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新築マンション価格は強気で推移の一方、契約率は低調な理由
https://diamond.jp/articles/-/179309
2018.9.8 三井住友アセットマネジメント 調査部 ダイヤモンド・オンライン
新築マンション市場の現状と今後の行方は?(写真はイメージです) Photo:PIXTA
皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
来週は、首都圏の「マンション」販売状況や東京をはじめとする大都市の「オフィスビル」空室率といった不動産関連のデータが発表されます。好調な景気や訪日客の増加が大都市を中心とした不動産需要を高め、不動産価格全般の上昇につながっていると報じられています。
一方で、投資用不動産に絡む不祥事が世間を騒がせていいて、収益が確保できない恐れのあるマンションやアパートが多数建設され、市場に供給されているとの見方があります。都心では依然としてタワーマンションが人気を集めていて、都心と郊外の不動産市況で二極化が進んでいるとのニュースも目にします。
このように、多くの話題が見聞きされる昨今、不動産市況の現状や今後の見通しについて、関心の高い読者も多いのではないでしょうか。そこで、今回は東京を中心としたマンション市場とオフィスビル市場に焦点を当ててみます。
マンション価格は高い状態が続くが、「契約率」は低調
まず、不動産経済研究所が毎月発表している「首都圏のマンション市場動向」を見て、新築マンション市場の状況を確認してみましょう。
それによると、7月には、首都圏で新築マンションは2986戸が発売されました。前年の同じ月と比べて12.8%の減少です。契約に至ったのは2024戸で、契約率は約68%です。一戸当たりの価格は6191万円と、依然として高水準が続いていますが、前年と比べると5.7%のダウンとなっています。
これら4つの数字から、現在のマンション市場の様子が浮かび上がってきます。
このうち「発売件数」と「契約件数」は、住宅業者が市況を見ながら調整して販売計画を立てていると見られることから、マンション市場の状況いかんによらず、比較的安定的に推移します。そこで、ここでは「販売価格」、「在庫件数」と「在庫率」(=在庫件数/直近12ヵ月間の契約件数)、「契約率」に注目したいと思います。
まず、「販売価格」です。「販売価格」は、2013年の年央頃までは4000万円台の半ばで推移していましたが、その後は5000万円台に上昇し、2017年からは6000万円台で推移しています。販売価格は、市況が良く、需要が供給を上回るような状況でないと上がりませんから、この点では現在のマンション市況はかなり好調と言えるようです。
マンションに対する需要が強い理由としては、好景気が継続しているため所得が増加している、株式市場も数年の時間軸で見れば上昇傾向にある、景気改善が長期化しているため人々の将来に対するコンフィデンスが高まっている、長期金利は依然として極めて低水準で住宅ローンが借りやすい、タワーマンションの増加により交通の利便性が高い物件が増えている、等を挙げることができます。
ただし、「契約率」が約68%にとどまっている点に注意が必要です。2000年以降、「契約率」は60%程度から85%程度の範囲で推移していますが、マンション市況が好調な時は80%を超えるのが普通と言われています。2012年から14年にかけては80%に近い「契約率」でしたが、その後徐々に低下し、このところは68%程度で推移しています。この68%の「契約率」では、マンション市況が好調だとは言い難いようです。
このように、現在のマンション市況データからは、好不調が共存している状況が読み取れます。
こういった状況は、なぜ起こっているのでしょうか。
高くなりすぎたマンション価格がネックに
この現象のカギとなるのが、マンション価格の高騰です。前述の通り、現在の「販売価格」は6000万円台ですが、厚生労働省の国民生活基礎調査によると2017年の「住宅購入層の世帯当たり平均年収」(※)は約700万円です。とすると、6000万円台のマンションは住宅購入世帯の年収の約8.5倍となってしまい、平均的な世帯からするとかなり手が届きにくくなります。
ちなみに、4000万円のマンションならば、平均世帯収入の5.7倍程度となり、無理のない住宅ローン返済が出来ると見なされる範囲内に収まります。
(※)「住宅購入層の世帯当たり平均年収」=住宅購入層を30歳以上59歳までとして、30歳代、40歳代、50歳代の世帯数が均等として、各年代層の平均世帯年収を平均して求めた。
現在のように景気がいい状態が続いたとしても、世帯当たりの年収の増加ペースがかなり高まらないと、住宅購入価格と世帯年収の関係は改善しません。景気拡大が続く一方、低金利も長期化しそうですから、需要が強い状況は今後も続きそうですが、「契約率」の上昇を伴った力強いマンション市況になる見込みはそれ程高くなさそうです。
最後に「在庫率」を見てみます。在庫率は2001年以降、10%から40%の間で上下して、平均は20%です。現在は29%ですから、平均よりも在庫が多いといえます。この在庫の状況も合わせると、住宅市況は景気がよく、低金利が続いて需要が堅調な間は高い価格が続くと見られますが、需要が多少なりとも緩めば、一旦は価格が調整される可能性がありそうです。
なお、マンション市場には新築だけでなく中古もあります。新築マンションの価格の高まりは中古マンション市場にも大きな影響になって現れています。
東日本不動産流通機構の調査によると、この7月の成約物件の平均価格は約3300万円で、前年同月比+6%以上の上昇です。価格の上昇(前年比)は、2013年1月から67ヵ月も連続しており、中古マンション市場にも価格上昇の影響が押し寄せています。
価格を比較すると新築が約6200万円ですから中古は約半分ですが、中古は築後年数が平均で約21年となっていますので、新築価格にドンドン近づいていくと考えるのは難しいと思われます。
なお、2016年には、首都圏の中古マンションの成約件数が約3万7000戸となり、初めて新築マンションの契約戸数を上回っています。これらのデータからも、新築マンションの価格が多くの人々の購買力を超えていることが示されていると考えられます。
供給増が心配されていた東京のオフィスビル
空室率は依然低水準で、平均賃料も上昇中
一方、オフィスビル市場は、より明確に好調さが伝えられています。
オフィスビル空室率や平均賃料は、オフィスビル仲介大手の三鬼商事が毎月中旬頃に公表しています。そのデータによると、2012年には9%台だった東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は、その後の景気回復や低金利等を受けたオフィス需要の伸びを受けて低下し、この7月には2.58%となりました。前月と比べて+0.01ポイント上昇しましたが、引き続き低い水準を維持しています。
新築ビルと既存ビルを比べると、新築ビルの空室率は3.56%(前月比▲0.21ポイントの低下)、既存ビルの空室率は2.56%(同+0.01ポイントと小幅に上昇)となっています。
7月は、大規模ビル1棟が満室で竣工したため、新築ビルの空室率は前月の大幅低下に続いて低下しました。一方で小規模な成約は見られたものの、新築ビルや竣工予定ビルへの移転などに伴う大型空室の募集や解約の影響も出ていたことから、既存ビルの空室率は小幅に上昇しました。
空室率の改善に伴い、賃料は緩やかながら上昇を続けています。7月の都心5区の平均賃料は、前月比+0.47%の坪当たり2万202円となり、55ヵ月連続の上昇となりました。7月は、新築ビルも既存ビルも共に平均賃料の上昇が見られました。
想定を上回る企業の根強い需要
地方の中核都市でもオフィス需要は旺盛
実は東京のオフィスビルは、以前は今年から新しい大規模オフィスが大量に竣工するため、空室率が高まり、賃料も低下するのではないかと言われていました。
それが実際は、空室率・賃料共に改善が続いています。これはオフィスの竣工が当初想定程出てきていないことに加え、オフィスの需要が強い点を挙げられます。
その背景として、堅調な景気を受けて企業業績が好調であり、オフィス拡充に乗り出している企業が多いことがあります。加えて、利便性の高い地域にオフィス需要が集中してきていると見られます。
これらの点は今後もまだ続くと考えられます。東京のオフィスビル市場は2020年にかけて新築ビルの大量供給が予定されていますが、好調な企業業績を背景とした企業の根強いオフィスビルへの需要などを背景に、空室率は上昇したとしても緩やかなものとなるとみられます。
堅調なオフィスビル市況は、地方の中核都市でも共通して見られる現象です。
三鬼商事のデータによると、札幌、仙台、横浜、名古屋、大阪、福岡の日本を代表する大都市では、軒並みオフィスビル空室率は低下し、オフィスの賃料は上昇傾向にあります。札幌に至っては、空室率が2.29%と、東京の2.58%を下回っていて、オフィスビルの需給が極めて引き締まっていることがうかがわれます。
(三井住友アセットマネジメント 調査部長 渡辺英茂)
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