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スズキ、米国に続き中国からも撤退の真相
https://diamond.jp/articles/-/179201
2018.9.7 佃 義夫:佃モビリティ総研代表 ダイヤモンド・オンライン
Photo:Imaginechina/AFLO
世界最大市場の中国から
全面撤退するスズキ
スズキは、9月4日に中国の合弁生産会社「重慶長安鈴木汽車有限公司(長安鈴木)」のスズキ保有分の全株(50%分)を、現地合弁先の長安汽車に譲渡することで合意したと発表した。
同社は6月、すでにもう一つの中国合弁生産である江西昌河鈴木汽車有限責任公司(昌河鈴木)の保有株(46%)を現地合弁先の江西昌河汽車に譲渡しており、これによりスズキは年内に中国での生産から全面的に撤退することになる。
スズキは、米国でも2012年に四輪車事業から撤退しており、これにより「スズキは世界自動車市場の1位の中国、2位の米国から撤退!」と衝撃が走った。
なぜ、スズキは米国からの四輪車事業撤退に続いて今回、中国での現地合弁生産の撤退に踏み切ったのだろうか。
まず、中国では人気のあるクルマが中型・大型車に移行しており、スズキが得意とする「安くて小さいクルマ」の需要が低迷、スズキブランド車の販売も大きく落ち込んでいたことがある。合弁会社の現地生産も、ピーク時の2010年から大幅減の状態に陥っていた。中国の現地合弁会社はスズキの持分法適用会社であり、スズキの連結業績に影響してしまう。このため、スズキは経営判断から合弁事業の解消に踏み切ったのであろう。
もう一つは、詳しくは後述するが、中国政府による「新エネルギー車(NEV)規制」が2019年から導入されることだ。電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の3種のNEVを、一定比率で製造・販売しなければならない。ところが、スズキは現地生産で、ハイブリッド車以外の電動車にすぐには対応できない状況にある。これも合弁解消の大きな理由と考えられる。
さらに加えれば、スズキはインド政府との合弁、独VWとの資本提携などを巡り、さまざまなタフな交渉を繰り返してきた。こうした過去の合弁や資本提携の相手先との複雑な関係もあって、中国合弁先とも事業面で噛み合わなくなったこと、あるいはスズキ流の経営と中国合弁先のビジネスで齟齬(そご)が生じてきたことが考えられる。
インドを軸に
グローバル戦略を展開
スズキのグローバル戦略を見ると、今や最大の生産・販売基地となったインドに経営資源を集中し、新興市場の開拓を進めている。今回の中国生産の撤退は、インドを軸としたグローバル戦略について、改めて強い決意を示したものと業界では受けとめられている。
スズキは、今回の中国での昌河鈴木に次ぐ長安鈴木との合弁事業解消について、鈴木修会長のコメントを発表している。
「約25年前にアルトを投入し、中国市場の開拓に努力してきたが、中国市場が大型車の市場に変化してきたこともあり、今般、全持分を長安汽車に譲渡することとしました」
スズキがこの中国合弁生産解消の発表で、あえて鈴木修会長のコメントを出したのは、周知のようにスズキのカリスマ経営者は健在であり、スズキの将来に向けた外部交渉は鈴木修会長の胸三寸にあることの表れである。
中国は、今や米国を抜き、年間の新車販売が3000万台になろうとする世界最大の市場にのし上がり、中国での販売拡大と収益力をいかに高めるかが世界の主要自動車メーカーの重要な戦略となっている。VWをはじめとするドイツ勢にGM、フォードなどの米国勢も中国市場を重視している。
日本勢も中国を重視している。かつては「北米一本足打法」といわれたホンダも、現在では米国から中国にシフトするかのように生産・販売強化を進めている。トヨタも高級車ブランドのレクサスを含め、中国市場でのシェア拡大を図っている。仏ルノーとの連合で日産も中国に力を入れており、最大の収益源になっている。
世界の大手自動車メーカーがこぞって中国重視を打ち出す一方で、中国プロパーメーカーも育ってきており、現地での販売競争は激化の一途をたどっている。先述したように、エンドユーザー向けの市場構造も小型車から中型・大型車が需要主体になっており、セダンやSUVも大型化している。
要するに、大型車主体で競争の激しい中国は、スズキなど中堅メーカーにとっては難しい市場となっているのだ。特に2015年から2017年は中国政府による排気量1.6L以下の乗用車を対象とする自動車取得税の減税措置があったが、その後廃止されたことで、需要トレンドはさらに大型化した。
さらに中国は国策として自動車産業を中心に世界の製造業リーダーの座を狙っており、「NEV規制」や、「中国製造2025」などで中国プロパー企業の育成に力を入れてきている。特に、冒頭でも触れた当面の「NEV規制」への対応では、中堅メーカーが厳しい状況に追い込まれるのは必至だ。
中国の「NEV規制」とは、中国で年間3万台以上を生産・輸入する完成車メーカーを対象としており、中国での内燃機関車の生産や輸入に応じて、NEVの生産実績で付与される「クレジット」を獲得しなければならないというものだ。
2019年から導入され、2019年に10%、2020年には12%と順次、引き上げられる。未達成の場合は、他社からクレジットを購入しなければならないのだ。
そのNEV対象は、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)と燃料電池車(FCV)で、日本勢が得意とするハイブリッド車(HV)は含まれていない。
つまり、中国NEV規制がスタートする来年2019年から、中国現地生産でPHV、EV、FCVの電動車を何らかの形で順次製造していくことが、中国市場で生き抜く手段ということになる。
こうした中国の市場動向と中国政府の国策、直近のスズキ車減退に鑑みて、スズキが合弁生産の解消を判断したのも当然の成り行きであったのだろう。トヨタとの連携も、新たな中国展開を見据えてのこととも推察される。
鈴木修会長の
存在感と影響力
一方で、スズキはかつて北米で、GMとの資本提携関係に基づきカナダでのGMとの合弁生産会社CAMIでスズキ車を現地生産し、米国市場に供給していた。「サムライ(日本名ジムニー)」は米国でも人気を集めたが、GMとの資本提携解消(2008年)に続きカナダでの合弁生産も解消。2012年には米国四輪車事業から全面撤退している(二輪車と船外機事業は継続)。
最近のトランプ政権の北米自由貿易協定(NAFTA)見直し交渉や輸入車・部品の高関税化への動きで、日本車各社が北米戦略の見直しを迫られている。また、米国市場でインセンティブ(販売奨励金)の高まりなど各社が収益面で厳しい状況を強いられる中で、スズキは米国から撤退していたこともあり、インドでの好調な収益力を背景に連結業績は順調に推移している。
米国と中国から撤退しても、スズキはインドでの強力な生産・販売体制を軸にグローバル展開することで、独自に生き抜くことが可能であると判断したのであろう。
齢(よわい)88歳となった鈴木修スズキ会長だが「どこかでトップになる」との経営の執念は揺るぎないものがある。
2年後に創業100周年を迎えるスズキにとって、鈴木修会長のカリスマ経営からの脱皮、鈴木俊宏体制への本格移行は大きな課題だが、今回の中国撤退の決断を見ると、修会長が健在な限り、その存在感と影響力はまだまだ大きい。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)
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