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GPIF、リーマン再来なら巨額評価損 危機に備えを 債券市場が警告するイタリア、警告機能なき日本
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/576.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 9 月 25 日 13:13:29: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 65歳大学教授、銀行にお金を借りに行ってみた なぜ銀行に衰退論?3つのポイント 投稿者 うまき 日時 2018 年 9 月 25 日 13:08:44)

債券市場が警告するイタリア、警告機能なき日本
上野泰也のエコノミック・ソナー
金利上昇を嫌う政治家が財政規律にコミット
2018年9月25日(火)
上野 泰也

2018年9月19日、オーストリア・ザルツブルグで開かれたEU首脳会議に出席したイタリアのコンテ首相(写真=ロイター/アフロ)
 イタリア北部のジェノバで8月14日、高速道路の高架橋が約200メートルにわたって崩落し、30人を超える死者と多数の負傷者が出た。高速道路は1967年に完成し、2年前に改修工事が実施されたという。
 このニュースに接した筆者はすぐに、日本で大規模災害の発生時に、公共事業拡張論者が「防災・減災」の必要性を唱えて公共事業費の上積みを図っている状況を念頭に、財政拡張論を前面に出してきたイタリアのポピュリスト・右派連立政権でも似たような主張が出てくるのではないかと予想した。そしてそれは、すぐに現実になった。
 連立政権に参画している右派政党「同盟」の書記長でもあるサルビーニ副首相・内相は同日、シチリア島のカタニアで記者団に対し、イタリアの投資支出を増やすことがいかに重要か、今回の崩落事故が物語っていると述べ、EU(欧州連合)の支出制限が生命を危険にさらしかねないと強調。「外部からの制約が安全な道路や学校を整備するための支出を妨げるとすれば、これらのルールに従うことが理にかなうかどうか疑問が生じる。イタリア人の安全と財政規律のトレードオフ(交換)などあり得ない」などと述べた。
「我々の優先事項は、国民と国民のニーズだ」
 これに対し、欧州委員会の報道官は16日に反論。「合意された財政規律には、加盟各国が特定の政策優先課題を設定できる柔軟性を持たせてあり、インフラの開発や維持管理を優先課題にすることも可能だ」と指摘して、サルビーニ氏による上記の主張をはねつけた。
 要するに、対GDP(国内総生産)比で3%以内という財政赤字の許容範囲は通貨統合への参加ルールとして決めているが、その枠内での歳出の使途についてはイタリア政府に十分裁量あり、ということである。また、イタリアは14〜20年の交通網インフラ整備向けにEUから25億ユーロを受領しており、さらに4月には同国の高速道路向けに約85億ユーロの投資計画を承認したという。
 これより前、やはり連立政権に加わっているポピュリスト政党「五つ星運動」のトップであるディマイオ副首相・経済発展相は8月6日、国営放送RAIのインタビューで、EUが設定した条件に反することなく改革を実施するよう努めるとしつつも、「われわれの優先事項は(財政規律のルールではなく)、国民と国民のニーズだ」と明言した。
 9日夜にはディマイオ副首相はテレビ番組で、財政運営における均衡予算原則を義務付けている憲法上の規定について、「将来的にこの規定は廃止されるべきだと考える」とまで踏み込んで述べた。
 また、イタリア国債のリスクプレミアム(リスクの大小に見合った市場金利の上乗せ部分)をECB(欧州中央銀行)が市場からの同国債買い入れを通じて一定の範囲内に押さえ込むことへの期待感も、与党内の一部から出てきた。
 「同盟」の経済担当報道官は8月13日、トルコリラの急落を受けて市場が全般に「リスクオフ」に傾斜してイタリア、スペイン、ポルトガルといった南欧の国債利回りが軒並み上昇する中、「問題は解決されず破裂するだろう」とした上で、ECBはあらゆる2国間の国債利回り格差の上限を150ベーシスポイント(1.5%)以内にすると保証すべきだと主張。驚くべきことに、「ECBが保証しなければ、ユーロは崩壊する」とまで述べた。
 一方、イタリアのコンテ首相とトリア経済・財務相は、同国の財政規律をしっかり維持することに強くコミットしている。コンテ首相は13日、主要閣僚と19年の予算について協議。財政安定を維持するとともに公的債務を削減する方針で一致したと、首相府が声明で明らかにした。この協議には「同盟」および「五つ星運動」の党首、トリア経済・財務相も参加していたという。
 それでも連立与党の党首からは、財政を拡張しようとする発言がしばらく出続けた。ユーロ圏の債券市場参加者にとって、それらは恰好のイタリア国債の売り材料である。
 サルビーニ副首相は8月20日、イタリア国債のドイツ国債とのスプレッド(利回り格差)拡大や投機、債務の格付け引き下げ、市場への攻撃などの動きが出た場合「政府は立ち向かう」という、市場に対して挑戦的なトークを発した。
 ディマイオ副首相は28日、19年の財政赤字対GDP比が3%を上回る可能性があるとの見解を示した。選挙で公約した支出計画に資金を拠出するためだという。「(3%の上限を超える可能性を)排除しない。あらゆることがあり得る」と述べた。
 サルビーニ副首相は同日、イタリアの市場が投機的な攻撃を受けた場合、EU以外の国外からの支援を期待していると述べた。同副首相はトリア経済・財務相の中国訪問について、EU以外の国と友好関係を強化する取り組みの一環であると説明。「もし誰かがイタリアに投機を仕掛けようとすれば、われわれはEU以外からの支援を頼りにする」と述べるとともに、中国以外にも米国やロシアとも関係を強化する意向を示した。
 大手格付会社フィッチ・レーティングスは8月31日、イタリアの国債格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。これに関連してディマイオ副首相は9月2日、「格付会社の指摘に従って市場を安心させる反面、イタリア国民を裏切ることなど考えられない」「われわれは常にイタリア国民を優先させる」とコメントした。
 こうした中、イタリアの10年物国債利回りは8月31日に一時3.25%まで上昇。独10年債との利回り格差は290ベーシスポイント(2.9%)を超えるところまで一時拡大した<図1>。
■図1:イタリアとドイツの10年物国債利回り

(出所)ロイター
 しかしその後は、筆者が抱いた財政規律の弛緩への警戒感を「火消し」する方向で、コンテ首相やトリア経済・財務相だけでなく連立与党の党首2人からも、金融市場に安心感を与えようとする発言が繰り返し出てきている。恥ずかしながら筆者がほとんど予想していなかった事態である。
 サルビーニ副首相は9月3日のラジオ番組で、19年の財政赤字はEUの定める上限である対GDP比3%を超えることはない、3%未満の水準を維持したいと述べた。翌4日には、「われわれはすべての規律、すべてのコミットメントを尊重する、納得してもらえるよう努力する」とコメント。さらに、「五つ星運動」党首のディマイオ副首相からも、そうした発言が出てきた。
債券市場は、「生きている」のが望ましい
 イタリアの財政の先行きについて安心感が市場に広がる中、同国の10年債利回りは低下を続け、対ドイツ国債の利回り格差は急速に縮小した。
 どうして連立与党党首の発言が急におとなしくなったのか。あるいは首相や経済・財務相の主張を受け入れたのか。
 その謎を解くカギを含んでいたのが、トリア経済・財務相がフォーラムに出席して9月9日に行った発言である。
 「その後の利回り上昇で30億〜40億ユーロを余分に払う必要が出てくるとすれば、20億〜30億ユーロ赤字を増やしても意味がない」。トリア氏はこう述べつつ、閣僚の全員が「それを十分心得ている」と説明。さらに、現在ユーロ圏で2番目に高いGDP比130%を上回る債務比率の圧縮が実現すれば、「金融市場でのイタリアのプレゼンスを強化し、ひいては財源を解き放ち、投資を呼び込むと期待される」とした。
 ユーロ圏では、財政規律弛緩に対して債券市場が警告を発信する機能が生きている。ECBが量的緩和を年末に予定通り終了すれば、そうした機能はより自由に発揮されることになる。そして、市場の力による金利コストの増加は、イタリア政府が自由に使える財政資金を減らす方向に働く。そのあたりに、債券市場が事実上日銀の支配下にあって、財政面の警告シグナルを発信する機能が消滅してしまった日本との、決定的な違いがある。
 やはり、債券市場は「生きている」のが望ましい。たとえポピュリストの政権が誕生する場合でも、そのことによって財政政策の規律は維持されやすくなる。


このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/092000158/


GPIF、リーマン再来なら巨額評価損 危機に備えを
編集委員 田村正之
2018/9/24 5:30
日本経済新聞 電子版
 今月は2008年9月に起きたリーマン・ショックから10年目だった。様々なメディアでリーマン後の検証がなされたが、焦点が当たらなかったのが公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用への影響だ。新たな危機が起きた際に備えて考えておきたい。

 GPIFは基本とする資産配分比率を14年10月に変えた。それまで60%だった国内債券の比率を引き下げ、代わりに国内外の株式を計50%に引き上げた。極端に利回りが低下した国内債券中心では運用が難しくなったからだ。
 変更後の結果をみると15年度は株価下落で5.3兆円の評価損が発生。当時の野党などから「株式の比率を高めた結果だ」として責任追及の声が上がった。しかし16、17年度は反対に計18兆円の運用益になった。
■長期では株の比率が高ければ資産が増えやすい
 より長期間では資産配分の違いはどれほど成績に影響するのか。市場運用が始まった01年度から新旧それぞれの配分比率で運用していたと仮定して資産の増え方を試算した。株式を増やした新・配分比率は資産が大きく増えている。「株式は短期的には変動が大きいが、長期では債券に比べて資産が増えやすい」というセオリー通りの結果だ。
 しかし考えておきたいのが、リーマン危機時に株式の比率が高い新配分比率だったらどうだったかということだ。08年度だけで下落率は21%(月次ベース)。仮に18年3月末の運用資産156兆円のまま同じことが起きれば評価損は約33兆円だ。
 本来はもう少し長めの時期で見るべきだ。新配分比率だった場合のリーマン前の高値は07年10月で最安値は09年2月なので、高値から安値までの下落率は34%に達する。156兆円なら53兆円の評価損だ(ちなみに新配分比率なら21%、34%という下落率になったはずであることはGPIFにも確認済みだ)。
 15年度の5兆円の評価損ですら大騒ぎが起きたことを振り返れば、五十数兆円の評価損が出た場合、混乱は当時の比ではないだろう。
 リーマン後現実に起きたことは、様々な資産が5〜6年で回復したことだ。運用を続けていれば、長期では新資産配分比率の方が旧資産配分比率より資産を増やせたことはグラフでもわかる。
 SMBC日興証券の末沢豪謙・金融財政アナリストは「日本は6月時点で株式などの実質的な保有比率は個人金融資産の12%にすぎず、米国(46%)に比べて極端に低い。年金も個人の老後資産の一部と考えると、GPIFが株の比率を上げたことには一定の意義がある」と指摘する。ちなみにGPIFの運用は年金財政を長期的に調整していくためのもので、大きな評価損や評価益が出ても短期的な受給額には影響しない。
■債券でも金利上昇なら多額の評価損
 仮に国内債券の比率を元の6割(156兆円なら94兆円)に戻せば安全というものでもない。債券は金利が上がると価格が下落する。長期では予期せぬ円安などを機にインフレが起こり金利が上がる可能性もある。仮に金利が2%上がり債券運用が94兆円なら計算上、年に17兆〜18兆円程度の評価損になる。債券の場合は満期まで持てば価格は戻るとはいえ、長期で資産が増えにくいことを考え併せるとそこそこ大きなリスクともいえる。
 問題は、世界に分散して株式の比率を高めに運用すれば長期では資産を増やしやすいというセオリーが、政治やメディア、国民全体に十分知られていないことだ。そうした中で巨額の評価損が出れば動揺が広がり「株式の比率を高めたのが悪い、株を売れ」という大合唱が起きかねない。
■安値圏で株を売れば回復不能
 安値圏で株を売ってしまえばその後相場が回復しても恩恵は受けられなくなる。リーマン危機時に失敗した人は、下落時に動揺して株を売った人、つまり「バス(投資)から降りてしまった人」だ。国民共通の大事な資産である年金の世界で同じことが起きれば損失は計り知れない。
 もちろんこれはあくまでリーマン級の危機が来た場合の試算だ。1980年以降の世界的な大きな株価下落局面を振り返ると、いずれもリーマン危機時より下落率は小さい。再び訪れるであろう危機も、比較的小規模なものであることを祈りたい。
 それでも国民全体の関心が高い年金運用だからこそ、やはりリーマン危機並みのレベルを想定しておくべきだろう。株の比率を高めた以上、GPIFも政府も、一時的には巨額の評価損が発生する可能性があること、それでも長期では年金資産を増やしやすいことを、何度でも国民全体に周知しておくことが重要だ。
 そのように理解を深めておくことが難しかったり、一時的でも巨額の評価損が許容されなかったりする可能性もある。その場合は来年の公的年金の財政検証後に検討される配分見直しの際、株の比率をやや下げた基本配分へ調整しておくことも検討材料にせざるをえないのではないだろうか。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35611880R20C18A9000000/ 
 

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コメント
1. 2018年9月28日 14:46:54 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1581] 報告
https://diamond.jp/articles/-/180759
2018年9月28日 塚崎公義 :久留米大学商学部教授
日本の「財政」も「年金」も破綻しないので心配はいらない

財政の破綻を議論する際は
破綻をどう定義するかが重要
「日本の財政が破綻するか否か」を議論する際、まず破綻をどう定義するかが重要だ。なぜなら、「日銀に紙幣を印刷させて、それを政府が借りて全ての支出を賄えば、財政は絶対に破綻しない」からだ。確かにハイパーインフレになるかもしれないが、絶対に破綻はしない。
 あるいは、日本人の個人金融資産は1800兆円あって、政府の借金額より多いのだから、「税率100%の財産税」といったものを新設すれば、暴動が起きるかもしれないが借金は全て返済でき、やはり破綻しない。
 だが、こうした事態は現実的ではない。そこで本稿では「国債の償還不能のほか、ハイパーインフレや預金封鎖など」を「財政破綻」と定義することとする。
 そこで以下では、そうしたことをせずに、長期的に政府が借金を返せるのかという問題意識で論じることにしよう。
「極端すぎて話にならない」と言われることを承知の上で、極端なケースから初めてみたい。
 一人っ子と一人っ子が結婚して一人っ子を生むと、日本人の人口は減って行き、最後は一人になる。その子は、家計金融資産1800兆円を相続する。その子が他界すると、それが国庫に入るから、政府の借金は一瞬で消える。
「財政赤字は、われわれのツケを将来世代に押しつけるもので、世代間格差を作り出す」と言われる。その限りでは正しいが、遺産のことも考えれば、それは正しくないのだ。世代間格差などない。あるのは遺産が相続できる子と、できない子の「世代内格差」だけだ。
 つまり、数千年待てば財政赤字問題は解決するのだから、基本的に心配は無用なのだ。あとは、その間に何かとんでもないことが起きて財政が破綻する可能性があるのか否かを検討すればいい。

「明日までは破綻しない」が続き
結局、破綻しない

 続いて、少し現実的な話をしよう。
 日本人投資家が現金を手にしたとき、「もしかしたら日本政府が破産すれば、現金は日本銀行券だから紙くずになるし、日本国債も紙くずになる」と考えたとする。彼(もしくは彼女、以下同)の選択肢は、外貨を買うことだけだ。メガバンクに預金したり、日本株を買ったりする選択肢は合理的とは言えまい。
 だとすると、彼は「国債を買うと日本政府が破産するかもしれないが、外貨を買うと円高外貨安で為替差損を被るかもしれない」と悩むに違いない。
 そして、彼はこう考える。「明日以降のことは明日考えるとして、とりあえず明日までの間、どうしよう」「今日まで順調に国債は消化されてきた。他の投資家たちは日本政府の破産より円高外貨安を恐れているから、明日までに日本政府が突然破産する可能性は低そうだ。外貨を持っているより安全そうだから、明日までは日本国債で運用しよう」と。
 明日も明後日もそのように考えて同じことをするので、数千年の間、日本国債は投資家に順調に購入され、日本政府は破綻せずに最後の日を迎えることができると筆者は考えている。もちろん、その前に増税が実施されれば、財政が健全化される可能性はある。
 さて、そうはいっても投資家たちが「日本政府は明日までに破産するリスクが高いから、外貨の方がマシだ」と考える可能性はゼロではない。そうなると、日本政府は国債が発行できず、資金繰りに行き詰まるかもしれない。そう考える読者も多いだろうが、大丈夫。政府の借金が、外貨建てではなく円建てだからだ。どのように大丈夫なのかは、次回の拙稿(来週金曜日寄稿予定)で詳しく述べる。

少子高齢化による労働力不足で
気楽に増税できるようになるはず

 違う視点から考えてみよう。
 今後は、少子高齢化で増税が容易になるため、財政が健全化するだろう。そう考える根拠は、少子高齢化によって労働力不足になるからだ。
 現在、政府が増税を躊躇している理由は2つだ。1つは選挙で負ける可能性、そしてもう1つは増税によって景気が後退すれば失業者が増え、景気対策が必要となることだ。
 第1の点はさておき、第2の点に関しては、今後、少子高齢化によって労働力不足の時代になるということが重要だ。「景気がいいときは猛烈な労働力不足、景気が悪いときは労働力の需給が均衡」といった時代になれば、「気楽に」増税ができるようになるはずだ。
 さらにいえば、景気が過熱してインフレが心配なときに、「金融引き締めではなく増税で景気を冷やしてインフレを抑制する」といった選択肢も検討されるようになるかもしれない。そうなれば、一石二鳥であろう。

配偶者も子も親もいない被相続人に
高率の相続税を課すべき

 筆者は、増税するならば相続税だと考えている。痛税感が軽いこと、労働意欲などを阻害しない税であること、自分の努力ではない所得に課税する方が公平であることなどがそう考える理由だ。
 特に、被相続人に配偶者も子も親もいない場合には、兄弟姉妹が相続するわけなので、これには高率の相続税を課すべきだろう。子がいないということは、彼が受け取っていた年金の原資は「他人の子が納めた年金保険料」なのだから、使い残した分は国庫に納めるのが公平というものだ。
 最近は、結婚しない人や、結婚しても子がいない人が増えているので、数十年待てば、そうした人々から莫大な相続税が国庫に納入されることになろう。
 筆者がもう1つ期待しているのが固定資産税だ。これは、東京一極集中を是正する策としも重要だろう。都心の会社がオフィスを地方に移転させれば、東京都心の雇用が減って地方に雇用が生まれ、労働者の移動を促すことになる。これも一石二鳥となり得る税収といえる。
 上記したように、財政は破綻しない。一方で、景気は「税収という金の卵を産む鶏」だ。下図を見ると、GDPがわずかに増減しただけで税収が大きく増減しているのが見て取れる。

拡大画像表示

 焦ることはない。今は景気が後退しないようにしっかり見守り、景気拡大が税収を伸ばしてくれることを確認しよう。10年後か20年後に、労働力不足が深刻化して、増税しても失業者が増えない、と確信できるようになってから増税すれば十分だ。

公的年金は破綻しないから
年金保険料はしっかり払った方がいい

 ただ、少子高齢化は、年金財政が苦しくなってしまうという問題を伴う。日本の公的年金は、「現役世代から集めた金を高齢者に配る」システムだから、現役世代と高齢者の人数比が変わると年金財政が苦しくなる。
 しかし、年金が受け取れなくなることはない。年金の額が減ることは当然あるだろうが、それは皆が長生きするのだから仕方のないことといえる。健康ならば70歳まで働いて、70歳から年金を受け取れば、毎回の受け取り額が42%増えるので、現在の高齢者と遜色ない年金が受け取れると期待しよう。
連載の著者、塚崎公義氏の近著『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由』(河出書房新社 税込1512円)
 もう1つ心強いのが、政府が他の予算を削っても、年金だけは削らないと思われることだ。理由は2つある。
 第1の理由は、年金を削ると生活できずに生活保護を申請する高齢者が激増し、かえって財政が苦しくなる可能性が高いこと。もう1つは、シルバー民主主義である。年金を削ると選挙に負けるので、政治家は何としても年金だけは払おうとするのだ。
 読者諸兄が自営業者などである場合、年金保険料を払わないと、老後の年金が受け取れなくなってしまう。そうした事態にならないよう、払えるならばしっかり払おう。どうしても払えないなら、免除の申請書を出そう。黙って無視している場合と比べて、紙一枚で大きな違いがあるからだ。
 なお、本稿は拙著『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由』の内容の一部をご紹介したものである。詳しく知りたい場合、あるいは来週の記事を先読みしたい場合は、拙著をご覧いただければ幸いである。
(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

 

2018年9月28日 みわよしこ :フリーランス・ライター
生活保護費引き下げが始まっても苦学生を見捨てない堺市の気概
10月1日、6月に再改正された生活保護法がついに施行される。実質的な保護費引き下げのなかでも、中高生の支援を根気よく続け、国も注目する堺市の取り組みとは(写真はイメージです) Photo:PIXTA
生活保護費引き下げを前に
中高生の未来を応援する
 2018年10月1日、つまり本記事の公開から3日後、6月に再改正された生活保護法が施行される。同時に、生活保護基準のうち生活費分(生活扶助)の見直しが実施される。今回の見直しは「ほぼ引き下げ」(最大5%)で、複数の子どもがいる世帯に対する引き下げ幅が特に大きい。
 複数の子どもがいる生活保護世帯は、2013年に行われた生活費分の引き下げ以後、2015年の家賃補助(住宅扶助)・暖房費補助(冬季加算)引き下げなどの積み重ねで、ジワジワと締め付けられ続けている。家計は、今でさえ青息吐息だ。日々の暮らしや学校生活や地域での生活は、これからどうなるのか。「知り合いのおばさん」の立場から、心配でならない。
 さらに同日、6月1日に再改正された生活保護法が施行される。生活保護世帯の子どもが大学などに進学する際に、10万円(自宅外の場合は30万円)の一時金を給付するという内容は盛り込まれているのだが、進学後に生活保護の対象から外れる取り扱いは現在と変わらない。現在の大学生活の困難は、ほぼ解消されないだろう。また、これまで現金で給付されてきた「学習支援費」は、10月以後、ほぼクラブ活動の実費のみとなる。
 その法改正の直前の5月30日、大阪府・堺市は、生活保護世帯の中高生向け未来応援BOOK『ココから!』を作成したことを公表した。明るいイメージの表紙をめくると、「私たちは、頑張っている中高生のみなさんを応援しています!」という言葉がリボンに飾られている。その下には「家庭の事情で将来の夢を諦めないで」「未来にはたくさんの可能性」「将来に向けての準備をゆっくり『ココから!』」という文言が並ぶ。
 私は思わず、涙しながら疑問を抱いてしまう。堺市のケースワーカーたちは、なぜ希望を捨てず、立ち去らずにいられるのだろうか。そこで堺市役所を直接訪れ、現役ケースワーカー・元ケースワーカーの皆さんから、直接お話を聞かせていただいた。
 現在の堺市の生活保護には、若手ケースワーカーの勉強会「Switch」(生活困窮者の支援の在り方研究会)という重要な存在がある。発足当初は、日常業務の中で感じるモヤモヤ感を持ち寄り、率直に語り合う場、ケースワーカーの「しゃべり場」だった。
 奨学金問題が世の中の話題となっていた2016年初頭、Switchの集まりで、「生活保護世帯から進学した大学生は、どうしているんだろう?」という問題意識が語られた。生活保護のもとでは大学などへの通学が認められていない。生活保護世帯の高校生が、家族と同居したまま大学に進学する場合、その大学生1人を別世帯とする「世帯分離」が行われる。生活保護の単位は「世帯」だからだ。
 同時に、大学生はケースワークの対象ではなくなる。何時間アルバイトしているのか。どういう困難に直面しているのか。奨学金の借り入れは何万円なのか。国民健康保険に加入せず、無保険状態になってはいないか。気がかりでも、同居している親などを通じて聞き取るのが精一杯だ。調査しなくては、実態はわからない。そして、世帯分離して家族と同居している生活保護世帯の大学生などの生活実態調査が、ケースワーク業務の一環として行なれることになった。
政府を動かした
ケースワーカーたちの取り組み
お話を聞かせていただいた堺市の皆さん。堺市のケースワーカーは総勢172名(2018年4月1日)。女性比率はおおむね60%
 大学生たちは、家庭からの経済的支援を受けられない。学費と生活費のために、アルバイトに明け暮れる。さらに日本学生支援機構奨学金から借り入れる奨学金総額の中央値は、4年制大学の場合で500万円台だ。学生生活は、疲労と不安とともにある。
 2017年度、厚労省は全国を対象として同様の調査を行なった。堺市の取り組みの影響であろう。厚労省の調査では、「子どもが大学に進学したため保護費が減額され、60%の家庭が食費や衣料費をさらに節約した」といった詳細が明らかになっている。
 しかし今回、一連の生活保護制度改革で、「大学進学なら世帯分離」という原則は揺らいでいない。なお、生活保護のもとでの大学進学を認めるにあたり、法改正は必要ない。厚労省の通知1通で実現できる。
 Switchはこの後、大学卒業後に関する調査も行い、9割は堅実な職業生活を歩んでいることを明らかにしている。大学進学という選択肢が、生活保護世帯を含むすべての高校生に同等の選択肢として与えられることの意義は大きい。
 健康福祉部生活援護管理課・保護係長の木寺さんは、今回の生活保護法改正について「今までとは、少しは変わったと思います」と肯定的に語る。
「大学生は、世帯分離すれば保護世帯から“いなく”なっていました。でも、その先の生活には、不安がたくさんあります。今回の進学準備給付金の支給は、そこにつながることを考えるきっかけ、考えていただくきっかけになったのではないでしょうか」
 今回、生活保護のもとでの大学進学について、大きな改善がされたわけではない。しかし、改善がなかったわけではない。
「大学進学後、卒業後の生活を踏まえて、何ができるのか。そこを考えることはできます」(木寺さん)
 もちろん、「お金が足りない」という問題はある。
「何をするにもお金が必要です。今の現実の中で、ガマンしなくてはならないことが多い保護世帯の方を、どう支援していけば、貧困の“状態”を少しでも改善できるのか。どのケースワーカーも考えるところです」(現役ケースワーカーAさん)
制度改悪が重なるなか
ケースワーカーとしてできること
 それでも、一連の制度改革に対する私の不安は消えない。今回の制度改革で、高校生を含む生活保護世帯の子どもたちに用意される支援は、ほぼ「大学に合格したら」などの条件がつく。無条件の支援、特に現金給付は、生活費を含めて減少する。
 自立支援係長の齋藤さんは、生活保護世帯の子どもたちに対する支援制度の数々について「まだ始まったばかりですから」と前置きしながら、以下のように語る。
「目の前に、皆さんがいらっしゃいます。法改正、大きな制度改正に対する思いは様々ですが、1人のケースワーカーとして支援をしていくことに変わりはありません。進学前、あるいは就職前、進路に悩んでいる生活保護世帯の子どもたちや親たちを見ているケースワーカーだからこそ、必要性を感じて『ココから!』を作ったわけです」(齋藤さん)
 6月、『ココから!』は、中高生の子どもがいる生活保護世帯に紙の冊子として配布された。早くも、親からは「子どもと進路の話をしやすくなった」という声があるという。10月1日以後、制度がどうなろうが生活保護世帯とケースワーカーの関係は続いていく。
 さらに、特筆しておきたい堺市の特徴の1つに、横や斜めのつながりがある。現在、木寺さんや齋藤さんは生活保護業務を離れている元ケースワーカーだが、現在の部署から連携を強め続けている。
高校中退は自ら選んだこと?
「ここまで」は本当なのか
 しかし、現在、「生活保護だから」というハードルが存在することは、やはり否定できない。元ケースワーカーで現在は生活援護管理課所属の堀毛さんは、以下のように語る。
「日ごろ、子どもさんたちを見て、支援の枠組みを考えているのですが、生活保護だからということで、夢や目標を諦めてほしくないです。進学、就職、その方なりの道を見つけていただきたい。それが前提にあっての活動です……。それは、“壁があって乗り越えにくいから”ということになるのかもしれませんが」
 木寺さんも補足する。
「子どもさんたちは、どこかで自分の可能性の限界を見極め、測りながら生活しているところがあります。もちろん、すべての可能性を実現できる人は、ほとんどいません。でも、見えない壁によって、『自分はここまで』と思い込んでしまっている感じがあります」
 それが端的に現れるのは、高校を中退するときだ。多くの場合、ケースワーカーに対しては「自分の意志で、もう辞めた」という事後報告になる。木寺さんは「本当にそうなの?」と問いかけたい。でも、その問いそのものが伝わりにくい。
 齋藤さんは、「どうしても数字を意識してしまう」という。
「生活保護世帯のお子さんの高校中退は、1年生の夏休みの前後で多いです。そこを認識して、タイムリーに働きかける必要があります。普段から、子どもさんに会ってもらって『最近、学校どう?』と聞いたり。会わないと、話ができませんから」
 ケースワーカーに話しにくくても、無料の学習支援や“居場所“でボランティアを行なっている大学生には話せるかもしれない。だから、齋藤さんたちは手段を増やす取り組みを重ねている。
「少しでも中退率が下がったらいいなあ、『高校を辞めなくてよかった』と言ってくれるお子さんが1人でもいればいいなあ、と思っています」(齋藤さん)
 堺市の学習支援と“居場所”は、2015年から生活困窮者自立支援法に基づく制度として開設されており、現在は4年目だ。しかし、家庭以外の場所に出ていくことが困難な子どもたちもいる。まずはケースワーカーを含めて、「こういう場がある」「こういう機会がある」と少しずつ情報を提供する。自分で行けそうになかったら、“居場所”のスタッフを紹介し、そのスタッフが定期的に訪問して面会したりする。その子が“居場所”に行ってみようという気になるのは、来週かもしれないが、数年後かもしれない。
 ともあれ生活保護制度の目的は、「最低限度だけど健康で文化的な生活」を保障することと、「自立の助長」だ。「自立」が生活保護からの脱却を意味することもある。
「でも、そこで、その方の生活が終わるわけではありません。その後の生活を踏まえて、基本的な支援をしていく。大きな制度改正があっても、基準見直しがあっても、そこに変わりはありません」(木寺さん)
和気あいあいと楽しみながら
今年度は「依存症」に取り組む
 Switchが最初に注目されたのは、2017年5月、生活保護世帯の大学生の生活実態調査だった。
「お金がなくても、金銭的ではない資源を含めて、知識を適切にお伝えすることができれば、貧困でも学習の機会を得ることはできるかもしれません」(現役ケースワーカーBさん)
その後、Switchはさらに目覚ましい活動を続けている。今年度は、メンバーが中心となって冊子『ココから!』を発行しただけではなく、貧困と依存症を中心に学びを深めている。
 なぜ、パチンコ屋に行くのか。公式用語『ギャンブル等依存』の『等』とは何なのか。少し考えてみると、わかっていないことが多い。だから学ぶ。
 若手ケースワーカーの「しゃべり場」としてスタートしたSwitchは、今や、堺市公認の部活「ケースワーク部」に見える。
「でも、和気あいあいと、高望みはしすぎず、残していけるものを残して、自分たちが楽しんで、やりたいことをやるのが一番だと思っています……。『部活』という響きは、ストンと落ちる感じがしますね」(堀毛さん)
 部活なら、顧問も必要だ。
「認めてくれて、理解してくれる上司の存在が大きいです。私たちが『やりたい』と言ったことを、一度飲み込んで考えて、業務化してくれたりする上司の存在は、ありがたいです」(堀毛さん)
 同じ大阪府の羽曳野市でケースワーカー業務に就いていた仲野浩司郎さん(社会福祉士・現在は生活困窮者自立支援制度担当)も、堺市の取り組みの特徴の1つは「行政によるバックアップ」と指摘する。
「勉強会を開催している自治体は、全国的に見ても多いと思いますが、行政とタイアップした取り組みまで昇華させているケースは数少ないのではないでしょうか。堺市の懐の深さを感じます」(仲野さん)
 それに、現在の状況が深刻だからこそ、長く遠い見通しを持つ必要があるのかもしれない。
「新しい支援を始めて、翌月に大きな前進があることは滅多にありません。でも、生活保護世帯の皆さんは、毎日、毎月、進んで行かれます。タイミングを逃さないことが最も難しく、最も楽しいところです」(現役ケースワーカー・Cさん)
堺市とSwitchの取り組みを
希望とヒントの灯火に
本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
 羽曳野市の仲野さんは、堺市が社会福祉専門職採用を積極的に進めている自治体の1つであること、一連の取り組みは社会福祉専門職の「専門性」の発揮や役割に関するヒントにもなっていることを感じている。
「日々の個別支援から見えてきた課題を解決するために、堺市は応援ブックを作成し、利用者目線での支援の標準化を図りました。並行して、制度の改善に向けた実践を行ないました。ソーシャルワークにおける“メゾ・マクロ”の実践だったと思います」(仲野さん)
 生活保護で暮らす1人ひとりは大切な存在だが、「ミクロ」ばかりを見ていると必然的に“煮詰まる”のかもしれない。希望とヒントの灯火として、私はこれからも、堺市とSwitchの取り組みに注目し続けようと思う。
【参考URL】
堺市:生活保護世帯の中高生向け未来応援BOOK「ココから!」
http://www.city.sakai.lg.jp/kenko/fukushikaigo/seikatsuhogo/kokokara.html
(フリーランス・ライター みわよしこ)

https://diamond.jp/articles/-/180751


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