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アパレル大手ワールド、上場廃止失敗か…巨額負債解消のため再上場は本末転倒ではないか
https://biz-journal.jp/2018/09/post_24694.html
2018.09.09 文=編集部 Business Journal
ワールド本社(「Wikipedia」より)
アパレル大手、ワールドの株式上場を東京証券取引所が承認した。9月28日にも東証1部に再上場する。2005年、MBO(経営陣が参加する買収)に伴い上場廃止しており、13年ぶりの復活となる。
想定する発行価格(3630円)に基づく上場時の時価総額は約1314億円。ワールドは市場から約540億円を調達する計画だ。公開価格は9月18日に正式に決定する。
ワールドは、なぜ再上場するのか。
「MBOの後遺症。端的にいえば、MBOが失敗したからだ」(アナリスト)といった辛口の評価が多い。MBOは、経営陣が株主から自社株式を譲り受けたりして、オーナー経営者として独立する手法をいう。
ワールドのMBOを振り返ってみよう。2005年、企業買収の防衛策として、ワールドの寺井秀蔵社長(現会長)ら経営陣はMBOを実施したが、その際、複雑な手法を採った。
第1段階は、寺井氏個人が100%出資するハーバーホールディングスベータ(以下、ベータ社)が、ハーバーホールディングスアルファ(以下、アルファ社)に100%出資した。2社と旧ワールドの資本関係はない。
第2段階は、アルファ社がTOB(株式公開買い付け)により、旧ワールドの株主から株式を取得、アルファ社は旧ワールドに94%出資する親会社となった。その後残り6%の旧ワールドの株主に対して株式交換を実施し、旧ワールドはアルファ社の完全子会社になった。
第3段階は06年4月1日、アルファ社が存続会社、旧ワールドが消滅会社となる吸収合併を実施。同日、アルファ社は旧社名と同じ株式会社ワールドに商号を変更した。
アルファ社の資本金は10億円しかない。どうやってTOBの資金を捻出したのか。旧ワールドが銀行団に債務保証し、担保を提供。銀行団は2290億円の融資枠を設定し、2300億円の買収が実現した。
だが、そのツケは大きかった。アルファ社が旧ワールドを吸収合併したため、新ワールドはアルファ社の有利子負債を丸々抱え込む破目になった。表向きはMBOといっているが、実のところLBO(レバレッジバイアウト)の変形だ。
LBOとは、買収資金を買収対象企業の資産やキュッシュフローを担保として、金融機関から借り入れて買収すること。資金が少なくても買収できるメリットがあるが、買収された企業は巨額な負債を背負う。買収された企業が、その負債を返済できなければ債務超過になる。買収された企業には極めてリスクの高い手法といわれている。
旧ワールドは、それまで無借金会社だったが、MBOによって“大借金会社”になってしまった。ワールドは今なお、1151億円という多額の有利子負債(18年3月末時点)と債務保証がある。さらに、上場廃止後、優先株発行などにより資金を調達した。買い入れ消却を進めてきたが、まだ多額の優先株が残っている。優先株の1株当たり配当金は19年3月期まで年8円だが、20年3月期以降は同18円にハネ上がる。
巨額の有利子負債、債務保証、優先株の配当負担。これがMBOの“負の遺産”として残った。
ワールドは05年の上場廃止について「消費者ニーズの多様化など、業界を取り巻く環境が大きく変わるなか、短期的な株主利益に左右されずに中長期的な戦略を展開する必要があった」と説明した。
■赤字決算を「黒字」と発表できたカラクリ
ワールドは1959年に畑崎廣敏氏が木口衛氏とともに創立。高度経済成長の波に乗って日本有数のアパレルメーカーとなった。畑崎氏は97年、60歳の若さで社長を退き、その後、投資家に転身。数々の仕手戦に登場し、有力仕手筋として株式市場の話題をさらってきた。ワールドの経営は、義弟の寺井秀蔵氏が引き継いだ。
寺井氏は郊外のショッピングセンターの拡大に伴いテナントでの出店を増やしたが、流行をとらえ低価格で販売するユニクロなどとの競争が激化。MBOによる巨額の有利子負債が重くのしかかり、13年3月期は7億円、14年同期は16億円の赤字(いずれも日本会計基準)と、2期連続の最終赤字に陥った。
そこでワールドの再建に招かれたのが“プロ経営者”の上山健二氏である。同氏は88年、東京大学経済学部を卒業し、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。92年、米ミシガン大学ビジネススクールに留学、MBA(経営学修士)を取得。帰国後は、住銀の企画部に配属され、MOF担(大蔵省担当)となるなど、エリートコースを歩んできた。
だが、住銀のような大きな組織では、個人の才能を発揮するのに限界がある。経営者に近いところで決断する仕事をしたくなった。そんな時、中古車買い取りのジャック(現カーチスホールディングス)のオーナーに誘われて、ジャックの副社長に転身。95年5月、30歳の時だ。以来、企業再生人生を歩むことになる。
2001年にジャックの社長に就任し、02年には更生会社のスーパー、長崎屋に転職。03年、事業管財人代理兼社長に就任。06年、12年前倒しで長崎屋の更生手続きを終結させた。その後、英会話教室GABAの社長、飲食店情報サイトぐるなび副社長を歴任した。
その手腕を見込まれ13年にワールドへ招かれ、15年4月にワールドの社長に就任。上山氏は、ワールドでは創業家以外からの初めての社長となった。その後、意表を突く記者発表を連発した。
一発目のサプライズは、決算説明会だった。赤字決算のはずが黒字決算と発表。15年3月期の最終利益は、なんと45億円の黒字となった。さらに14年3月期に遡って、16億円の最終赤字を20億円の黒字とした。
赤字を黒字に換えるマジックのタネ明かしをしよう。会計基準を変更したのだ。15年3月期決算から日本会計基準を国際財務報告基準(IFRS)の適用に変えた。日本会計基準では、のれん代の償却が毎年必要だが、IFRSはのれんの償却の必要がない。14年3月期に遡ってIFRSを適用すると最終赤字が20億円の黒字になり、15年同期は45億円の黒字となった。
ワールドは05年、MBOで上場廃止になった未上場企業であるため、IFRSを適用する必要はない。IFRSに変更した理由は、黒字決算にするためだったといわれている。
■再上場の真の狙い
二発目の驚きは、過去最大規模の事業の見直しだ。16年3月期に、全店舗の15%前後似あたる400〜500店を閉店。併せて10〜15の不採算ブランドを廃止した。赤字店舗だけでなく、利益が出ていても収益性の低い店舗も閉鎖した。それに伴い、社員の4分の1を早期退職させた。いずれも、16年3月期から18年3月期までの3カ年にわたる構造改革の一環である。
18年3月期連結決算(IFRS)の売上高にあたる売上収益は前期比1.7%減の2458億円、当期利益は同17.3%減の67億円と減収減益だった。実店舗による売り上げの伸びは、もはや期待できない。
今後は、百貨店などの実店舗からネット通販に経営の軸足を移す。ワールドは今年4月、古着専門のセレクトショップを運営するティンパンアレイと、衣料品のレンタルサービスを手がけるベンチャー企業、オムニスに出資した。ネット通販分野の強化が狙いだ。
ネット通販を経営の主柱に据えるには、電子商取引(EC)の基盤づくりなどに資金が必要となる。再上場により、この資金を調達する狙いだ。
再上場の真の狙いは、MBOによって財務を圧迫した負の遺産の解消とみられる。現在、日本政策投資銀行が運営するファンドが普通株式の50%近くを保有。優先株も大量に残っている。残りの株式は寺井秀蔵会長ら創業家一族が持っている。株式再上場の際に売り抜けてもらうことを意図している。
ワールドの創業家一族が失敗したMBOのツケを、もし株式の再上場で払い切ることを狙っているとしたら、本末転倒だろう。MBO失敗のツケは創業家が払うべきで、株式市場を利用するのは筋違いだ。
ちなみに、ワールドは「不採算店舗の削減など構造改革に一定のメドがつき、デジタル事業など新規事業へ投資するための資金調達手段が必要と判断し、再上場を決めた」と説明している。
(文=編集部)
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