフィスを構え、派手なメディア露出で話題となっていた、一棟モノを得意とする不動産会社が廃業した。詳細は不明だが、廃業した理由のひとつは銀行の融資姿勢の変化だといわれている。
新規に物件を購入する投資家が減れば、当然、物件の回転は鈍くなり、あまり利益の出ていない物件は、いわゆる塩漬け状態となる。不動産ビジネスは時間軸が長いので、すぐに影響が顕在化するわけではないが、今後、ジワジワと不動産投資家のクビを絞めていくことになるだろう。
これから「大家さん業」に取り組む人は要注意
金融庁の方針という個別要因に加えて、量的緩和策というマクロ的な政策もそろそろ曲がり角に来ている。日銀による国債の購入ペースはこのところ大幅に縮小しており、実務的な面ではすでに量的緩和策の見直しフェーズに入っている。
いつまでも量的緩和策を継続することはできないので、どこかのタイミングで正常化に舵を切る必要があるが、安倍首相が3選を果たしたことから、その可能性がにわかに高まっている。量的緩和策はうまくいったとはいえない状況だが、安倍政権が「アベノミクスは成功した」としてデフレ脱却宣言をしてしまえば、日銀は堂々と正常化に向けて動き出すことができる。
もし名実ともに量的緩和策の見直しが行われれば、金利は上昇することになり、不動産融資にとってはさらに逆風となるだろう。
賃貸需要がある場所に物件を持っていればテナントは確保できるので、優良物件ばかりという投資家にとってはそれほど心配する事態ではないかもしれない。だが、低金利を背景に、いつでも物件を売却できるという時代は過去のものとなりつつある。
一連の環境変化は、いわゆる大家さん業というビジネスにおける大きな転換点であることは間違いない。少なくともこれから新規に参入を検討している不動産投資家予備軍は要注意である。
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民128掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民128掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。