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残業代をおさえるために出退勤簿を会社が改ざん! 労働時間を証明するために労働者がしておいたほうがいいこと(リテラ)
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/273.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 8 月 23 日 20:38:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

残業代をおさえるために出退勤簿を会社が改ざん! 労働時間を証明するために労働者がしておいたほうがいいこと
http://lite-ra.com/2018/08/post-4203.html
2018.08.23 ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第24号 残業代をおさえるために出退勤簿を会社が改ざん リテラ

    


 今回登場する会社は、福岡を中心にホテルを営む株式会社である。ここで働いていた労働者のK氏からの相談を受けたのは、何年か前のことである。K氏の相談は、会社から勤務態度等について指導された事実が存在しないにもかかわらず、勤務態度不良を理由に突然給与を6万円も下げ、賞与を支給しないとの文書を渡されたので退職したこと、退職するまで残業代も払われず、ほとんど休みなく長時間働かされてきたのでなんとかしてほしいというものだった。

  K氏が勤めるホテルは、ビュッフェや婚礼等の特別に提供される料理や各種イベントなど、飲食部門を手広くやる一方、充分な調理スタッフを雇っていなかった。配膳スタッフも十分でないため、時には、調理スタッフが配膳も行わざるを得なかったそうである。そのような状況であるため、調理スタッフ全員が本来の担当を超えて助け合いながら、恒常的に長時間労働しているとのことであった。特に、K氏は、ホテルで唯一の和食の料理人であり、ホテルで提供される和食を一人で調理していたため、早いときは午前9時から遅いときは午後11時まで働き、繁忙期には連勤が当たり前とのことであった。

 そのうえ、格安ビュッフェで採算をとるため、料理の使いまわしが横行していたり、まともな休憩が取れないため他の調理スタッフが勝手口の外にそのままの格好で喫煙に行った後、手洗い消毒をきちんとしないまま調理に戻ったりしていることが横行しているとのことであった。そもそも、スタッフ用トイレも壊れたまま修理してもらえないので調理場から離れた一般客用のトイレまで走らないといけなかったり、一般客用トイレの排水も故障しているため階下の宴会場にシミができていたりしたそうで、会社が調理スタッフの衛生管理を責められるような状態ではなかった。

 K氏は、厳格な職場で下積みをした経験から上記のような不適切な状態を我慢ができず、見かけたときは必ず注意をしていたそうである。そのことから、かえって古来のスタッフに嫌われ、一度出入りの業者から家庭用のサランラップを買ったことや食事の時間も取れないのでビュッフェの余り物で空腹をしのいだことを、ホテルの財産を流用し秩序を乱したなどとして減給されたとのことであった。

 一般客用のトイレの排水も故障しており、労働者用のトイレも故障しているとなると、労働安全衛生法23条1項や旅館業に関する規制等への違反も疑われたが、まだ多くの同僚が働いており、自分が相談した結果、営業停止等になるのは忍びないということだった。また、減給については明らかに違法であるものの、予告された日に退職しており、すでに就職先も決まっており心機一転頑張りたいので紛争をできるだけ長引かせたくないということだった。ホテルの衛生状態を放置することにはモヤモヤした感情を抱いたものの、K氏の言い分もわからないでもなく、弁護士には守秘義務があるので、粛々と残業代を回収することにした。

そもそも、K氏は、問題のホテルに転職するにあたり、家庭の事情から長時間勤務を避けたかったそうである。そのため、知人から紹介されて会社に連絡した際も、所定労働時間が8時間で週休2日であることを確認し、面接の際もその旨をしっかり確認したそうである。しかし、ふたを開けてみると、自分以外に和食の料理人がいないため、責任感の強いK氏は責任者が一方的に入れてくる予約に応じて働かざるを得なかったとのことであった。K氏によると、最大500人分の和食を一人で準備させられたこともあるとのことであった。市販だしを使うことなど考えられないK氏は、前述したように早いときは午前9時から遅いときは午後11時まで働き、休日もコース料理の準備のために出勤することもあったそうである。求人の際のみならず、面接のときも、労働基準法に則った労働時間を伝えながら、採用するやいなや、所定労働時間を無視し、一方的に所定労働時間外の仕事を担当させる会社のやり方にかなりの悪質さを感じ取った。

■会社にタイムカードがない! 労働時間をどう証明するか…

 聞き取りを進めるうちに、会社にはタイムカードがなく、手書きの出退勤簿しか存在しないこと、出退勤簿は出勤の際に労働者が必ず立ち寄るロッカールームではなく、調理場横の事務室に掲示されているとのことであった。調理用の衣類に着替えた後の事業所内の移動が労働時間に含まれることは明らかである。長年残業代を一切支払ってこなかったにもかかわらず、出退勤前後の数分間ですら労働時間として換算しないための取り組みを予めしている会社の姿勢に呆れずにはいられなかった。

 K氏は、入社してすぐ、他の労働者から、何かあったときのために出退勤時刻をメモしておいたほうがいいとアドバイスされたとのことである。相談の際、K氏からは、アドバイスを受けてから、毎日、出退勤時刻をメモするようになったと聞かされた。そのため、当初の想定より、労働時間の立証は簡単かもしれないと期待した。

しかし、K氏が後日持参した資料は、3カ月分の出退勤簿のコピーと、ビニール袋いっぱいのメモだった。メモを整理してみないと、証拠として使えるかどうかわからないため、一旦すべての資料を預かった。

その後、いくつかメモを取り出し、目を通したが、そのほとんどが、時刻のみが走り書きされた紙切れで、たまに時刻以外に筆で書かれた文字が存在するものの、結局何が書かれていたかまったくわからない程度のものにすぎなかった。忙しい合間に必死にその日の献立を手書きしていた和紙を切って、その切れ端に出退勤時刻を記載していたK氏の涙ぐましい努力に労働状況の過酷さを垣間見た。すべてのメモを時間ごとに並べ、コピーして提出することも考えたが、各時刻が午前なのか午後なのかもわからないので、見送った。どのメモがどの日の出退勤時刻かわからない以上、証拠として使うことは難しいので、一旦K氏にお返しすることにした。

後日、あらためてK氏に事務所に来てもらい、第三者にすぎない弁護士にはどのメモがいつの出退勤時刻かわからないことを丁寧に説明し、K氏自身が判断できるのであれば、ぜひ教えて欲しいとお願いした。一旦預かった資料を返されるとあって憮然とした表情を見せられたが、できないものを請け負うわけにはいかないので、辛抱強く説得し、大量のメモをお持ち帰りいただいた。

結局、K氏本人としても、走り書きした時刻のみでは記載した日の特定には至らなかったそうである。

次に、K氏からは、会社には出退勤簿があるはずなので、どうにか手に入れて欲しいと要請された。しかし、料理人に過ぎないK氏は、辞めるまでの2年間の出退勤簿がどこに保管されているかは皆目検討もつかないとのこと。しかも、会社はホテルの他に事務所も持っているとのことであった。そのような状態では、費用と手間をかけても空振りに終わるリスクが高いため、そのことをじっくり説明し、今後の相手方とのやりとりを通じて労働時間を明らかにする方針についてご了承いただいた。

■出退勤簿もないと言い張る会社! 予約表を手がかりに労働時間を割り出す

そこで、K氏の労働時間の主張を前提に、残業代を推定した上で、会社に対し、残業代の支払いを請求する内容証明郵便を送った。残業代の推定に当たっては、K氏に日中の休憩時間に何回か事務所に来てもらい、各季節や曜日の繁忙をふまえ、出退勤時刻をなんとか聞き取った。

相手方代理人より、いったんは、交渉にて解決したい旨の意向が示された。しかし、結局、K氏は勤務態度が悪かったなどと事実無根の主張をされ、大幅な減額を要求されたため、交渉は決裂した。

会社の態度から、労働審判で成立する見込みは低いと確信したため、未払賃金を請求するため提訴した。

その後、求釈明によって、残りの出退勤簿を提出するよう求めたが、会社側は保管してないなどと言って、提出しようとしなかった。

K氏に他に出退勤時刻が明らかになるような資料が存在しないか尋ねたところ、予約表があると言われた。そこで、求釈明によって、予約表の提出を求めた。

裁判官からは、予約表なんかで労働時間の再現は不可能ではないかとたしなめられたが、出退勤簿が提出されない以上、予約表の開示を受けた上で再現するしかないと食い下がった。

その結果、被告から、やってみろと言わんばかりに、365日×2年間分=730日分の予約表が開示された。裁判官や被告の予想通り、ぱっと見、第三者である弁護士には、K氏が、いつ、どれくらい働いたか正直よくわからない代物であった。

そこで、K氏に対し、予約表のコピーを渡し、出退勤時刻の傾向を教えて欲しいとお願いしたが、「自分にもはっきりしたことは言えない」とのことだった。「予約表によって出退勤時刻を明らかにする」と啖呵を切った結果、大量の予約表に泣きそうになりながら、連日、ひたすら予約表とにらめっこを続けた。すると、「継続は力なり」とはよく言ったもので、そのうち、なんとなく法則性が見えてきた(なお、数年前の事件なので、いまやその法則性は再現できないが……)。そして、疑問に思うところは、K氏に事務所に来てもらい、矢継ぎ早に質問することによって、なんとか730日分の残業時間集計表を完成させた。

あらためて残業時間集計表を提出したところ、残業代が跳ね上がっていることに驚いたためか、被告から、突然、2年分の出退勤簿が開示された。「保管していない」などと言って一旦提出を拒否しながら、いまさら堂々と出退勤簿を提出してきた会社側の対応に驚かずにはいられなかった。

泣きそうになりながら出退勤簿をめくった日々を思い出すと、裁判期日当日も、裁判官が現れるまで、ふつふつと怒りがたぎっていたと思う。が、被告のあまりに不誠実な対応にラウンドテーブルに現れた裁判官が一番切れていた。そのため、少し溜飲を下げることができた。

■残業代をおさえるために、会社は出退勤簿は改ざん

その後、残業時間集計表自身は完全再現とはいわないまでも、出退勤簿に記載された出退勤時刻とすべてが食い違っているわけではないことが確認された。また、本人が退職前にコピーしていた出退勤簿のおかげで、かえって会社側が出退勤簿を改ざんしていることを明らかにすることができた。

会社側は、改ざんなど存在しないと主張し、低額の和解にしか応じないと強弁した。

これに対し、準備書面で、@使用者には労働者の実労働時間を把握する義務があること、A厚労省が労働時間の適正な把握・算定を呼びかける通達のなかで自己申告制は原則として認められないとされていること、Bにもかかわらず、被告は、労働時間を恣意的に操作するために手書きの出退勤簿を利用し、原告又はその他の従業員に虚偽の時刻を記載させ、労働時間把握義務に反する行為を続けていたこと、Cこのような労働時間適正把握・算定義務違反は、労働者の労働時間の立証妨害となること、Dそうである以上、会社側が、労働者が平均出勤時刻より遅く始業したことないし平均退勤時刻より早く終業したことを個別的に立証できない限り、各平均出退勤時刻を認定すべきであると主張した。

その後、訴訟外で裁判官から、「先生のがんばりはわかるけど、この前の主張は厳しいよ」「尋問で立証できると思っていらっしゃいますか」との電話をいただいた。「義務違反が立証責任の分担で救済されるのはおかしい」「会社があくまでK氏の勤務態度不良を根拠に低額の和解を主張するのであれば、今後の尋問によって、むしろ、ホテルの衛生状態が悪かったことについても関連事実として明らかにせざるを得ない」などと一生懸命食い下がった。すると、「自分は義務違反を根拠とする立証責任の転換をした上で判決は出しません」「とはいえ、被告の不誠実な訴訟態度を踏まえ、最大限の和解を提案し、自分の責任で説得するから、和解しませんか」と水を向けられた。悔しいが、依頼者の利益を最大化するのが弁護士である以上、主張にそった判決の見込みがないのであれば、速やかに撤退せざるを得ない。「くれぐれもお願いします」と言って、終話した。

その次の期日で、裁判官から、約束通り、被告の不誠実な訴訟態度を踏まえ、このまま判決になるのであれば、付加金をつけざるを得ないので、和解したらどうかとの提案がなされたようである。会社側の代理人も最大限の抵抗を試みたようだが、証拠の現物を保有し改ざんされていることを誰よりも理解していたからか、はたまた、ホテルの衛生状態が悪いことを公開法廷で暴かれることを恐れたためか、最後は支払い時期を少し先に延ばすことで了解した。

会社側がなりふり構わない訴訟活動を展開してくることは多々ある。しかし、訴訟で争っているうちに、「なりふりを構っていない」からこそ、会社側の訴訟活動を全体として見たときに矛盾が生じてくる。それを発見し、指摘し、ひっくり返したときは、労働弁護士としてのやりがいを感じる一場面である。本件はそういった事件の一つに当たるため、思い出深い事件であった。

ちなみに、問題のホテルは、数年後閉店したようである。当時から労働者の入れ替わりが激しいとのことだったので、労働市場の売り手市場化や最低賃金の上昇に耐えられなかったのかもしれない。労働弁護士としては、あの事件を機に「安かろう悪かろう」路線から、労働者と消費者の立場に立った経営方針に切り替えてくれれば、生き残れたのではないかと複雑な気持ちである。

【関連条文】
法定労働時間→労働基準法32条
残業代→労働基準法37条


(城戸美保子/ざっしょのくま法律事務所 事務所ホームページは、2018年9月以降http://zassyonokuma-lawoffice.comにて公開予定です。)

**********

ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp

長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。


















 

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コメント
1. 2018年8月23日 21:02:59 : wTqrxDwRMY : vEeN2335v8Q[888] 報告

 今の時代 こんな会社は 絶対にやられる 後で 痛い目をみるはずだ〜〜
  

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