金融政策が後手に回るリスク、米国が最も高い−エコノミスト Michelle Jamrisko 2018年9月3日 12:01 JST 労働市場が引き締まり、賃金上昇余地あるとジェローム・ハジェリ氏 米など主要中銀、近く一層速いペースでの引き締め迫られる可能性Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg 世界の中央銀行は金融引き締め局面のそれぞれの段階にあるが、先頭を走っている米連邦準備制度が、政策が後手に回るリスクが最も高い。スイス・リーのチーフエコノミスト、ジェローム・ハジェリ氏がこのような見方を示した。 同氏は8月31日の電話インタビューで、米当局は「全てにおいて正しい政策を取っている」とした上で、「しかし、後手に回るリスクが高いのは誰かと聞かれれば、それは米国だと思う。労働市場環境が引き締まっているし」、賃金上昇余地もあるからだと語った。 世界全体については、潜在成長率を上回る拡大を続けている国や地域が数多くあり、金利は依然「極端に緩和的だ」との見方を示した。長引く貿易戦争の可能性というリスクを考慮に入れなくても、世界経済に波乱が見込まれると指摘。米国を含め主要中銀が近く、予想より速いペースでの引き締めを迫られる可能性があるとの見通しを示した。 原題:Fed Is Most at Risk of Falling Behind, Says Swiss Re Economist(抜粋)
世界の外貨準備シェア、元が増えドルと円が減少するーゴールドマン Christopher Anstey 2018年9月3日 14:57 JST • 元安にもかかわらず中国債券への資金流入は加速している • 日本債券の流出は660億ドルと、海外保有総額の推計12%に相当 ゴールドマン・サックス・グループによれば、中国人民元は世界の外貨準備でのシェアを拡大する見込みだ。元のシェア拡大に伴い、相対的に最もシェアを失わざるを得ないのはドルと円になる。 元安にもかかわらず、この数カ月、中国の債券への海外資金流入が加速しており、これは市場規模世界3位の中国の債券への配分需要が強いことを示している。ゴールドマンのアナリストらは、2022年までの5年間の中国債券への純流入額見通し1兆ドル(約111兆円)のうち、中銀からの流入が2500億ドルに上るだろうと予測する。 ゴールドマンのダニー・スワナプルティ、マイケル・ケーヒル、アンドルー・ティルトンの3氏は8月31日のリポートで、「外貨準備の再配分(すなわち流出)はドルと円に一段と集中する可能性がある」と指摘。現在、世界の中銀は既に外貨準備の多くをドル建てにしているため、ドルは当然ながら中国債券購入の資金源になる。アナリストらは「円はもはやアジア唯一の準備通貨ではなくなったため、元の台頭は円に対し、より大きな影響を及ぼすだろう」と分析した。 ゴールドマンのアナリストらはまた、世界の主要債券ベンチマークに中国が採用された場合に中国の配分を増やすことが予想されるインデックス連動の資産運用会社からの再配分に加え、向こう5年間で他の市場から約5220億ドルが中国債券に流入すると予測。分析の都合上、これは運用資産が不変だと仮定した場合の推定となっている。アナリストらは、政府系ファンドやプライベート・ファンドマネジャーなどから総額1兆ドルが投じられると分析した。 中銀や債券インデックス連動の資産運営会社からの日本債券流出は660億ドルと、海外が保有する日本国債総額の約12%に相当すると推計された。米債券の流出は2800億ドルの見込みだが、これは米国債の海外保有額の約4%にすぎない。 原題:Goldman Sees Yuan Gaining in Reserves at Expense of Dollar, Yen(抜粋)
ブラックロックの大規模債券ETF、2日間で10億ドル近く流出 Rachel Evans 2018年9月3日 10:20 JST 投資適格社債で構成のLQD、流出額は2月の市場混乱以降で最大 金利上昇はデュレーション高いファンドに良くない兆候−バジャジ氏 Photographer: Bess Adler/Bloomberg リスク回避の動きが最初に起きたのは新興国市場。続いて米国株。そして今、これが債券に広がりつつある。 足元で打撃を受けているのは、高格付け社債で構成される上場投資信託(ETF)だ。ブルームバーグが集計したデータによれば、世界で3番目に規模が大きい債券ETFであるブラックロックのiシェアーズiBoxx米ドル建て投資適格社債ETF(銘柄コード:LQD)では、8月29日と30日の2営業日で9億9400万ドル(約1100億円)が流出。2月のボラティリティー急騰による市場混乱以後では最大の流出額となった。 トランプ米大統領が中国に対する追加関税発動を支持し、欧州連合(EU)との貿易を巡る争いが再燃する中、8月31日終了週の市場は新興国資産の下落や貿易摩擦の緊迫化で混乱。もっとも、債券投資家は米国に近いイベントに反応しているように見える。米金融当局は、年内さらに2回の利上げに向け順調に進んでいることを繰り返し示唆し、期間が長めの社債の魅力がそがれている。
ウォーラックベス・キャピタルのETF担当ディレクター、モヒット・バジャジ氏は資金流出について、「動きが少ない傾向のある8月最終週としては相当な額だ」と述べた上で、 「デュレーションが高めのファンドにとって金利上昇は良い兆候ではない。さらに、われわれは月末の再配分に入るため、恐らく人々は秋の始まりとともにより保守的な商品にシフトしつつあるのだろう」と語った。 ブラックロックは資金の動きに関してコメントを控えた。 ブルームバーグのデータによれば、投資家はパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のエンハンスト・ショート・マチュリティ・アクティブETF(同MINT)や米財務省の物価連動債(TIPS)のような短期債を購入。投資家はまた、9月の新発債発行を前に現金のポジションを高めている可能性がある。 原題:Nearly $1 Billion Flees Third-Largest Debt ETF as Caution Rules(抜粋)
9月のドル/円は後半に向かうほど強気!? 先週末(8月31日)で8月が終わり、結局のところ8月のドル/円の月足・終値は一目均衡表の月足「雲」上限を上抜けることができませんでした。下図で確認できるように、7月と8月の月足ロウソクの形状からしても月足「雲」上限付近のレジスタンスはなかなか強力であると考えられます。それでいて、目下は31カ月移動平均線(31カ月線)や62カ月移動平均線(62カ月線)のサポートがガッチリと利いており、下値の堅さも十分に実感されるところではあります。 もちろん、今後もドル/円が月足・終値で月足「雲」上限を上抜けるかどうかという点には引き続き注目し続けて行きたいところです。すでに、2015年6月以降に形成されたと見られる三角保ち合い(=トライアングル)を上放れていると考えるならば、もはや月足「雲」上限を上抜けるのも時間の問題ということにはなるでしょう。 20180903_tajima_graph01.png 個人的に、それは9月である可能性が高いと考えています。なぜなら、11月の米中間選挙までもはや残すところ2カ月余りとなり、いよいよ米政権が本格的な戦闘モードに突入する段階であると考えるからで、巷間よく言われるように、すでにトランプ大統領は政策の軸足を通商外交から一段の国内景気刺激に移しているものと見られます。 思えば、通商外交における強硬姿勢は多分に地方の予備選を意識したものでしたが、その予備選も9月11日のニューハンプシャー州、ニューヨーク州、9月12日のロードアイランド(バーモント州)、9月18日のマサチューセッツ州で一巡します。とりわけニューヨーク州やバーモント州)、マサチューセッツ州がトランプ大統領支持率の低いことで知られる地方であるということを考えれば、既に事実上の予備選対策はほぼ終わっていると見ることもできるでしょう。 その実、最近のトランプ大統領は、足下の米景気の強さやドルの強さなどを強調するような発言を意図的に繰り返すようになっていますし、今後一段と機が熟してくる頃には、満を持して追加の景気刺激策を打ち出してくることも想定されます。少なくとも、件の通商問題の先行きが次第に見通せるようになってくるだけで、まずは円買いニーズは低下するでしょうし、一方でドル買いニーズは一段と強まるものと思われます また、9月は18−19日に日銀金融政策決定会合、9月25−26日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が行われる予定となっており、其々の結果がともにドル/円を強気にさせる公算が大きいと個人的には考えています。日銀は前回、初のフォワードガイダンス導入に踏み切ったわけですが、その「超緩和的な政策をなおも継続する」とのメッセージが9月の会合では再度強調されるものと思われます。一方、追加利上げの実施が見込まれるFOMCでは必ずしも「年内あと1回」の利上げを完全否定するような議論は戦わされないと見ます。 さすがに、今週は懸案のイベントや重要指標の発表などが相次ぐため模様眺め気運が強まりやすいと見られます。そのなかで、ドル/円が21日移動平均線や一目均衡表の日足「雲」下限などの支持を得ながら底堅く推移するかどうかまずは要注目。そして、いずれ日足「雲」上限を終値ベースで上抜けてくるような展開となれば、少し長い目で年内115−118円あたりの水準を試しに行く流れになって行くものと個人的には考えます。 コラム執筆:田嶋 智太郎 経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役
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