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「国産初のジェット旅客機」MRJの国産比率が実際は約3割の理由
https://diamond.jp/articles/-/181110
2018.10.4 週刊ダイヤモンド編集部
週刊ダイヤモンド2018年10月6日号第1特集は「新幹線vs飛行機 十番勝負」。ライフスタイルの変化や技術革新により、時間や運賃が中心だった「乗り物選びの基準」は多様化している。週刊ダイヤモンド編集部では、そうした多様化している現状を踏まえ、10の切り口で“移動の覇者”の決着をつけた。その中の「メイドインジャパン」対決を、特別公開する。新幹線は日本の技術の粋を集めて作られる。一方、飛行機は「国産」とうたわれる「三菱リージョナルジェット(MRJ)」だが、主要パートナーは大部分が海外勢だ。背景には、民間機ならではの事情と三菱重工業のある決意が隠されている。
「もはや、国産とはいえないのではないか」
必ずといっていいほど「国産初のジェット旅客機」という枕ことばが付く三菱重工業の「三菱リージョナルジェット(MRJ)」。だが、産業界では時に冒頭のような否定的な声が聞かれる。
これは、ある面では事実だ。というのも図の通り、MRJの主要パートナーの約7割は海外勢が占めているからだ。
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翻って、日本が世界に誇る輸送機器である新幹線は、「主要部品等の9割以上を日本製で固めている“ピュアジャパン”製品」(鉄道関係者)。製造面に焦点を絞り、メイドインジャパン比率でMRJと新幹線を比較すれば、それはもう圧倒的に新幹線に軍配が上がる。
ただし、同比率の低さをもってMRJを批判するのは早計だ。
民間旅客機を市場投入するには、航空当局から「型式証明」という安全に関する“お墨付き”をもらう必要がある。型式証明は航空機を設計・製造する国で取るのが一般的で、MRJは国土交通省航空局からの取得を目指している。
しかし、国交省が相手でも審査が甘くなるわけではない。型式証明には、各国の航空当局が相互認証する仕組みがある。そのため、国交省の型式証明があれば輸出国での取得審査は簡素化されるが、裏を返せば型式証明の基準自体が“国際標準”を満たすレベルに設定されているということだからだ。
MRJの開発が、自動車に次ぐ日本の一大産業をつくり上げようと着手されたのは事実だ。とはいえ、完成機メーカーの二大巨頭が米ボーイングと欧州エアバスであることからも分かるように、民間旅客機を完成機としてまとめ上げるノウハウは米欧で培われてきた。だからこそ、主要サプライヤーも多くが海外メーカーだ。
こうしたサプライヤーの納入実績を無視して、日本で一から部品等を開発するのは非効率だ。開発できたとしても部品の安全性の証明に時間がかかり過ぎる。国際標準の型式証明の取得は事実上、不可能になるとみていいだろう。
MRJの部品点数は自動車の約30倍にも上る。主要パートナーの座の多くを海外勢に奪われたとしても、日本の産業への一定以上の寄与はある──。航空機産業を所管する経済産業省も、ピュアジャパンの機体を造れるなどとは、はなから思っていないはずだ。
ボーイングに主翼まで任された
三菱重工の苦悩
三菱重工は長らく、Tier1(1次下請け)としてボーイングなどの部品製造を担ってきた。しかしボーイング787型機では、機体製造において最も難しいとされる主翼まで任され、「Tier1としては行き着くところまで行ってしまった」(三菱重工関係者)。
これでは、他社に技術的に追い上げられるのを待つばかりとなる。航空機製造の現場で自動化が進んだことも三菱重工を焦らせた。自動化が進むということは、自動化のための機械を導入すれば類似品を造れる可能性が高まるということを意味するからだ。実際、産油国などで「機械化を進めるから受注させてくれ」とボーイングに擦り寄る動きがあったという。
三菱重工にとってMRJの開発は、下請けから脱却し、ピラミッドの頂点に立って航空機産業で主導権を握る決意の表れといえた。これもまた、違うアプローチでのメイドインジャパンに他ならない。
新幹線は日本の日本による
日本のための製品
一方、新幹線の主要部品のほとんどが日本製で賄われていることにも理由がある。新幹線は在来線における製造技術を地道に進化させてできており、サプライチェーンもこうしたノウハウの蓄積過程で日本で構築されてきた。
海外の部品メーカーにも門戸を開放してはいるものの、「輸送費を考えると輸入する方が高くつくことが多いし、メンテナンスへの対応力の高さを考えると日本メーカーの方がいい」。これが鉄道業界関係者の共通認識だ。
オールジャパンで協力して造るどころか、2000年代後半からは、JRによる車両の設計・製造の“内製化”も進んでいる(下図参照)。メンテナンスがしやすいといったオペレーターならではの発想を車両開発に盛り込みやすくなる他、車両のコスト構造の把握ができるのもいい。
特に力を入れているのが、12年に東急車輛製造を傘下に収めたJR東日本である。JR東日本は1994年から車両製造に乗り出していたが、それでもできたのは在来線だけ。いよいよ新幹線にも着手したいと思いを募らせていた折、東京急行電鉄が、新幹線の製造経験がある同社を売りに出した。
これを渡りに船と買収し、名前も新たに誕生したのが総合車両製作所(J-TREC)である。同社はJR東日本の傘下に入ったことを機に、新幹線の設計・製造への注力を運命付けられた形だ。
実はJ-TRECは、新幹線の製造経験があるといっても旧国鉄向けが圧倒的に多く、JR向けに納入していたのはミニ新幹線が主だった。それでも、15年の北陸新幹線長野〜金沢開業の際に投入されたJR東日本の「E7系」には、川崎重工業や日立製作所などと共同開発メンバーに名を連ねた。
JR東日本の傘下に入り、総合車両製作所は新幹線の設計・製造にも積極的にチャレンジするようになった。手始めに参画したのがE7系の共同開発だ J-TREC
鉄道関係者によると、JR東日本が最高時速360キロメートルを目指して開発中の試験車両「ALFA-X」の設計・製造にも参画しているもようだ(ALFA-Xの詳細については本誌をご参照ください)。
今は川崎重工や日立の下でせっせと“英才教育”を受けている状態だが、決して侮ることはできない。十分なノウハウを積んだ暁には、J-TREC単独で新幹線の設計を手掛け、他の車両メーカーには設計フィーをもらいながら製造だけ依頼するという、JR東日本による究極の内製化もあり得る。
最後に製造面から見た新幹線の問題点を一つ。新幹線はこのように日本の日本による日本のための乗り物であるが故に、飛行機とは異なり、海外展開においては課題が突き付けられている。
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