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リーマン後10年「次なるリスク」、債務膨張に経済ナショナリズム…(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/415.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 9 月 10 日 10:48:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

リーマン後10年「次なるリスク」、債務膨張に経済ナショナリズム…
https://diamond.jp/articles/-/179322
2018.9.10 倉都康行:RPテック(リサーチアンドプライシングテクノロジー)株式会社代表取締役 ダイヤモンド・オンライン




 世界経済を襲った「2008年9月15日」は、誤解を恐れずに言えば、日本列島を驚愕させた「2011年3月11日」と同じくらいに忘れられない特別な日だ。

 あの日、全米第4位の投資銀行リーマン・ブラザーズが、当時最大の6390億ドルという巨額の負債総額を抱えて経営破綻した。それ以降世界に広がった銀行不信、株価暴落、景気後退、失業急増などの「悪夢の連続」から10年がたった。

回復した世界経済が抱える
「3つのリスク」


 主要国における銀行支援策や積極的な金融緩和、そして中国の大胆な財政政策出動などが奏功し、世界経済はすっかり立ち直った。

 日本も、当時は需要蒸発、就職氷河期といった暗鬱な言葉が飛び交う経済状況に陥ったが、堅調な海外経済に恵まれて、潜在成長率を上回る経済拡大ペースを維持している。

 深刻な金融危機の温床となった米国の金融システムは規制強化によって健全化し、主要国のGDPは危機以前の水準を上回って、世界各国の株価指数も大幅に上昇している。ゼロ金利や量的緩和といった危機対応の金融政策は、米国を筆頭に修正が進んでいる。

 この回復過程で、欧州でのギリシャ不安や中国からの資本流出懸念など、危機再来への懸念が強まる局面も何度かあったが、世界経済はその都度、難局を乗り越えてきた。そして2017年には「世界同時好況」といったムードに包まれるようになり、少なくとも金融危機の記憶はすっかり風化してしまった、といってよい。

 だが安心していていいのだろうか。

 各国経済をより深く眺めれば、危機が残した爪痕は完全には消えていない。 リーマンショックの「置き土産」として、世界は、債務の膨張、金融政策の迷走、地政学の変貌という3つの潜在的リスクを抱えている。

記録的に膨張した債務
政府の赤字や中国の民間借り入れ


 まず目立つのは、世界各国で増加する負債額だ。

 世界経済が成長軌道に戻ったのと、世界の負債規模が大幅に増大しているのは、コインの裏表のようなものだ。美しい片面のもう一方に、将来のリスクが隠れている。100年に一度といわれた金融危機からの脱却が、経済の自律的回復力だけで達成されたものでないことは明らかだ。

 成長の代償として、世界各国は大規模な債務増を背負った。IIF(国際金融協会)によれば、世界の債務額は2007年の142兆ドルから2008年3月には247兆ドルにまで増加、GDP比で見ると269%から320%にまで拡大している。

 その中枢を占めるのが、政府など公的機関と非金融民間企業の借り入れだ。

 前者は銀行支援や景気対策で各国政府の財政赤字が拡大した結果だ。後者は中国企業を中心とした不動産・建設・資源開発などの投資のための借金である。

 いずれもプラス効果とマイナス効果を併せ持つ負債だが、今後、金利上昇が続くとすれば、変動金利ベースでの借り入れ負担はかなり厳しくなるだろう。

 この負債の増加の中で、イタリアやギリシャなど南欧諸国や日本の慢性的な財政赤字構造や、減税・歳出拡大へ邁進する米国の財政赤字が拡大した。だが公的債務の増加も気がかりだが、昨今の市場がより警戒しているのは、ハイペースで膨らんでいる中国の民間企業の負債残高だ。

 同国の負債水準はさまざまな国際機関や民間金融が推計しているが、現時点で、中国の非金融民間企業の負債水準はGDP比ほぼ200%のレベルにまで達した、との見方が強まっている。

 日本のバブル期でも100%程度だったことを思えば、空恐ろしい水準である。さらにドル建て債務のシェアが高まっていることは、昨今のドル高・人民元安で返済負担が増大していることを意味している。

 これは、リーマンショック後、2008年に中国政府が金融危機対策として発動した財政出動と平仄を合わせて急増した民間負債であり、その中の怪しげな負債が銀行のバランスシートから外されて「理財商品」として個人を含む投資家に転売されていたことも話題になった。

 現在、中国政府は「金融システムの健全化」を掲げて取引の透明化を急いでいるが、過剰投資・過剰生産が常態化している中国経済で、金融問題の是正は容易ではない。

 米国との貿易摩擦が貿易戦争へと転じていく過程で、成長ペースに下押し圧力が強まれば、国有企業といえどもデフォルトリスクに直面する。そんなリスクを回避すべく、いま中国政府は鉄道などインフラ投資増を含めた景気対策を打ち出している。負債額が一段と増加しかねない状況に向かい始めているのである。

金融危機対策の後遺症
正常化に遠い金融政策


 金融危機対策の後遺症として中国経済に現れたのが民間負債の急増だとすれば、低成長の長期化という「難病」に悩まされる日米欧など先進国には、金融政策へのしわ寄せが表面化している。

 その「症状」をなかなか克服できないのが日本であることは、ここであらためて述べる必要もあるまいが、ようやく軌道修正に向かい始めたユーロ圏だけでなく、金利正常化へとかじを切った米国さえも、本来の金融政策の姿を取り戻しているとは言い難い。

 ECB(欧州中央銀行)は10月以降、資産買い入れ額を半減させ、年内に量的緩和策を打ち切る方針を決めた。来年夏以降には利上げも視野に入れており、FRB(米連邦準備制度理事会)に続いて正常化への道を歩むと見られている。

 だが昨年の高成長の反動やユーロ高の影響、そして米国との貿易摩擦などの逆風を受けて、実体経済や物価動向には強い不透明感が漂っている。

 EU内を見ても、ギリシャは支援のプログラムから脱したとはいえ経済・財政の再建には程遠く、ポピュリズム政権が誕生したイタリアは再び財政赤字拡大へ向かう公算が高い。同国の反ユーロ機運はいずれ復活するだろう。

 そして政治経済の中核を担うドイツではメルケル首相の存在感の低下が甚だしく、域内をまとめ上げる政治力が弱まっていることもユーロ圏経済と金融政策を揺さぶる要因になっている。

 欧州には、まだ危機の余韻が漂っているのだ。

 そして量的緩和から脱却して利上げと保有債券減少の「正常化路線」を歩むFRBも、自信満々という印象からは程遠い。

 米国の潜在成長率は戦後で最も低い1%未満の状況にあり、就業を希望しながら仕事に就けないでいる潜在的労働力も、まだ相当存在すると見られている。

 トランプ大統領の減税策や歳出拡大策によって景気拡大期が延びているが、債券市場の利回り曲線は来年後半にも景気が失速する可能性を示唆している。景気後退となれば、FRBはゼロ金利・量的緩和などの再出動や、日本と同様のマイナス金利導入あるいは長期金利の低水準での固定化といった「奇策」を余儀なくされる可能性が高い。

 つまり日本だけでなく欧州も、そして米国さえも、金融政策では、リーマンショック以降の異常な政策からの「本物の出口」を見いだせていないのである。

「異形の大統領」を生み出した
経済ナショナリズムの高揚


 そしていま為替市場では、トルコをはじめとしてアルゼンチン、ブラジル、ロシア、インドそして中国などに至るまで、新興国通貨安の嵐が吹き荒れている。

 これは各国における政治経済情勢への懸念にドル高や金利上昇が加わったうえ、トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争を契機とする投資家心理の悪化が重なったものだ。

 関税引き上げという反自由貿易政策への傾斜をトランプ大統領流の脅しと見る向きも多いが、これは10年前の危機と全く無縁の産物ではない。

 1930年代の世界大恐慌が保護貿易の嵐を呼び、それが第二次世界大戦の呼び水になったことは周知の通りだが、2008年の世界的大不況を機に、成長機会が他国に奪われたとの不満が各国の国民の間で強まり、米国内でも保護主義が生まれる下地を形成した、と言ってよい。

 しかも結局、この10年間のリーマンショックからの回復の過程でも、恩恵を受けたのは株や不動産の値上がりを享受した富裕層や、公的支援を受けた金融業界の経営者、デジタル社会の波に乗ったハイテク企業の経営者といった少数の人々だった。

 労働分配率が低下する中で、一般家計の実質所得は低迷したままであり、そんな大衆の不満をうまく吸い上げたのが、2016年の米国大統領選挙で勝利したトランプ氏だった。

「異形の大統領」の出現は、決して偶然ではなく金融史が生んだ1つのドラマなのである。

 その「経済ナショナリズムの高揚」は、地政学の面でも重要な意味を含んでいる。

 20世紀初頭は英国の国際的覇権が大きく低下する世界秩序の転換点だったが、トランプ政権の誕生もまた、米国が戦後に築いてきた世界秩序が崩れる予兆を示唆しているからだ。

 同大統領はカナダや欧州、日本など伝統的な友好国にも背を向け、NATO同盟国のトルコを冷たくあしらい、中国やイランへの敵意をむき出しにする一方で、ロシアには秋波を送りつつ中東ではサウジに極度の肩入れをするなど、世界の安定的な政治経済基盤を揺るがせている。

地政学リスクは
戦後システムの転換につながる


 地政学リスクは、単に目先の株式市場や為替相場を左右するだけの存在ではない。

 歴史的に見れば、地政学の変貌は金融センターの変遷や基軸通貨の代替、通貨制度の変革、資本市場の激変など、経済システムに大振動をもたらしてきた。

 リーマンショックから10年が経過して世界経済は安定したかに見えるが、大局的にいえば我々は「単に余震に気付いていないだけ」という可能性もあるのだ。

 例えば、今日の米中の泥沼の覇権争いは、IMF、世銀、WTOなどの国際機関の存在意義を消失させてしまうことも考えられる。

 深刻な危機を脱して経済成長軌道を取り戻したかに見える米国は、実は危機の残滓を引きずりながら保護主義へ向かい、世界秩序の乱れを引き起こそうとしているかのようだ。

 世界的な債務の記録的膨張、出口なき主要国の金融政策、そしてトランプ大統領の独善的な振る舞いとその「米国第一主義」に厚い支持を寄せる人々の存在は、「次なる危機」への潜在的リスクを示す「炭鉱のカナリア」なのかもしれない。

(RPテック(リサーチアンドプライシングテクノロジー)株式会社代表取締役 倉都康行)


 

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コメント
1. 2018年9月10日 11:25:09 : 0CejVRban6 : urcdmA9xc1s[9743] 報告
コチラもどうぞ。

トルコ・イラン・ロシア 米ドルを無効、自国の通貨で取り引きへ
石油、ガス、基礎製品の取り引きと銀行取り引き
https://goo.gl/rE3x6q

トルコのアメリカ離れがとうとうここまで…

2. 2018年9月10日 13:04:01 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1466] 報告

確実に債務バブルと破綻を防ぐには、投資(融資)と決済機能を行う金融機関の垣根を明確化するしかないが

成長にとって決済マネーを投資に使うことの有利性は明らかなので、なかなか実現は難しい

さらに利益を得られなかった一般大衆の嫉みや怒りから生じる政治圧力が、

バブル崩壊によるダメージを加速して世界中に伝播することが多いのは

今の貿易戦争も同じ構図と言える

 


 

リーマン危機10年 当事者の証言(1) 責任不在、次の危機の芽
リーマン「担保あった」 当局「法的権限ない」
2018/9/9付日本経済新聞 朝刊
 2008年9月15日。米投資銀行大手のリーマン・ブラザーズが破綻し、世界は金融危機(リーマン・ショック=総合2面きょうのことば)に陥った。それから10年。世界経済や金融システムは息を吹き返したが、爪痕は残り、新たな危機の予兆はある。リーマン元首脳ら内外の関係者が日本経済新聞に語った新たな証言を交え、当時を検証し「次の危機」への教訓を探る。(肩書は当時)=関連記事を特集面、総合3面に

リーマン・ブラザーズ元副会長 トーマス・ロッソ氏

リーマン・ブラザーズ元CAO スコット・フライドハイム氏

 「日曜になってもどれを発表することになるのかわからなかった。想像を絶する苛烈な時間だった」

4つの選択肢

 破綻前日、14日の日曜日。リーマンのCAO(最高管理責任者)、スコット・フライドハイム氏の机には残された選択肢について4つの発表資料が並んでいた。英バークレイズによる買収。米商業銀行大手、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)による買収。事業再編と政府支援による生き残り。そして、万策尽きての破綻――。

 米住宅バブルがはじけ、08年3月に投資銀行のベアー・スターンズが実質的に破綻した。ウォール街を監督するニューヨーク連銀が緊急融資に動いて、米商業銀行大手のJPモルガン・チェースに救済買収された。規模の近いリーマンは「次の標的」とされて市場の攻撃を受け、資金繰りが行き詰まった。

 ニューヨーク連銀のガイトナー総裁は9月12日にウォール街の首脳らを集め、14日まで対応策を練った。ウォール街はバークレイズの買収を支援する協調融資をまとめかけたが、同社は撤退。バンカメはメリルリンチに買収対象を乗り換えた。リーマンは再建の道を閉ざされ、当局は米連邦破産法11条の申請を迫った。

 米当局はなぜリーマンを救済せずに、世界金融危機の引き金を引いたのか。リーマン危機の最大の謎だ。

 「米連邦準備理事会(FRB)から融資を受けるのに十分な担保を持っていた。のちの専門家の調査でも証明されている」

 リーマンの副会長だったトーマス・ロッソ氏は、日本経済新聞に破綻の内幕を語った。最大で必要な額を35%上回る担保を持っていたとも説明した。

 金融システムを守るためFRBが実行する緊急融資は「堅実」な先に限ると法律で規定された。ポールソン財務長官やガイトナー氏、FRBのバーナンキ議長は、リーマン救済の見送りを「法的な権限がなかった」とのちに説明した。リーマンの担保の多くが不良資産であれば、FRBは融資できない。だが、当局は明確な根拠を示していない。ロッソ氏は「(担保不足と判断したという)文書はない。説明は偽りだ」と批判した。

 08年9月は共和党・ブッシュ政権の末期。議会では金融の公的救済に批判的な声が強まった。「強欲なウォール街を救うのは許せない」との世論も無視できなくなった。大統領選を11月に控え、共和党の大統領候補、マケイン氏は「国民を公的救済から守る」と主張した。ベアーの救済に続き、住宅公社2社の公的支援に必要な法案は議会で紛糾。「ここは社会主義国か」。こんな声を張り上げる有力議員すらいた。

政治判断で暗転

 当局の策は裏目に出て、市場はパニックに陥った。世界最大の保険会社、米AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)は金融派生商品などの巨額損失で経営危機に陥り、救済せざるを得なくなった。名門のモルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスも苦しくなった。

 結局、議会は10月に7000億ドル(80兆円弱)の公的資金で金融危機を封じる新法を曲折を経て成立させた。大手金融への公的資金の一斉注入も決めた。ロッソ氏は「『これ以上の公的救済はしない』という政治判断でリーマンを犠牲にした。すぐに、その決断がいかに愚かだったか気づいた」と語った。

 「危機の本質はリーマンの経営問題ではない。様々な主体の『レバレッジ』(借金による投資)だ」

 ロッソ氏は危機の原因をこう総括した。政府の持ち家促進策で家計も住宅価格の上昇を過信。返済能力の低い低所得者らへの住宅ローン(サブプライムローン)など過剰な債務が積み上がり、住宅バブルが育った。

 高度な金融技術を使えばリスクを分散できるとの幻想で金融資本主義は暴走。個々のサブプライムローンは巨額の投資商品に仕立てられ、金融機関や投資家に転売された。やがて低所得者は身の丈を超えた借金を返済できなくなり、回り回って投資商品は価値を失った。その膨大な損失が金融機関を押しつぶしたのがリーマン危機の実相だ。

 「FRBが06年に利上げをやめたのをみて、経営幹部はさらにリスクをとるよう指示した。実態は不動産投資ファンドだった」

 債券部門でリーマンのトレーダーだったローレンス・マクドナルド氏はこう語り、住宅バブルに踊ったと認めた。トップが収益拡大の旗を振り、過剰なレバレッジを使い、リスクの高いサブプライムローンなど不動産投融資にまい進。ウォール街では「破綻は自業自得だ」との声もあった。

 今に残る教訓は何か。米国は1980年代に貯蓄金融機関の危機を公的資金で封じ、90年代の日本が巨額の公的資金で金融危機を克服したこともよく知る。一方、住宅バブルに突き進んだ金融を公的に救い続ければ、深刻なモラルハザード(倫理の欠如)を招きかねない。リーマンを救済しないとの決断は金融システムを機能不全に陥れ、恐慌を世界にばらまいた。

 最終的に米政府は残る金融機関を救済し、米欧日の中銀による未曽有の金融緩和や中国の4兆元(当時のレートで57兆円)に上る景気刺激策で、世界は平穏を取り戻した。金融システムも健全化したかに見える。

 だが、世界の債務は危機時より大きく膨らんで、ファンドなどを通じてあふれ出たマネーが新たなバブルを生みだしてもいる。政府や政治家、中銀、金融・企業は危機の再発を防ぐ責任があるのに、主体的な動きはさほど見えない。際限なく膨張するマネーをどう制御していくか。再び重い課題が突きつけられている。

(ニューヨーク=大塚節雄)

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リーマン危機10年 破綻劇はなぜ起きたか
2018/9/9付日本経済新聞 朝刊
ロッソ氏
フライドハイム氏

 リーマン・ブラザーズの破綻から9月15日で10年。世界を揺るがす破綻劇はなぜ起きたか。副会長だったトーマス・ロッソ氏、CAO(最高管理責任者)の任にあったスコット・フライドハイム氏に聞いた。
(聞き手はニューヨーク=大塚節雄)

当局の決断愚かだった ロッソ元副会長

 ――破綻の原因は。

 「住宅価格は下がらないと妄信し、官民こぞって家計の『レバレッジ(借金による投資)』を助長した。投資銀行も流れをあおる装置となったが、問題はリーマン固有ではなく、すべての投資銀に共通していた。リスク指標ではリーマンは中くらいの位置だった」

 「他の投資銀や保険大手、果ては米連邦準備理事会(FRB)のドル供給で他国も救済された。拒否されたのはリーマンだけだ。住宅2公社の支援後、世論が救済策を嫌い、当局は政治の混乱に直面した。政治判断でリーマンを犠牲し、すぐに決断がいかに愚かだったかに気づいた」

 ――FRBは担保不足で融資を避けたのでは。

 「のちに当局者は法的権限がなかったと説明したが、(判断を裏づける)公的文書はない。説明は偽りだ。その後、十分な担保を保有していたことが証明されている。専門家の調べでは最大で840億ドルの必要額に対し、少なくとも1140億ドルの担保があった」

 ――破綻の教訓は。

 「危機下ではだれも自分のことしか考えなくなる。FRBの最後の貸し手機能は欠かせない。法改正で機能が制限されたのは問題だ。次の危機は政府の過剰なレバレッジに潜む。すぐに社会保障費の膨張に対処する必要があるが、二極対立は深まる一方。政治システムの問題は深刻だ」

 Thomas Russo 弁護士出身。93年から最高法務責任者、99年からは副会長を兼務。破綻後はAIG幹部に転じた。74歳。

金融「脱政治」欠かせず フライドハイム元CAO

 ――リーマン破綻は回避できたでしょうか。

 「救済できたし、すべきだった。私を含めて投資銀行の経営陣は仕事や資産の大半を失ってもやむを得なかった。だが無数の一般の人々が深く苦しむのは避けられたはずだ。支援に十分な担保はあったが、当局者を責めるつもりはない。賢明な彼らが結果を予想できなかったとは思えない。巨大な政治圧力に屈した」

 ――高リスクの事業に傾斜しすぎたのでは。

 「危機には政府の住宅取得支援策、個人向け信用、住宅公社など様々な要素が絡む。そこに過度の融資をした商業銀、許される範囲の上限までレバレッジを高めてリスクをとった投資銀が加わる。リーマン固有の問題なら話は簡単だろうが、レバレッジなどの指標は競合他社と大差なかった」

 「だが、すべての投資銀は流動性の低い資産を資本以上に持ち、短期の資金調達が緊張すれば、ゲーム継続は難しくなる。ベアー・スターンズが倒れた直後から、我々は売却や合併の検討を急いだ。次に小さな投資銀だったからだ。検討先は100を数え、用意した4種類の資料のどれを発表するのか直前までわからなかった。想像を絶する苛烈な時間だった」

 ――破綻の教訓とは。

 「いかに『脱政治』を進めるかを議論すべきだ。次代の(金融規制の国際基準)『バーゼル4』構築に向けて国際協力のもとに規制のあり方を再評価するのも一案だ」

 Scott Freidheim 91年入社。トップ直属スタッフを経て幹部職を歴任。その後は投資会社や非営利団体を運営。53歳。

 

リーマン危機から10年 個人投資家が得た2つの教訓 2018/9/9
リーマン危機後、様々な資産価格はほぼ5〜6年で回復した
 2008年9月のリーマン・ショックから丸10年。「100年に1度の衝撃」にめげずに投資を続けた人は、大きな果実を得た。「投資の継続」「急落に耐える資産配分」という2つの教訓は、次に訪れる金融危機にも応用できそうだ。
 「評価損で一時資産が半値以下になりうろたえた」。02年から積み立てで国際分散投資してきた会社員でブロガーの水瀬ケンイチ氏は、リーマン危機をこう振り返る。「しかし世界経済は長期では成長を続けると信じて積み立てを続けた」。昨年末時点で累計投資額約4000万円は、6400万円に増えている。
■資産価格は5〜6年で回復

 リーマン後の様々な資産価格は、ほぼ5〜6年で回復した。資産を増やせたのは投資を続けた人だ(グラフA)。今後も危機は繰り返しやってくるが、リーマン級の危機が来ても投資を継続することが大事だとわかる。
 下げる前に売り最安値で買い戻せばベストだが、大和総研元取締役で現在ファイナンシャルプランナーの須原国男氏は「相場を当て続けるのはプロでも困難」と話す。不安になり投資をやめると、上昇の果実を得られない可能性も高まる。
 実際、先進国株価に連動する指数「MSCIワールド(配当込み)」は1980年1月から今年7月までに42倍(ドルベース)になった。この462カ月のうち上昇率上位10の月に投資していなければ、上昇率は16倍に急減する。上位10のうち3つの月は多くの人が「危機はまだ続く」と思っていたリーマン後3年半の底値圏の時期だった。
■株式の下落率大きく
 「予測が困難だから、長期運用の国や企業の年金は世界中の株や債券に適切な比率に配分したうえで、局面ごとに配分比率をむやみに変えずに投資を継続する」(須原氏)。相場を当てる自信のない「普通の人」にも大切な姿勢だ。

 そのためには自分の耐性に合った資産配分がカギを握る。評価損が自分の許容範囲を超えると投資を継続できなくなるからだ。
 多くの機関投資家が現時点で見込む長期の期待リターンは国内外の株式で年率5〜6%、海外債券で1〜3%、国内債券で0〜1%程度。国内外の株式の配分比率が高いほど長期で大きなリターンを見込めるが、値動きも大きくなる。
 過去に米国が不況期に入った後の各資産の下落率をみると、局面で違うが株式の下げが大きいのが目立つ(表B)。
 京都の上場企業で役員をしていて07年に退職したA氏(73)は「退職金で新興国投信を大量に買ったが、金融危機で6割下落。怖くなって売ってしまい、老後設計が崩れた」と悔やむ。
 資産配分を考える際は、念のため最大評価損はリーマン危機時を想定しておきたい。ざっくりしたメドは国内株や先進国株は5割、新興国株は6割、海外債券は2割程度の損失だ。
 例えば、資産全体が1000万円で、先進国株と新興国株で500万円ずつ運用しているとすると、最大評価損はざっと550万円。この損失に耐えられないなら、株式の比率を減らす必要がある。リーマン危機時も半分が債券なら下落率を抑えることができた。これが2つ目の教訓だ。
■年に1度のリバランス

 自分に適した資産配分を決めた後、大きな上昇や下落があれば、乱れた配分比率を元に戻すリバランスを実行したい。比率が想定より高くなった資産を売り、低くなった資産を買い増して元に戻す。資産を想定していた値動きの水準に戻すのが主な目的だ。
 国内外の株と債券4資産を基本配分とし、年に1度リバランスを続けた結果を試算した(グラフC)。放っておくと上昇する株の比率を元に戻し続けた結果、08年の下落率を抑えられた。上がった資産を一部売り、下がった資産を一部買い続けるため、長期のリターンも高まりやすい。
■世界経済に火ダネ

 危機の予兆はある。日本に大きな影響がある米国景気の戦後の拡大期間の平均は約5年だが、今はもう10年目。景気後退局面でほぼ共通する予兆は長短金利の逆転だ。2年物国債などの短期金利が長期金利(10年物国債金利)を上回って1年超たつと景気後退が起きてきた(グラフD)。
 経済実勢を表す体温といわれる長期金利を、中央銀行の政策金利に左右されやすい短期金利が上回る状況は、引き締め効果が強くなりすぎていることを示す。米利上げに伴い、長短金利差が近づき、先月下旬には一時0.2%弱まで縮小した。早ければ年内にも逆転が起こる可能性がある。
 米利上げで新興国から資金流出が起きているし、米中貿易戦争による世界経済の下押し圧力も心配だ。一方で、米国では「利上げ早期打ち止め論」も浮上。景気拡大が予想外に長引く可能性も捨てきれず、断定的な予測は困難だ。
 次に危機が来たときに動揺して投資をやめてしまうか、続けられるか。それが長期の資産形成の分かれ道になることをリーマン危機が教えてくれる。
(編集委員 田村正之)
[日本経済新聞朝刊2018年9月1日付]
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3. 2018年9月10日 19:42:25 : d09awybmvs : 9XELq6f142c[288] 報告
膨大に 債務を増やす 背伸びして

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