パウエル議長、FRBの段階的利上げを擁護 ジャクソンホール会議パウエルFRB議長は24日、カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演した By Nick Timiraos 2018 年 8 月 25 日 01:34 JST 更新 【ワイオミング州ジャクソンホール】米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は24日、段階的な利上げの正当性を主張し、FRBの動きが遅過ぎたり早過ぎたりすることが景気拡大を阻んでいるとの批判をはねつけた。 カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で語った。FRBはほぼ10年にわたり景気刺激を目指して低金利を維持してきたが、この日のパウエル議長の発言で、FRBが少なくとも景気を刺激も抑制もしない水準への利上げを目指していることが確認される形となった。 パウエル議長は、FRBは「早く動き過ぎて不必要に(景気)拡大の腰を折るか、動きが遅過ぎて景気過熱の危険を冒す」という2つの主要リスクに直面していると指摘。「現行の段階的な利上げ路線は、いずれのリスクも真剣に受け止めた上でのアプローチだと思う」と語った。 さらに、インフレ率が急上昇してFRBが目標とする2%を上回ったり、過熱のリスクが高まったりする「明白な兆し」はみられないと述べた。 ドナルド・トランプ大統領が先月、先週と続けてFRBの金利政策を批判してから、パウエル氏が公の場に姿を現したのは今回が初めて。この日の講演で大統領の批判に特に応じることはなかったが、FRBの現在の政策を擁護した。 FRBが雇用促進と物価安定という2つの使命の達成に近づいているにも関わらず、過去に比べて緩やかな利上げを採用している理由を、パウエル氏はこれまでで最も明確に説明した。 FRBは物価が持続的に上昇した1970年代と、90年代半ばの景気拡大期を参考にしているとし、既存のモデルでは失業率が低下すると物価の押し上げ圧力は強まるが、90年代には当時のアラン・グリーンスパンFRB議長が物価圧力をあおらずに経済成長が加速する可能性があると他に先駆けて認識したため、インフレは落ち着きを保ったと話した。 FRB当局者は自然失業率や、景気を刺激も冷やしもしない中立金利といった仮説を重視しがちだ。だがパウエル氏はこの日「星の位置は認められるところからほど遠いこともある」と語り、そのような姿勢に疑問を呈した。 さらに、FRBは70年代に「星についての不正確な見積もりを重視し過ぎて」失策を犯したが、90年代にはその二の舞を避けられたと語った。 その上で、グリーンスパン議長は「様子見」のアプローチをとったとし、「次の会合まで待とうではないか。物価上昇の兆しがさらに明確になれば引き締めを始めよう」というアプローチだと説明した。 FRBは今日、同様の手法をとるべきだと主張した。つまり利上げの打ち切りや加速、政策転換が必要な状況だと新たな経済指標が示唆するまでは段階的な利上げを維持するということだ。 パウエル氏は「行動がもたらす結果が不明な場合は慎重に動く必要がある」とし、「言い換えれば、薬の効能が不確かな場合はいくぶん少量から始めるべきだ」と語った。 このルールについては2つの例外にも言及した。第一に、インフレ期待の高まりが見込まれる場合には、緩やかな動きは物価の急上昇に輪をかける可能性があるとした。また、ゼロ金利を背景に経済が一層の支援を必要としていることが明白な場合は、段階的な手法に警戒感を示した。 低失業率に対する物価の反応の鈍さが金融政策当局者の大きな不確実要因になっている。この点についてパウエル氏は、インフレは「もはや労働市場の引き締まりと資源利用への圧力の高まりを指し示す、第一の目安でも最良の目安でもなくなったのかもしれない」と語った。 さらに2001年と07年の直近2回景気拡大の終了時には、金融市場に「かく乱をもたらす余剰」が観察されたと指摘。「そのためリスク管理は、インフレにとどまらず余剰の兆しにも目をやることを指し示す」とした。 前回の連邦公開市場委員会(FOMC)では貿易摩擦や新興国情勢への懸念の声も出たが、パウエル氏は「いつも通り、やがては違う政策対応を迫られる可能性のあるリスク要因が国内外に常に存在する」とし、詳細には踏み込まなかった。 http://www.asahi.com/business/reuters/CRBKCN1L91RG.html 米FRB議長、段階的な利上げ擁護 大統領批判に言及せず 2018年8月25日04時33分 [ジャクソンホール(米ワイオミング州) 24日 ロイター] - パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は24日、経済回復の保護に加え、底堅い雇用の伸びの維持やインフレの抑制に向け、着実な利上げが最善の方策との認識を示した。
議長はワイオミング州ジャクソンホールで開かれている経済シンポジウムで講演し、段階的な利上げが依然適切となる理由について説明。「経済は力強く、インフレは2%の目標近辺にあるほか、大半の求職者は職を見つけている。所得や雇用の力強い伸びが継続すれば、一段の段階的な利上げがおそらく適切になる」と語った。 トランプ米大統領は今週、ロイターとのインタビューで、FRBの利上げ継続を「気に入らない」と批判したが、これについて議長の言及はなかった。 講演を受け、S&P総合500種とナスダック総合が過去最高値を付け、ドルは通貨バスケットに対して軟調に推移した。短期金利先物相場では、9月と12月の利上げ予想が引き続き優勢だ。 また、フェデラルファンドとユーロドル先物が織り込む来年の利上げ回数予想は1回にとどまり、来年央までの金利レンジは2.5─2.75%の水準となっている。 今年のシンポジウムのテーマは「市場構造の変化」だが、パウエル氏は「完全雇用」や「中立金利」といった水準に関する考え方の変化が段階的な利上げの理由になっていると指摘。FRBが過去に完全雇用を誤って判断したことが1970年代のインフレ高騰を招いたとし、現在のFRBの見通しが正確であると捉えるべきではないと述べた。 議長は、FRBがこれまで景気過熱と早まった引き締めとの間で政策運営のかじ取りを行い、頼りとなる手掛かりさえ、移り変わるようなあいまいなものでしかないと認めた上で、慎重な対応こそが鍵になると強調した。 失業率がこれだけ低い中「なぜ連邦公開市場委員会(FOMC)は景気過熱やインフレの抑制に向けもっと急激に金融政策を引き締めないのか。インフレの問題を示す明確な兆候がない中、なぜFOMCは雇用の伸びや景気拡大の継続を阻害するリスクを冒してまで引き締めを行っているのか。現在の道筋である段階的な利上げは当該リスクを真剣に踏まえたFOMCの対応であると考える」と語った。 ただFRB当局者の全員が、議長と同じ見方を共有しているわけでない。 セントルイス地区連銀のブラード総裁は議長講演に先立ち、インフレ率が急上昇する兆しはなく、2019年は財政刺激措置の効果が薄れて成長が減速すると予想されることから、FRBは利上げを打ち切るべきとの見解を示した。
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