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スルガ銀行の「ザルぶり」、不動産業界では周知の事実だった
https://diamond.jp/articles/-/179223
2018.9.7 小野悠史:不動産ニュースライター ダイヤモンド・オンライン
「提携企業、物件担保評価、投資家の与信。スルガ銀行は、どれもザルだった。『三ザル』ですよ。スルガの乱脈融資で不動産投資のマーケットは荒れてしまいました」。上場している投資用不動産販売会社の役員は語る。
スマートデイズの販売したシェアハウス「かぼちゃの馬車」投資を巡る騒動が、主にその投資資金を融資していたスルガ銀行に飛び火した。
通帳改ざんによる不適切融資が横行し、さらに不正に行員が関与していた疑惑など、スルガ銀行の異常な状態が徐々に明らかになりつつある。経営幹部の辞任や金融庁の厳しい処分が避けられない情勢だ。
「地方銀行の優良行だったスルガがなぜ転落したのか」。こうした声はあちこちで聞こえる。しかし、不動産業界からは、革新的でアグレッシブな経営とは名ばかり、乱脈融資ともいえるスルガ銀行の実態は周知の事実だった。
「三ザル」融資で急増した
「三為」不動産販売業者
「三ザル」と語られるスルガ銀行の不動産融資の実態は――。
「とにかくスルガ銀行はどこの不動産会社とも提携していた。提携先の選定がろくにされていない。知識も実績もなく、スルガ銀行がいなければ独立できなかったような三為(さんため)業者は多い」と、この役員は語る。
三為業者とは、第三者のためにする契約を行う不動産販売業者の略称だ。
売主から買主に不動産を売却する時に、利益を乗せて転売することで、定められた仲介手数料以上の利益を手にすることができる。
投資用不動産販売会社が設立直後に苦労するのは、物件を購入する投資家を探す集客よりも、提携する金融機関の開拓と物件情報の仕入れだという。つてをたどりながら金融機関を開拓していき、物件情報をもたらす不動産会社との接点は交流会に頻繁に出席するなど、地道にやるのが王道だった。
しかし、融資先の開拓に必死なスルガ銀行であれば、実績も知識もないままでも提携が可能だったという。はなから会社を大きくする気もなく、手っ取り早く稼げる手段として不動産会社を作り、高値で投資家に押し込みながら、潮時が来たら消えるわけだ。こうした不動産業者が増加した。
1~3週間のスピード審査で
「9割以上の案件が通った」
すでに、こうした業者はスルガ問題の発覚による融資の厳格化以降に、一目散に逃げ出している。
「閉店ガラガラ、もう店じまいですよ」とうそぶくのは、渋谷区に本社を構える投資不動産販売会社の社長だ。
少し前までは10人の社員を抱えていたが、昨年ごろから金融機関が融資を厳しくするようになり、売り上げが激減した。頼みの綱だったスルガ銀行も一連の問題発覚以降は、なしのつぶてとなった。
「買いたいお客さんはいて、物件があっても、融資が下りないのではどうしようもない」と、家賃収入などの物件管理担当のスタッフ1~2名を残して、年内にも会社は休眠状態にする予定だ。
自身は海外に移住を検討しているという。まだ30代の若さだが、ここ数年で10億円以上の不動産を購入しており、現預金も十分にあるからだという。
同社は投資用不動産を仕入れて、利益を上乗せして転売する典型的な三為業者だった。
「1億円で物件を仕入れたら、1億2000万円くらいで投資家に販売します」と言い、これまでに5000万円から5億円の不動産を約100棟、投資家向けに販売してきた。売るのは個人投資家だけ、医者や公務員、上場企業社員などが多い。
ここ数年の不動産投資ブームでスルガ銀行が担った役割について社長はこう語る。
「不動産の取引は、物件情報ありきです。物件の数は限られていて、その奪い合いなので。不動産投資がブームだと聞いてから興味を持つような人が、後から来て良い物件を買えるわけがない。そこで融資が可能かどうかの回答が早いスルガ銀行が役に立つのです」
ここでスルガ銀行のザルの担保評価が使えたのだという。投資用不動産を購入する際は、買い付け証明書を出してから、銀行やノンバンクと金銭消費貸借契約を交わし、融資を受けて残金決済をする流れだ。通常なら1~2ヵ月が必要だ。
しかし、スルガ銀行の場合は1~3週間ほどで融資可能かどうか回答がある。
「相続などで、売る側も早く売却したい事情がある。だから、スルガ(銀行で融資を受ける)のお客を優先して契約してくれることが多かった。中には、始めから『スルガ銀行で融資』が売買条件になっていることもありました」
ここ数年は良い売り物件が市場に出ると、数日で複数の投資家から購入希望が入る。他の投資家をスピードで出し抜くためにスルガ銀行が重宝したということになる。
スピードだけでなく、スルガ銀行に申し込めば9割以上は審査が通ったという。
しかし、三為業者が利益を乗せ、その上、他行にはない速さで正しい担保評価をくだせるのか。独自の査定ノウハウがスルガ銀行にあったのだろうか。
むしろシステム化を志向したり、外部調査会社を多用したりする他行に比べると、スルガの担保評価は属人的で遅れていたとの証言もある。
不動産投資の界隈では、スルガ銀行の担保評価のザルぶりを活用したグレーな手法が横行するようになっていた。
投資家も与信の「甘さ」を利用
「スルガの毒抜き」は業界の常識
スルガ銀行が不動産投資家に急速に注目され始めたのが2008年頃のことだ。リーマンショック以降の金融不況の中で、スルガ銀行だけが積極的に不動産投資向けの融資を続けていたからだ。
その当時に、会社勤めの傍ら不動産投資を始め、今では不動産投資コンサルティング会社を経営する溝口晴康氏は「当時の不動産投資にはスルガ銀行が欠かせない存在だった」と述懐する。
東証1部上場企業に勤めていた溝口氏は、所有していた株式の価値がリーマンショックで大幅に下落したため、現物のある不動産投資に興味を持った。
不動産会社を通じて紹介された物件を購入しようと、金融機関に相談したが、「自己資金を3割用意してくれと言われました。物件の価格は7700万円だったので、2310万円を現金で持ってなければ貸せないというわけです。サラリーマンをやりながらそれだけの貯金ができる人はいないでしょう」
複数の銀行に融資を断られて、諦めかけたときに出合ったのが、スルガ銀行だった。スルガ銀行だけは、自己資金は1割でいいと言われ、川崎市内の賃貸マンションを購入したという。
スルガ銀行のローン金利は4.5%で、入居者から入ってくる家賃は、返済にあてるとほとんどが残らなかった。そこで実践したのが、金利交渉と他行への借り換えだ。
確定申告のたびに金利交渉を行い、最終的には3.1%まで金利を下げたという。こうして手元のキャッシュを増やしながら、スルガ銀行の融資で2011年、2014年と1億円前後の賃貸マンションを追加で購入。最初に購入した川崎市内の物件を売却すると同時に、他の物件ローンは金利の安い別の地銀へと借り換えした。
与信評価のゆるいスルガ銀行融資で不動産を購入し、金利交渉や借り換え、売却などで収益を増やす手法は「スルガの毒抜き」と言われ、不動産投資家の間では常識だという。
サラリーマンほどの稼ぎしかない者が、ワンルームマンションではなく、5000万円以上の中古アパートや中古マンションを1棟購入するには、一度はスルガの毒を食らわなければいけないということだ。
しかし、誰もが毒抜きに成功できるわけではない。溝口氏も「自身は幸運だった」という。
「最初に購入した物件がリーマンショック直後で底値だったことと、アベノミクス以降の不動産価値の上昇があったから売り抜けが可能だった。物件のある武蔵小杉が人気になったことも大きい。知識もない中で、現在のように三為業者に何割も利益を乗せられて購入していたら厳しかったと思う」
そもそも金融機関が融資できない以上は、その不動産投資はもうかりにくい案件と言える。投資といわず、マンションやアパートを経営するのに適性があるかどうかを、金融機関が審査していると考えればわかりやすい。
もちろん無理に購入しても、将来的に値上がりして売り抜けることができれば良い。しかし、手元資金に乏しい人が、キャッシュフローが少ない不動産を持てば、設備の故障など急な出費に対処できない可能性が高い。
そういった適性のない客にまで、不動産を販売しようとする中で、不動産業者による預金通帳の改ざんなどが横行するようになる。与信のザルにつけ込まれたのだ。
こうして次第に不動産投資の世界では、スルガ銀行の与信の甘さを利用するノウハウが共有されるようになっていたという。
バブルの失敗に学ばず
銀行が持つべき規範を失なう
そうして数年前から増えたのが、「自己資金なしでの不動産投資」などを標榜する不動産会社やコンサルタントだ。
彼らの多くは二重売買契約を使って不動産を売っていたと噂される。
先述の溝口氏のように、個人が不動産投資をする上でほとんどは、自己資金という頭金を用意する必要がある。スルガ銀行の場合は10%が必要となる。しかし、頭金を工面できない一部の客には、実際の価格よりも高い偽の契約書を作成し、銀行に提出する。
例えば1億円の物件を購入するために、1億2000万円で購入すると「偽の契約書」を書いてスルガ銀行に提出し、90%に当たる1億800万円を借り入れるのだ。実際の不動産価格1億円に対して、800万円分の余裕が生まれ、そこから諸経費などを引いても、自らの腹は傷めないで購入ができる。
当然だが、こうした取引についてはスルガ銀行が被害者である。すでに報じられているように預金通帳の残高を改ざんする行為も同様だ。行員自らが不正に関与していたのなら言語道断だが、現時点でははっきりしたことは言えない。
好意的にみるならば、与信がザルというより、脇が甘かっただけともいえるかもしれない。
しかし、スルガ銀行のザルぶりを餌にした不正がノウハウとして共有されて、有象無象が群がる状況を作ってしまった責任は免れまい。
「少なくとも7~8年前までは、不正が横行するような状況ではなかった」と、千代田区内に本社をおく不動産コンサルタント会社の代表は語る。「通帳改ざんが発覚した不動産会社がスルガ銀行を出禁になった、といったうわさもあった。不動産向け融資でリスクを取りながらも、銀行として守るものは守っていたはずだが」。
それでは、スルガ銀行は銀行が持つべき規範をどこで失ったのか。「地銀の優等生」として褒めそやされるうちに、たがが外れていった可能性もあるだろう。
アベノミクスの超金融緩和、超低利の状況下で、アグレッシブな経営が転じて安易な不動産融資や投資の拡大に走った側面があるのではないだろうか。スルガ銀行だけでなく、問題を見落とした金融庁やメディアも一体、バブルから何を学んだのだろうか。
(不動産ニュースライター 小野悠史)
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