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ソフトバンクに利用され始めたトヨタ…自動車業界の主導権を奪われる危機感と焦り
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25142.html
2018.10.16 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
トヨタ自動車とソフトバンクグループ、戦略的提携をすることで合意
トヨタ自動車とソフトバンクグループは10月4日、モビリティサービス事業で戦略的提携をすることで合意したと発表した。保守的な気質の強いトヨタと、積極的なM&A戦略によって事業を拡大してきたソフトバンクのタッグは異色の組み合わせだ。ソフトバンクを含むIT大手に自動車業界の主導権を奪われるとの危機感を持つトヨタの焦りと、日本でのトヨタの政治力やブランドを利用しようと考えたソフトバンクの思惑によって実現した同床異夢の提携を、早くも危ぶむ声が出ている。
トヨタとソフトバンクは、モビリティサービスの合弁会社「モネ テクノロジーズ」を設立することで合意した。新会社は過疎地などで需要に応じて送迎や宅配、カーシェアなどのサービスを提供するためのプラットフォームを、自治体や企業向けに供給するほか、自社でも手がけていく。資本金は当初20億円で、将来的に100億円にまで引き上げる計画で、ソフトバンクが50.25%、トヨタが49.75%出資する。トヨタの合弁事業で相手が過半を出資するケースは珍しく、それだけトヨタがソフトバンクとの提携に乗り気だった証左。実際、今回の提携ではトヨタ側からソフトバンクに協業を申し入れた。
トヨタが異業種であるソフトバンクとの提携を望んだ背景には、自動車産業のメガトレンドとなっている自動運転や電動車両、コネクテッドカー、シェアリングサービスによる業界の大変革がある。将来的に完全自動運転車が実現してライドシェアが普及すれば、移動する手段としてクルマを保有する必要がなくなる。
消費者の意識が「モノ」から「コト」に変化しているのに伴ってIT大手が自動運転やライドシェアサービスで存在感を高めており、自動車を大量生産することが力の源泉だった時代と、競争の軸が明らかに変わってきている。クルマを使ったサービス領域に強い異業種が自動車業界で主導権を握れば、トヨタといえどもライドシェア専用自動運転車の調達先の1社に成り下がるリスクがある。
IT大手の自動車業界への侵食に強い危機感を持つトヨタは、「クルマをつくる会社からモビリティに関するあらゆるサービスを提供するモビリティカンパニーにモデルチェンジする」(豊田章男社長)ことを表明。ライドシェア大手の米ウーバー・テクノロジーズとの提携強化や、東南アジアのライドシェア大手グラブへの出資などを行ってきた。
しかし、トヨタがモビリティサービス事業を確立するため、異業種との協業を進めれば進めるほど、その背後に巨大な影を感じるようになった。それが、孫正義会長率いるソフトバンクだ。
■ソフトバンクが狙う、トヨタのブランド力と政治力
中国の滴滴出行、インドのオラのほか、トヨタが出資しているウーバー、グラブのライドシェア大手4社の筆頭株主となっているのがソフトバンクだ。4社で世界のライドシェアの利用回数の9割のシェアを握っており、ソフトバンクは世界のライドシェアを結ぶ中枢の役割を担っている。
ソフトバンクがライドシェア大手に積極的に投資しているのは、もっとも注力しているAI(人工知能)の性能向上に、自動車から得られる大量のデータを有効活用できるからだ。自動車はカメラなどのセンサーを多数搭載しており、クルマから収集できる大量のデータは、AIを高度化する上で重要で、孫氏は「自動車は将来、半導体の塊になる」と見る。世界中を走り回るライドシェア車両から大量のデータを収集できれば、AIの高度化や新しいモビリティサービスに活用できる。
世界のライドシェア車両から集まるデータを一手に集める立場となったソフトバンクの存在に焦ったのが、モビリティサービスで主導権を持ちたいトヨタだ。ソフトバンクはすでに、ホンダとAIの開発で協業しているほか、米ゼネラルモーターズ(GM)のライドシェア専用自動運転車の開発会社にも約2割出資している。ホンダとGMは提携しているだけに、仮にモビリティサービス領域でソフトバンクとGM・ホンダ連合ができれば、トヨタは蚊帳の外に置かれる。
トヨタのこうした危機感が、ソフトバンクとの提携に駆り立てた。
「トヨタがクルマをつくる会社であったときには、実現しなかったソフトバンクとの提携が、モビリティカンパニーを目指そうと考えたときには必要不可欠なものになっていた」(豊田社長)
一方、トヨタからの協業の申し入れの感想を聞かれた孫氏は、「はじめはマジか?と思ったが、その後、ついにこのときが来たかという感じ」と、余裕の表情だ。過去、業界や行政と軋轢を起こしながら成長してきたソフトバンクにとって、トヨタは日本国内での政治力やブランドの面で利用価値は大きいだけに、提携は願ったり叶ったりだ。
ソフトバンクが今年7月に開催した法人向けイベントで、孫氏は「既存のタクシー業界を守るため、未来への進化を自分で止めている。そんなバカな国があることが信じられない」と、ライドシェアを禁止している日本政府を強く批判した。世界的にライドシェアは普及してきているが、国土交通省では、一般のドライバーが有償で人を運ぶライドシェアは道路運送法に違反するとして禁止している。孫氏はライドシェアが自動車の効率的な利用につながり、渋滞問題解消にも寄与するとして、ライドシェア解禁を訴えてきたが、タクシー業界の権益を守る国土交通省の姿勢は頑な。ソフトバンクは仕方なく、中国のライドシェア大手の滴滴と、日本でタクシー配車アプリサービスを合弁で開始した。
日本独特の規制に頭を痛めるソフトバンクにとって、強力な助っ人となりそうなのがトヨタだ。ソフトバンクは今後、トヨタの政治力をバックに、日本でのライドシェア解禁に向けた活動を本格化すると見られる。また、2020年に実用化される予定の第5世代移動通信システム(5G)の周波数割り当てでも、総務省に対してソフトバンクが有利になるようにトヨタが支援してくれる可能性もある。
■ソフトバンクからすれば、数ある提携先の1社
ソフトバンクがトヨタとの提携に期待するのはそれだけではない。たとえば「信用力」がある。
ソフトバンクは、相次ぐ買収や出資で事業を拡大、営業利益は1兆円を超える規模にまで成長してきた。一方で、急激な事業拡大で有利子負債が15兆円にまで膨らんでおり、財務体質の悪化が懸念されている。今回の提携でソフトバンクの後ろ盾にトヨタがついたとなると、メインバンクのみずほ銀行はじめとする金融機関や投資家の「見る目」が変わる。
それぞれの思惑がありながらも提携で合意したトヨタとソフトバンクだが、「自動車」に対する考え方の温度差があり過ぎることから「いずれ破談になる」(自動車メーカー首脳)と予想する声もある。豊田氏はことあるごとに「“愛”が付く工業製品はクルマだけ」と述べ、電動化や自動運転が進んでも「未来のクルマをコモディティ化しない」ことに固執する。
これに対して孫氏は「自動運転時代は一般のクルマ(手動運転)は排除され、公道を走れなくなる。運転するクルマは趣味として楽しむもので、馬と同じになる」と、クルマは単なる道具と言い切る。
両社による合弁事業が進めば、その考え方の違いが表面化して衝突するのは避けられない。ただ、ソフトバンクからすれば、トヨタといえども数ある提携、出資会社の1社にすぎない。
「孫氏からすれば、トヨタの力をうまく利用したいが、うまくいかなければ他の自動車メーカーと組めばいいだけと考えている」(自動車専門誌の記者)
また、「ソフトバンク帝国を一代で築き上げた孫氏と、周辺を茶坊主だけで固めてきたお殿様の豊田氏では所詮、役者が違う」との声も聞かれる。時価総額22兆円企業のトヨタが、ソフトバンクの孫氏の掌の上で踊らされている。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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