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「働き方改革」で管理職が悲鳴 広がる部下との労働時間格差
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180911-00000050-sasahi-life
AERA dot. 9/12(水) 11:30配信 AERA 2018年9月17日号より抜粋
illustration:佐藤ワカナ
管理職の労働時間は長そうだ[一週間で比べてみると](AERA 2018年9月17日号より)
「働き方改革」で管理職が割を食うケースが目立つ。部下が定時に帰るので、残った仕事を肩代わり。かえって労働時間が長くなったという。
* * *
土曜日に出社すると、いつもの顔ぶれがそろっていた。部長、次長、課長……見渡す限り管理職ばかり。大手保険会社に勤める40代後半の部長は、隣の部の部長に声をかけた。
「今週はどうしたの?」
その部長はパソコンに顔を向けたまま、黙って天井とスマートフォンを指さした。役員からLINEで仕事の指示が来たのだ。自分も同じ。朝の散歩の途中でメッセージが届いた。役員からのメッセージだけは着信音を変え、未読スルーを防ぐ。
「休め」と言うくせに…
<週明けの役員会議で例の案件が議題に。うちは、どんなスタンス?>
自分の担当部の方針も把握していないのか。「休みはしっかり取れ」と言っているくせに、役員会議の前になると慌てる。
LINEは難しい。返信を即刻ほしいのか、後日でいいのか、文字だけでは判断できない。だが、急ぐに限る。手元に資料がないので、散歩を切り上げて出社した。月4、5日は、こうして休日出勤するはめになる。
実は、この事態を予測していた。前日、部下に役員会議の想定問答をつくるように命じていたのだ。だが、定時退社の午後6時が迫っても完成しない。昔なら「できあがるまで帰るな」と命じたが、いまはめったなことでは残業させられない。会社が進める「働き方改革」のせいだ。労働時間を短く、ワークライフバランスを整えて──部全体で残業時間の枠が決められ、超えると自分の人事評価に響く。部下に時間をかけて試行錯誤させることは育成に役立つが、途中で取り上げるしかなかった。
残業して仕上げたい。でも別の部で「部長が残っていると帰りにくい」との苦情があったと聞き、平日は定時退社していた。
部下にとっては、上司よりも遅く帰る「つきあい残業」や、記録に残さない「隠れ残業」などはなくなった。その半面、部長にとって増えたのは、部下の仕事の肩代わりだけではなかった。皮肉なことに社長から「どうすれば仕事が減るか、部長たちで考えてくれ」と、指示が飛んだ。休日出勤は必然と思えた。
管理職には労働時間の規制がなく、各社が進める働き方改革のひとつ、残業時間の短縮でも枠外だ。長時間労働になりやすい。企業活力研究所が2016年に実施した営業職の管理職が対象の調査では、1週間の実労働時間が60時間以上と回答した割合は23.7%にのぼる。単純計算で1カ月の残業が「過労死ライン」の80時間に達する水準だ。調査研究の委員長を務めた佐藤博樹・中央大学大学院教授が語る。
「もともと管理職はコンプライアンス(法令順守)対応などで仕事が増えていました。部下の残業時間の削減が、その流れに拍車をかけた格好です」
追い打ちをかけそうなのが今年6月に成立した働き方改革関連法だ。残業時間にいっそう厳しい制限がかかる。残業がさらに減る若手社員と、さらに増える管理職で格差が広がるのかもしれない。冒頭の部長が恐れる。
「年齢とともに体力は落ちるのに、働く時間がこれ以上長くなったら、どうなるのだろう」
(ジャーナリスト・大竹哲也)
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