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高齢者が金融機関のカモにされずに資産を守る方法(ダイヤモンド・オンライン) 
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/326.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 8 月 29 日 13:00:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

高齢者が金融機関のカモにされずに資産を守る方法
https://diamond.jp/articles/-/178457
2018.8.29 山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 ダイヤモンド・オンライン




80代夫婦にアドバイス

 筆者は、原則として個人の運用相談を受けていない。しかし、たまたま出版社を通じてもらった拙著の読者からの質問が目に止まり、返信を考えてみる気分になった。相談者が取引している金融機関のやり方がかなりひどいので、「困っている人を知ったのだから、助けるべきだ」と思った。A4の紙で、2枚強のアドバイスを書き送った。

 相談者は、関東在住のご夫婦でお2人とも80歳代である。けがや持病などの影響で、共に健康は万全とはいえない。しかし、相談の文面はしっかりしており、金融取引に必要な判断力は十分あると思われるのだが、むしろそれにつけ込まれて証券会社から営業の勧誘を受けているようだ。例えば、このご夫婦が「豪ドル」の相場など考える必要はないと思うのだが、豪ドルとは何なのかが少し分かるので、セールスに付け込まれているのだろう。

 相談の文面には、運用資産がいくらとは書いていないのだが、いずれも大手銀行に近い関係の証券会社3社と取引をしておられる。現在、数千万円レベルの金融資産をお持ちであると推察した。

 特に「助けるべきだ」と思った理由は、複数の証券会社が「ラップ」での運用を勧めていたからだ。これは、最悪の運用サービスの1つだ。

 もちろん、証券会社や信託銀行が力を入れているサービスを「最悪」と言うからには、根拠がある。(1)ラップ自体の手数料が高く、(2)中身に選ばれるファンドでもぶ厚い手数料が掛かり、(3)そもそも証券会社や投資顧問会社に顧客にとって適切な運用を考える能力も(たぶん、その気持ちも)なく、しかも、(4)顧客の側では「任せた」という気持ちで運用の把握が劣化するから、「最悪」だと申し上げている。絶対にやめてほしい。

 明らかにダメな運用サービスに取り込まれそうな人を見つけたのに、一声掛けないのは、人道にもとるというものだろう。

 なお、アドバイスは筆者側からの一方通行の返信で無償である。筆者が勤務する楽天証券に資産を誘導することもしていない。FAXで相談してくる80代の相談者にネット証券の利用はハードルが高そうだ。今回は、対面型の金融機関を利用することを前提に、どうしたらいいかを考えた。

前提条件は3つ

 今回のご夫婦のように後期高齢者で、そこそこの金融資産があり、この金融資産の扱い方に困っている方は多いのではないか。加えて、数千万円単位の資産は、既に金融機関のアプローチを受けて、何らかの運用が行われている公算が大きい。放っておいてはくれない場合が多いだろう。そして、現状に安心できなかったり、結果や経過に不満足であったりするケースが少なくあるまい。

 こうした方々は、以下の3点をはっきりさせてから問題の解決に動いてほしい。具体的な解決方法は後で説明するので、後はその通りに実行してくれたらいい。

 確認すべき前提条件は、

(1)金融資産の総額と、1年間に取り崩すことができる金額はいくらか
(2)金融資産をどういった金融機関で取引・運用したいか
(3)リスクを取ってお金を増やしたいと思うか

 の3点だ。

 1年間に取り崩すことのできる金額は、総資産額から最晩年に残しておきたい金額(介護施設の入居費や家族に残したい金額など)を差し引いて、その残額を平均余命に10年くらい(できれば15年)足した年数で割った金額だ。

 例えば、ご夫婦が4000万円持っていて、最晩年に1000万円残しておきたいと考えるなら、年下の奥様の余命を20年(100歳)と見積もって、年間150万円の資産を取り崩して使うことができる。基本的には年金と、この取り崩し額の範囲内で暮らすべきであり、それが「分相応」だと理解すべきだ。それ以上使って晩年に苦しくなっても、誰も助けてくれない。

 総資産額は、資産運用の結果、予定外の収入・支出、働いた場合の稼ぎなどで変化するので、計算は毎年行って取り崩し額を増減させるべきだ。

 なお、「3%」などといった運用利回りがあることを前提にして資産を取り崩すのは、やめた方がいい。運用は当てにならないし、個人が失敗しても、企業年金が母体企業に損失の穴埋めをしてもらえるような形での救済措置が期待できないからだ。

 一方、高齢だからといって、お金が増えて困るわけではないので、取ってもいいリスクの範囲内で運用することは全く構わないという理解は重要だ。将来の必要額に見当がつきやすい高齢者の場合、若者よりも大きな運用リスクを取って問題ないケースが多々ある。かの有名投資家ウォーレン・バフェット氏は87歳の後期高齢者なのだから、遠慮はいらない。

 しかし、(3)の運用リスクを取るか否かについては、「相場にハラハラするのはごめんだ」、「わけの分からないリスクは取りたくない」といった方が多いのではないかと想像する。それなら、それで結構ではないかと筆者は思う。

 近年は、「資産寿命を延ばしましょう」などといった甘言で、リスクを取った運用に勧誘し、例えば年金支給のない奇数月に分配するといった投資信託など、運用で資産の寿命が伸びることを強調した商品が、主に退職者世代向けに売られていたりもする。だが、これらの商品は運用の内容面でも手数料面でも、仕組みとしてもはっきりダメだと断言できるものばかりなのでやめておこう。

奇数月の分配を強調する商品には要注意

 特に「奇数月の分配」を強調する商品を売りにきた場合は、判断力が乏しくて勧誘しやすいと年寄り扱いし、あなたを舐めている証拠なので、その金融機関やセールスマンとは縁を切るべきだ。

 さて、実はアドバイス上、気が重いのは、(2)の取引金融機関の選択だ。多くの方が、これまで付き合いのあった金融機関やセールス担当者との縁を切りたくないと思っているのではないかと想像する。

 今回のご夫婦のような高齢の場合、対面型営業の証券会社のセールスマンと渡り合うのは負担で危険なことであり、ラップでの運用をしつこく勧めるようなタチの悪い営業をしてくるので、「全ての商品を解約・換金して取り引きを打ち切り、銀行1行に金融資産を集約してください」とアドバイスした。

「そうしてからでなければ、次の質問は受け付けません」と突き放したのだが、正直なところ、ご夫婦が解約しきれないのではないかという心配はある。

 なお、銀行に資産を集約しても、そこで銀行の勧める商品を購入してはいけないこと、1000万円を超える預金を持ってはいけないことの2点が重要であり、生活用の預金以外は、全て個人向け国債変動金利型10年満期で運用する。銀行の窓口で購入していい唯一の運用商品だ。

 取引金融機関を変えたくない場合(現実的には多いだろう)、次善の策は、

(1)生活費以外の資産を全て前記の個人向け国債に入れて
(2)自分から部分的に解約する以外の取引はしないこと
(3)営業勧誘は不要であること

 以上3つの意思を銀行なり、証券会社なりの支店に明確に伝えておくことだ。

 実は、先年、筆者は北海道在住の母(80代)と共に、母と取引がある証券会社の支店を訪ねて、資産の大半を個人向け国債にして、一部をインデックスファンドにする取引を指示すると共に、取引担当者とその上司に「母はもう高齢であり、これら以外の運用のニーズは全くないし、新しい金融商品を理解する必要もないので、今後一切運用商品の勧誘をしないことを確約してほしい」と話をしに行った。

 母は、生前の父が取引していた証券会社との取り引きを続けることを望んだし、高齢になると、別の証券会社に口座を開いて資産を移換するのはかなり面倒なので、この形を取った。幸い、取引担当者と上司は快諾してくれた(もちろん、手元で相手の名前と言葉をノートに記録したことは言うまでもない)。

 将来、先方の担当者と上司が人事異動してしまった場合に、合意が反故になる可能性があるが、どちらかが支店に残っている間は大丈夫だろう。

後期高齢者が資産を扱う手順

 後期高齢者が金融資産を安心に扱う一般的な手順を、なるべく具体的にまとめておこう。

 ラップ運用、毎月分配型などインデックスファンド以外の投資信託、外国債券、趣味でやっている以外の勧められて買った内外の株式などは、全て解約換金する。ダメな運用商品を買値にこだわらずにスッキリ解約して、シンプルで管理しやすい状態を作ることが肝要だ。

「リスクを取らない運用をする」と思う人の場合、可能なら銀行1行に金融資産を集約する。銀行では、生活費として金融資産から取り崩す額の3〜5年程度を普通預金に置いて(残高は1000万円以下が望ましい)、生活費支払いに充てる。残りのお金は全額「個人向け国債変動金利型10年満期」を購入する。銀行が窓口で勧める運用商品は、一切購入してはいけないし、説明自体を聞かないことを守る。

「リスクを取りたくなく、取引金融機関も変えたくない」と思う人の場合、解約・換金で生じたお金のうち、生活費用の3〜5年分のお金を銀行の普通預金口座に移動し、残りの全額で「個人向け国債変動金利型10年満期」を購入する。この際に、「1年後に解約できることは知っていますが、解約を前提とした運用商品の勧誘は一切必要ありませんのでご遠慮ください」と念押ししておくといい。

 2年経ったら、生活費の1年分程度の金額の個人向け国債を解約して、生活費用の銀行の普通預金口座に補填する(残高は1000万円を超えないこと)。以後、毎年取り崩し可能額を預金に補填する。

「ある程度リスクを取って運用してもいい」と思う人は、上記の個人向け国債の一部を、投資に振り向けていい。この際、運用内容は「絶対に金融機関に相談せずに」「運用商品の勧誘は常に固辞して」自分で考えて行うこと。筆者は、内外の株式のインデックスファンドに、「外国株式6割、国内株式(TOPIX)4割」の比率で投資することをお勧めするが、詳しい理由や考え方は拙著その他の運用の入門書を納得するまで読み込んでほしい。

子どもに「営業勧誘不要」の意思表明をした証人に

 年に1度、金融資産の金額と状態を把握し、「年間取り崩し可能額」を再計算して、生活と取崩額を微調整されたい。

 子どもなど若い方と、お金の状況、口座と資金の在処などの情報を共有すると同時に、金融機関に対して「営業勧誘不要」の意思表明をしたことの証人になってもらうといい。

 おおよそ上記の手順で、後期高齢者であっても資産を守って無難に暮らすことができると思う。今回の相談者たちがうまく実行できることを祈りたい。

 なお、高齢期のお金の扱い方には、運用以外に、最晩年期の認知症などによる判断力喪失に備えたお金の処置の問題があるが(油断のできない問題であり、特に法定後見人をつけられないような処置をしておくことが重要だ)、この問題は別の機会に論じる事にしたい。

 それにしても、このご夫婦のようなケースは少なくないのではないか。冒頭に述べたように、筆者は、個人向けの運用相談をビジネスにするつもりは当面ない(お金をもらって、話の相手をするのは嫌いな仕事だからです)。しかし、事例は知っておきたいし、勝手に他人にアドバイスしたい気持ちになる事もある。

 困っている方は、筆者の会社のメール・アドレス(info@mybenchmark.co.jp)に、どのような状況なのかお知らせくださることは歓迎します。ただし、何度も言うように筆者が商売でやる気はないので、返信は期待しないでください。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)



 

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コメント
1. 2018年8月30日 11:32:50 : HF4NmHFVKw : f2vkVsFgBns[3] 報告
年寄りが株や国債をちまちま買うより、資産を守る方法は、4000円近くなったら買い、5000円近くなったら売る「金」が一番。年に3回ぐらいの売買で、結講なリターンになる。いつ暴落するかわからない、NISAやインフレで元本割れの日本国債はダメ。
2. 2018年8月30日 15:25:26 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1358] 報告
2018年8月30日 野口悠紀雄 :早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
働く高齢者が損をする「在職老齢年金制度」は廃止が当然だ
シニアの労働者
写真はイメージです Photo:PIXTA
 政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太2018)で、在職老齢年金制度を見直すとした。

 これは、年金受給資格がある人でも、働くと、年金の一部または全額を支給停止する制度だ。

 この連載でも何度か書いてきたように、この制度は、高齢者の就業に対して強い抑制効果を持っている(2017年1月19日付け「なぜ『高齢者は働かないほうがトク』になってしまうのか」、10年8月21日付け「矛盾だらけの『在職老齢年金』が高齢者の働く意欲を失わせる!」、17年1月12日付け「『高齢者は働かないほうがトク』という制度は見直すべきだ」など)。

 この見直しは、労働力不足が深刻化し、高齢者の就業率の上昇が望まれる時代になって、当然すぎる措置だ。見直されれば、働く高齢者にとって大きな福音になるだろう。

在職老齢年金制度による
年金削減額
 まずは、在職老齢年金制度の仕組みについて説明しよう。

 年金停止額は、「基本月額」(以下では、記号bで表わす)と「総報酬月額相当額」(以下では「報酬月額」という。yで表わす)の組み合わせによって異なる。

「基本月額」とは、年金額(年額)を12で割った額だ(老齢基礎年金や加給年金は含まれない)。「総報酬月額相当額」とは、毎月の賃金(標準報酬月額)と、「1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額」の合計だ。

 厚生労働省や日本年金機構などのウェブページに計算方法の説明があるが、きわめて煩瑣な方法で表示されているので、分かりにくい。図表1と図表2のように示すのが最も分かりやすい。

(1)60歳以上65歳未満の場合(図表1参照)

60〜64歳の年金減額算定式の図表
拡大画像表示
 5通りのケースがある。

 ケース1では、年金は全額支給される。したがって、p+yは、b+yになる。pは在職老齢年金制度で調整後の年金額(基礎年金を含まず)。

 ケース2では、年金は(b−28+y)/2だけ減額される。この結果、p+yは、14+b/2+y/2になる。したがって、報酬がΔy増えても、p+yはΔy/2しか増えない。例えば、報酬が10万円増えても、年金を含めた所得は5万円しか増えない。これは、賃金所得に対して、限界税率50%の税がかかるのと同じことだ。

 ケース3では、年金はy/2だけ減額される。この結果、p+yは、b+y/2になる。したがって、ケース2と同じく、所得がΔy増えても、p+yはΔy/2しか増えない。

 ケース4では、年金は(b/2−37+y)だけ減額される。この結果、p+yは、37+b/2と、yによらぬ定数になる。つまり、いくら稼いでも年金を含めた所得はまったく増えない。稼いだ所得はすべて年金減額の形で召し上げられてしまうわけで、限界税率100%の税がかかるのと同じことになる。
 だから、就労のインセンティブは著しく低下することになるだろう。

 ケース5では、年金は(−23+y)だけ減額される。この結果、p+yは、23+bと、yによらぬ定数になる。つまり、ケース4の場合と同じく、限界税率100%の税がかかるのと同じことになる。
 ケース4や5は稀と考えられるが、あり得ないことではない。

(2)65歳以上の場合(図表2参照)

65歳以上の年金減額算定式の図表
拡大画像表示
 ケース1では、年金は全額支給される。したがって、p+yは、b+yになる。

 ケース2では、年金は(b−46+y)/2だけ減額される。この結果、p+yは、23+b/2+y/2になる。したがって、限界税率50%の税がかかるのと同じことになる。

報酬が増える場合に、
報酬+年金はどうなるか?
 以下では、いくつかの場合について、yが増えるにつれてp+yがどのように変化するかを見ることとしよう。

(1)60歳以上65歳未満、b=10万円の場合(図表3参照)

標準報酬の増加による受取額の変化(60〜64歳)の図表
拡大画像表示
 yが18万円までは全額支給されるので、p+yは、図表3のAから出発してBに至る勾配が45度の直線で表わされる。

 yが18万円から46万円までは、図表1のケース2となるので、p+yは、BからCに至る勾配が22.5度の直線で表わされる。

 C(y=38)において年金額pがゼロになるので、これ以降は、p+yはyになる。つまり、p+yは、原点からの45度線になる。

(2)60歳以上65歳未満、b=30万円の場合(図表3参照)

 この場合は、最初から年金が減額される。yが46万円までは図表1のケース3となるので、p+yは、EからFに至る勾配が22.5度の直線で表わされる。

 yが46万円を超えると、図表1のケース5となる。したがって、p+yは水平線FGとなる。

 Gにおいては、年金額pがゼロになるので、これ以降は、p+yはyになる。つまり、p+yは、原点からの45度線GDになる。

(3)65歳以上、b=30万円の場合(図表4参照)

標準報酬の増加による受取額の変化(65歳以上)の図表
拡大画像表示
 yが16万円までは全額支給されるので、p+yは、図表4のHから出発してIに至る45度の直線で表わされる。

 yが16万円を超えると、図表2のケース2となるので、p+yは、IからJに至る勾配が22.5度の直線で表わされる。

 Jにおいて年金額pがゼロになるので、これ以降は、p+yはyになる。つまり、p+yは、原点からの45度線JKになる。

(4)65歳以上、b=50万円の場合(図表4参照)

 この場合は図表2のケース2となるので、最初から年金が減額される。yが46万円まではp+yは、LからMに至る勾配が22.5度の直線で表わされる。

 Mにおいて年金額pがゼロになるので、これ以降は、p+yはyになる。つまり、p+yは、原点からの45度線MKになる。

働かないほうがトク
限界税率100%も
 以上から分かる基本的な考えはつぎのとおりだ。

(1)まず、p+yについての「壁」がある。これは、「屈折点」と呼ばれる。

 図表3ではB'B、図表4ではI'Iの水平線で示されている。45度線がこれにぶつかると、減額が始まり、22.5度線になる。つまり、報酬の1/2だけ年金が減額されるのだ。

 28万円は、現役男子被保険者の平均標準報酬の6割程度に相当する。これが年金の給付基準とされているため、65歳未満でも「ここまでは賃金と併給してもよい」と考えられ、全額給付されるのだ(「在職老齢年金制度の見直し等について」参照)。

(2)65歳未満については、yについての「壁」もある。

 これは、図表3ではFを通る垂直線で表わされる。22.5度線がこれにぶつかると、100%課税が始まり、水平線になるのだ。

 46万円は、男子の標準報酬月額の平均に相当する(注1)。「現役とのバランスを考えると、これ以上、年金と賃金の総手取り額が増額するのは適切ではない」との考え方から、65歳未満の場合には、賃金がこれ以上になると、100%課税に相当することを行なっているのだ。

 働いて得た報酬に税がかかるのは、高齢者に限ったことではない。しかし 、高齢者の場合には、限界税率が非常に高いのが問題だ。50%の限界税率でも非常に高いが、100%の限界税率はさらに問題だ。

 こうした高率の課税を、上の理由で正当化できるかどうか、大いに疑問である。

 また、年金カットが始まる報酬額は、基本月額が大きいほど小さくなる。つまり現役時に給与が高かった人ほど、退職後は労働を続けるインセンティブを失うことになる。

(注1)この額についての記載は、厚生労働省や日本年金機構のウェブページでも混乱している。従来は46万円であったが、2015年4月から47万円に改定された(15年5月13日更新のサイト)。しかし、17年では46万円とされている(17年4月19日更新のサイト)。

高齢者の低賃金化を招く
能力発揮を妨げることにも
 在職老齢年金制度は、高齢者の就業を抑制するだけでない。この制度は、高齢者の賃金を低く抑えている可能性がある。

 これを見るために、つぎのような場合を考えて見よう。

 それまでの賃金を維持すれば、これ以上働くと年金減額になるとしよう。それでも働くのを「オプションI」としよう。

 しかし、賃金を低くすれば年金が減額にならないとしよう。そこで、賃金を下げて働くことを「オプションII」とする。

 被雇用者としては、I、IIのどちらでもよい(年金のほうが税制上優遇されていることを考えると、手取りが同じならオプションIIのほうがよい場合が多いだろう)。 

 他方で、雇用者としては、同一労働時間で賃金は低く抑えられるのだから、明らかにIIがよい。それなら、何らかの特典を与えても、オプションIIを勧めようとするだろう。

 ここで、特典というのは、賃金以外の形態での経済的利益だ。例えば、雇用期間を延長するなどのことが考えられる。

 こうして、在職老齢年金制度は、就業する場合にも低賃金の就業を促進することになる。低賃金の就業を促進することによって、高齢者の能力発揮を妨げているとも言える。

 つまり、この制度は、低賃金で高齢者を雇用する企業への補助金として機能してしまっているのだ。

在職老齢年金制度で、
1兆円程度の支給額が減額されている
 日本経済新聞(2018年5月12日)によると、65歳未満で年金支給停止の対象者は約98万人、停止額は約7000億円、65歳以上の対象者は約28万人、支給停止額は約3000億円だ(14年度)。

 したがって、仮にこの制度を廃止するとすれば、約1兆円の財源手当が必要だ。

 これは簡単なことではない。しかし、高齢者就業が経済を活性化する効果を考えれば、それは正当化されるだろう。

 なお、就業者が増えたり、低く抑えられている高齢者の賃金が上昇したりすれば、保険料収入が増えることにも注意が必要だ。

(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)

3. 2018年8月30日 19:41:12 : WFymFzFjPM : Un4ysis9J8w[93] 報告
この人も金融機関の人、営業部長。
4. 2018年8月31日 08:56:09 : ubsqxr99nk : L8tnnf@OvnU[800] 報告
投資、信託はすべて売り払いなさい。

世界的大暴落が来ます。近いうちに、、、中国が下げ止まらない。

次は西欧、アメリカ、、、

当然新興国の為替は大暴落するでしょう。


日銀、年金資金、、、責任取れるのか? 黒田お前は死刑だぞ〜

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