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「安倍3選」で2019年後半に景気の曲がり角を迎えそうな理由
https://diamond.jp/articles/-/180003
2018.9.19 山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 ダイヤモンド・オンライン
自民党総裁選の公開討論会に臨む安倍晋三首相と石破茂元幹事長 Photo:AP/AFLO
人事権こそが権力だ
安倍晋三首相と石破茂元幹事長の二人が立候補した自民党総裁選が、9月20日に投開票される。党員票の締め切りは9月19日だ。
選挙は蓋を開けてみなければ分からないとはいうものの、安倍氏の圧倒的な優勢が伝えられており、本稿は、「安倍総裁再選」を前提として、その影響を考える。
一部には石破氏が、特に党員票の獲得にあってどの程度善戦するかに注目する向きがあるが、善戦の程度は今後にほとんど影響を与えまい。党員票で負けた場合にいくらか印象が冴えなくなることは否めないが、安倍氏は4選を目指すわけではないし、「反省すべき点は謙虚に反省し、党のより良い運営に努めたい」とでも述べて、後は人事のバランスを操ることで、政権運営に支障はない。
任期の3年が「人事で干されるリスク」を考えると十分に長い期間であることは、岸田派を始めとする多くの派閥が安倍支持に回ったことや、総裁選での支持の動向が注目された党内随一の人気者である小泉進次郎氏が、いかにも愚図なダンマリを決め込んだことなどから見てもよく分かる。
実力を持った経営者が長く影響力を行使する企業や、パワハラとも言うべき行為に対して誰も逆らうことができないスポーツ団体などでもよくあることだが、人事権とその予想継続時間こそが組織における権力の源泉だ。
さすがに4選はあり得ないとするなら、安倍政権の“政治的資源”に関しては、「2019年は「政治的に力あり」、2020年は「目立って力が衰える」、2021年は「完全にレームダック化」と考えておくことが一つのメドになろう。
経済に関しては「一安心」
「安倍氏vs.石破氏」という自民党総裁選の構図にあって、万が一、安倍氏が敗れるようなことがあると、株式市場を始めとする資本市場にはかなりの悪材料となるだろう。
安倍氏が勝つことで、大規模な金融緩和が継続される見通しが立つことは、大いに安心材料だ。
石破氏の他にも総裁候補に名前が挙がった、岸田文雄氏、小泉進次郎氏なども含めて、安倍氏以外の総裁候補は、財政に関して明らかに緊縮指向であり、このことは現在の政策フレームワークでは、金融緩和の後退を意味する。
万が一「石破首相」ということにでもなると、2〜3ヵ月の間に「為替レートは10円円高、日経平均は2000円安」というくらいの材料になるのではないか。
国民の間でも「安倍政権になってから、就職事情がずいぶんよくなった」「この状況が変わるのは不安だ」と思う向きが少なくあるまい。
選挙戦略的にも石破氏は、アベノミクスを丸ごと批判するのではなく、むしろこれを肯定して、さらに上をいくと言えばよかった。加えて、安倍氏に対して先手を打って、2019年に予定されている消費税率引き上げをストップして、金融・財政両面からデフレ脱却を完成させるとでも訴えるとよかったのではないか。
筆者は、消費税率を引き上げる前提で経済の議論をした時点で、石破氏には勝機がなくなったと考えている。
政権を持つ側では、消費税率に関する情報発信が難しい。一つには、経済運営が上手く行っていることをアピールするには、2019年時点では消費税率を上げられる状況だと胸を張る必要がある。
もう一つには、現在の経済運営に対して政権が自信を持っていると言うことには、国民の期待に働きかける情報上の効果もあるので、「今の情勢では、消費税率の引き上げはできないかもしれない」とは言いにくい。他方で、「消費税率は引き上げない」と言った場合の財務官僚の反発に対しても考慮が必要だ。
今後の経済運営の注目点は、3選目の政治的資源が十分にある2019年のなるべく早い時点で、安倍政権が消費税率引き上げをさらに先送りすることができるか否かだが、今のところ予定通りに秋には税率引き上げが決まりそうだ。
そのように考えると、世界の景気の状況にもよるが、2019年後半には日本経済は景気の曲がり角を迎えそうだ。
憲法・外交への注力はエネルギーの無駄
安倍氏は、憲法改正が個人的な「悲願」であると伝えられることが多いが、3選決定後の政治的資源を憲法改正に費やすのは「無駄」だ。各種の世論調査を見るに多数の国民は憲法改正を望んでいないので、国民投票を実現しても憲法改正には至るまい。
また、日米地位協定をそのままに、いわば“子会社の定款”程度の存在である日本国憲法を改正しても、米国に従属し依存する「国の形」は全く変わらない。日本国民としては、米国が押しつけたものであるか否かにかかわらず憲法9条を楯に、「戦争には協力できない」という建前を持っている方が好都合だろう。
もっとも、現実に自衛隊は存在するし、米国には金銭と時には少々の武力で誠意を見せねばならない。一方、米国が日本に距離を置き始めた場合に、自国をどう守るのかについては、陰で常に考えておく必要がある。
根本的に日本の外交の善しあしを決めているのは、時の日本の政権の振る舞いよりも、米国がどう動くのかだ。この現実を考えると、日本は独自の外交政策など持ち得ないことが分かる。
トランプ政権の意図は読みにくいが、貿易政策や対北朝鮮政策などを見ると、米国を「唯一の“スーパーパワー”として世界の面倒を見るような立場から、普通の大きな国」の立場に後退させようとしているように見える。保護貿易的政策を長く続けることは米国民の得にはならないだろうが、覇権国としての負担を減らすことは米国民の経済厚生にとってはプラスだろう。
米国に対して“子会社”的立場である日本は、米国に合わせて身の振り方を決めるしかない。在韓米軍の撤退、ひいては在日米軍の縮小・撤退といった段階まで数年で進むとは思えないが、米国との関係をどのようなものにしていくのかが日本にとって大きな問題だ。
方向性もタイミングも米国次第だが、将来、米国への従属と依存を続けるか否かの選択をしなければならない時期がくるかもしれない。だが、これは安倍政権の次の政権以降が取り組む問題だろう。
最大の課題は社会保障改革
金融緩和政策を継続して、2019年に予定される消費税率引き上げを中止すべきだ(恒久的な税率引き上げに対して、一時的な景気対策を弄しても効果は限定的だ。税率引き上げを止めるのがシンプルかつ効果的だ)ということ以外に、安倍政権に期待できることがあるとすれば、それは、社会保障の改革だろう。
「人生100年時代」の掛け声に反して、日本の年金や労働制度などは、社会の長寿化と高齢者の労働参加に対して十分な対応ができていない。そもそも年齢による差別以外の何ものでもない定年が禁止されていないし、高齢者の労働参加を嫌うがごとき在職老齢年金の制度が存在し、老後の備えに対する自助を促す確定拠出年金が60歳までしか拠出できないなど、課題が山積みだ。特に、今後数十年の人口の年齢バランス変動を考えると、年金と医療の財政問題に対処することは急務だ。
より長く働くことができる制度に変わり、将来の社会保障により安心できるようになると、消費の拡大につながって経済成長にもプラスの影響があるはずだ。
例えば公的年金は、日本人の長寿と財政を考えるなら早急に「70歳支給開始」を標準とすべきだ。支給開始を遅らせて財政を改善すると共に、徐々に支給額を厚くして、「長生きリスクへの保険」としての公的年金を強化すべきだ。支給開始は先送りされるとしても、将来の受給者の方が手厚い年金を受け取ることができるという期待が持てるなら、現役世代に納得感が生じる。
最近の安倍氏が70歳以降に年金を支給開始できる選択肢を検討すべきだと述べていることは、関心が正しい方向に向かっている点で評価できる。ただし、改革は相当にスピードアップする必要がある。
(1)4選を目指すわけではないから思い切ったことができる、(2)3選決定後1年程度は強力な政治的力を持つ、という今後の安倍政権の条件を考えると、「2019年であれば」年金制度の改革を含む社会保障制度の大幅な改革を決めることができるのではないだろうか。勝負は早いほうがいい。
年金制度の改革については、政治的な力が強い政権奪取時に具体的改革に取り組まずに検討の時間を置いて3年後に制度改正するとして、結局何もできなかった民主党政権時の経緯を反面教師にすべきだ。制度を変えたくない勢力に対して時間を与えない方がいい。
異例の3選を果たした後の安倍自民党総裁には、社会保障改革で成果を挙げることを期待したい。政治的な文脈からも、経済的な状況からも、「チャンスは2019年」であることを強調しておく。
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
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