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幸福度指数が世界トップレベルのオーストラリアの不思議
定年バックパッカー海外放浪記
オーストラリア自転車&キャンプ旅2000キロ走破 第1回
2018/09/16
高野凌 (定年バックパッカー)
(2017.11.4〜2018.1.10) 68日間 総費用33万9000円〈航空券含む〉)
豊かな大自然と美しい街並みを巡る自転車旅行
小雨のシドニー・ハーバーブリッジ
初夏のオーストラリアを自転車に乗ってキャンプしながら2カ月超周遊した。11月5日から11月28日まで24日間かけてシドニーからブリスベンまでセントラル・コースト、ホリデイ・コースト、ゴールド・コーストと海岸線に沿って北上1200キロ走破。
ブリスベンからメルボルンまで空路移動。11月30日から12月11日まで12日間かけてメルボルンから最近人気のグレート・オーシャン・ロードを西進して終点ワーランブールまで300キロ走破。
ワーランブールから鉄路でメルボルンに戻り、メルボルン港からフェリーボートでタスマニア島に渡航。12月15日から1月3日まで19日間かけてタスマニア島のデボンポートから北岸、東岸を走り南端のホバートまで500キロ走破。最後はホバート市のゲストハウスで一週間静養。
誰もが口にするオーストラリア賛歌
この2カ月間の旅行で毎日市井のオーストラリア人と話したが、彼らが口にしたのは「今の生活に満足しているよ」「この町が好きだ」「素晴らしい自然に囲まれて幸せだ」「色んな国に旅行したけどオーストラリアが最高だ」という素朴で手放しのオーストラリア賛歌であった。
ニューサウスウェールズ州の田舎町。住宅と車道の間に歩道兼子供用自転車道が設けられている
オーストラリア人(オージー)というと明るく開放的で親切というプラスイメージを抱いていたが、まったくイメージ通りであった。今まで4年間の放浪旅で中国、韓国、東南アジア、インド、地中海、南欧、米国など数十か国を行脚してきたが自分の生活、人生、そして社会に対する満足度については、どこの国の人でも多少なりとも否定的であるのがフツウ(一般的)であった。特に中国、韓国、南欧では否定的コメントが圧倒していた。
「オージーはどうしてそんなに幸せなのか」興味深いテーマであると感じた。
街の景観がキレイ!!
11月5日、シドニーを出発。最初に感じたのは、ロードコンディションが非常に良いことである。自治体が定期的にメンテナンスしている。自治体の財政事情は道路維持費に敏感に反映するので、ロードコンディションで自治体の富裕度や景気の良し悪しが分かる。
次に気づいたのは、シドニー中心部から郊外に至る道すがら、いわゆるスラム街を見かけなかったことである。ブリスベン、メルボルン、ホバートでも荒廃したスラム街の記憶がない。昔からの工業都市であるニューキャッスルでは往時の工場労働者の古い集合住宅が並んでいたが再開発予定地であった。
おそらく人口増加と経済成長のサイクルが持続的に調和しているのであろう。そして欧米でもアジアでも程度の差こそあれ目につくゴミ問題も、オーストラリアは格段に日本に近い水準であった。こうしたことが相俟って街の景観がキレイに見えるのだろう。
フツウのオージーは日本人から見たら富裕層?
オーストラリアの街並みで特徴的なのは芝生であろう。戸建て住宅では道路脇まで広がる庭園の芝生をカートに乗って芝刈りする姿が日常的である。住宅地では日本の感覚からすると豪邸が立ち並ぶ。そして戸建て住宅のカーパークには乗用車、大型四輪駆動車、キャンピングカー、モーターボートが置かれている。四駆でキャンピングカーやモーターボートを牽引するのだ。いわゆる中流階級ではこうした戸建て住宅がフツウのようである。
カルーア河畔のフリーキャンピングサイト(町営無料キャンプ場)。バーベキューハウスの屋根の下で『お一人様テント』を設営
日本で40年間真面目に働いてもこのようなライフスタイルを手に入れるのは不可能である。欧米でもフツウの勤め人には不可能であろう。なぜオーストラリアでは可能なのか。
ヤングファミリーの明るい未来
カンガルー注意の標識。オーストラリアではどこでも野生動物保護の道路標識が頻繁に設置されている
11月11日。カルーア河畔の町営の無料キャンプサイトでテントを設営。隣はヤングファミリーである。29歳の旦那は大工さん。奥さんは経理事務をしていたという。1歳半の娘が一人。
大きなキャンピングカーで内装は快適なマンションのようである。旦那が自分でスクールバスを改造したという。彼らはオーストラリア生まれであるが、奥さんのお父さんが現在カリフォルニアに住んでいるので3年間カリフォルニアで暮らして帰国したばかりという。
オーストラリアでどこに住むか決めるために一年間かけてキャンピングカーで全国を周って実地検分するという計画だ。「彼は腕のいい大工なので幾らでも仕事があるし、家も自分で建てるから安上がりよ。家を建てたら子供もあと二人は欲しいわね」と奥さんは楽観的だ。
「カリフォルニアも住みやすいけど、やっぱりオーストラリアがベストね。大学まで教育はほとんど無料だし、医療費も安いし。米国は教育費、医療費が大変よね。」という奥さんの言葉は明るかった。
釣りキチのスクールバスの運転手さん
コアラ注意の標識。コアラのような夜行性小動物を車が跳ねる事故が多発している。野生動物を跳ねた場合には最寄りの動物救急センターに連絡することが義務付けられている
11月17日。ホリデー・コーストの景勝地クレセント・ヘッドの浜辺の公園でキャンプ。自転車で付近をぶらぶら見物していたら、一軒家の庭で芝刈りをしていた同年代と思しきオジサンに声をかけられた。
彼は昼間私を見かけたという。小型の折り畳み自転車に荷物を満載して走っているのは珍しいのでよく覚えているという。オジサンはスクールバスのドライバーで子供たちを送っている途中で見かけたらしい。
このビーチ沿いの家はオジサンの別荘という。金曜日なので週末を趣味の釣り三昧で過ごそうと、仕事を終えてから四駆でモーターボートを牽引して別荘に来たという。スクールバスの運転手さんでも“別荘&モーターボート”で週末は釣り三昧できるというのは日本ではあり得ないと彼我の格差に唖然とした。
オーストラリアの賃金と物価は?
オーストラリアの最低賃金は世界最高水準の1時間16ドルである。為替レートは1豪ドル=90円であるから時間給1440円である。ちなみに果物や野菜などの収穫作業(harvest work)は典型的な単純労働で外国人の若者がワーキングホリデービザで就労している。タスマニアのゲストハウスでは1日8時間労働で160ドル〜280ドル(14400円〜25200円)の募集ポスターが貼られていた。
オーストラリア国籍の熟練労働者であれば最低でも日当3万円であろう。ちなみに自転車のブレーキパッドの交換の手間賃が25ドル(約2200円)であった。日本であれば500円〜700円である。自転車の修理は熟練職人の仕事なのだろう。
国際物価水準を比較したサイトにはニューヨークとオーストラリアの生活費はほぼ同等というデータもあったが、実感としてはそれほどでもなかった。
世界の中でオーストラリアの幸福度は
サーフィンの聖地クレセント・ヘッド・ビーチの民営有料キャンプ場。トイレ、温水シャワー、ランドリー、BBQ、電気・水・ガスとキャンピングカーに必要な設備が完備
オーストラリアの公園には子供連れの家族が目立つ。WHOの2011年統計では合計特殊出生率はオーストラリア2.0人でフランスと並ぶ。ちなみにニュージーランドは2.2人でバングラデッシュと同率。日本は1.4人で韓国、イタリアと並ぶ。
所得格差を示すジニ係数は米国が0.39に対してオーストラリアが0.34である。ちなみに日本が0.33、韓国が0.30であり、オーストラリア社会が特に所得格差が小さいとは言えないようだ。
国連が発表した2017年度の幸福度ランキングではノルウェーなど北欧諸国が7.5で最高レベル。オーストラリアは7.28で堂々の第9位。ちなみに日本は5.9で51位、韓国は5.8で55位。やはりオーストラリアは日本よりは格段に幸せな国のようである。
⇒第2回に続く
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