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人気タワマンでも40年後は廃虚!?恐ろしいマンション劣化の真実
https://diamond.jp/articles/-/180763
2018.9.28 長嶋 修:株式会社さくら事務所創業者・会長 ダイヤモンド・オンライン
新築・中古ともに、「都心」「駅近」などの好条件マンションの価格高止まりが続いている。しかし、湾岸や武蔵小杉など人気エリアの花形タワーマンションであっても、状況次第では数十年後には「廃虚化」が待っている。恐ろしいマンション劣化の真実を解説する。(さくら事務所会長 長嶋修)
新築はもはや「高根の花」
中古価格もいまだに上昇中
数十年後、住民の高齢化や空き家増加によって修繕が難しくなり、廃墟と化すマンションは必ず出てくる。「都心」「駅近」の人気物件であっても、廃墟化する可能性はある(写真はイメージです) Photo:PIXTA
マンション価格の高止まりが続いている。不動産経済研究所によれば、2018年7月の首都圏新築マンション発売価格平均は6091万円と2017年度平均を上回り、東京都区部に至っては7270万円と、もはや一般的なサラリーマンには手の届かない価格水準。「都心」「駅直結」「駅前」「駅近」「大規模」「タワー」といったワードに象徴される大多数の新築マンションは、「高根の花」となりつつある。
こうしたことも手伝って人気が集まってきたのが「中古マンション」であり、こちらもやはり「都心」「駅近」などの物件が強い。
REINS(東日本不動産流通機構)によれば、首都圏中古マンション価格は2012年12月の民主党から自民党への政権交代以降一貫して上昇を続けている。例えば東京都心3区(中央・千代田・港区)の中古マンション平均成約価格は、政権交代以降60%アップの6247万円と、1990年代のバブルを上回る価格水準だ。
ただし、「都心」であっても駅からの距離による格差は生じている。東京都心7区(千代田・中央・港・新宿・目黒・品川区)の中古マンション成約価格は、2013年には駅から1分離れるごとに平方メートルあたり8222円の下落を示していたが、2018年5月時点では、駅から1分離れるごとに平方メートルあたり1万8205円もの下落と、ダウン金額が多くなっている。
湾岸や武蔵小杉でも条件次第で
「都市の墓標」化するマンションも!
それでは「都心」や「駅近」であればずっと安泰かというと、答えは「NO」である。タワーマンションが林立する都心湾岸地区や武蔵小杉(神奈川県)といった人気エリアも例外ではない。たとえ一定程度、立地が良くても、都市の墓標になりえる理由があるからだ。そして「駅から遠い」「築年数が古い」といったマンションはさらに不利で、将来は廃虚化が進むものも出てくるだろう。
また、空き家問題といえば、これまでは主に「一戸建て」に焦点が当たってきたが、やがて「マンションの空き家問題」が顕在化するだろう。マンションは一戸建てと異なり、共同住宅であるがゆえに、個人の意思で修繕や解体などの処分はできない。空き家増に加え住民の高齢化や賃貸化も進むことによって、必要な修繕費用も捻出しにくくなることから、修繕も解体もできずに、ただ朽ち果てていくだけの「廃虚マンション」の出現可能性が社会問題として浮かび上がりそうだ。
全国のマンションストック総数は2017年末時点で約644.1万戸。マンションの居住人口は約1590万人と推計される。これは、日本の総人口1億2652万人(2018年6月1日現在の概算値)の12.6%にあたり、国民のおよそ8人に1人がマンションに住んでいることになる。東京都の全人口1382万人(2018年5月現在)より208万人も多い水準だ。
マンションストック総数のうち、築30年以上のマンションは、およそ184.9万戸あるが、うち40%にあたる72.9万戸は築40年以上。これが2022年には128.7万戸、2027年には184.9万戸、2034年には351.9万戸と激増していく。簡単に言えば、マンションの築年数分布は、我が国の人口ピラミッド同様、高齢マンションが極端に多い構図となっているわけだ。
新築マンションに入居すると、住民が管理組合を結成する。入居から当面の間は、管理組合役員に自ら立候補して管理組合の運営に主体的に関わるなど、住民の意欲も高いことが多いが、年月がたって区分所有者の高齢化、賃貸化、空室化などが進行するにつれて、徐々に管理組合の理事のなり手不足、修繕積立金の収支悪化、大規模修繕や建て替えなどの意思決定ができないなどといった機能不全が見られるようになりがちだ。国はこうした「管理不全マンション」が今後、さらに増加していくことを懸念している。
住民の高齢化と賃貸化が
マンションを廃虚にする
「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」(国土交通省)のアンケートによれば、高経年マンションほど空き家化、賃貸化、高齢化が進み、自己居住率(持ち主自らが住んでいる住戸の割合)が低下するといったマンションの姿が浮かび上がる。
築40年を超えたマンションでは、自己居住しているのは全体の75.6%にすぎず、その居住者のうち21.7%が75歳以上。つまり、築40年になると、持ち主の4人に3人しかそこには居住しておらず、その居住者も4人に1人は75歳以上となっているのだ。75歳未満でそこに居住しているアクティブ層は全体の59.2%と、半分強しかいない。
同アンケートでは、高経年マンションほど管理組合総会決議の投票率が低下し、所有者不明の発生する割合が高くなること、また、所有者不明のケースでは、所有者の相続未完了や連絡が全く取れないなどで本人確認に苦労していることがわかる。賃貸率が20%を超えると、管理組合総会での大規模修繕の可否などを取り決める、総会での普通決議の投票率が極端に低下することも報告されている。
住民の高齢化が進めば、大規模修繕のための修繕積立金の値上げや一時金も徴収が難しくなっていく。多くが定期収入のない年金生活者であることや、高齢であることから長い将来を見通せなくなっているからだ。
また、賃貸化が進むことも、管理を難しくする大きな要因である。「平成25年マンション総合調査」(国土交通省)によれば、マンション全体の賃貸割合は13.7%、空室率は2.4%にすぎないが、経年により賃貸割合は高まり、築40年を超えると賃貸率は20%を超え、空室率は26.3%に上る。
賃貸化が進めば、所有者がそこに住まなくなる分、マンション管理への意識は希薄化する。そもそも外部居住者は理事になれないといった管理規約を設けているところも多い。
国土交通省が2016年から2017年にかけて、管理組合に対して行った調査(「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」)によると、「連絡先不通・所有者不明」の部屋があるマンションは全体の13.6%。連絡先不通・所有者不明物件のあるマンションの内訳は、築40年以上が29%、築30年以上40年未満が24%と、高経年マンションが多数を占める。
所有者と連絡が取れない部屋が増えると「管理費・修繕積立金が徴収できない」「管理が行われないことで劣化が早まり周囲に悪影響を及ぼす」「多数決による総会決議が困難になる」など、マンション管理に様々な支障をきたす。同調査では、今後は建て替え決議などの成立が困難になっていくと回答した人の割合は70%に達している。
タワーマンションの修繕は
さらに難題が山積み
横浜市立大学の齊藤広子教授は「マンションの空き家率は10%未満なら管理組合の対応で何とか問題を表面化しないで進められるが、10%を超えると日常的に管理組合運営が困難となり、20%を超えると長期的な展望も、それに向けた取り組みも難しくなり、負のスパイラルに陥りやすくなる。さらに空き家化が大幅に進むとエレベーターが止まり、ガス・電気・水道も止まり、居住が困難となり、自力での再生は難しくなる」と警鐘を鳴らしている。
国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によれば、建物の階数や規模などによりばらつきはあるものの、15階建て・5000平方メートル未満のマンションの場合、専有面積平方メートルあたり218円を、修繕積立金の平均的な目安としている。5000〜1万平方メートル未満なら202円、1万平方メートル以上なら178円程度が目安となる。ざっと平方メートルあたり200円として計算すると、例えば70平方メートルのマンションなら適正な毎月修繕積立金額は1万4000円。この水準の積立金を入居直後から続けていれば、おおむね問題ないでしょうというわけだ。
しかしこの水準も、消費増税は織り込んでいないほか、昨今高騰している建築費水準も計算には入れていない。大規模修繕費用は金融機関からの借り入れを伴うケースも多いが、やがては現行の金利水準も切り上がるだろう。大半のマンションは、こうした条件を十分に勘案した積み立てができていない。それらは廃虚予備軍と言っていいだろう。
ましてやタワーマンションは、足場を組んで外壁の修繕が行えないため、ゴンドラなどによる高所作業だ。一般的なマンションに比して作業性は落ち、基本的に風速10メートルを超えると作業は中止となる。従って、工期は長めで非常にコスト高なのだ。
加えてタワーマンションは、エレベーターや階段など共用部分の面積比が大きく、コンシェルジュサービスやラウンジ、スポーツジムなどのサービスもあるから、管理費もただでさえ高め。所有者にとっては二重苦である。
とあるタワーマンションの大規模修繕は2年10ヵ月かかり、総額は6億円以上だった。また、設置されている高速エレベーターなどの設備は、世界に1つしかない特注品で非常に高額であることが多く、相見積もりが取れず、修繕や交換には莫大なコストがかかる。そもそもエレベーターや情報通信機器など技術進化の激しい分野では、30年前と同じスペックのエレベーターに交換するとは考えにくく、コストは想定よりアップする可能性が高い。
そうなると建物がどんどん劣化していくのに必要な修繕もままならず、建物が朽ちていくのを見届けるしかないといった「タワーマンションの廃虚化」が進むだろう。
もちろん、そうならないためにきっちり対策をしている優良マンションもある。都心湾岸地区や武蔵小杉に林立するタワーマンション群では、持続可能なマンションと、廃虚となっていくマンションの二極化が始まるのだ。
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