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(回答先: 65歳大学教授、銀行にお金を借りに行ってみた なぜ銀行に衰退論?3つのポイント 投稿者 うまき 日時 2018 年 9 月 25 日 13:08:44)
債券市場が警告するイタリア、警告機能なき日本
上野泰也のエコノミック・ソナー
金利上昇を嫌う政治家が財政規律にコミット
2018年9月25日(火)
上野 泰也
2018年9月19日、オーストリア・ザルツブルグで開かれたEU首脳会議に出席したイタリアのコンテ首相(写真=ロイター/アフロ)
イタリア北部のジェノバで8月14日、高速道路の高架橋が約200メートルにわたって崩落し、30人を超える死者と多数の負傷者が出た。高速道路は1967年に完成し、2年前に改修工事が実施されたという。
このニュースに接した筆者はすぐに、日本で大規模災害の発生時に、公共事業拡張論者が「防災・減災」の必要性を唱えて公共事業費の上積みを図っている状況を念頭に、財政拡張論を前面に出してきたイタリアのポピュリスト・右派連立政権でも似たような主張が出てくるのではないかと予想した。そしてそれは、すぐに現実になった。
連立政権に参画している右派政党「同盟」の書記長でもあるサルビーニ副首相・内相は同日、シチリア島のカタニアで記者団に対し、イタリアの投資支出を増やすことがいかに重要か、今回の崩落事故が物語っていると述べ、EU(欧州連合)の支出制限が生命を危険にさらしかねないと強調。「外部からの制約が安全な道路や学校を整備するための支出を妨げるとすれば、これらのルールに従うことが理にかなうかどうか疑問が生じる。イタリア人の安全と財政規律のトレードオフ(交換)などあり得ない」などと述べた。
「我々の優先事項は、国民と国民のニーズだ」
これに対し、欧州委員会の報道官は16日に反論。「合意された財政規律には、加盟各国が特定の政策優先課題を設定できる柔軟性を持たせてあり、インフラの開発や維持管理を優先課題にすることも可能だ」と指摘して、サルビーニ氏による上記の主張をはねつけた。
要するに、対GDP(国内総生産)比で3%以内という財政赤字の許容範囲は通貨統合への参加ルールとして決めているが、その枠内での歳出の使途についてはイタリア政府に十分裁量あり、ということである。また、イタリアは14〜20年の交通網インフラ整備向けにEUから25億ユーロを受領しており、さらに4月には同国の高速道路向けに約85億ユーロの投資計画を承認したという。
これより前、やはり連立政権に加わっているポピュリスト政党「五つ星運動」のトップであるディマイオ副首相・経済発展相は8月6日、国営放送RAIのインタビューで、EUが設定した条件に反することなく改革を実施するよう努めるとしつつも、「われわれの優先事項は(財政規律のルールではなく)、国民と国民のニーズだ」と明言した。
9日夜にはディマイオ副首相はテレビ番組で、財政運営における均衡予算原則を義務付けている憲法上の規定について、「将来的にこの規定は廃止されるべきだと考える」とまで踏み込んで述べた。
また、イタリア国債のリスクプレミアム(リスクの大小に見合った市場金利の上乗せ部分)をECB(欧州中央銀行)が市場からの同国債買い入れを通じて一定の範囲内に押さえ込むことへの期待感も、与党内の一部から出てきた。
「同盟」の経済担当報道官は8月13日、トルコリラの急落を受けて市場が全般に「リスクオフ」に傾斜してイタリア、スペイン、ポルトガルといった南欧の国債利回りが軒並み上昇する中、「問題は解決されず破裂するだろう」とした上で、ECBはあらゆる2国間の国債利回り格差の上限を150ベーシスポイント(1.5%)以内にすると保証すべきだと主張。驚くべきことに、「ECBが保証しなければ、ユーロは崩壊する」とまで述べた。
一方、イタリアのコンテ首相とトリア経済・財務相は、同国の財政規律をしっかり維持することに強くコミットしている。コンテ首相は13日、主要閣僚と19年の予算について協議。財政安定を維持するとともに公的債務を削減する方針で一致したと、首相府が声明で明らかにした。この協議には「同盟」および「五つ星運動」の党首、トリア経済・財務相も参加していたという。
それでも連立与党の党首からは、財政を拡張しようとする発言がしばらく出続けた。ユーロ圏の債券市場参加者にとって、それらは恰好のイタリア国債の売り材料である。
サルビーニ副首相は8月20日、イタリア国債のドイツ国債とのスプレッド(利回り格差)拡大や投機、債務の格付け引き下げ、市場への攻撃などの動きが出た場合「政府は立ち向かう」という、市場に対して挑戦的なトークを発した。
ディマイオ副首相は28日、19年の財政赤字対GDP比が3%を上回る可能性があるとの見解を示した。選挙で公約した支出計画に資金を拠出するためだという。「(3%の上限を超える可能性を)排除しない。あらゆることがあり得る」と述べた。
サルビーニ副首相は同日、イタリアの市場が投機的な攻撃を受けた場合、EU以外の国外からの支援を期待していると述べた。同副首相はトリア経済・財務相の中国訪問について、EU以外の国と友好関係を強化する取り組みの一環であると説明。「もし誰かがイタリアに投機を仕掛けようとすれば、われわれはEU以外からの支援を頼りにする」と述べるとともに、中国以外にも米国やロシアとも関係を強化する意向を示した。
大手格付会社フィッチ・レーティングスは8月31日、イタリアの国債格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。これに関連してディマイオ副首相は9月2日、「格付会社の指摘に従って市場を安心させる反面、イタリア国民を裏切ることなど考えられない」「われわれは常にイタリア国民を優先させる」とコメントした。
こうした中、イタリアの10年物国債利回りは8月31日に一時3.25%まで上昇。独10年債との利回り格差は290ベーシスポイント(2.9%)を超えるところまで一時拡大した<図1>。
■図1:イタリアとドイツの10年物国債利回り
(出所)ロイター
しかしその後は、筆者が抱いた財政規律の弛緩への警戒感を「火消し」する方向で、コンテ首相やトリア経済・財務相だけでなく連立与党の党首2人からも、金融市場に安心感を与えようとする発言が繰り返し出てきている。恥ずかしながら筆者がほとんど予想していなかった事態である。
サルビーニ副首相は9月3日のラジオ番組で、19年の財政赤字はEUの定める上限である対GDP比3%を超えることはない、3%未満の水準を維持したいと述べた。翌4日には、「われわれはすべての規律、すべてのコミットメントを尊重する、納得してもらえるよう努力する」とコメント。さらに、「五つ星運動」党首のディマイオ副首相からも、そうした発言が出てきた。
債券市場は、「生きている」のが望ましい
イタリアの財政の先行きについて安心感が市場に広がる中、同国の10年債利回りは低下を続け、対ドイツ国債の利回り格差は急速に縮小した。
どうして連立与党党首の発言が急におとなしくなったのか。あるいは首相や経済・財務相の主張を受け入れたのか。
その謎を解くカギを含んでいたのが、トリア経済・財務相がフォーラムに出席して9月9日に行った発言である。
「その後の利回り上昇で30億〜40億ユーロを余分に払う必要が出てくるとすれば、20億〜30億ユーロ赤字を増やしても意味がない」。トリア氏はこう述べつつ、閣僚の全員が「それを十分心得ている」と説明。さらに、現在ユーロ圏で2番目に高いGDP比130%を上回る債務比率の圧縮が実現すれば、「金融市場でのイタリアのプレゼンスを強化し、ひいては財源を解き放ち、投資を呼び込むと期待される」とした。
ユーロ圏では、財政規律弛緩に対して債券市場が警告を発信する機能が生きている。ECBが量的緩和を年末に予定通り終了すれば、そうした機能はより自由に発揮されることになる。そして、市場の力による金利コストの増加は、イタリア政府が自由に使える財政資金を減らす方向に働く。そのあたりに、債券市場が事実上日銀の支配下にあって、財政面の警告シグナルを発信する機能が消滅してしまった日本との、決定的な違いがある。
やはり、債券市場は「生きている」のが望ましい。たとえポピュリストの政権が誕生する場合でも、そのことによって財政政策の規律は維持されやすくなる。
このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/092000158/
GPIF、リーマン再来なら巨額評価損 危機に備えを
編集委員 田村正之
2018/9/24 5:30
日本経済新聞 電子版
今月は2008年9月に起きたリーマン・ショックから10年目だった。様々なメディアでリーマン後の検証がなされたが、焦点が当たらなかったのが公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用への影響だ。新たな危機が起きた際に備えて考えておきたい。
GPIFは基本とする資産配分比率を14年10月に変えた。それまで60%だった国内債券の比率を引き下げ、代わりに国内外の株式を計50%に引き上げた。極端に利回りが低下した国内債券中心では運用が難しくなったからだ。
変更後の結果をみると15年度は株価下落で5.3兆円の評価損が発生。当時の野党などから「株式の比率を高めた結果だ」として責任追及の声が上がった。しかし16、17年度は反対に計18兆円の運用益になった。
■長期では株の比率が高ければ資産が増えやすい
より長期間では資産配分の違いはどれほど成績に影響するのか。市場運用が始まった01年度から新旧それぞれの配分比率で運用していたと仮定して資産の増え方を試算した。株式を増やした新・配分比率は資産が大きく増えている。「株式は短期的には変動が大きいが、長期では債券に比べて資産が増えやすい」というセオリー通りの結果だ。
しかし考えておきたいのが、リーマン危機時に株式の比率が高い新配分比率だったらどうだったかということだ。08年度だけで下落率は21%(月次ベース)。仮に18年3月末の運用資産156兆円のまま同じことが起きれば評価損は約33兆円だ。
本来はもう少し長めの時期で見るべきだ。新配分比率だった場合のリーマン前の高値は07年10月で最安値は09年2月なので、高値から安値までの下落率は34%に達する。156兆円なら53兆円の評価損だ(ちなみに新配分比率なら21%、34%という下落率になったはずであることはGPIFにも確認済みだ)。
15年度の5兆円の評価損ですら大騒ぎが起きたことを振り返れば、五十数兆円の評価損が出た場合、混乱は当時の比ではないだろう。
リーマン後現実に起きたことは、様々な資産が5〜6年で回復したことだ。運用を続けていれば、長期では新資産配分比率の方が旧資産配分比率より資産を増やせたことはグラフでもわかる。
SMBC日興証券の末沢豪謙・金融財政アナリストは「日本は6月時点で株式などの実質的な保有比率は個人金融資産の12%にすぎず、米国(46%)に比べて極端に低い。年金も個人の老後資産の一部と考えると、GPIFが株の比率を上げたことには一定の意義がある」と指摘する。ちなみにGPIFの運用は年金財政を長期的に調整していくためのもので、大きな評価損や評価益が出ても短期的な受給額には影響しない。
■債券でも金利上昇なら多額の評価損
仮に国内債券の比率を元の6割(156兆円なら94兆円)に戻せば安全というものでもない。債券は金利が上がると価格が下落する。長期では予期せぬ円安などを機にインフレが起こり金利が上がる可能性もある。仮に金利が2%上がり債券運用が94兆円なら計算上、年に17兆〜18兆円程度の評価損になる。債券の場合は満期まで持てば価格は戻るとはいえ、長期で資産が増えにくいことを考え併せるとそこそこ大きなリスクともいえる。
問題は、世界に分散して株式の比率を高めに運用すれば長期では資産を増やしやすいというセオリーが、政治やメディア、国民全体に十分知られていないことだ。そうした中で巨額の評価損が出れば動揺が広がり「株式の比率を高めたのが悪い、株を売れ」という大合唱が起きかねない。
■安値圏で株を売れば回復不能
安値圏で株を売ってしまえばその後相場が回復しても恩恵は受けられなくなる。リーマン危機時に失敗した人は、下落時に動揺して株を売った人、つまり「バス(投資)から降りてしまった人」だ。国民共通の大事な資産である年金の世界で同じことが起きれば損失は計り知れない。
もちろんこれはあくまでリーマン級の危機が来た場合の試算だ。1980年以降の世界的な大きな株価下落局面を振り返ると、いずれもリーマン危機時より下落率は小さい。再び訪れるであろう危機も、比較的小規模なものであることを祈りたい。
それでも国民全体の関心が高い年金運用だからこそ、やはりリーマン危機並みのレベルを想定しておくべきだろう。株の比率を高めた以上、GPIFも政府も、一時的には巨額の評価損が発生する可能性があること、それでも長期では年金資産を増やしやすいことを、何度でも国民全体に周知しておくことが重要だ。
そのように理解を深めておくことが難しかったり、一時的でも巨額の評価損が許容されなかったりする可能性もある。その場合は来年の公的年金の財政検証後に検討される配分見直しの際、株の比率をやや下げた基本配分へ調整しておくことも検討材料にせざるをえないのではないだろうか。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35611880R20C18A9000000/
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- ブレグジットに「血のにおい」、ポンド売り持ち拡大か うまき 2018/9/25 22:23:21
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