トランプ政権の功績を台無しにする張本人とはBy Gerald F. Seib 2018 年 8 月 21 日 14:48 JST 更新 筆者のジェラルド・F・サイブはWSJチーフコメンテーター *** パラレルワールド(現実世界とは異次元の世界)にしばし思いをはせてみよう。そこはドナルド・トランプ米大統領が元補佐官オマロサ・マニゴールト・ニューマン氏のことを「犬」呼ばわりせず、ジョン・ブレナン元中央情報局(CIA)長官の機密情報へのアクセス権を剥奪せず、米連邦捜査局(FBI)当局者らを攻撃する10件のツイートを行わず、ロバート・モラー特別検察官の捜査に関する新たな11件の批判的見解を示さなかった世界だ。 このパラレルワールドでは以下のどの話題が大きな注目を集めただろうか。 ・商務省が発表した7月の小売売上高で食料品店や外食、百貨店の数字が好調だった。 ・株価の1日の上げ幅が過去4カ月で最大となった。 ・急性アレルギー反応の応急処置薬「エピペン」の後発薬を食品医薬品局(FDA)が承認した。 ・トランプ政権の強硬姿勢に動揺を強めているように見える中国当局者らとの貿易交渉が再開した。 恐らく、これら全てがもっと注目されていたはずだ。このことはまさに、トランプ政権の最も不可解な側面を物語っている。それは、論争と闘争を好むトランプ大統領の性格が、自身の一番の功績を損なっているという状況だ。 従来の大統領であれば、ホワイトハウスはたいてい、そして大統領は特に、批判者を無視し、抗争をできるだけ避けていただろう。代わりに話題にできる良いニュースがある場合はなおさらだ。ホワイトハウスはやはり、国民的議論の口火を切ることができる究極の「公職の権威」なのだ。 そして実際、トランプ・ワールドには話題に出来る良いニュースがある。経済情勢は歴代大統領がうらやむほどのものだ。経済は着実に成長し、雇用は拡大している。小売売上高は増加し、株価は上昇している。労働生産性の伸び率は近年奇妙なことに停滞していたが、先週発表された統計では上昇した。ほとんど注目されなかったが、新たな進展だ。 もちろん、この経済拡大は大規模減税を受けた一時的な「興奮状態」に過ぎないかもしれない。減税に伴って膨らむ財政赤字は持続不可能な水準に達する可能性がある。中国は米国との深刻な貿易戦争をめぐる不安を鎮めようとしているようだが、それもいつ暗転するかは分からない。 だが今のところ、それらは現実となっていない。問題は、大統領が往々にしてネガティブな面に関心をそらしてしまうことだ。トランプ氏は、経済界にいた時の長年のやり方から離れることができないでいるようだ。つまり、自分に挑む者は誰であれ反撃するという手法だ。 そうした手法は不動産業界でのバトルや、場合によっては選挙活動でも通じるかもしれない。しかし、大統領職にあっては、絶えずカウンターパンチを打つ行為は、実際にはパンチを打ってくる相手に主導権を引き渡す。大統領が持つ力の一つは、批評家を無視し、彼らを酸欠状態にし、関心をどこか他の違うところに向かわせることだ。 かつてロナルド・レーガン氏やビル・クリントン氏が特別検察官などの捜査に直面した際、両者は捜査状況やそれらに関するニュースを大統領執務室内に入ってこないよう遮断するシステムを設けた。とりわけレーガン氏は側近からの勧告に従い、イラン・コントラ事件に関しては捜査が終わるまで質問にさえ答えなかった。対照的にトランプ氏は、モラー特別検察官による捜査の話題をほぼ毎日のようにホワイトハウスに持ち込んでいる。 トランプ大統領と側近たちは、メディア(あるいは別名「フェイクニュース」ないし「民衆の敵」などとも呼ばれる)が悪いニュースや物議を醸す話題だけに集中していると非難している。ただ、歴代大統領も例外なく同じ不満を繰り返してきた。トランプ氏はこれを踏襲する45人目の大統領となるだろう。つまりこれは大統領の職務領域から外れるものではない。 実際はほとんどの場合、自身を怒らせるようなストーリーをメディアに書かせているのはトランプ氏本人に他ならない。メディアを無視するのを拒むことによって、そうさせているのだ。モラー氏に対する連日の攻撃は、実際には捜査にスポットライトを当て続ける行為だ。大統領が公の場で特別検察官やFBI捜査官、元CIA長官を名指しで攻撃すれば、それは無視できたり無視すべきニュースではなくなるのだ。 トランプ大統領が公に発するメッセージの状況は同氏のツイートから概ね計測できる。過去1週間の本数は以下の通りだ。モラー氏の捜査、ブレナン元CIA長官、マニゴールト・ニューマン氏に関する投稿は計43本。経済に関するツイートは計7本のみだ。 こうしたツイートによる代償の一つは、他の分野でのポジティブな動きから関心が離れてしまうことだ。その主たる例は、FDAのスコット・ゴットリーブ長官が現在進めている取り組みだ。同長官の目下最優先の課題の一つは、医薬品価格の引き下げに関する話し合い以上の方法を探り、実際に引き下げることだ。とりわけ、高価なブランド医薬品の後発薬の認可を迅速化することだ。 このような取り組みが先のエピペンに関する決定につながった。全米で命を救う医薬品のコストを引き下げる動きだ。それは米国市民にとって、マニゴールト・ニューマン氏に関する大統領のツイートよりもはるかに重要だ。 関連記事 暴露本の元大統領側近、反トランプ運動へ決意 合法移民も密かに制限、変容する米国 トランプ氏の支持と不支持、両極端に広がるばかり インタビュー:トランプ大統領、FRB利上げ「気に入らない」 ビジネス2018年8月21日 / 07:24 / 3時間前更新 1 分で読む [ワシントン 20日 ロイター] - トランプ米大統領は20日、ロイターのインタビューに応じ、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が利上げを継続する方針であることについて「気に入らない」と述べた。また、中国や欧州連合(EU)が通貨を操作していると非難した。 トランプ氏は、FRBがもっと緩和的であるべきだとし、「(パウエル議長による)利上げは気に入らない」と述べた。パウエル議長はイエレン前議長の後任としてトランプ氏が指名した。 FRBの独立性は経済安定に重要と考えられていることから、米大統領がFRBを批判することはまれだ。 インタビューを受けて米株は終盤に値を下げ、ドルも主要通貨に対し小幅下落した。 通貨については、他国が厳しい通商協議の際に中央銀行の対応によって恩恵を受けているのに対し、米国はFRBの支援を受けていないと主張。 「われわれは非常に強力に他国と交渉しており、勝利するつもりだ。しかし、この間にFRBから何らかの助けがあるべきだ。他国は支援を受けている」との見解を示した。 また「中国は間違いなく為替操作をしていると思う。ユーロも操作されていると考える」と述べた。 トランプ氏はこれまでたびたび、中国が人民元相場を操作していると批判している。ただ、米財務省は半期ごとに公表する為替報告書で、今のところ中国の為替操作国認定を見送っている。 FRBの独立性を支持するかとの質問に対しては「FRBが国のために良いことを行っていると信じている」と語った。 自身がFRB議長に指名したパウエル氏については「自分の選択に満足しているかどうか、それは今後7年で明らかになる」とコメントした。 ジャニー・モンゴメリー・スコットの首席フィクストインカムストラテジスト、ガイ・ルバス氏は、現職の大統領がFRBについて、これまで講じた措置だけでなく、今後取り得る行動について公の場でコメントするのはあまり通常では考えられないことだ、と指摘。パウエルFRB議長やその他のFRB当局者らが大統領の発言によって大きく姿勢を変えることはないと思うが、FRB理事会の空席を狙うことに関心がある候補者には強いメッセージを送っている。つまり、緩和的金融政策を好むか、そうでなければ別の仕事を探せということだ、と説明した。 関連記事 EXCLUSIVE-トランプ米大統領、今週の米中通商協議に「多くは期待せず」 インタビュー:米大統領、モラー氏聴取による「偽証罪のわな」懸念 インタビュー:米朝首脳の再会談の可能性は「最も高い」=米大統領
オプションで米国株の大変動に備えるトレーダー−今回は上下両にらみ Luke Kawa 2018年8月21日 11:49 JST • 米株が2カ月で5%高または9%安なら利益生むオプションに需要 • 「方向についてはさっぱり分からない」とクレディSのシュ氏 高値の更新か、それとも上昇基調の終わりか。米S&P500種株価指数が1月の過去最高値に接近する中、トレーダーらはどちらの方向にも動く可能性に備えている。それも大きな変動にだ。 S&P500種が向こう2カ月に5%上昇、あるいは9%下落すれば利益を生む2カ月物オプションの需要が、S&P500種の現行価格にもっと近い権利行使価格のオプションと比べて高まっている。 クレディ・スイスのチーフ株式デリバティブストラテジスト、マンディー・シュ氏は20日の顧客向けリポートで、10デルタと25デルタのコール(買う権利)のインプライド・ボラティリティー(IV)の比率は、「S&P500種が1カ月で5.6%上昇した1月に見られた極端な水準」にほぼ戻っていると指摘した。 投資家は年初、S&P500種が連日のように高値を更新する局面で、急落に備えた保険を熱心に求めることはなかったが、そこに変化が表れている。 「今回は気の緩みが少ない」とみるシュ氏は、「S&P500種のボラティリティー・サーフェスに織り込まれた大きなコンベクシティは、数週間以内に同指数がブレークアウトする可能性を投資家が予想していることを示唆しているが、方向についてはさっぱり分からない」と指摘。向こう2カ月間に米国株のより小幅な上昇で利益が得られるコール・スプレッドの購入を投資家は検討すべきだと付け加えた。 原題:Traders Bet U.S. Stocks Are About to Make a Big Move, Somewhere(抜粋)
トップニュース2018年8月21日 / 15:00 / 5時間前更新 焦点:米国株の記録的な強気相場、警戒信号点滅でも市場は楽観か 2 分で読む
[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米株式市場は現在の強気相場が間もなく9年半を迎えるだけに、いつ幕切れを迎えるかが論争の的になっている。 ただ「10年ないしそれ以上続ける力があるだけに、ここで終わっても満足できない」というのが多くの投資家の偽らざる心境だ。 今回の強気相場は世界金融危機後の灰の中で生まれ、米連邦準備理事会(FRB)による3兆5000億ドルの資産買い入れが進む中で続いてきた。 しかし上値を追い続けるには、一連の懸念要素をうまくこなしていかなければならない。つまり米国と貿易相手国との摩擦や、トルコリラ急落による新興国の混乱、中国経済の先行き不透明感、米中間選挙などだ。 米経済に目を向ければ、少なくとも来年は力強い成長が期待されるものの、企業債務の増加や住宅市場の不安定化など幾分心配な材料も出てきている。 ブルダーマン・ブラザーズの首席市場ストラテジスト、オリバー・パーシェ氏は「米経済は堅調だが、あちこちで警戒信号の点滅が増えているのが現実だ」と述べた。 それでも米経済が好調なこともあり、投資家の多くは相場がすぐに急落に見舞われそうにないと楽観している。グリーンウッド・キャピタル・アソシエーツの最高投資責任者、ウォルター・トッド氏は「真の弱気相場は景気後退を伴う。いつ景気後退が起きるかと自問する必要はあるが、間近には見当たらない」と話した。 1999─2000年のインターネットバブル崩壊、07─09年の世界金融危機の記憶は消えておらず、投資家は強気相場が終わるタイミングやその後の相場下落の程度について警戒感を抱いているのは確かだ。 トランプ政権の法人税減税によって過去1年の株式投資のリターンが押し上げられた半面、それが最終的により波乱の大きい相場展開につながる恐れがあるとの声が聞かれる。 アリアンツ・グローバル・インベスターズの米投資ストラテジストのモナ・マハジャン氏は「強気相場の終盤に財政刺激策が実施されたことで、バブルの発生および崩壊シナリオの素地が出来た」と今後を危ぶむ。 調査会社CFRAの首席投資ストラテジスト、サム・ストバル氏は、大規模減税を導入済みの米政府は逆風時に打てる手が少なくなっていると不安を表明した。 世界金融危機後に資産買い入れや低金利政策で景気回復を支えてきたFRBが金融緩和策の巻き戻しを進めていることも、株式市場に不確実性をもたらしている。 CFRAによると、1946年以降の弱気相場12回の下落率の平均は32.7%。しかしこのうちネットバブル崩壊後と金融危機時の過去2回は下落率が49.1%、56.8%とより大きかった。 もっともビスポーク・インベストメント・グループの共同創業者ポール・ヒッキー氏は「直近2回の弱気相場は、今までで最も深刻だった。弱気相場が全てこれほど極端化することはあり得ない」と述べた。 強気相場の定義はさまざまだが、今回はS&P総合500種指数が676.53を付けた2009年3月9日に強気相場入りしたとの見方が一般的。以来4倍強も上がって17日終値で2850.13となった。 これまでには幾多の曲折も経験した。サントラスト・アドバイザリー・サービシズの首席市場ストラテジストのキース・ラーナー氏によると、今回の強気相場は少なくとも5%の下げに見舞われた局面が16回あり、下落率が少なくとも10%だったのは4回。今年2月にも1月の高値から10%下落したが、ラーナー氏は買われ過ぎの状態を解消する健全な調整だったとの見方を示した。 一般的には&P500種が20%下げると弱気相場入りと定義されており、こうした相場の急落は景気後退が付随するケースが圧倒的に多い。ゴールドマン・サックスの分析では、1976年以降に10%以上株価が下落した12回の局面でいずれも景気後退が起こらず、このうち下落率が20%を超えて弱気相場入りしたのは1987年の1回しかない。 景気後退入りの有無は、事後的にしか判断できないが、ロイター調査で示された米経済の成長率は今年が2.9%、来年が2.5%と予想されている。トムソン・ロイター・エスティメーツによると、S&P500種構成企業の増益率見通しは今年が23.3%、来年が10.1%。 ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ社長は「株式市場は将来の景気を織り込もうとする。だから株式市場からは景気後退が迫ってはいないと読み取れる」と話す。 (Lewis Krauskopf記者) トップニュース2018年8月21日 / 18:50 / 1時間前更新 焦点:官房長官発言で携帯電話会社に再び激震、狭まる値下げ包囲網 2 分で読む
[東京 21日 ロイター] - 21日の東京株式市場で、国内携帯電話大手3社の株が売られた。菅義偉官房長官が「携帯電話料金は4割程度下げる余地がある」と発言したことが伝わり、収益悪化懸念が出たためだ。携帯電話会社を巡っては、総務省や公正取引委員会も現行の商慣行や料金制度を問題視しており、値下げ包囲網は狭まりつつある。 21日の東京市場でNTTドコモ(9437.T)は4.0%安、KDDI(au)(9433.T)が5.22%安、ソフトバンクグループ(9984.T)が1.63%安で大引けを迎えた。 きっかけは菅官房長官の発言だ。共同通信によると、菅義偉官房長官は同日行った札幌市での講演で、大手携帯電話会社は巨額の利益を上げているとしたうえで「競争が働いていないと言わざるを得ない」と指摘。「携帯電話料金は、今より4割程度下げる余地がある」と述べ、通信料金の改革に意欲を示した。 実際、2018年3月期の営業利益をみると、ソフトバンクグループが前年比27.1%増の1兆3038億円、ドコモが同3.0%増の9732億円、KDDIが同5.5%増の9627億円と、3社とも国内トップ10に入る利益を稼いでいる。ドコモの親会社NTT(9432.T)も含めれば、トップ10のうち4社が通信会社という状況にある。 首相官邸が携帯電話料金に注文を付けたのは、今回で2回目。最初は2015年9月で、安倍晋三首相が経済財政諮問会議で通信料の引き下げに向けた方策を検討するよう指示したことで、3社の株は大きく売られた。 総務省はこの指示を受け、携帯電話市場改革を加速。通信料高止まりの一因とされている通信と端末のセット販売を分離する政策を推し進めたほか、楽天(4755.T)の携帯電話参入を認めるなど、通信料の値下げにつながる競争環境を整備してきた。 これには公正取引委員会も援護射撃し、通信と端末のセット販売はその程度により独占禁止法上問題となる恐れがあると警告している。 総務省の家計調査によると、2010年に3.66%だった世帯消費に占める電話通信料の割合は、2016年に4%を突破し、2017年には4.18%とじわりと増加している。固定電話は減少しており、代わりに増えているのが携帯電話だ。2017年の携帯電話の通話料は年間10万0250円と、初めて10万円を突破した。 ある総務省幹部は「通信料金が、他の消費を圧迫している」と述べ、現在の通信料の水準に不満を漏らした。 これに対して、ドコモは「これまでもさまざまな顧客還元を行ってきたが、今後もサービスの向上を目指して、顧客の要望を踏まえた料金サービスの見直しや拡充を順次検討、発表していきたい」(広報担当者)としたほか、KDDIも「引き続き、顧客ニーズに応えられるようサービスの向上に努めていく」(同)とコメント。ソフトバンクも「引き続き顧客にとってより良いサービスを検討していく」(同)との見解を示した。 今回は、ソフトバンクグループの下落率がもっとも小さかった。同社は通信会社というよりも、投資会社の色彩を強めていることが背景にあるが、通信子会社は年内に株式公開(IPO)を準備中だ。料金の値下げに追い込まれれば、IPOに影響が出る可能性も否定できない。 NTT Docomo Inc 2820.0 9437.TTOKYO STOCK EXCHANGE -117.50(-4.00%) 9437.T 9437.T9433.T9984.T9432.T4755.T 志田義寧 編集:田巻一彦
トップニュース2018年8月21日 / 15:00 / 5時間前更新 焦点:米国株の記録的な強気相場、警戒信号点滅でも市場は楽観か 2 分で読む
[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米株式市場は現在の強気相場が間もなく9年半を迎えるだけに、いつ幕切れを迎えるかが論争の的になっている。 ただ「10年ないしそれ以上続ける力があるだけに、ここで終わっても満足できない」というのが多くの投資家の偽らざる心境だ。 今回の強気相場は世界金融危機後の灰の中で生まれ、米連邦準備理事会(FRB)による3兆5000億ドルの資産買い入れが進む中で続いてきた。 しかし上値を追い続けるには、一連の懸念要素をうまくこなしていかなければならない。つまり米国と貿易相手国との摩擦や、トルコリラ急落による新興国の混乱、中国経済の先行き不透明感、米中間選挙などだ。 米経済に目を向ければ、少なくとも来年は力強い成長が期待されるものの、企業債務の増加や住宅市場の不安定化など幾分心配な材料も出てきている。 ブルダーマン・ブラザーズの首席市場ストラテジスト、オリバー・パーシェ氏は「米経済は堅調だが、あちこちで警戒信号の点滅が増えているのが現実だ」と述べた。 それでも米経済が好調なこともあり、投資家の多くは相場がすぐに急落に見舞われそうにないと楽観している。グリーンウッド・キャピタル・アソシエーツの最高投資責任者、ウォルター・トッド氏は「真の弱気相場は景気後退を伴う。いつ景気後退が起きるかと自問する必要はあるが、間近には見当たらない」と話した。 1999─2000年のインターネットバブル崩壊、07─09年の世界金融危機の記憶は消えておらず、投資家は強気相場が終わるタイミングやその後の相場下落の程度について警戒感を抱いているのは確かだ。 トランプ政権の法人税減税によって過去1年の株式投資のリターンが押し上げられた半面、それが最終的により波乱の大きい相場展開につながる恐れがあるとの声が聞かれる。 アリアンツ・グローバル・インベスターズの米投資ストラテジストのモナ・マハジャン氏は「強気相場の終盤に財政刺激策が実施されたことで、バブルの発生および崩壊シナリオの素地が出来た」と今後を危ぶむ。 調査会社CFRAの首席投資ストラテジスト、サム・ストバル氏は、大規模減税を導入済みの米政府は逆風時に打てる手が少なくなっていると不安を表明した。 世界金融危機後に資産買い入れや低金利政策で景気回復を支えてきたFRBが金融緩和策の巻き戻しを進めていることも、株式市場に不確実性をもたらしている。 CFRAによると、1946年以降の弱気相場12回の下落率の平均は32.7%。しかしこのうちネットバブル崩壊後と金融危機時の過去2回は下落率が49.1%、56.8%とより大きかった。 もっともビスポーク・インベストメント・グループの共同創業者ポール・ヒッキー氏は「直近2回の弱気相場は、今までで最も深刻だった。弱気相場が全てこれほど極端化することはあり得ない」と述べた。 強気相場の定義はさまざまだが、今回はS&P総合500種指数が676.53を付けた2009年3月9日に強気相場入りしたとの見方が一般的。以来4倍強も上がって17日終値で2850.13となった。 これまでには幾多の曲折も経験した。サントラスト・アドバイザリー・サービシズの首席市場ストラテジストのキース・ラーナー氏によると、今回の強気相場は少なくとも5%の下げに見舞われた局面が16回あり、下落率が少なくとも10%だったのは4回。今年2月にも1月の高値から10%下落したが、ラーナー氏は買われ過ぎの状態を解消する健全な調整だったとの見方を示した。 一般的には&P500種が20%下げると弱気相場入りと定義されており、こうした相場の急落は景気後退が付随するケースが圧倒的に多い。ゴールドマン・サックスの分析では、1976年以降に10%以上株価が下落した12回の局面でいずれも景気後退が起こらず、このうち下落率が20%を超えて弱気相場入りしたのは1987年の1回しかない。 景気後退入りの有無は、事後的にしか判断できないが、ロイター調査で示された米経済の成長率は今年が2.9%、来年が2.5%と予想されている。トムソン・ロイター・エスティメーツによると、S&P500種構成企業の増益率見通しは今年が23.3%、来年が10.1%。 ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ社長は「株式市場は将来の景気を織り込もうとする。だから株式市場からは景気後退が迫ってはいないと読み取れる」と話す。 (Lewis Krauskopf記者)
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