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日銀は国債買入の回数を減少、その目的は何か --- 久保田 博幸 
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/377.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 9 月 05 日 21:16:27: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

日銀は国債買入の回数を減少、その目的は何か --- 久保田 博幸
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180905-00010005-agora-bus_all
9/5(水) 17:25配信 アゴラ


日銀が8月31日の夕方に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、いくつか前回のものと異なるところがあった。

前回の7月31日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」は、本来であれば公表時間が夕方17時予定であったものの、当日の金融政策決定会合後に発表されたことで発表時間が繰り上げられた。これはどうしてなのか。

7月31日の決定会合にて決定された金融政策の修正は、「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」というタイトルながら、実質的な柔軟化策を決定したものといえる。それを良く示すのが、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)のところの長期金利の項目で、前回と次のように変わっていた。

“6月会合「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。」”

“7月会合「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし 、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」”

このように7月会合では「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし」、「弾力的な買入れを実施する」としていた。

ただし、引き締めスタンスに転じたわけではないことを示すためにも、17時ではなく決定会合後に、「当面の長期国債等の買入れの運営について」も公表し、すぐ日銀の国債買入スタンスに変化があるわけではないことを示した。

そして、そのときに公表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」の冒頭のコメントは次のようになっていた。

“「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年8月1日より適用)」”

これに対して、今回8月31日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」の冒頭のコメントは次のようになっていた。

“「日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしており、当面、以下のとおり運営することとしました(2018年9月3日より適用)。」”

今回はそれとなく「弾力的に実施することとしており」という表現が入ってきているのである。弾力的だから上もあるかもしれないが、目的は下であろうと推測される。

8月31日と7月31日の「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、1年超5年以下の買入額のレンジの上限がそれぞれ1000億円引き上げられている。また、5年超10年以下も同様に上限が1000億円引き上げられた。

その代わりに買入回数が、1年超5年以下と5年超10年以下が8月の6回から5回に減っているのである。これについては9月は3連休が2回あり、決定会合もあり、国債入札日を除く買入日が、かなりタイトになってしまうためとの見方もある。

市場参加者がひとつの目処としている買入額のレンジを中央値を引き上げることによって、回数の減少分をある程度補うことを示したともいえる。

しかし、レンジの上限を増やそうが、一回あたりの買入額がきちんとその分増加させるのかどうかは不透明で、オペの買入額次第では、これは実施的な買入弾力化・柔軟化の一環とみることもできるかもしれない。

7月31日の債券先物はこれを受けて素直に下げた。今回の日銀の「当面の長期国債等の買入れの運営について」の一部修正は債券先物にとっては売り材料と認識されたのである。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年9月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちら(http://bullbear.exblog.jp/)をご覧ください。

久保田 博幸



 

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コメント
1. 2018年9月05日 21:31:11 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1442] 報告

日銀がETF購入テーパリングなら「明るい兆し」−ブラックロック
Min Jeong Lee
2018年9月5日 1:00 JST
• 購入ペース緩めれば、自信の表れと受け止められる可能性−ミラー氏
• ETF購入は意図した効果もたらした、市場懸念は行き過ぎとも発言
日本株市場を長期にわたり支えてきた上場投資信託(ETF)の購入を日本銀行が縮小すると決めれば、市場にインパクトを与えるのではないかと一部の投資家は懸念するが、世界最大の資産運用会社は憂慮する理由は大してないとみている。
  ブラックロックのiシェアーズ事業で日本の責任者を務めるジェーソン・ミラー氏はインタビューで、日銀がETFの購入ペースを緩めると発表すれば、日本株のボラティリティーは当初は幾分高まるだろうが、購入ペース緩和は経済と市場に対する自信の表れと受け止められる可能性があると語った。
  ETF購入目標を倍増した2016年以降、日銀は年間約6兆円のペースで買い入れを進めている。こうした中、同行は否定しているものの、7月と8月のETF購入額が大幅に減少したことから、一部投資家からは日銀が暗黙のうちに買い入れプログラムの解消に向けて動いているとの観測が浮上した。
   
  同氏はテーパリング(緩和縮小)の決定が実際にあれば、日本経済が「自立できるほど十分強くなったという認識を市場に与える可能性」があると述べた。そのような発表があり得る時期については予想を控えた。
           
Tailing Off
Bank of Japan's monthly ETF buys fell to near its lowest since July 2016

Source: BOJ
     
  投資信託協会と日銀の発表資料、およびブルームバーグが集計したデータによると、日銀は7月末時点でETFの75%を保有。2年前の62%から拡大した。
           
  ブラックロックのミラー氏は、市場をゆがめているとの批判がある中でも、日銀のETF購入には好意的な姿勢を示してきた。株式のリスクプレミアムを低下させるという意図した効果をもたらしたと指摘する。同氏は、ETF購入プログラムがある特定の銘柄の価格をゆがめ、流動性を損ねる可能性があるとの懸念は行き過ぎだと述べた上で、日経平均連動型のETF購入を減らしてTOPIX連動型の購入を増やす日銀の7月の決定を称賛した。
  一方、三菱UFJ国際投信・戦略運用部の石金淳チーフストラテジストはテーパリングの環境はまだ整っていないとみる。「まだそんな状態ではないのではないか。つまりそれを堂々と言えるほど、日本経済、特に内需が強いとは思えない」と話し、消費増税も今後予定されていると付け加えた。  
  ミラー氏も、テーパリングをポジティブに捉える向きはトレーダーや投資家の間でまだ少数派であることを認めている。それでも、そこで暗示される経済および市場の力強さは「明るい兆し」だと「強く信じている」と語った。
       
Bank of Japan: The ETF Whale
Central bank estimated to own 75% of the nation's ETF market as of end July

Source: BOJ, Investment Trusts Association of Japan, Bloomberg
Note: Calculations assume an approximate 67% weighting for Topix from October 2016
原題:BlackRock Sees ‘Silver Lining’ When Bank of Japan Tapers ETFs(抜粋)

 


 
日銀は政策修正の効果発揮と評価、金利幅広げず
日高正裕、竹生悠子
2018年9月5日 13:00 JST
長期金利0.2%到達後、変動幅拡大するか判断
債券市場サーベイでは市場機能判断DIが改善

日本銀行は、長期金利の変動を認めた7月の金融政策の修正が効果を発揮していると前向きに評価しており、当面は金融政策を変更しない考えだ。日銀内の議論に詳しい複数の関係者への取材で分かった。次回会合は18、19の両日、開かれる。

  非公開情報のため匿名を条件に語った複数の関係者によると、日銀内では前回会合で上下0.2%に拡大した長期金利の変動幅を広げる必要はないとの見方が強い。変動幅を調整するかどうかの判断は長期金利が0.2%程度を試した後になるという。

  0.2%到達後も市場機能が改善しない場合は、変動幅をさらに拡大する可能性を排除していない。小動きで推移している金融市場が海外要因などでどの程度、影響を受けるか日銀は注視している。

  日銀は7月31日の会合で「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」とのフォワードガイダンス(指針)を導入。同時に緩和策の持続性を高めるため、0%の長期金利の変動幅を上下0.2%程度に拡大した。同会合の主な意見では、「プラスマイナス0.25%程度の動きを許容することが適切」との声も出ていた。

  3日発表の債券市場サーベイでは、市場機能が「高い」と答えた比率から「低い」と答えた比率を引いた機能度判断DI(現状)がマイナス39と前回5月調査のマイナス45から改善。3カ月前と比べたDIはプラス1と15年5月調査以来3年3カ月ぶりにプラスに転じた。

  雨宮正佳副総裁は8月2日の会見で「常に適切な政策運営の枠組みを柔軟に考える必要がある」と説明。「今後の効果や副作用の出方によっていろいろ考えていくべきだ」と述べ、政策運営の修正があり得ることを示唆していた。

2. 2018年9月06日 01:02:10 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1450] 報告
米貿易赤字:7月は2015年以来の大幅拡大−対中赤字は過去最大
Jeff Kearns
2018年9月5日 21:38 JST 更新日時 2018年9月6日 0:08 JST

輸出額は1%減、民間航空機や大豆が減少−輸入額は0.9%増
対EU赤字も過去最大、対メキシコでは縮小

7月の米貿易赤字は3年ぶりの大幅な拡大となった。対中赤字は過去最高を記録した。トランプ米政権が広範な中国製品に関税を賦課し、同国は報復措置で応じている。

  米商務省発表の貿易収支統計によると、7月の財とサービスを合わせた貿易赤字(国際収支ベース、季節調整済み)は501億ドルと、前月の457億ドル(速報値463億ドル)から44億ドル(9.5%)拡大した。赤字額は2月以来の最大。拡大幅は2015年3月以来の大きさだった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は502億ドル。


  輸出額は1%減の2111億ドル。民間航空機の輸出が15億7000万ドル、大豆は6億8200万ドルそれぞれ減少した。

  輸入額は0.9%増の2612億ドル。コンピューターや原油、自動車など幅広く増えた。

  中国に対する貿易赤字(財のみ)は調整前ベースで過去最大の368億ドル。前月は335億ドルだった。対欧州連合(EU)も過去最大の176億ドルとなった。前月は117億ドル。一方、対メキシコ赤字は55億ドルで、前月の74億ドルから縮小した。

  国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレの影響を除いた実質財収支の赤字は825億ドルと、前月の793億ドルから拡大した。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:U.S. Trade Gap Widens Most Since 2015; China Deficit Hits Record(抜粋)

(統計の詳細を追加し、更新します.)

 

ユーロ圏:8月総合PMIは54.5、速報から上方修正−見通しは悪化
Jana Randow
2018年9月5日 17:31 JST
事業見通しに関する指数が1年11カ月ぶり低水準に下がる
経済成長は堅調も、企業は貿易摩擦悪化の影響を懸念
ユーロ圏の経済成長は今のところまだ堅調だが、貿易摩擦悪化の影響を企業は感じ始めている。

  IHSマークイットが5日発表した8月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)改定値は54.5と速報(54.4)から上方修正され、7月の54.3を上回った。一方、事業見通しに関する指数は1年11カ月ぶり低水準に落ち込んだ。

  これまでのデータは7−9月(第3四半期)の成長率が前四半期と同じ0.4%となる可能性を示唆するが、「楽観の後退はこのペースが10−12月期に入っても維持できるのか疑問を投げかける」と、IHSマークイットのエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏がコメントした。

原題:Don’t Be Fooled by Solid Growth as Euro Area Draws Warning Signs(抜粋)


 
新興国資産売り止まらず−南ア・ランドとインドネシア株急落
Bloomberg News
2018年9月5日 12:13 JST 更新日時 2018年9月5日 21:31 JST
新興国資産の売りがやむ気配は見えない。大半の通貨が下落し、株価指数は弱気相場入りに近づいた。

  南アフリカ共和国の通貨ランドが下げを主導し、約2年ぶり安値を付けた。次いでメキシコ・ペソの下げ幅が大きい。新興市場株の指標であるMSCIの指数は6営業日続落となり、3週間ぶりの大幅安に向かっている。中でもインドネシア株は過去約2年で最大の下落。ルピア安で企業の債務負担が膨らむと懸念されている。

  4日発表された8月の米ISM製造業景況指数は14年ぶり高水準で、米追加利上げの可能性がますます高まる一方、南アフリカ経済は4−6月(第2四半期)にリセッション入りした。

  ドイツ銀行のアジアマクロ戦略責任者、サメール・ゲール氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「もはや新興市場のファンダメンタルズだけの問題ではない」と発言。「新興市場全体への波及が問題になってきており、複数の市場でのポジション保有や償還圧力などがあるためそれが広く起きている」と語った。  

  ランドは一時2.3%安。ムーディーズが次回の見直しで南アの現地通貨建て債券の格付けを投資不適格(ジャンク)級に引き下げるとの懸念が投資家の間に広がった。メキシコ・ペソは1%余り下落。インドネシア株の指標のジャカルタ総合指数は約4%下げた。


原題:Emerging-Market Contagion Fears Rotate From Currencies to Stocks(抜粋)
No Relief in Sight for Emerging Markets as Rand Leads Sell-Off、Stocks Retreat Amid EM Turmoil; Dollar Advances: Markets Wrap

3. 2018年9月06日 19:01:41 : d09awybmvs : 9XELq6f142c[175] 報告
爆買いも 少しペースを 下げるだけ
4. 2018年9月06日 21:34:24 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1447] 報告
長期金利弾力化は緩和弱める、ゼロ%が有名無実化:片岡日銀委員
日高正裕、竹生悠子
2018年9月6日 11:03 JST 更新日時 2018年9月6日 15:47 JST
2%物価目標の達成が後退、望ましいのは緩和の強化
フォワードガイダンスは現状追認以上の効果があるのか判然としない

The Bank of Japan (BOJ) headquarters stands in Tokyo, Japan. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行の目指す2%物価目標の達成見通しが後ずれする中、片岡剛士審議委員は6日、7月の金融政策決定会合で導入した長期金利の弾力化ではなく、金利をさらに低下させる追加緩和が必要との見解を明らかにした。横浜市内での講演と会見で述べた。

  片岡委員は、長短金利操作は上昇圧力がかかる局面で長期金利をゼロ%にとどめることで緩和効果が強まるというのが利点の一つとした上で、弾力化は緩和効果を弱め「誘導目標を不明確にする」と指摘。ゼロ%程度の操作目標が「徐々に有名無実化しうる」と懸念を示した。

  物価上昇率や予想インフレ率が十分に引き上がっていない中で長期金利上昇を許容した場合には、「物価目標の達成が後退することになりかねない」と分析している。物価低迷やリスクを考慮すると、望ましいのは追加緩和など「金融緩和自体を強化すること」と述べた。金融市場では緩和の副作用は顕在化していないという。

  日銀は7月の金融政策決定会合で、緩和策の持続性を高めるため、ゼロ%の長期金利の変動幅を上下0.2%程度に拡大。「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」とのフォワードガイダンス(指針)も導入した。片岡委員は原田泰審議委員とともにいずれも反対票を投じた。

  片岡氏はフォワードガイダンスを、政策委員の物価見通しや2%目標に距離がある状況からの「合理的帰結」と言える内容とし「現状追認以上の効果があるのか判然としない」と批判した。

  日本経済を巡るリスクとしては、貿易摩擦の深刻化を挙げた。企業や投資家の心理悪化を通じて設備投資の停滞や株安につながれば、「世界経済への影響は無視できないものとなる」とし、「これまで以上に海外経済の動向には注意が必要な情勢だ」と話した。

  北海道で6日午前3時すぎに発生した地震により、道内全域で停電が発生するなど企業活動に影響が広がっていることについては、「日銀としては情報収集に努め、経済への影響を注視していきたい」と述べた。

(会見での発言を追加します.)


 

 


 

[FT]金融危機に学ばぬ当局
2018/9/6 2:00日本経済新聞 電子版
Financial Times
 ジョン・メイナード・ケインズは1942年、こう書いている。「私は再び財務省に戻ってきた……だが、一つ大きく違うことがある。18年にほとんどの人の頭にあったのは、14年(の第1次大戦開戦)以前の世界に戻りたいということだけだった。だが今、39年について、そう(第2次大戦勃発前に戻りたい)と感じる人はまずいない。今の戦争が終わった後、どんな世界を目指すのか、以前の世界に戻りたいと考えるのかどうかで大きく変わってくる」――。

James Ferguson/Financial Times

 彼が指摘した通り、戦前とは異なる世界を目指したことは、確かに世界を大きく変えた。大恐慌と第2次大戦を経験した人たちは、大きな変化を求めていた。そして、それを手に入れた。フランスではその時期を「栄光の30年」と呼んでいる。

 70年代のスタグフレーションは大変な反動を引き起こした。その結果、80年代に入ると政府や市場の役割、マクロ経済政策の目標、中央銀行の使命についての考え方は大きく変化する。この時も、根本的変革を起こすことが再び目標となった。

 では、2008年の金融危機後は何が起きたのか。政治家と政策当局は、我々を過去へ連れ戻そうとしたのか、それとも過去とは異なる未来に導こうとしたのか。答えははっきりしている。前者だ。

 公平を期して言えば、よりよい過去に戻そうとは努力した。1918年がまさにそうだった。悲惨な戦争がようやく終わったばかりだったから、平和について「集団安全保障」や「国際連盟」など、新しい考えが提案された。だが経済に関する限り、政策当局は第1次大戦前に戻そうと、特に金本位制への回帰を望んだ。つまり18年に彼らが求めたのは、国際関係に関してよりよい過去に戻ることだった。一方、2008年の危機後に政策当局が望んだのは、金融規制に関してよりよい過去に戻ることだった。どちらのケースでも、それ以外のことは以前のままである。

 危機直後の政策当局の主たる目的は救済となる。金融システムを安定させ、需要を回復させることだ。これを達成できたのは、政府のバランスシートに目をつぶって破綻した金融システムの立て直しを最優先し、金利を引き下げ、裁量的財政拡大は抑えつつ当面の財政赤字の急増を容認し、新たに複雑な金融規制を導入したからだ。これで1930年代のような経済の破綻は免れ、景気回復を(弱々しいながらも)実現できた。

 注目すべきは、これらの措置が危機前の政策的コンセンサスにいかに忠実かという点だ。中央銀行はその使命の通り最後の貸し手として機能し、マクロ経済の安定化でも中心的役割を果たしたが、これも危機前のコンセンサス通りである。中央銀行が使う主な手段も、相変わらず金利だった。今回は短期金利がゼロに達したため、長期金利も操作対象になった。危機の最悪期を脱すると財政政策は緊縮に転じた。いくらか借入比率が下がり、流動性に関する基準が強化され、規制が厳格化されはしたが、金融システムはほぼもとのままだ。民間部門の債務縮小は小幅にとどまった。

 金融危機は自由市場の悲惨な失敗であり、しかも多くの国で格差が拡大した時期に続いて起きた。にもかかわらず1970年代とは異なり、政策当局は政府と市場の相対的な役割を真剣に問い直そうとはしなかった。彼らの古い常識では「構造改革」とはいまだに減税と労働市場の規制緩和を意味し、格差への懸念は表明しても、対策はほとんど講じていない。政策当局は、増え続ける債務に需要が依存していることの危険性にまだ気づいていない。独占や、一方の利益が他方の損失になるだけで市民の福祉拡大につながらないゼロサムの経済活動がはびこっている。今なお続く金融部門の膨大な取引がどれほど価値を生み出しているのかと疑問視する向きもほぼない。前回以上に大規模な金融危機が発生するリスクがあることを認識している人もほとんどいない。

 危機以後、いや危機前から多くの市民が困窮し、様々な問題に直面していることはさておくにしても、政策当局がこのように無為無策では、ポピュリストが幅をきかすのも無理はない。政治は真空状態を嫌う。トランプ米大統領やイタリアのサルビーニ副首相らが口にするような危険で国を分断するような主張がすぐ真空を埋めてしまう。多くの人の不満のはけ口となるような政策を訴えれば、それなりに支持は得られる。

 こうした状況を前にしても、金融危機前の常識を疑う向きがないことには驚く。70年代のケインズ政策は大失敗に終わったが、危機前に主流だった政策が招いた低成長とマクロ経済の不安定さに比べると、後者の問題の方が大きいのに危機前の定説をまだ信じているとはどういうことだろう。さらに衝撃的なのは、次の大規模な危機はおろか、次の大きな景気後退をうまく乗り切れるとの自信さえほとんどないのに、危機前の定説をまだ信じている点だ。

 この危機感のなさは何か。よいアイデアがないことが一因かもしれない。経済学者ニコラス・グルーエン氏は最近の論文の中でまさにそう主張している。だが、実行できる手はある。例えば、住宅購入はローンを組むのではなくエクイティ・ファイナンスでまかなう(編集注、英国で導入されている手法で、リスク分散のために金融機関にも住宅の一部を保有してもらい、購入者は金融機関に支払いを続けることで所有権を手に入れる)。債務の金利負担を税控除から外す。企業経営陣の成功報酬にメスを入れる。銀行の自己資本比率の要件をもっと引き上げても成長に打撃にはならないなど、提案は様々ある。中には、なぜ中央銀行に口座を持てるのは銀行だけなのか、市民全員が持てばよいとか、一般の銀行には保有する預金額を上回る融資をさせてはならないといった意見もある。

 金融以外の分野の課題もある。知財権保護は行き過ぎの面があるようだ。また、なぜ土地課税重視に切り替えないのか、なぜキャピタルゲイン課税を機能しないまま放置しているのか、独禁法をなぜ再度、強化しないのか、といった見方もある。

 こうした問題をすべて網羅するようなイデオロギーは、今はまだ登場していないかもしれない。それはそれでよいかもしれない。だが、できることはある。政府が無策である理由として考えられるのは、既得権益者の強い影響力だ。現在の一部の企業が高い利益率を誇る経済を、それが自由市場経済だと主張する向きもあるが、結局のところ、政治的影響力を握る情報に通じたインサイダーが巨利を得る仕組みになっている。

 だが政治の中枢にいる人たちの危機感のなさは、市民の間に過激な怒りを招く。市場経済と自由な民主主義を信奉する人々がもっとよい政策を打ち出さなければ、扇動政治家らが選挙で勝利を収めるだろう。

 2008年の危機の前より少しましな社会にすれば、事態は改善すると考えていたら大間違いだ。人々が求めているのは、過去よりましな世界ではなく、よりよい未来だ。(5日付)


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米経済にスタグフレーションのリスク、確率25%−ルーミスのファス氏
Finbarr Flynn
2018年9月6日 15:47 JST
貿易制限が米経済の足かせになるとともにインフレ圧力も高める
スタグフレーションのわな、米金融当局にも鮮明になりつつある
トランプ米政権が関税や経済制裁を拡大することによって米経済がスタグフレーションに陥る確率は4分の1。ルーミス・セイレスのダン・ファス副会長がこのような見方を示した。

  ファス氏(84)は今週、東京でブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、「貿易制限が増え続ければ明らかに、米経済はスタグフレーションの環境に入る」と語った。「米金融当局に対する圧力は利上げを迫るもので、当局の最大の懸念は地政学的リスクだ」と分析した。

  米経済が高インフレと景気停滞に見舞われていた1970年代に債券運用に携わった同氏は、「金融当局のレーダーにスタグフレーションのわなは大きく映りつつあるだろう」と述べた。貿易制限は米経済の足かせになると同時にインフレ圧力を高めると同氏は説明。スタグフレーションになると考えているわけではないが、リスクは「非常に深刻だ」と付け加えた。


原題:Loomis’ Fuss Sees Risk of U.S. Stagflation Amid Trade Fights (1)(抜粋)

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中


 


米利上げ、あと2回で米株は弱気相場入りも―スティーフル
Cormac Mullen
2018年9月6日 16:08 JST
米連邦準備制度があと2回利上げをすれば米国株は弱気相場入りする可能性があると、スティーフル・ニコラウスが指摘した。
  米当局が年内にあと2回利上げをすると、いわゆる中立金利に基づいた指標が弱気相場入りを引き起こすラインを超える。ストラテジストのバリー・バニスター氏が5日の顧客向けリポートに記述した。この指標は2000年と07年の株売りを正しく予想したという。

原題:Two More Fed Hikes Could Trigger a Bear Market, Stifel Says(抜粋)


 


ECBメルシュ理事:インフレ安定確保、金融安定に優先する
John Ainger
2018年9月6日 19:54 JST
欧州中央銀行(ECB)のメルシュ理事は、インフレの安定確保が金融安定を巡る懸念に優先されなければならないとの認識を示した。

  メルシュ理事はフランクフルトで講演し、欧州連合(EU)の法律で価格安定がECBの第一の責務であると明記されていると指摘。また、2%弱のインフレ率という目標は測定が容易であることから、消費者物価の監視は中銀に適した仕事だと述べた。

  「金融の安定が価格の安定に優先することはあり得ない」とし、「この二つの間で一定のトレードオフが必要になる場合、EU条約は価格安定が最重要だと定めている」と言明した。

  EUは今週末にウィーンで財務相・中央銀行総裁会議を開き、ユーロ圏が金利上昇に対処できるかなどについて議論する。

原題:Mersch Says ECB Must Put Inflation Before Financial Stability(抜粋)


 

 
新興市場に一段の痛みか、指標は新たなマイナス域突入示唆
Brandon Kochkodin
2018年9月6日 10:51 JST

  一つのテクニカル指標を見る限り、新興国市場株の下げ止まりを探っている投資家は、近い将来にそれが実現することを期待すべきではない。トレンドのピークや転換を見つけ出すGTI・VERA収束拡散法は、iシェアーズMSCI新興市場ETFが新たなマイナス領域へ突入しつつあることを示している。このシグナルは、8月末に下落を再開した同ETFの下げがさらに勢いづいていることを示唆する。
    
原題:Emerging Markets Sell-Off Seen Accelerating by One Gauge: Chart(抜粋)

 

 
メキシコ・ペソもついにマイナスか−新興市場で今年唯一の勝ち組通貨
Selcuk Gokoluk
2018年9月6日 12:13 JST
• ペソの対ドル年初来上昇率、わずか0.6%にまで縮小
• カナダ抜きのNAFTA交渉は決裂するリスクあるーコメルツ銀
新興市場通貨で年初来の対ドル騰落率が今なおプラスで推移している通貨がただ一つある。もっとも、その通貨も今や負け組入り目前だ。
  メキシコ・ペソは5日、対ドルで0.8%安の1ドル=19.5490ペソと、主要新興国・地域24通貨の中で南アフリカ共和国・ランドに次ぐ下落率となった。北米自由貿易協定(NAFTA)を巡る米国との交渉が楽観視され、ここ数週間は相対的に堅調に推移してきたペソだが、足元では年初来上昇率がわずか0.6%にまで縮小。新興市場が次々と危機に揺さぶられる中、感染被害を受けている。
             

          
  コメルツ銀行の為替戦略責任者、ウルリッヒ・ロイトマン氏(フランクフルト在勤)は「全ての新興市場通貨が広範にわたる悪影響を受けている」と述べた上で、NAFTAについては「特に良いニュースだとは思わない。カナダ抜きでは米国とメキシコの交渉も決裂するリスクがある」と語った。
      
アルジェブリス・インベストメンツのポートフォリオマネジャーのアルベルト・ガロ氏、新興市場についてコメント
出所:ブルームバーグ
原題:2018’s Only Winning EM Currency Is Close to Joining Losers Club(抜粋)

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