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少子高齢化による労働力不足で始まった日本経済の「黄金時代」
https://diamond.jp/articles/-/180241
2018.9.21 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
写真はイメージです Photo:PIXTA
長い間、不況に苦しめられた日本経済は、ここにきて少子高齢化による労働力不足で「黄金時代」に突入したと言える。そう結論するに至った理由について考察してみることにする。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
景気低迷時の諸悪の根源は失業
バブルが崩壊してから最近まで、20年以上にわたり、一時的な例外を除いて需要不足による不況が続き、労働力の需給は緩んだままだった。それによって、失業が常に問題であり続けた。失業自体、大問題であったことには疑いはないが、それのみならず日本経済の諸悪の根源でもあった。失業が、それ以外の問題も多数引き起こしていたのである。
まず、失業対策として公共投資が行われたため財政赤字が拡大した。そればかりではない。役所の仕事についても、効率化すると失業が増えてしまうためインセンティブに乏しく、一向に改善されなかった。また、景気が悪化すると失業者が増えてしまうため、増税も難しかった。
企業は、失業者が大勢いたため、正社員を減らして非正規労働者を雇った。いつでも安い時給で非正規労働者が雇えるため、正社員にして労働者を囲い込む必要がなかったからだ。その結果、正社員になりたくても非正規労働者として生計を立てざるを得ず、「ワーキングプア」と呼ばれる若者が大量に出現した。
失業者やワーキングプアになるよりはマシだと思って、ブラック企業に就職した学生も大勢いる。彼らは、退職したくても我慢した。その結果、ブラック企業が淘汰されずに増加していった。
また、企業は省力化投資に対するインセンティブも持たなかった。そこで、長い間省力化投資が行われず、日本経済全体としての効率化がなされてこなかった。その結果、労働生産性は上がらないまま今に至る。
確かに、正社員を非正規労働者に置き換えたことで、企業の人件費負担は軽くなった。しかし、それは企業の利益とはならず、安売り競争の原資となった。そして長い間デフレが続き、デフレスパイラルによって景気がさらに押し下げられた。
あまりに長い期間にわたって不況が続いたため、人々にはデフレマインドが染み込んでしまった。これは、「今はよくても、どうせ遠からず悪いことが起きるだろう」といった気持ちのことで、そうしたマインドが消費や投資を大きく阻害した。
少子高齢化により失業問題が解決
失業者が多かったのは、人々が勤勉に働いて倹約したからだ。そのため、多くの財やサービスが生産されたが売れ残った。そうした事態を受けて、企業は生産とともに雇用を絞ったため労働力の需要が減り、労働力の供給を下回って失業者が増加したのだ。
しかし、少子高齢化により、総人口はあまり減らずに現役世代の人口が減少した。それにより、失業問題が解決した。従来は運の悪い現役世代が失業していたが、引退した団塊の世代などが失業を「自発的」かつ「永久」に引き受けてくれたからだ。
それによって、失業問題が一気に解決したのみならず、今度は労働力不足が問題となった。アベノミクスによる景気回復が緩やかなものであったにもかかわらず事態が急変した背景には、長期間にわたって進んできた少子高齢化が、労働力需給を見えないところでタイト化してきたわけだ。
いずれにしても、労働力不足になったため、失業に苦しむ人はいなくなった。もちろん、ミスマッチによる失業は残っているが、これは仕方がない。
労働力不足の主因が、景気拡大ではなく少子高齢化だということは、今後も労働力不足が続くということだ。「今はたまたま景気がいいから」ではなく、日本経済は「労働力不足の時代」を迎えたのだ。
失業問題の解消がすべてを解決
労働力不足になったので、ワーキングプアの生活水準は向上しつつある。企業が労働力を囲い込む必要を感じ始め、非正規労働者の時給が上昇していることに加え、一部は正社員等に登用され始めたからだ。
ブラック企業も存続が難しくなりつつある。就活市場が売り手市場となったためで、学生はブラック企業に就職しなくなった。既にブラック企業で働いているサラリーマンたちも、容易に転職先を見つけられるようになった。したがって、ブラック企業は“ホワイト化”しない限り、存続できなくなりつつある。
企業の省力化投資も活発化し始めた。安い労働力が自由に使える時代ではなくなり、省力化投資が必要になったのだ。雇っている労働者が、いつ他社に引き抜かれるかもしれないという恐怖心も省力化投資の誘引となっている。
こうした変化をもたらした労働力不足によって、デフレも止まった。宅配便業界が値上げに踏み切ったのは象徴的だが、QBハウスも値上げをするなど、値上げの動きが広がりつつある。
日銀の目標とする2%にはなかなか達しないが、それは問題ではない。日銀以外の人々にとっては、現在の「インフレも失業もない世の中」こそが理想的なのだから。
財政赤字も着実に縮小しつつある。景気対策の公共投資が不要になったこともあるが、「消費税を増税しても失業が増えない」という点も大きい。この点は、今後の財政赤字を縮小させる力強い味方となるはずだ。
もっとも、直近の財政赤字の縮小は、「景気は、税収という金の卵を産む鶏」だという点も大きい。所得税は累進課税なので、景気回復によって人々の所得が増えると大きく増えるからだ。景気回復に伴う株価の上昇も、所得税に大いに貢献している。
企業の利益も景気回復で大幅に増加し、法人税収を押し上げている。消費税は、景気との関係が薄いが、「消費税を上げても大丈夫だと政府が判断できるくらい景気がいい」ということは、心理的にプラスに働く。
財政赤字に関しては、方向は縮小しているもののまだまだ巨額だ。そこで、「財政が破綻するのではないか」「財政再建を急がなければいけないのではないか」と考える人が多い。しかし、財政は破綻しないので心配は無用。その根拠については、次回述べたい。
デフレマインドの融解に期待
ただ、人々のデフレマインドはなかなか溶けてこないが、これは時間の経過とともに少しずつ進むと期待している。
人々のデフレマインドが強いと、「将来、年金がもらえないかもしれないから倹約しよう」と考えて景気が悪くなる。そうなると「景気が悪いから税収が落ち込んでいる。やはり財政は破綻して年金はもらえないのだ」と思ってしまうといった悪循環に陥りかねない。
こうした悪循環は、払拭するのが大変だ。時間をかけて少しずつ、「悪いことばかり起きるわけではなさそうだ」といった気持ちに変化させていかなければならない。本稿が、その一助となれば幸いである。
ちなみに、本稿は9月24日発売予定の拙著『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由』のエッセンスだ。ご興味をお持ちいただき、拙著もお読みいただければさらに幸いだ。
連載の著者、塚崎公義氏の近著『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由』(河出書房新社 税込1512円)
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