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ゆとり労働で“働き方世代”誕生? 残業短縮がもたらす弊害 〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180912-00000063-sasahi-soci
AERA dot. 9/13(木) 7:00配信 AERA 2018年9月17日号より抜粋
管理職の労働時間は長そうだ[一週間で比べてみると](AERA 2018年9月17日号より)
「働き方改革」で管理職は部下の仕事を肩代わり。部下の負担は減り定時に帰れるゆとりが生まれたが、各所で弊害が生じている。
部下のほうは、いつしか残業ゼロを当たり前だと思うようになったと、大手商社で働く40代前半の課長は明かす。取引先との会食の席で、部下のスマートフォンがメールの着信音を鳴らした。だが会が終わってもメールを確認しない。わけを聞くと、
「勤務時間外ですから」
続けて、
「この接待が残業にならないのは、どうしてですか?」
かつてモーレツの代名詞だった商社。課長はため息をつく。
「若手社員は仕事を楽勝だと思っていますよ」
だがハラスメントの意識も高まり、強く指導しにくい。
「自分は修羅場をくぐって育ってきた。それ以外の部下教育法は知らないですね……」
一方、同じ会食の状況でメガバンクの20代半ばの行員はメールを確認した。だが困った顔をして、上司の次長に「返信してもらえないですか」と頼んだ。
「勤務時間外にメールを返信した記録が残ります。次長が労働組合に『時間外も働かせている』と責められてしまう」
かくして管理職ではない社員は会社を早く出る。そのあとの時間をどう使っているのか。商社の課長によれば、「家でネットを見ているか、友だちとごはんを食べているだけ」だそうだ。
「若手ほど自己研鑽に時間とお金を投資すべきなのに。将来に向けて何をすればいいのか、わかっていない」(課長)
30年後には、学校の授業時間が少なかった「ゆとり世代」のように、労働時間が短い「働き方世代」と称されるのではないか。若手社員の未来を危ぶむ。
もちろん、仕事に燃える社員もいる。午後6時をまわり、大手自動車会社の50代半ばの部長が「さあ、早く帰れ」と声をかけると、部員が近寄ってきた。
「今日中に、この仕事をやりきりたいんです。残業させてください。残業代はいりません」
この部員には重要な案件を任せていた。たしかに早くまとめてほしい。懇願を受け入れて残業を認めたら、のちに人事部長に長々と嫌みを言われたそうだ。
残業時間の短縮と、部下の責任感や向上心。どちらを優先すればよかったのか。メガバンクに勤める40代半ばの次長が言う。
「わたしたち管理職は、その答えを持っていない」
ある金融関連企業では管理職と部下が結託して、答えを見つけた。午後8時の強制消灯の直前になると当番がスイッチの近くに構え、照明が消えると同時につけ直す。残業手当はつかないが、仕事を続けたければできる。帰りたければ帰っていい。会社に内緒で、いわば非公式に社員が「残業する」「帰る」を選べるようにしたわけだ。
公式には、多くの経営者が出した答えは効率の向上だ。重要度が低い作業を捨て、収益に貢献する業務に集中することを指す。メガバンクでは、全国の支店の営業成績を毎日集計して報告書にまとめるといった定型業務を自動化している。集計担当は営業部門に移った。当然、成果を問われる。仕事の密度は格段に濃くなった。そうした行員のひとりが上司に漏らした。
「このごろ猛烈に忙しいです。でも残業代がなくなって、給料は減りました。釈然としません」
現場で悲喜こもごもを生みだした働き方改革について、前出の佐藤教授は、経営側の判断が不可欠と説く。
「仕事を減らすには、極端に言えば、利益率が低い事業から撤退して売り上げを減らすことも辞さないか、といった経営姿勢に帰結するのです」
自動車会社の部長は昨年がんを患って休職。勤務先の働き方改革で設けられた休暇制度を使って復帰したという。こう語る。
「本当に必要な働き方改革は単なる残業短縮ではない。だれもが心身ともに健康で働き続けられる社会を実現してほしい」
(ジャーナリスト・大竹哲也)
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