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(回答先: 焦点:世界の外貨準備、ドル比率の低下止まらず トランプ不信の声も トランプ大統領が「皇帝」化、米メディアが抱く深い危機感 投稿者 うまき 日時 2018 年 10 月 10 日 20:56:32)
2018年10月10日 西岡純子 :三井住友銀行 チーフ・エコノミスト
就業率に「陰り」、賃金上昇を期待した日銀の出口戦略に黄信号
Photo:PIXTA
円安などによる企業収益の改善が続くなかで、賃金の上昇が期待されてきた。実際、労働市場は逼迫し、人手不足を訴える声はずっと続いてきた。だが賃金上昇の動きは鈍く、足元では、高原状態だった新規求人に対する就業率も鈍化が目立つ。「デフレ脱却」を掲げてきた政府・日銀のシナリオはまたまた、狂いかねない。
日銀短観で確認された
企業の投資意欲の強さ
先週に発表された日銀短観の9月調査では、大企業製造業の業況判断D.I.(「良い(%)」−「悪い(%)」)が4期連続の悪化となった.。
ただ、多くの企業が業況が「良い」と回答していることに変わりはなく、海外需要の鈍化や一連の悪天候、米国主導の保護主義への懸念といった悪材料が重なった割に、小幅な調整にとどまったとみるべきだ。
むしろ、子細に見ると内容は良かったともいえる。まず、今年度の設備投資計画は大企業全体で+13.4%と2ケタ増を維持した。あくまでも「計画」であり、実際にその勢いで投資が実行されるかはわからないが、企業の投資意欲の強さははっきりとうかがえた。
実際に、GDPベースの設備投資額は実質値で「バブル景気」の最高水準を既に超えている。
かつてない低金利のうえ、もともと企業は潤沢なキャッシュフローを持ち、省力化投資や電気自動車など新規事業の拡大の意欲も強い。強気の設備投資計画が実際の支出につながることもあり得そうだ。
しかも114円半ばまでのドル高円安が続いているし、株価上昇も米金利の急上昇のあおりでやや勢いが鈍ったとはいえ、それでも1992年以来の最高値水準だ。
政府や日銀の関心は、企業の投資意欲の回復やマクロ的需給バランスの引き締まりが、いよいよ本格的な賃金上昇につながるのか、それで消費が活発になり「2%物価目標」を達成できるか、ということだろう。
この点、日銀短観をみる限りでも、人手不足感は相変わらず強く、その強さからいえば賃金の上昇にもっとはずみがついてもおかしくはない。
雇用判断D.I.(「過剰(%)」−「不足(%)」)は、非製造業を中心に大きく低下しており、前回の景気拡張期のピークだった2007年当時と比較しても、労働市場のひっ迫感は相当のものである。
「人手不足」なのに
賃金上昇が鈍い構造要因
直近8月の毎月勤労統計(速報)によると、1人当たりの月間現金給与総額は前年比+0.9%と前年比プラスを維持している。
ただし、サンプル入れ替えによる影響を排除するため、厚生労働省が参考値として公表している共通事業所ベースで見ると、前年比+0.8%と前月と、伸びは変わらない。このうちの所定内給与も同+0.7%で、上昇に勢いはない。
業種別や、過去との比較など、どの側面から見ても人手不足感が賃金上昇につながる動きははっきりしていない。特に不足感が強いと報告されている宿泊業・飲食サービスや建設業、専門・技術サービスといった業種でも賃金上昇率は低いままである。
なぜなのか。労働市場が逼迫すれば賃金が上昇するという理屈通りにはなっていないのは、2つの構造的な問題があると考えられる。
(1)人手の不足感は確かに強いのだが、様々なミスマッチを背景に、求人側が求めている人材の確保にまだ至ってない、という制約と、(2)雇用されている人の数が全体では実は十分な水準でも、産業間や社内で、適材適所への配分・調整が不十分なことだ。
「適性値」に対して
雇用はむしろ「過剰」
働き手が減る経済では、これまでの成長を維持するには労働生産性の向上は必須で、労働生産性が上昇することで賃金上昇も確実になる。また、労働生産性が回復する過程で企業に事業活動の余力が生まれると、さらなる雇用拡大への動機も強まる。
労働生産性と雇用される人の数は中長期的には共通のトレンドを共有するはずだ。
こうした考え方から、労働生産性に見合う適正な雇用者数を割り出し、それと実際の雇用者数を重ねてみたのが図表1だ。
◆図表1:労働生産性と雇用者数
(出所)総務省、三井住友銀行 拡大画像表示
雇用者数の適正値は90年初頭から一貫して右肩上がりで上昇した後、2008年の金融危機を境にその改善ペースは止まった。この間、実際の雇用者数はその適正値を挟んで増減を繰り返している。
注目すべきは足元で、実際に雇用されている人の数が適正値を大きく上回っていることだ。
過去、実際の雇用者数が適正値をはっきりと上回ったのは1992年から1999年の、バブル崩壊後の「過剰雇用」の整理に主要企業が四苦八苦していたころだ。その後の2002〜2008年の景気拡大期はむしろ控えめな採用活動が維持されていたことで、実際の雇用者数は適正値を下回っている。
アベノミクスが発足した2012年末以降、雇用者数は増勢を強め、物価が緩やかながら上昇に転じた2015年ごろからの雇用者数の増加は、適正値を大幅に上回るペースだ。
こうした推移から考えれば、今は足元の雇用は「不足」ではなく、むしろ「過剰」の域にあるといっていい。
雇用拡大は非正規に集中
安倍改造内閣の「改革」では限界
一方で、雇用の拡大が女性や高齢者、非正規雇用に集中したことで、結果として企業が支払う雇用者報酬は、企業収益の増加ほどには伸びず、労働分配率は低迷したままだ。
結局、いまの雇用状況は、企業側は、容易に代替が利くような職種で雇用を確保しただけで、成長分野や事業拡大の上で必要とされる職種への人材の確保が遅れた。その結果、全体の雇用者数は十分増えているにもかかわらず、雇用の不足感は強まる一方で解消しない、ということになっているのだろう。
労働市場の需給逼迫にもかかわらず賃金がはっきりと上昇しないのは、こうした構造的なミスマッチがあることによる要因が大きいといえるだろう。
発足した第4次安倍改造内閣は、新たな成長戦略の柱として、第4次産業革命や地方創生と並んで、雇用改革を含めた「全世代型社会保障改革」の3つを掲げた。うち、雇用改革については継続雇用年齢を65歳以上に引き上げ、年金の受給開始年齢も「70歳超」からも選べるようにする法改正を検討するという。
働き手が増えることで、国全体の所得のパイが広がることは確かだろう。だが高齢者の就業率を引き上げるといってもおのずと限界はある。
2012年末のアベノミクスのスタート以降、就業者数総数に占める高齢者の割合は一貫して上昇し、2016年時点では男女計で11.9%までになった。
高齢就業者の雇用形態は、役員が102万人(13.3%)、自営業主・家族従業者が263万人(34.4%)、役員を除く雇用者が400万人(52.3%)である。だが役員を除く雇用者の内訳を見ると、正規の社員・従業員は99万人と4分の1を占めるのみで、残るはパート・アルバイト(204万人)や契約社員(36万人)、嘱託(30万人)など非正規雇用が4分の3を占める。
希望者を65歳まで雇用することを義務付ける法改正は、非正規雇用が多く、時間当たりの単位賃金が相対的に低い高齢者の賃金を引き上げようという狙いだ。
だが、すでに日本は、高齢者の就業率(実際の就業者÷人口)は主要国の間で最高水準にある。他主要国も高齢化の進展によって高齢者の就業率は高まる傾向だが、日本はそれらを先行している。
働く高齢者の処遇を改善し、その過程で技能継承等を促すことで経済全体の生産性を引き上げることは必要だが、高齢者の就業率引き上げにはおのずと制約があるし、それだけで、日本経済の生産性を上げ、賃金や雇用を増やしていくのは限界がある。
就業率の伸びは鈍化
賃金への波及難しい
政府が「働き方改革」を掲げてきたのも、まずは働き手の意識改革が進むことで生産性や効率が高まることを狙っていたわけだが、そうこうしている間に労働市場の需給逼迫にも、陰りが見えてきてしまった。
図表2のように、充足率(就職者数÷新規求人数)の低下が続き、企業側が人材採用を満たせていない状況が一段と深刻になっている一方で、一般的な就職実績を表す就業率(就職件数÷新規求人数)は、これまでの高原状態から少し鈍化する動きが目立ってきている。
◆図表2:就職率と充足率
(出所)厚生労働省 拡大画像表示
就業率が鈍化しているのは、これまで増える一方だった就職件数の増加が止まり、減少に転じたことが背景にある。米中貿易戦争などによる海外市場への不安に加え、そもそも国内市場の成長がこれ以上はそう期待できないという見通しから、企業がこれまでの雇用確保に向けた積極姿勢を修正しつつある動きと言える。
売り手市場とされてきた労働市場で、需給逼迫が鈍化する兆しが表れていることは、異次元緩和からの「出口戦略」を模索し始めている日銀にとっては見過ごせないことだ。
このところ、海外金利の上昇をきっかけに、円金利も長期、超長期ゾーンを中心に、10年国債利回りは0.15%超え、20年金利は0.69%、30年金利は0.95%まで上昇している。
長期金利の変動幅を拡大する「政策修正」を7月末にした日銀は、市場のボラティリティーがどこまで上昇し、将来の利上げに対する政策の自由度がどこまで確保されるかを、確認しているところだろう。
日銀が堂々と金融政策の正常化に向かう上でも、労働市場の逼迫から賃金上昇につながることが期待されていたが、その可能性は一段と下がったとみるべきである。
(三井住友銀行 チーフ・エコノミスト 西岡純子)
https://diamond.jp/articles/-/181709
2018年10月10日 堀篭俊材 :朝日新聞編集委員
就活ルール、経団連の廃止決定で「官製」になっても守られるか
大手金融機関が10月1日に都内で開いた内定式。新卒内定者が一同に介する光景もやがてみられなくなってしまうのか…… Photo by Toshiki Horigome
経団連が、会社説明会や面接などの解禁時期を定めてきた「就活ルール」(就活指針)の廃止を決めた。
中西宏明会長の突然の「廃止表明」から約1ヵ月、今後は、政府が音頭をとって企業に呼びかける「官製就活」に移行することになる。
といっても罰則がなければ拘束力はない。経団連に加盟しないIT企業や外資系企業が早くから採用活動をして人材を囲い込む抜け駆けが横行してきたが、労働人口減少時代で「売り手市場」の就活戦線はこのまま漂流するのか。
「寝耳に水」の廃止宣言
その伏線は3ヵ月前
経団連は9日、正副会長会議で就活指針の廃止について協議した。中西会長は直後の会見で「2021年度以降、経団連は指針を策定しないのが妥当という結論になった」と語り、1953年から財界が作ってきた就活に関するルールを廃止することを正式に宣言した。18人いる副会長から異論は出なかったという。
中西会長が就活指針の廃止に言及したのは約1ヵ月前、9月3日の会見だった。
就活指針についてたずねた記者の質問に答え、「経団連が日程を決め、いいの悪いのと批判を浴びるのはおかしな話」。突然、就活指針の廃止に言及したのだ。
「会議では就活の話は一切なし。事務方から報告を受けて、びっくり仰天した」。この日の正副会長会議で中西会長と一緒だった経団連副会長はこう話す。寝耳に水の「宣言」だった。
だが、唐突に思える発言には伏線があった。約2ヵ月前の7月1日に配信されたネットメディアのインタビューで、中西会長は「やめたらいいと思うんだけどね。経団連の指針なんか」と発言していた。
この時にも「新卒一括採用はもう時代に合わない」と語り、単なる就活日程だけでなく大学教育や採用のあり方にも疑問を投げかけていた。経団連の事務方は「会長の問題意識はわかっていたので、政府や大学とは水面下で意見交換はしていた」と明かす。
ここ数年、就活日程は変更されてきた。そのきっかけは5年前にさかのぼる。
第2次安倍政権が発足した直後の2013年4月、「学生はもっと学業に専念するべきだ」と、安倍晋三首相が「後ろ倒し」を経済界に要請した。
首相肝いりのルールをなくしてしまう今回の廃止発言に対し、経団連の根回しが効いたのか、安倍政権からは表だった異論は聞こえてこない。世耕弘成経産相は中西発言のあった翌9月4日の閣議後会見で「採用のあり方を一度議論するという趣旨であれば歓迎したい」と語った。
今後は「官製就活」に
「政府が笛吹けど企業は踊らず」の可能性
経団連の会員企業には就活指針に対する不満が根強くあった。
現在の指針は「企業説明会は3月1日」「採用面接は6月1日」と解禁日を定める。
もともと会員企業間の紳士協定で、破っても罰則はなかったとはいえ、暗黙のルールになっていた。
だが経団連に加盟していない外資系やIT企業はもっと前から採用活動を始めているため、優秀な学生を確保したい加盟企業の間には「守られない指針、守ると不利になる指針なんかいらない」という意見は多かった。副会長企業からは「就活指針をやめられるかどうかが、中西経団連の試金石になる」という声もあがっていた。
財界総本山としての威信低下が言われて久しい中で、5月末に就任して早くも「中西カラー」を出した今回の問題提起を歓迎する声も出ている。
ある幹部は「『官製春闘』にみられるように、榊原定征・前会長は安倍政権の意向を受けて財界をまとめる『調整役』だった。政府に対しては受け身の姿勢だったが、中西会長は今回、財界としての意見を強く打ち出した」と評価する。
しかし、就職先によって世間の評価が決まる大学側は反発する。
全国の大学などでつくる「就職問題懇談会」(就問懇)は9月10日の会合で、現行ルールを維持することで一致した。就問懇の山口宏樹座長(埼玉大学長)は会合後、これまで経団連と大学側が同じルールで足並みをそろえてきた経緯から、「経団連の指針がなくなるということは、両輪の片方が外れるので好ましくないという意見がほとんどだ」と記者団に語った。
今は経団連が就活指針を決めると、就問懇が大学、短大、高等専門学校の間で「申合せ」として経団連の指針を遵守することを確認する。最終的には政府側が、内閣官房、文科省、厚労省、経産省の連名で、約440の経済団体や業界団体にも経団連が決めた日程を守るように要請している。
経団連の廃止決定を受けて、政府は10月9日夕方、関係省庁で就職・採用活動に関する連絡会議を設置すると発表した。経団連、就問懇もオブザーバーで参加する。だが経団連がルールを廃止し、政府や大学でルールをつくったとしても、その実態は経団連がこれまでの枠組みから降りるだけに過ぎない。政府が産業界に呼びかける図式は毎春の「官製春闘」と似ているが、その結果も春闘と同じように「政府が笛吹けど、産業界は踊らず」になる可能性が高い。
インターンシップで「入社パス」
「青田買い」の場に
「学業の妨げになる」と1953年に政府や財界、大学との間で就職協定が始まってから、就活はいつも早期化と見直しの歴史を繰り返してきた。(図表参照)。
拡大画像表示
1960年中盤には大学3年の2〜3月に内定が出される事態が相次ぎ、「青田買い」「種もみ買い」といわれた。「協定破り」が横行したのを受けて1997年に就職協定が廃止されて以降も、採用活動の早期化に歯止めがかからなかった。
これまでも財界が就活ルールを見直したことは度々ある。1996年に日経連(現経団連)の根本二郎会長が「守れないのなら、就職協定の廃止もやむなし」といって協定を廃止。拘束力のない倫理憲章に移行したが、結局は企業の採用活動を野放しにして終った。
ようやく落ち着いたのは、安倍政権の要請を受けて経団連が動き、現在の就活指針ができた2013年になってからだ。罰則がないといっても廃止されれば、さらなる早期化につながるだけになる可能性は高い。
就職協定が廃止された約20年前と今と大きく変わったのは、本来は就業体験という教育の場であるはずのインターンシップの存在だ。学生の「青田買い」の場になっている例もある。
たとえば、大手企業向けソフトウェアメーカーのワークスアプリケーションズ(東京)は、大学1年でも参加できる約1ヵ月のインターンシップを実施し、優秀と認めた学生に「入社パス」を出している。
パスをもらった学生は大学を卒業しなくても、最長3年の間に権利を行使すれば入社できる。同社は「2日や3日の面接では学生を見極めることは難しい。会社の業務を知ってもらえればミスマッチも防げる」(広報担当者)という。
最近はとくに1日だけの「1dayインターンシップ」が盛んに行われている。
会社説明会が解禁される直前の2月に行う企業も多く、「説明会とほとんど区別がつかない」「1日だけで就業体験とは呼べるのか」と疑問視する関係者は少なくない。
就職情報会社マイナビの調査によると、今年2月に1dayインターンシップを開催した企業は調査対象の約1千社のうち81%にものぼった。
マイナビの栗田卓也リサーチ&マーケティング部長は「就活を始める目安はあった方がいい。もしなくなれば中小企業は圧倒的に不利になる」と指摘する。目安がなくなると大手企業がいつでも採用活動をするようになり、いつも後回しになる中小企業の採用活動に支障が出るからだ。
日本商工会議所の三村明夫会頭も「何らかのルールは必要。これがないと就職活動が際限なく早まってしまう」とルール存続を求めている。
学生も企業も反応は複雑
誰のための廃止なのか
学生の反応はどうだろうか。9月末に東京都内であった就職情報会社・学情の就活イベントでたずねてみた。
第1志望の出版業界がかなわず、現在も就活中の私立大4年の女子学生(22)は「大学1、2年から就活が始まり、勉強に専念していた学生が不利になる現状はおかしい。ルールがなくなればもっと不利になる」と話す。一方、「早いうちに決まった方が卒論に専念できる」と肯定派の私立大4年の男子学生(22)もいた。
企業の採用担当者も反応は分かれる。人手不足に悩む介護サービス会社からは「ルール廃止で採用競争が激しくなり、介護業界はますます学生が採りにくくなる」と心配する。
食品メーカーの採用担当者は「リクルーターが出身校を回るOB訪問の時期を早めて対応する。とくに影響はない」と話しつつ、「内定を出した学生をつなぎとめておく手間とコストが増える」と警戒する。
学生や企業の声を聞いても、結局は誰のための就活ルール廃止なのかははっきりとしない。
新卒一括採用見直しも議論
「見えざる手」か「最大多数の幸福」か
経団連の就活ルール廃止の余波は単に日程の話だけで終わりそうもない。
中西会長の目線は、日本社会に特有といわれる「新卒一括採用」も向けられているからだ。
出身の日立製作所で欧米に長年、駐在した経験からか、欧米で主流の「通年採用」が持論だ。
これまでの会見などでも「大学を出たばかりの新卒を一括して採用する仕組みはもう時代に合わない」「学生は大学にいる間にもっと勉強するべきだ。印象がいいとか、偏差値が高い大学から採用するのはもうやめようと考えている」とも発言し、その矛先は企業の採用や大学教育のあり方にも向けられる。
中西会長は10月9日の会見でも、「もともと大学教育と職業のつながりが希薄であるというのは、反省しないといけない。企業側の責任もあるし、大学側はもっと責任がある」と語った。中西会長が有識者議員を務める政府の未来投資会議では、新卒一括採用についても話し合う予定だ。
終身雇用や年功序列型賃金と並んで、新卒一括採用は日本型雇用の特徴といわれてきた。
新卒を対象に一時期に就職を決めるこの採用方法だと「ワンチャンス就活」になる。大学出の新卒社員の3割が3年で辞めてしまうミスマッチを招いていると指摘される。一方、新卒に限定しない欧米流の採用方法に比べて若者の失業率が低いのは、卒業と同時に就職しやすい新卒一括採用のメリットでもある。
10月1日、首都圏にある大手企業は一斉に内定式を開いた。台風の影響で延期・中止した企業も目立ったが、大手金融機関の内定式では紺のリクルートスーツで身を固めた約250人が参加した。
就活の早期化や通年採用で内定式も形骸化しているといわれるが、就活ルールの廃止でこうした光景もやがてはみられなくなるのかもしれない。
しかし、「官製就活」になっても、すでに抜け駆けしているIT企業、事実上の青田買いを野放しにしている現在のインターンシップまで縛ることができるとは思えない。
また今回の「就活ルール廃止」は、中西会長の発言をきっかけに「守る方が損するようなルールはやめてしまえ」という大手企業に根強くあった不満が噴出する形で決着した。企業側の損得ばかりが論じられ、学生にとってどういうやり方がいいのかの議論はほとんどないままだった。
これから就活生の行く先は、結局は各企業の判断に任せるアダム・スミスの「見えざる手」にゆだねられるのだろうか。企業が自由に採用競争をすればおのずと人材がうまく配分され、企業の競争力がつくということなのか。
経団連のある副会長は「就活ルールはアダム・スミスではなく、ベンサムでいくべきだ」という。市場原理ではなく、採用される側の学生のためになり、中小企業もそれなりの人材が確保できる「最大多数の最大幸福」で考えるべきだというわけだ。
ルールを廃止するのなら、まず学生、次いで中小企業の声に目配りするのが当然だろう。いうまでもなく、「大手企業の最大幸福」だけで終わらせてはならない。
(朝日新聞編集委員 堀篭俊材)
https://diamond.jp/articles/-/181716
就活、経団連ルール廃止を正式決定
ニュースを斬る
「変な状況はやめる」と中西・経団連会長
2018年10月9日(火)
山田 宏逸
経団連は9日、経団連が主導して大学生の就職活動の時期を決めるこれまでのルールを廃止すると正式決定した。2020年春入社の学生(今の大学3年生)を最後に、経団連はルールづくりから手を引き、政府と大学による協議に委ねる。中西宏明会長は「我々がルールを作って社会が従う、従わないとか、そういう変な状況はやめる」と述べた。
就活ルールが誕生したのは1953年の旧文部省、大学、経済界の申し合わせがきっかけ。今は3月の会社説明会解禁、6月の面接解禁、10月の内定という3段階を踏むが、最近はIT(情報技術)分野など非加盟企業による解禁破りが相次ぐ。日程を早めては「朝令暮改」、日程を維持すると「守旧派」などと批判されてきた状況に、「ルールを抱えていることのリスクが多すぎる」(経団連関係者)との判断に傾いた。
今後、政府と大学が中心になって適当な日程を話し合う予定だが、常識的に考えて今の経団連ルールより「縛り」はゆるくなる。経団連もその枠組みに加わるものの、経緯が経緯だけに主導的な役割を果たす考えはない。経団連加盟の大手企業が堂々と解禁破りをする事態が想定されるほか、ルールの形骸化が強まったり、青田買いの動きは早まったりする可能性が高そうだ。中小企業にとって深刻な採用難が続く懸念も残った。
このコラムについて
ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/100900869
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- 金融ショックのリスク、投資家は過小評価−IMF金融安定報告 日銀とECBの急速な引き締めに備えよ、1987年に学ぶ うまき 2018/10/10 21:35:23
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