ビジョンを実体化させる「継続的対話」の必要性 あなたの「話題占有率」が及ぼす、周囲への影響 2018.9.19(水) Coach's VIEW 業績向上を目的とした組織改革や人材開発、リーダー開発の加速に向けてエグゼクティブ・コーチングを提供するコーチ・エィの「Coach's VIEW」から選りすぐりの記事をお届けします。 瞬間的な発信だけでは意味がない。 (文:コーチ・エィ 森田克司) クライアントのA氏が社長に就任した時のことです。 就任後の最初のセッションで、社長としての抱負を聞きました。 「会社は人材がすべて!」 「人材育成を最重要テーマに掲げて経営を進めていきたい!」 力強い口調と覚悟に満ちた目を見て、 「ああ、彼は本気だな」 私はそう思いました。 実際、A社長は矢継ぎ早に手を打ちました。 就任挨拶での育成方針の発表を皮切りに、人事部に包括的な育成の仕組みの構築を指示し、自己研鑽にむけた教育予算の付与、次世代幹部リーダーの選抜制度のスタートなどなど。 社長就任から半年が経過したとき、A社長は最初の大々的な組織調査を実施しました。 半年間の取り組みの成果と新たな課題を知るためです。 しかし、レポートを見た社長の表情はみるみる曇っていきました。 「こんなはずはない」 組織の優先順位は、何で決まるのか? 「こんなはずはない」 そういう言葉が出たのは、経営の柱の1つである「育成」の項目が、他の項目と比べて低めのスコアを示していたからです。 その後、A社長はただちに自由回答に目を走らせました。 するとそこには、この半年の成果の数々が書かれていました。その多くは、以下の3つの内容に集約されていました。 ・目標に対する意識やコミットが上がった ・無駄なコストを削減するなど最終利益を意識するようになった ・残業時間が減った これらの項目は、私とのセッションではあまり話題になっていなかったため、私も少し意外な気がしていました。 紙面を何度もめくりながら読み耽るA社長に、私は言いました。 「社員のみなさんは、さまざまな成果を実感されているようですね」 さらに、 「でも、私とのセッションではあまり話題に挙がっていない内容が、前面に表れてくるのはどうしてですかね?」 そう尋ねると、しばしの沈黙の後、「あっ」と何かに思い至ったかのように顔を上げました。そして、 「自由回答に書かれていることは、私が役員のメンバーと日常的に一番話題になっているものばかりです」 そう答えました。 社長は続けます。 「半年間を振り返ると、要所要所で育成方針を打ち出し、指示も出してきました」 「しかし、役員会やもっとも接点の多い役員との日常的なやり取りで話すのは、まさにこの3つのトピックスがほとんどだったと思います」 「瞬間的発信」以上に重要な「継続的対話」 ここで「話題占有率」という考え方をご紹介したいと思います。 これは私の造語ですが、文字通り、その話題が全体の何%を占めているかを考える時に使っています。 「人は、自分の中で最も優先順位の高いことを自然と話題にする」という原則があります。そして、あることを話題にすればするほど、必然と周囲の人々もそのことについて一緒に考えます。 結果的に、周囲の優先順位にも影響を及ぼす、ということになります。また、優先順位が上がると、達成確率にも少なからず影響がでてきます。 ですから、たくさん話をすればするほど、それを達成するためのアイデアもたくさん生まれやすくなり、達成確率も上がりやすくなります。 つまり、組織のトップが方針や指示をどんなにエネルギー高く打ち出したとしても、「継続的な対話」がなければ、それについて考える機会そのものが生まれません。すると、達成能力云々とは無関係に、達成に向けての前進は期待できない、ということになります。 では、A社長が「育成」の優先順位を挙げて組織に浸透を図っていくには、一体どうしたらいいのでしょうか。 「トピックス・マネジメント」のススメ わたしはまず、A社長に1週間で彼が話している「トピックス」を円グラフで表してもらいました。 その結果、育成については、およそ5%の占有率でした。 「本当に育成を経営の中心に据えるとしたら、どのくらい話題にしている必要がありそうですか?」 この質問に、彼は「半分、50%」と回答しました。 そして、3つのことを自ら決めました。 1.役員会のアジェンダの半分を育成関係のものにする 2.育成についてのみ話す「人材育成会議」を新設する 3.個別の役員とのミーティングでは、毎回、必ず育成について話題にする 効果は、半年後に行われた2回目の組織調査で表れました。 定量面での上昇幅はもっとも大きかったのが「育成項目」でした。 自由回答にも、育成に関するコメントが増えました。 手応えを感じたA社長の目下のテーマは、多彩な質問力のアップです。 「育成」を話題にする時間が増えた分、いかに新しい視点でみんなで考えることができるか。私とのコーチングでは今、これに取り組まれています。 みなさんにも、「本当にやりたいこと」があるのに、気が付くと後回しにしてしまっていた。そんなことがあるのではないでしょうか。 場合によっては、改めて自分が一番やりたいことを意図的に、戦略的に話題として選んで話す、「トピックス・マネジメント」という視点も何かのヒントになるかもしれません。 森田克司 株式会社コーチ・エィ 執行役員 一般財団法人 生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
早稲田大学商学部卒。一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 経営学修士(MBA)。早稲田在学時にカナダ留学を経験。卒業後は専門商社に入社し、海外営業部に配属。韓国とフィリピン向けに半導体の製造機械を仕入れから輸出業務、販売、そして現地顧客先のエンジニアに対する機械操作の教育まで一貫して担当。その後、中国の広州市にある中山大学に留学。現地では標準語と広東語を学ぶ一方、現地の市政府や日系企業と共同プロジェクトを実施するなど社会活動にも従事。帰国後は一橋大学院で経営全般を学び、コーチ・エィに入社。 *本稿は、最新のコーチング情報やリサーチ結果、海外文献の紹介を通じて、業績向上につながる組織改革や人材開発、リーダー開発など、グローバルビジネスを加速させていくヒントを提供するコーチ・エィのエグゼクティブコーチによるコラム「Coach's VIEW」の提供記事です。 【第53回】 2018年9月20日 澤 円 :日本マイクロソフト 業務執行役員、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 名刺交換の行列に並ぶ人に、決して人脈はできない 名刺交換するだけでは、簡単に人脈は築けません Photo:PIXTA 皆さんこんにちは、澤です。 先日、Industry Co-Creationというイベントに登壇してきました。 このイベントは、「ともに学び、ともに産業を創る。」という素敵なコンセプトのもと、スタートアップを中心に様々な業界の有名・著名人が登壇したり、ネットワーキングのパーティーを楽しんだりするイベントです。今年は2月に福岡、そして9月に京都で開催されました。 スタートアップ企業だけではなく大企業もスポンサーになっているなど、大小問わずさまざまな企業が一堂に会して、セッションで話したりブースを出してサービスの紹介をしたりしていました。 ネットワーキングパーティーは本当に楽しくて、毎回私も楽しみにしているのですが、こういう場で「人脈を作りたい!」と思っているであろう人たちを観察していると、いろいろなタイプがあることがわかり、多くの学びが得られます。 今回は、そういった人たちの特徴を挙げながら、どうすれば人脈を広げられるのかをお話ししたいと思います。 とにかく名刺を渡しまくる人は 相手の記憶に残っていない こうしたイベントに参加すると一番多く見かけるのは、とにかく名刺を渡しまくる人です。日本には名刺交換というビジネスカルチャーが広く深く浸透していて、「何はともあれご挨拶」ということで名刺の交換がうやうやしく行われます。 結論から言えば、名刺交換だけで人脈は全く広がりません。また、名刺に書かれている内容の延長線上の話、つまりは社員数や事業規模、自分が担当している事業内容を一生懸命に語っても、人脈を広げるところにまでは至りません。 これだけ効果のないアクションであるにもかかわらず、日本のパーティーではそこかしこで名刺交換祭りが開催されており、同じような会話が繰り広げられています。私ももちろんビジネスパーソンなので、名刺交換を求められれば必ず応えます。ですが、通り一遍の挨拶と説明があっても、たいてい記憶には残りません。どの人の説明もそれほど大きな差はなく、同じように聞こえてしまうのと、たいてい私自身に直接は関係しない情報ばかりを説明されるからです。 特に大企業の方は、私の本職である「マイクロソフトの業務執行役員」とどのように関係を構築するかを考えていようなのですが、クライアントやパートナーであれば担当営業がいるので、私が直接関係を構築するために時間を割く必要はないことがほとんどです。そのため、一通りの挨拶をしたら大抵の場合、すぐに会話は終了となることがほとんどです。 一方で、スタートアップ企業は、「まだこの世の中にないサービスを作る」という考えの人が多いので、とても面白い情報が得られる場合があります。そうなるとこちらも興味が出てきてあれこれ質問をしたくなったりもします。その時は、どちらかというと私の脳内は「大企業の業務執行役員」の脳の動きではなく、別の顔である「スタートアップ企業の顧問」としての思考になります。このような思考回路を持っている人は大企業勤務をしている人には少ないので、サービスの内容がユニークな人であれば、確実に私にとっては人脈となります。 ただし、サービスの内容があやふやだったり、ビジネスの目的がお金儲けだけだったりすることが見えた場合には、早急に会話を終了して他の方々との交流にシフトするようにしています。 大企業の人とスタートアップの人が 名刺交換をしてもかみ合わない さて、大企業とスタートアップの人が名刺交換をした場合はどうなるでしょう。人脈として成立するでしょうか? たいていの場合、会話が全くかみ合わない場合がほとんどです。大企業でスタートアップ界隈の思考に触れる機会があまりない人たちは、起業する人たちのマインドセットや、ビジネスに対する考え方が理解できず、どう反応していいかわからなかったりします。 また、スタートアップ側の人は、決裁権などを持たない大企業の人に協業を必死にアピールしたりすると、相手に引かれてしまうこともあります。同様のことが、最近シリコンバレーでも起きているそうです。 「視察旅行」と称してシリコンバレーを訪れた人たちが、起業家たちのプレゼンを聴くだけ聴いて、協業や投資の話をするわけでもなく「いやー、いいお話でした、ありがとうございました」と言って帰ってしまうのだそうです。 これでは、起業家たちとしては自分たちの情報を盗まれたも同然です。スタートアップ企業にとって、「タイム・イズ・マネー」は基本中の基本となる考え方です。大企業とは、時間に対する感覚が違うため、会話が成り立たないことが頻発するのです。 また、名刺交換の時にありがちなのが、「占い師に並ぶような列ができる」というパターンです。イベントなどでプレゼンをした後、登壇者の前には名刺交換を求める人が縦一列に並ぶ光景が、そこかしこで見られます。 名刺交換という儀式は一対一で向き合って行うものなので、仕方がない側面はあるのですが、この状態だと登壇者は「同じ質問に何度も答える」ということになり、時間を有効に使えているとはいえません。 次々に人が現れては挨拶をするようなスタイルですと、正直全員の顔と名前を一致させることは不可能で、受け取った名刺も「これは誰なんだろう…」と後で悩まれるのが関の山です。 もし人脈作りを目的にするのであれば、「占い師の列」に並ぶのは得策ではありません。ましてや、大会場でたくさんの人が集まる場所で多くの人が会話をしたいと思っている人を独占するのは、それ相応の理由がなければ「時間泥棒」の印象を与えて逆効果となります。 まず自分の価値を高める、 相手に役立つ「お土産」を用意する では、どうすれば確実に人脈を築くことができるのでしょうか? 一番手っ取り早い方法は、「自分の市場価値と認知度を上げる」ことです。そうすれば、わざわざ自分が人脈作りのために動かなくても、多くの人が寄ってきてくれますし、また紹介をしてくれるようになります。つまり、他の誰かが人脈作りを代行してくれるわけです。 ただ、これは一朝一夕にはなかなかできないことです。来週までに人脈を作りたい!となると、時間的に厳しいですね。 ではどうすればいいかというと、「自分がつながりたいと思っている相手のことを予習する」そして「その人にとって役に立つ情報を持参する」のが効果的ではないかと思います。自分のことを知っている人、それも「よく知ってくれている人」に対しては、誰でも良い印象を持つものです。 また、自分が取り組んでいるプロジェクトや、責任を持っている業務に対して確実に効果のあるツールやサービス、もしくは何かイベントに参加する機会などを紹介すれば、相手も興味を持つ可能性が高くなります。 ここでやるべきではないのは、「売り込み」です。ツールやサービスを紹介するにしても、「売り込む」ためではなく「相手にとってプラスになるものを試してもらう」というモードでいけば、相手も受け取りやすいでしょう。 人脈を作るためには、投資が必要です。もしあなたが営業マンだとして「会えたから売り込むべし!それが営業だ!」というような考え方では、いい人脈を作ることはできないと思います。 「トップセールスマンは、会った途端に売り込みしているのでは?」と考えている方もおられると思いますが、そういう人たちは緻密な計算をした上で短時間のうちにクロージングしているにすぎません。 トップセールスマンは、極めて短い時間に人脈を構築してしまう名人でもあるのです。常に相手をリサーチし、準備をしているからこそ、会ってすぐにセールスができるのです。 人脈を作る上でまず必要なのは、人間力です。会社の商品力を武器にしているうちは、人脈作りの達人にはなれません。いかにして人間力を上げていくのか、同じ空間での対応力をつけていくのかが大事です。 話し好きの人が陥りやすい 人脈作りの落とし穴とは 「なるほど、ボクは話し好きだから人脈作りに向いているな!」と思うのは、少々早合点が過ぎます。 人脈作りに大事なのは、しゃべりのうまさではありません。むしろ、ここぞとばかりにしゃべり倒す人は、「多くの人からつながりたいと思われる人」からすると、面倒な人にもなりやすかったりします。 「口下手だから、人脈なんてできない」と思う人も、心配ありません。しっかりと相手のことを調べ、いくつか相手が答えたくなるような質問を用意していけば、自分が話さなくても相手がたくさん話してくれるかもしれません。 自分がやりたいことに興味を持ってくれた人に対して、人はあまり悪い印象を持たないものです。それをしっかりと受け取る心構えを持てばいいのですから、話し上手になることに比べればハードルは低いのではないでしょうか。 もう1つ大事なのは、「知り合ったらアフターフォローをすること」です。相手に役立つ情報を書いたメールを送るのもよし、相手の成功体験になりそうなイベントなどに招待するのもよし、できたばかりの細い人脈の糸が切れてしまわないように努力することが大事です。 このひと手間ができるかどうかで、人脈ができるかどうかが決まるのではないかと思います。私は「Give Firstの精神」と言っているのですが、自分の方から徹底的にGiveするというマインドセットが、人脈作りを成功させる秘訣ではないでしょうか。 (日本マイクロソフト 業務執行役員、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤円) https://diamond.jp/articles/-/180130 【第3回】 2018年9月20日 ニック・ウィリアムソン :英語講師 英語には、3つの未来形がある あなたは、自信をもって英語が話せますか? それとも、今、勉強中でしょうか? 長年やっているけどまだものにならない……。そんな方には、この連載がきっとお役に立ちます。英語講師として日本で20年以上活躍するニック・ウィリアムソンさんは、この9月に『たった30パターンで英会話!』(ダイヤモンド社)を発刊。その中で、ニックさんが独自に体系化した英語が一気に上達するコツを公開しています。本連載では、そのポイントについて、わかりやすく解説していきます。 未来のことを表現するのに、毎回「will」を使ってませんか? 毎回「will」を使うと半分くらいは間違ってしまいます。 英語は未来の言い方が3つあります。「will」と「be going to」、そして、「be+-ing の現在進行形」です。この言い方はそれぞれニュアンスと使い方が違いますので、注意しましょう。 I’ll play tennis tomorrow.(will) I’m going to play tennis tomorrow.(be going to) I’m playing tennis tomorrow.(現在進行形) 万能選手の「be going to」を使おう 結論から言えば、ネイティブは上記の3つの未来形を全部使っていますが、英語学習者の方には「be going to」がおすすめです。 「will」と「現在進行形」は両方、特別なニュアンスがあり、いつでも使えるわけではありません。しかし、「be going to」だけは、いつ使ってもおかしくないのです。 会話の場面では、ゆっくりと考える時間はありません。細かいことを色々考えていると、口から言葉が出てきませんから、考える量をどれだけ減らせるかが勝負。 ですから、未来を毎回「be going to」と決めてしまえば、言葉が口から出やすくなりますね。 そうは言ってもやっぱり違いが気になると思いますから、「will」と「現在進行形」の使い分けを見ていきましょう。 willと現在進行形の違いは、 その未来のことが前から決まっていたかどうか ニック・ウィリアムソン オーストラリアのシドニー出身。 シドニー大学で心理学を専攻。同大学で3年間日本文学も勉強し、日本の文化にも明るい。在学中にオーストラリアの日本大使館が主催する全豪日本語弁論大会で優勝。日本の文部科学省の奨学金を得てシドニー大学卒業後、東京学芸大学に研究生として1年半在学。在学中にアルバイトとして英会話スクールで英語を教え始め、卒業後も看板講師として勤め上げる。英語講師として20年間のキャリアの中で、英会話教室をはじめ、企業向け英語研修や大学の講義、SKYPerfect TVの番組の司会やラジオのDJ、数々の雑誌のコラムや7冊の英語本の執筆など、活動の場は幅広い。ゼロから日本語を完璧に習得した経験と、大学で専攻していた神経心理学の知識をもとに、非常に効果的で効率的な独自の言語習得法を開発。著書に『たった40パターンで英会話!』『中学レベルの英単語でネイティブとペラペラ話せる本』『中学レベルの英単語でネイティブとサクサク話せる本[会話力編]』(以上、ダイヤモンド社)『旅の英会話伝わるフレーズ集』(ナツメ社)など。 willは「今決めた」というニュアンスで、日本語で言えば「じゃ、〜するね」という感じです。話の流れでその場で決めたときに使います。不確定な未来のことも「will」を使います。 現在進行形は「前から決まっている」未来のことを表します。日本語で言えば「〜するんだけど」といった言い方です。すでに決まった予定があり、その予定を人に伝えるときに使います。 例えば、「明日は仕事だ」は、I’m working tomorrow. と言います。明日、仕事が入っているのは前から決まっている予定なので、 「will」ではなく「現在進行形」です。 「I will work tomorrow.」とは言いません。 「来年30歳になります」は、I’m turning 30 next year. と言います。いつ30歳になるのかは決まっています。ここで「I’ll turn 30 next year.」と言うと「じゃ、来年30歳になろうかな」とその場で決めたことになっちゃいます。どんなに遠い未来でも、決まっていることなら「will」ではなく「現在進行形」です。 「じゃ、後で電話するね」は、I’ll call you later. と言います。話の流れでその場で決めたことなので「will」を使います。「I’m calling you later.」だと「後で君に電話することにしているんだ」という、ちょっと怖いニュアンスになります。どんなに近い未来でも、前から決まっていなければ「will」です。前から決まっていることは現在進行形です。 「迷子になりそう」は、I’ll get lost. と言います。迷子になるかどうかは不確定な未来ですので「will」を使います。ここで現在進行形を使うと「明日は迷子になる日だ」と、まるで迷子になるのがスケジュールにあるような感じとなり、違和感があります。 例えば、映画に誘われたとき、先約があって断るなら現在進行形を使います。「will」を使うと失礼になってしまいますので、気をつけましょう。 A:明日、映画を観に行かない? Do you want to see a movie tomorrow? ◎B:明日はテニスをすることになってるの。 I’m playing tennis tomorrow. ×B:じゃ、明日はテニスをするわ。 I’ll play tennis tomorrow. 「be going to」ならどんな未来のことでも表せる I’m going to work tomorrow.(明日は仕事をすることになっている→前から決まっている) I’m going to turn 30 next year.(来年30歳になる→前から決まっている) I’m going to call you later.(あとで電話するね→今決めた) I’m going to get lost.(迷子になりそう→決まってない) I’m going to play tennis tomorrow.(明日はテニスをすることになっている→前から決まっている) どれも正解です! 細かい使い分けを考えずに済むので、だいぶ楽になります。つまり…… 毎回、「will」を使うと半分くらい間違い。 毎回、「現在進行形」を使っても半分くらい間違い。 毎回、「be going to」を使えば、毎回正解! 未来を表すときには迷わず「be going to」ですね! ここでお伝えしたことは、日本ではほとんど知られていませんが、ケンブリッジ大学出版局の世界で最も売れている英文法書『English Grammar in Use』にも、はっきり以下のように書いてありますよ。 ●We use “I’ll” when we’ve just decided to do something. (“willは、今決めたばかりの未来の予定に対して使います” 同書p42) ●Do not use “will” to talk about what you decided before. (“すでに決まっている未来の予定に対してwillを使わないでください” 同書p42) ●I’m doing something tomorrow = I have already decided and arranged to do it. (“すでに決まっている未来の予定は現在進行形を使います” 同書p38) 他の例文を見てみよう じゃ、こうしよう。I’ll tell you what. これは、決まり文句ですが、その場で決めたことなので「will」を使います。 来年、ニューヨークに引っ越す。I’m moving to New York next year. どんなに遠い未来でも、すでに決まっている予定は現在進行形です。 私も一緒に行こう。I’ll go with you. 「〜に行く」と友達に言われて、「じゃ、私も行こうかな」とその場で決めたので「will」を使います。 来月結婚します。I’m getting married next month. 「will」を使ってしまうと「じゃ、来月結婚します」という意味になり、「急にどうしたの?」と驚かれますよ。 誰にも言わないから。I won’t tell anyone. 友達の秘密を教えてほしいときなどに使います。その場で決めたことなので「will」ですね。 来週は給料日なんだ。I’m getting paid next week. 給料日こそ決まっているので、現在進行形を使います。 じゃ私が皿を洗う。I’ll do the dishes. 「ご飯を作ってあげる」と言われて「じゃ、私が皿を洗うね」というようなときに使います。その場で決めたので「will」です。 明日は仕事ないよ。I’m not working tomorrow. 多分、雨が降るよ。It’ll probably rain. 「maybe(かもしれない)」「probably(多分)」「I think(だと思う)」を使うときは、不確定な未来なので、「will」です。そして「willには意志がある」という間違った解説をよく耳にします。雨には意志は当然ありませんが、このように言います。 彼女は怒りそう。She’ll get angry. 彼女がこの先怒るかどうかは、あくまで予想なので、不確定な未来の「will」です。 彼は来なそう。He won’t come. 「しなそう」は、あくまで予想なので、不確定な未来の「will」です。 https://diamond.jp/articles/-/180080 【第2回】 2018年9月20日 吉田裕子 :国語講師 「読みづらい」「伝わらない」文章によくある2つの特徴とは? なぜ、日本人なのに、日本人相手に伝わる文章が書けないのか? 書いた本人はきちんと書いているつもりでも、伝わっていなければ意味がありません。 「うまく書けない」「時間がかかる」「何が言いたいかわからないと言われてしまう」――そんな悩みを解消する書き方を新刊『人一倍時間がかかる人のためのすぐ書ける文章術 ムダのない大人の文章が書ける』から紹介していきます。 読みにくい文章を直そう! 問題:厄介なのはどちらでしょうか? 厄介な取引先とのトラブルを放置してはいけない。 1.取引先 2.トラブル ふたえにしてくびにかけるじゅず。 これは、一休さんが出したとも、近松門左衛門が出したともいわれている問題です。この文はどういう意味でしょうか。 面倒なことに、「ふたえにしてくびにかけるじゅず」という文は、次のような2通りの解釈ができてしまいます。 1.二重にして、首にかける数珠。 2.二重にし、手首にかける数珠。 読点(、)や漢字変換などで区切りをはっきりさせなくては、誤解が生まれてしまうわけです。 これは、冒頭で出題した「厄介な取引先とのトラブルを放置してはいけない」も同じです。問題を出しておいて恐縮ですが、この文だけでは、取引先が厄介なのか、トラブルが厄介なのか決められないのです。本来は、読み手がどちらか迷わないよう、明確に書くべきでしょう。たとえば、 ・あの取引先は厄介だ。あそことのトラブルは放置してはいけない。 ・取引先とのトラブルが厄介なことになったら、放置してはいけない。 というように書き改めるべきなのです。 区切り目がわかりづらく、読みにくい文を挙げます。矢印の先の改善例と見比べてください。 ・漢字やひらがなが続く ×人気歴史小説最新刊第五巻は来月発売! ↓ ○人気の歴史小説、最新刊(第五巻)は来月に発売! ×まだなおさりげない根回しが求められる。 ↓ ○まだなお、さりげない根回しが求められる。 ・文のまとまりの切れ目に読点(、)がない ×ヒットは確実と言われたが振るわずに終わった。 ↓【逆接の接続助詞「が」の後には「、」を】 ○ヒットは確実と言われたが、振るわずに終わった。 ×子どもの頃から長年アメリカで暮らした影響が表情や仕草に感じられる。 ↓【長い主語「子どもの〜影響が」の後には「、」を】 ○子どもの頃から長年アメリカで暮らした影響が、表情や仕草に感じられる。 少し時間を空けて、自分自身で音読してみると、読みづらい箇所がよくわかります。上の×のような文はスムーズに音読できません。 また一般に、こうした読みづらさは一文が長くなるほど発生しやすいものです。主語と述語関係がねじれてしまう現象も長い文ほど発生します。それらを防止するためにも、一文はあまり長くならないようにしたいもの。平均で30字前後、最大でも50字程度におさまるよう心がけましょう(目安としては、この本の1行が約40字です)。 モットーは「一文一事」。多くの事柄を一文に詰め込もうとせず、潔く文を切るのです。 たとえば、「○○ので、〜。」という理由+結論の文をよく見かけます。それでは長くなりがちなので、「(結論)。なぜなら(理由)。」という順の二文にしましょう。短い文×2にしたほうが読みやすいのです。 また、一文が長くなる人というのは、長い修飾語を書きがちです。修飾語とは、後ろの言葉を詳しく説明する部分のことです。「赤いリンゴ」の「赤い」、「遥かかなたの惑星」の「遥かかなたの」です。文が長い人は、 ・ここ数年で急成長を遂げた医療機器開発で名高いA社 ・高校の演劇部で一緒だった市立病院の看護師の先輩 という書き方をしがちなのです。この後ろに述語が続くと、さらに長い文になります。1回読んだだけでは、意味を理解できない文ができてしまうのです。 ・医療開発で名高いA社は、ここ数年で急成長を遂げた。 ・高校の演劇部で一緒だった先輩は、市立病院で看護師をしている。 長い修飾語は避け、主語と述語のかたちにするなど、文の構造をわかりやすくしましょう。すらすら音読できる、簡潔で読みやすい文章を心がけましょう! https://diamond.jp/articles/-/180073 【第2回】 2018年9月20日 櫻井 弘 雑談に詰まって沈黙しないための「きっかけ言葉」 Photo:PIXTA 話し方講師・櫻井弘氏の新刊書『ちょっと言いかえるだけ!気のきいた「話し方」ができる本』の中から、「会話力」がみるみる上達する極意を紹介していきます。今回も前回に引き続き、会話をスムーズに進めるためのスキル“櫻井メソッド”を伝授します。会話の間合いをうまく取り、雑談で話題に詰まっても回避できる、話し方の高等テクニックを習得しましょう。 櫻井メソッド(3) 鼻呼吸で「間」をつくる 私たち話し方講師の間で「間は命なり」と言われています。「間」とは、緊張から「自分を取り戻すための時間」であり、「集中して考えるための時間」ともいえるからです。たとえば、予想外の状況になったとき、窮地に立たされたときなど、この「間」を活用することで乗り切ることができます。 このとき大切なことは、いかにして自然なかたちで「間」をつくるか、ということです。かなり難しいテクニックなのですが、私たちプロの講師も使っている、「鼻呼吸」という方法があります。 ただ、この呼吸法を実際に行って上手に「間」を取りながら、インタラクティブ(双方向)のコミュニケーションを取っている人は、そう多くありません。それ以外のほとんどの人は「口呼吸」をしているのです。 話した後で口を閉じれば 沈黙を埋める余計な言葉もなくなる 鼻呼吸は、口を軽く閉じ、舌先は上あごにつけ、鼻で呼吸をする呼吸法です。 たとえば「〜でいかがでしょうか?」と言ったあと、「口呼吸」をしている人は、口を開けたままの状態にしています。 このときにほんの少しでも沈黙が生じると、「何とかしてこの沈黙の時間をうめなくては……」という心理が働いて、「え〜」「あの〜」「まぁ〜」などと、すぐに言葉をはさんでしまい、その勢いで話し続けてしまうのです。 「鼻呼吸」で、語尾をしっかり話し、そのときに口をしっかり閉じれば、ゆっくりと鼻から空気を吸うことができます。 そのあいだに「アイコンタクト」をして、相手の反応をキャッチすることができるのです。たとえば次のようにです。 櫻井:「田中さん、こんにちは!」(すぐに口を閉じ、笑顔) 田中:「あ〜櫻井さん、こんにちは!」(相手の表情や服装などを観察) 櫻井:「あら、今日も素敵ですね。どこかにお出かけ?」(相手をほめる) 田中:「ええ、ちょっとお中元を買いにデパートまで」(相手のバッグに目がいく) 櫻井:「お召し物も素敵ですけど、そのバッグも、とってもオシャレですね」 田中:「ありがとうございます。実はこれ、この前買ったばかりで。お気に入りなの」 このように、「鼻呼吸」による最大のメリットは「間」をとることによって相手を観察することができ、余裕を持って、相手の様子や関心事へと話題を広げることができるという点です。「鼻呼吸」は間をつくる上で効果絶大ですので、ぜひトライしてみてください。 櫻井メソッド(4) 雑談に困ったら「ど」の法則 本コラム執筆・櫻井弘氏の新刊書が発売中 どうにも話題に詰まって、話が続かなくなってしまうことがあります。無言のまま沈黙が続くと、空気がよどみがちになります。そんなときには「ど」の法則を実践してみましょう。これは話題をふくらませる際にとっかかりとなる「きっかけ言葉」を口にするものです。 「ど」という文字には、それから始まる疑問形の言葉がたくさんあります。たとえば次のようなものです。 「どうしてですか?」 「どちらで行われているのですか?」 「どなたといらっしゃるのですか?」 「どこまで行かれました?」 「どんな状況だったのですか?」 たとえば、「先日、海水浴に行ったんです」と言われたとき、 「そうですか」 と答えればそれまでですが、 「どちらまでいらしたんですか?」 と聞けば、会話はどんどん広がります。 会話が途切れそうになったときには、ぜひ「ど」の法則を活用してください。 櫻井メソッド(5) 「一問二答」で会話をふくらませる 「櫻井メソッド」の5番目として、「一問二答」を取りあげます。 よく聞く会話のやり取りで、もっとも多いのが「天気」の話題ではないでしょうか。天気は定番中の定番で“鉄板の話題”といっても過言ではありません。 いくら社会が複雑化し、価値観が多様化しても、「天気」の話題だけは万国共通です。とくに私たち日本人は、もともと農耕民族でしたから、天気や天候についての話題は欠かせませんでした。それに天気の良し悪しは誰のせいでもありませんので、差し障りのない「無難な話題」として重宝されているのです。 ちょっと専門的な言い方になりますが、天気のような話題を投げかける質問を「社交的質問」といいます。これは「わかっていることを聞く」という質問の仕方です。 社交的質問では、問いかけに対して、答える側は必ず「そうですね!」などと「イエス」の言葉で返さざるをえません。 実は、この質問の仕方は、「フットインザドアー」という質問法で、人を動かす説得や交渉のときにも有効な方法です。 「はい、そうです」「ええ、その通り!」「そういうことです」と、相手に「小さなイエス」を言わせることを積み重ねると、「違います!」とか「いいえ!」という否定語が使いにくくなる効果があるのです。 ところが……です。この鉄板の「天気」の話題を出して、「今日は寒いですね〜」と投げかけたとしましょう。 相手もお約束通り、「そうですねえ」と、にこやかに「イエス」の反応を示してきました。 丁寧な人であれば、「そうですね。寒いですねえ」と、同じ言葉を返してくるかもしれません。 実は、問題はこのあとなのです。というのも、「そうですねえ」とか「そうですね。寒いですねえ」などと、言葉を返されたあと、適当な言葉が見つからず、お互いに沈黙したまま、いきなり重苦しい空気になってしまうことも少なくないからです。こんな経験、皆さんもありませんか? 1つの質問に対して 2つの答えを用意する では、相手から天気の話を交えた挨拶をされたとき、それに答える側として、どんなふうに反応したら良いのでしょうか。 こんなときに使える効果抜群のテクニックがあるのです。それが「一問二答」の返し方です。 文字通り、1つの質問に対して、2つの答えを用意するわけですが、2つ目の答えは、小耳にはさんだ程度の、さりげない「プラスアルファの情報」で良いのです。たとえば、先ほどの天気の話題なら、 「今日は寒いですね〜」 「そうですね。でも、午後からはだいぶ気温も上がると、天気予報で言っていましたよ」 このように些細な情報を付け加えるだけです。すると、相手は話が広がったことで、俄然話しやすくなります。 「そうですか、それはいいことをうかがいました。なんだか気持ちまで温かくなってきましたね!」 「でも、ここのところ、一日の気温差が激しくて、体調管理が大変ですよね。ご家族は、風邪など大丈夫ですか?」 このように話題が途切れることなく、スムーズに進んでいきます。 何か問われたら、答えを2つ用意する。気まずい沈黙を避け、豊かなコミュニケーションを図るためにも、「一問二答」の返し方を身につけたいものです。 さて、次回はいよいよ櫻井メソッドの6、7をご紹介します。「相手にすんなり受け入れられる注意や頼みごとのテクニック」についてです。(次回は9月27日公開となります) https://diamond.jp/articles/-/179352
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