景気減速警戒 緩む財政規律 概算要求 最大水準 2018年9月1日 朝刊 写真 二〇一九年度予算の概算要求が三十一日、締め切られたのを受け、財務省は査定作業を本格化させる。最大の焦点は、今回盛り込まれなかった来年十月に予定する消費税率10%への引き上げに伴う景気の下支え策だ。首相官邸が増税後の消費減速を警戒しているのに加え、来年夏に参院選を控える与党内では大規模な財政出動を求める声が強まっている。既に先進国で最悪の財政は、さらに悪化する懸念がある。 (渥美龍太) 「消費税を上げて景気後退を招けば、政策は失敗だ。きちんとした対応を当初予算からやる」。麻生太郎財務相は概算要求の締め切りに先立つ二十七日、予算査定を担う主計官を集めた会議でこう宣言した。財政規律を重視する立場の閣僚が、歳出拡大を認めるような訓示をするのは異例だ。 発言の背景にあるのは、四年前のトラウマ(心的外傷)だ。安倍政権は一四年四月、消費税率を5%から8%に引き上げた。景気悪化を防ごうと、五兆円規模の経済対策を組んだが、個人消費が想定以上に冷え込み、一四年度の実質成長率は五年ぶりのマイナスに転じた。 その二の舞いを避けるため、来年の増税にあたっては景気の下支え策を徹底する。税制では、価格が高い自動車や住宅の購入を促す優遇措置を検討している。一方、予算については概算要求と別枠で検討されることとなり、「どこまで膨らむか読めない」(財務省幹部)状況だ。 ただ、巨額の国費を投じる対策の必要性には疑問符もつく。日銀の試算によると、増税に伴う家計負担の増加額は一四年が八兆円だった。今回は食料品などに軽減税率が適用され、税収の使い道も教育無償化などが追加されることから、二兆二千億円にとどまる。 それでも政府・与党内に大規模な経済対策を求める声が強いのは、来年春の統一地方選、夏の参院選への影響を抑えたいからだ。自民党の二階俊博幹事長の派閥は党総裁選で支持する安倍晋三首相に対し、「国土強靱(きょうじん)化」の推進を提言。党内の若手議員グループは二十兆〜三十兆円の経済対策を求めている。 世界的な好景気にもかかわらず、安倍政権は切れ目なく、大きな経済対策を講じてきた。その上、一九年度当初予算は初の百兆円超えが視野に入るなど、財政規律の緩みが止まらない。 日本総研の河村小百合氏は「一時的な景気落ち込みを恐れ、巨額の経済対策を積むのでは増税の意味がない。財政への危機感があまりに薄い」と指摘する。
アルゼンチン、苦渋の緊縮策へ 市場の信認遠く 中南米 2018/8/31 16:24日本経済新聞 電子版 保存 共有 その他 【サンパウロ=外山尚之】通貨ペソの下落が続く中、アルゼンチン政府は緊縮策を含む財政再建に踏み込む。中央銀行の利上げや国際通貨基金(IMF)の支援にもかかわらず、ペソの対ドルでの年初来の下落幅は50%に達する。景気悪化も覚悟のうえで一段の財政再建策が不可欠と判断したが、金融市場での信認回復につながるかは予断を許さない。 アルゼンチンの中央銀行は8月30日の緊急会合で政策金利を60%に引き上げた。前…
韓国政府、10年ぶりに財政拡大を最大に…雇用・福祉に集中 登録:2018-08-29 06:16 修正:2018-08-29 16:51 페이스북 트위터 구글 프린트 글씨크기 크게 글씨크기 작게 政府、来年度予算案を470兆ウォンに確定 景気減速に財政支出9.7%増やし 保健・福祉・労働に161兆5千億ウォン割り当てる 雇用予算22%増やした23兆5千億 税収好調により国家債務の影響は少ない
キム・ドンヨン副首相兼企画財政部長官(中央)が今月24日、政府世宗庁舎で「2019年度予算案」事前ブリーフィングで発言している=企画財政部提供//ハンギョレ新聞社 文在寅(ムン・ジェイン)政権が来年の予算案を470兆5千億ウォン(約47兆1千億円)規模で編成した。今年より財政支出を9.7%、41兆7千億ウォン(約4兆8千億円)増やすことで、世界金融危機直後の2009年を除けば、2000年以降最も高い水準だ。雇用創出と両極化解消、少子化対策など当面の構造的問題を解決するため、財政を拡張的に運用するという意志が盛り込まれた。最近の景気減速や雇用低迷などの状況とも相まって、政府が従来より積極的に国の財政を運営していく計画を打ち出したのだが、依然として短期的な税収好調に依存する側面が大きく、中長期福祉の拡充などには限界があると指摘されている。 中期財政収入・支出の展望//ハンギョレ新聞社 政府は28日の国務会議を開き、このような内容を骨子とした「2019年度予算案」を確定した。来年の財政支出の増加率9.7%は、2009年の10.6%以来最高値だ。政府は増える予算を雇用創出と革新成長などの経済活力の強化や所得分配の改善およびセーフティーネットの拡充、国民生活の質の改善、国民が安心できる社会の実現に重点的に投資する計画だと明らかにした。来年の総収入は481兆3千億ウォン(約48兆2千億円)で、1年前より7.6%増える見通しだ。この中で国税収入は今年より11.6%(31兆2千億ウォン)増えた299兆3千億ウォン(約30兆円)になるものと予想された。
来年度の予算は福祉分野に多く使われる。政府は来年の福祉分野(保健・福祉・労働)に今年より12.1%増額した161兆2千億ウォン(約16兆1500億円)を割り当てた。今年の福祉予算は当初、政府予算案基準では前年度に比べ増加率が12.9%だったが、国会で一部削減され、11.7%になった。福祉分野予算の中でも雇用予算が23兆5千億ウォン(約2兆4千億円)で、一年前より22%増えた。構造的な雇用不足に加え、最近の雇用低迷が影響を及ぼしたものと見られる。今年大幅に削減された社会間接資本(SOC)予算は今年(19兆ウォン)より2.3%減少した18兆5千億ウォン(約1兆9千億円)だ。政府は地域経済と雇用に及ぼす影響を考慮し、当初の今年の政府案(17兆7千億ウォン)よりは増額したものだと明らかにした。 財政支出の大幅な増加にもかかわらず、財政収支や国家債務に与える影響は制限的だ。国内総生産(GDP)における財政収支は今年-1.6%(本予算基準・補正予算の基準は-1.7%)から来年は-1.8%で、赤字幅がやや増える。GDPにおける国家債務の比重は今年39.5%から39.4%に、むしろ低くなる。最近の税収増加により、支出を増やしたにもかかわらず、赤字幅を抑えられるようになったわけだ。 政府は任期中、拡張的な財政運営に乗り出すと明らかにした。この日政府が発表した「2018〜2022年国家財政運用計画」によると、2022年まで年平均財政支出の増加率が7.3%に達する。ただし、専門家らは安定的な税収拡充計画が伴っておらず、政府の財政投資計画が国民の政策の実感度を高めるには十分でないと指摘している。チョン・セウン忠南大学教授(経済学)は「全体的に進展した側面があるが、現在韓国社会が直面した構造的問題を考慮すると、さらに特段の対策を樹立し、積極的な財政拡充計画が伴わなければならない」と話した。 チョン・ウンジュ、ホ・スン、パン・ジュノ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr) http://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/859663.html 韓国語原文入力:2018-08-28 22:35 訳H.J 関連記事 · 韓国政府、50・60代の働き口増やす…来年まで4万4千人に恩恵 · チャン・ハソン室長「所得主導成長の速度上げる、過去への回帰はできない」 · 「政策室長はスタッフ」…企財部長官、週52時間労働の調整にも言及 · [ニュース分析]「経済チーム、進退を賭けるべき」…文大統領、最後通告 · 「上半期の超過税収1兆9千億円…公共雇用創出のため2次補正予算の検討を」
日本の解き方】不合理な緊縮財政は人を殺す インフラ整備阻む「EU規律」、日本も金科玉条扱いは不要 (1/2ページ) 2018.9.1 印刷 注目記事を受け取る 8月18日、イタリア・ジェノバで高架橋崩落事故の犠牲者の国葬に出席するために集まった弔問者ら(ロイター) 8月18日、イタリア・ジェノバで高架橋崩落事故の犠牲者の国葬に出席するために集まった弔問者ら(ロイター) イタリアのジェノバで発生した高架橋崩落事故をきっかけに、「反緊縮財政」の可能性が浮上していると報じられた。日本の報道では「バラマキ」と批判的なトーンが多いが、緊縮財政がもたらす悲劇と比べてどちらが問題なのだろうか。 イタリアのコンテ首相は既に2019年予算案の枠組みを固めているが、連立政権を構成する右派政党「同盟」を率いるサルビーニ副首相は、ジェノバの事故を受けて、安全対策への支出を妨げる欧州連合(EU)の財政規律に「従うことが理にかなうのか疑問が生じる」と不満を示したという。 EUの財政規律とは、1993年11月発効のマーストリヒト条約(現リスボン条約)に定められた財政赤字の2つの基準である。具体的には(1)単年度の財政赤字が国内総生産(GDP)比3%以下(2)公的債務が同60%以下というものだ。基準の順守を加盟国に義務付けるとともに、加盟国の財政を監視することが取り決められた。 この公的債務残高をGDP比60%以下とするのは、理論的にもおかしな話だ。まず、これでは赤字国債も建設国債も同じ扱いになってしまう。資産が残る建設国債は投資のための手段であり、経済成長には欠かせないものだ。この点を考慮すると、公的債務残高の基準を作るなら、建設国債を除いて考えるべきだろう。 印刷 注目記事を受け取る 8月18日、イタリア・ジェノバで高架橋崩落事故の犠牲者の国葬に出席するために集まった弔問者ら(ロイター) 8月18日、イタリア・ジェノバで高架橋崩落事故の犠牲者の国葬に出席するために集まった弔問者ら(ロイター) 実は、EUに至るこれまでの発展の中で、各国の投資は欧州機関で行うという考え方があった。58年にローマ条約によって設立された欧州投資銀行(EIB)は、ルクセンブルクに本部があり、EU域内のインフレ整備などに融資している政策金融機関だ。EU各国が出資しているが、財政的にはEUと独立している。つまり、EIBが融資するインフラは、EIBが発行する債券で賄われ、自国で国債発行することなく整備できる仕組みだ。
この仕組みがワークすれば、EU各国はインフラ整備のための建設国債を発行する必要はないのだが、実際にはあまりEIBは機能していない。EIBの総資産は5500億ユーロ(約71兆円)。EUのGDP15・3兆ユーロ(約2000兆円)の3・5%に過ぎず、とてもEU全域のインフラ投資を賄えるものではない。つまり、EU各国の建設国債振り替えの受け皿にはなれない。 こうして、EUは健全なインフラ整備を行おうとしても財政規律で障害が出るようになっている。イタリアの事故で、今やその不満が噴き出しているとみたほうがいい。 日本では、EUの財政規律を金科玉条のように扱い、その不合理性を指摘する論考はほとんどない。本コラムで繰り返しているように、日本では財政再建の必要性はかなり乏しく、不合理な緊縮財政がもたらす悲劇のほうが大きい。 無駄なインフラ整備はダメだが、費用便益を精査した上でのインフラ整備は、財政規律と無関係だ。財政問題を理由として、躊躇(ちゅうちょ)してはいけない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一) 前へ 1 2 次へ zakzak の最新情報を受け取ろう facebook Messengerで受け取る 関連ニュース 【日本の解き方】格差は総裁選の争点になるか データでは目立った拡大なし 首相との差別化へ焦りの色も 【日本の解き方】「携帯料金4割下げ」菅氏発言、総務省は「寝耳に水」と驚き 大手携帯キャリア“応援団”から批判も、デフレ脱却への悪影響なし 【日本の解き方】金融緩和政策を止めるな! 平成の30年はデフレの時代…原因は不要な「バブル潰
【第41回】 2018年9月1日 三井住友アセットマネジメント 調査部 街角景気が悪化でも、今後の日本企業の景況感は期待できるワケ 日本企業の今後の景況感 (写真はイメージです) Photo:PIXTA 皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
世界経済は、減税や財政支出増によって力強さを増している米国経済に牽引される形で数字の上では堅調に推移しています。しかし、地域や産業ごとで強弱にばらつきが見られる他、米国の強硬的な通商政策や、トルコ通貨リラの大幅下落などもあって、安定感に欠けている印象です。 日本経済も例外ではなく、景気が冷え込んでいる訳ではないものの、好調な経済データが続いている訳でもありません。GDP成長率を見ると、1−3月期は9四半期ぶりに前期比でマイナスに落ち込んだのち、4−6月期は回復して前期比年率で+1.9%と高めの成長率を記録しました。とはいうものの、経済データは強弱まちまちとなっていて、必ずしも力強さを感じるものではありません。 今週は日本企業が置かれている環境を確認し、投資や賃金・雇用といった将来の経済成長につながるものがどのような展開を見せるかについて考えてみたいと思います。 まず、世界経済の状況について、簡単に整理しましょう。 米国に牽引され堅調に拡大する世界経済 2018年は前年比+3.9%の経済成長へ IMFの予想によると、2018年の世界経済は前年比+3.9%の経済成長が見込まれています。その内訳は、米国が同+2.9%で前年から0.6%ポイントの加速が見込まれている一方、ユーロ圏は0.2%ポイント減速の同+2.2%、日本は0.7%ポイント減速の同+1.0%見込みとなっています。 また、今年4月以降に進んだドル高の影響もあり、アルゼンチンやトルコ等の新興国通貨が大きく下落しています。国や地域によっては利上げによって通貨下落の防衛を図っているところもあり、そういった国や地域では経済成長見込みが引き下げられる傾向にあります。 世界の貿易量も、ここにきて足踏み状態となっています。オランダ経済分析局が発表したデータによると、4−6月期の世界の貿易数量は前期比年率で▲0.1%と、わずかながらも9四半期ぶりに減少しました。今年の春以降、米国の追加関税のニュースが出ていて駆け込み輸出もある模様ですので、これらのデータがどの程度実態を表しているのかやや判断が難しい面もあります。 このように、世界経済はGDP成長率で見れば堅調ですが、実際は強弱が混じった状況と見ておいてよさそうです。 「悪くはないが、すごく良い訳でもない」 日本経済の現状をデータでチェック 経済全体の強弱を知るにはGDPを見るのが最もシンプルで分かりやすいのですが、この数字は前述の通り、4−6月期は前期比年率で+1.9%と高めの成長となりました。ただ、GDPは四半期に一度しか発表されないため、次の発表の11月まではその他の経済統計や業界統計をチェックする必要があります。 景気の先行きを占う際に広く参照される経済データの代表格として、景気ウォッチャー調査があります。これは、「街角景気」とも呼ばれ、景気に敏感なタクシー運転手や小売店、メーカー、輸送業、広告代理店など、地域の景気の動きを敏感に観察できる立場にある約2000人を対象とした調査です。足元の景気の動向を最も敏感に表している指標と考えられます。 さて、その「街角景気」ですが、7月は「現状判断」も「先行き判断」も前月と比べると悪化しています。同月に日本列島を襲った豪雨や猛暑の影響が出ている模様です。家計関連と企業関連に分かれてデータが集計されていますが、それらを見ると、家計関連の落ち込みが大きく、天候不順により一般消費者が外出を控えたリスクうかがえます。 他には、百貨店やスーパー、コンビニ等の小売業の売り上げも7月分の数字が発表されています。データは前月比で+0.1%でした。豪雨や猛暑はありましたが、一方で飲食需要やエアコン販売が伸びたため、消費者の売買行動は影響をそれほど受けなかったと見られます。また、賃金やボーナスといった所得が伸びていることも、比較的堅調な消費を支えていると考えられます。 もう1つ発表されている7月のデータには貿易があります。実質輸出は、前月比わずかに増加しているものの、4−6月期の輸出数量を▲1.3%下回っており(当社計算値)、弱めの数字となった印象です。なお、世界経済は現在までも堅調に推移していること、米国の開始している鉄鋼やアルミ製品への関税引き上げの影響はそれほど大きくないと見られることから、基調としての輸出は底堅く推移していると考えることが出来ます。7月の輸出の弱さも、豪雨や台風の影響が表れている可能性があります。 以上が日本の企業を取り巻く環境です。一言でまとめますと、「悪くはないがすごくいいという訳でもない」といったところです。 さて、それでは、企業部門の状況を確認しましょう。 好調だった4−6月期業績発表 設備投資は2ケタ増、賃金も前年比増 企業の売り上げや利益については、7月から8月の半ばごろにかけて行われた4−6月期の企業業績発表が参考になります。東証一部上場企業全体(金融を除く)では、売り上げが前年同期比+5%、営業利益は同+10%となりました。 昨年度は過去最高益を更新した後ですし、企業が発表している今年度通年の利益成長の見通しがプラスマイナス・ゼロ近辺ですので、4−6月期の企業業績は良好と言えます。なかでも、情報通信、電気機器、輸送用機器等のセクターが事前予想を上回り、好調な業績となりました。4月と比べると円安・ドル高が進んだこと、グローバル景気の拡大が続く中、海外売り上げが好調だったこと等が要因になっていると見られます。 企業は、ものすごく良好とはいえない経済環境ながら、創意工夫によって好調な業績を上げていると考えられますが、そういった業績を裏付けとして企業はどういった経済活動を行っているのでしょうか。まず、設備投資の状況を見ます。 設備投資は、内閣府が発表している機械受注が参考になります。これは6月分まで発表されていますが、6月のデータはかなり弱く、前月比▲8.8%で製造業、非製造業ともにマイナスでした。特に製造業のマイナスが大きくなっています。米国の強硬的な通商政策を受けて企業が機械設備の発注を一旦様子見した可能性があります。 日本政策投資銀行が今年の6月に行った調査結果によると、大企業(資本金10億円以上)の2018年度国内設備投資額は、全産業で前年比+21.6%の大幅増となる見込みです。これは7年連続の増加で、伸び率としては38年ぶりの高さです。 製造業は同+27.2%増、非製造業は同+18.5%増でいずれも2ケタの伸びが見込まれています。中でも製造業は、自動車の電動化などのモデルチェンジ対応や、自動車向けを含む能力増強・省力化投資が幅広い業種で増加する見込みで、非製造業は、運輸、不動産で都市機能拡充に向けた投資やサービスなどでインバウンド対応の投資が続くほか、人手不足に対応した店舗、物流投資も増加する模様です。 次に、設備投資に並んで重要な企業活動である雇用や賃金の状況を見ます。 過去数年、日本企業の業績は傾向的に伸び続けてきましたが、その割には賃金の伸びは低く抑えられてきました。現在の景気拡大は2012年12月に始まりましたので、既に6年目に入っています。また、有効求人倍率は6月に1.62倍と、1974年1月以来の高水準となっており、人手不足感が高まっています。こういった状況下、徐々に賃金上昇率は高まってきています。 6月の毎月勤労統計によると、名目賃金は前年比で+3.3%となりました。これは97年1月以来の高さです。また、日経新聞が集計した夏のボーナスの支払い状況は前年比+4.2%と、企業は利益の従業員への還元に徐々に前向きになってきている印象です。 一方、雇用については、6月は前年比で+1.5%となっています。雇用と名目賃金をかけ合わせると、前年比で5%程度の所得の伸びとなっていると考えられます。世帯に勤労者がいる消費者は、久しぶりに所得の伸びを実感できる状況になっていると見られます。 さて、今後の企業活動はどうなるでしょうか? トランプ大統領の政策に不安は残るが、 ドイツの景況感は改善、日本にも波及か 経済は引き続き比較的堅調な拡大が続くと見られます。米中が財政政策を積極化しているため、下振れのリスクはかなり低下していると考えられます。リスクは、やはりトランプ大統領の強硬的な通商政策です。ただし、7月末以降、EUやメキシコとの交渉でそれぞれ合意に至るなど、11月の中間選挙へのアピール材料の「刈り取り期」に入ってきている印象があります。まだ、完全に安心はできませんが、今まで以上の悪材料となる可能性は下がってきていると見られます。 こうなると参考にしたいのがドイツの有力な経済研究機関のIfoが毎月発表している景況感指数(通称、Ifo調査)です。これは、ドイツ経済の先行指標として金融市場ではいつも注目されているもので、このところ米国との貿易摩擦問題を背景に数字が弱含んでいました。ところが、8月27日に発表された8月分のデータは大きく改善しました。これは、米国とEUが7月25日に貿易交渉で合意に至りましたが、これによって企業センチメントが大幅に改善したと見られます。 日本企業の場合も米国の貿易摩擦問題が最大の懸念材料ですが、具体的には米中協議と米国による自動車への関税の引き上げの2つがあります。これらのいずれもが懸念材料ではなくなる可能性はそれほど高くないと見られますが、片方でも懸念材料でなくなれば、日本企業もドイツ企業のようにセンチメントが改善し、設備投資や賃金・ボーナスの引き上げにより前向きになる可能性があります。 最後に、アジアのIT需要の先行指標として注目される台湾の輸出受注についてご紹介します。8月20日に発表された7月データは予想を上回り前年比+8%となりました。内訳をみると、電子部品や情報通信機器の需要が強まっています。米国を中心とした通商摩擦が大きく改善しなくても、日本の企業活動を後押しする材料になると見られます。 (三井住友アセットマネジメント 調査部長 渡辺英茂)
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