豪中銀、米国の「問題ある」財政刺激策に不安 豪中銀のフィリップ・ロウ総裁 By James Glynn 2018 年 8 月 17 日 13:55 JST 【シドニー】オーストラリア準備銀行(中央銀行)のフィリップ・ロウ総裁は17日、米国のインフレ率が「問題のある」財政拡大を背景に急上昇する可能性に不安を募らせていることを明らかにした。 ロウ氏は議会証言で「私は不安を感じている。経済の生産能力がすでにかなりの高水準にある中、あのような財政政策を打ち出すのは極めて異例だ」と述べた。 また「米連邦準備制度理事会(FRB)が予定より早く金融緩和を終了せざるを得なくなり、金融市場に破壊的な影響を及ぼす可能性は排除できない」と警告。市場はFRBの意向を再評価する準備ができていないが、「それが起きる確率は高まっている」とした。 さらに、「米国は経済が好調で失業率が極めて低いため、今は再び財政収支の均衡を目指すべき時だ」とする一方で、米国は正反対のことをしていると指摘した。
トランプ氏の貿易政策、NY連銀の警鐘はやまず ニューヨーク連銀はトランプ政権の貿易政策を批判している By Michael S. Derby 2018 年 8 月 17 日 23:32 JST 米ニューヨーク連銀は、トランプ政権の貿易政策への厳しい批判を続けている。 貿易政策は連邦準備制度理事会(FRB)の管轄ではないため、もちろんドナルド・トランプ大統領を名指しすることはない。だが貿易政策が国内経済の動向に影響するのは間違いなく、ニューヨーク連銀から意見が出てくるのは自然なことだ。 最近のニューヨーク連銀の研究報告や、ウィリアム・ダドリー前総裁の発言は、中国をはじめとする主要貿易相手に追加関税を課すことで貿易赤字の縮小を目指すトランプ氏の戦略について、問題点を指摘してきた。 とりわけ、貿易の障壁を引き上げるのは逆効果で、それによって解決できる問題よりも多くの問題を引き起こすという多くのエコノミストの見解を強調してきた。 ニューヨーク連銀が4月に発表した研究は、鉄鋼に対する追加関税が「少なくとも短期から中期的には米国の雇用の純減を招く公算が大きい」と結論付けた。 8月13日に公表された研究報告ではさらに、米国の関税導入と他国の報復行動により「輸入と輸出がともに減少し、貿易収支は全くと言って良いほど改善しない」との見通しが示された。 ダドリー氏はニューヨーク連銀総裁を務めていた4月、「貿易戦争に勝つのは簡単だ」というトランプ氏の発言について「貿易戦争に勝者がいるとは思わない」と述べていた。 これまでのところ、米経済に貿易政策の明確な影響はまだ見て取れない。だが実際に打撃が明らかになった時、ニューヨーク連銀は世論に警告を与えてきたと言うことができよう。
トランプ大統領、ドルに関する語調に変化−かつてはドル安誘導も Rich Miller 2018年8月17日 2:06 JST 「大切なドルにマネーが流れ込んでいる」−トランプ氏 ドルは「強く、安定している」−クドローNEC委員長 ドルに関するトランプ米大統領の語り口は、少なくとも今のところは以前と異なるようだ。 トランプ大統領は16日、投資家はドルに資金を注ぎ込んでいるとツイッターに投稿。こうした展開は通貨の下落ではなく、上昇を後押しする傾向がある。同大統領はこれまで再三にわたり、ドルの下落につながるようなコメントを発してきた。 トランプ氏は「米経済はこれまで以上に順調だ」と投稿。「われわれの大切なドルには、過去にめったに見られないほどのマネーが流れ込んでいる。企業利益はこれまで以上に高く、インフレは低い。企業の楽観はこれまでになく高い」と続けた。 ホワイトハウスのクドロー国家経済会議(NEC)委員長はCNBCテレビジョンとのインタビューで、よりあからさまに発言。ドルは「強く、安定している」と述べ、「かなり長い間」レンジで取引されていると話した。 クドロー氏は「大統領がこの日指摘したように、ドルは王様、ドルは強い、安定しており、信認の証だ」と発言。「マネーが米国に流入している。それは素晴らしいことだ」と語った。 ドルは広範な通貨バスケットに対し、今年は約5%上昇している。 原題:Trump Changes Tune on Dollar After Talking Down the Currency (1)(抜粋)
米ミシガン大消費者マインド指数:ほぼ1年ぶりの水準に低下 Reade Pickert 2018年8月17日 23:14 JST 更新日時 2018年8月18日 0:22 JST 現況指数の低下幅6.6ポイントは2011年8月以降で最大 家庭用大型耐久財の購入意欲はほぼ4年ぶり低水準 8月の米ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は予想外に低下し、ほぼ一年ぶりの低水準。大型アイテムの購入意欲が薄れたほか、貿易摩擦をめぐる緊張が根強いことが背景にある。 ミシガン大学消費者マインド指数のハイライト(8月、速報値) 消費者マインド指数は95.3と、前月の97.9から低下。昨年9月以来の低水準。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は98.0。予想の最低水準よりも低い結果となった 現況指数は107.8に低下、前月は114.4。6.6ポイントの下げは2011年8月以来で最大 期待指数は87.3で変わらず 1年先のインフレ期待値は2.9%で変わらず 家庭用の大型耐久財に対する購買意欲はほぼ4年ぶりの水準に低下。自動車は2013年以来の低水準。住宅に対する見方はこの10年で最も消極的だった。 ミシガン大の消費者調査ディレクター、リチャード・カーティン氏は「家庭用耐久財の価格に対する消費者の声は、この10年近くに見られなかったほどネガティブだ」と発表文で指摘。「強い数字となった最近の国内総生産(GDP)は、経済成長と失業の見通しにわずかなプラスの影響しか与えていない」と続けた。 統計の詳細は表をご覧ください。 原題:Consumer Sentiment in U.S. Declines to Lowest in Almost a Year(抜粋)
トランプ氏の四半期決算廃止案、資本コスト上昇も SEC(写真)は1970年以降、企業に四半期ごとの決算報告を義務付けている By Justin Lahart 2018 年 8 月 18 日 07:39 JST ――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」 *** ドナルド・トランプ米大統領は企業の決算報告の頻度を減らす案をツイートした際、企業トップらから妙案だと言われていると明かした。そうしたトップが率いる企業の株式を保有する投資家は、恐らく意見を異にするだろう。 米証券取引委員会(SEC)は1970年以来、企業に四半期ごとの決算報告を義務付けている。年月を重ねるうちに、四半期決算を巡る市場の反応はあたかも目まぐるしい曲芸の様相を呈するようになってきた。多くの投資家は数字そのものに注目する代わりに、業績が市場予想を上回ったかどうかを推測しようとし、恒例の電話会議で企業幹部の発言を逐一分析している。 四半期報告を巡っては、短期業績に対する近視眼的な見方につながり、長期の成功を損なうという批判がある。実際、「アカウンティング・レビュー」誌に先ごろ掲載された論文によると、決算の報告頻度が高い企業ほど、事業への投資が少なかったという。 経営陣はなるべく多くを語らずに済ませたいかもしれないが、投資家は株式を保有する企業についてできるだけ多くを知りたいと思うものだ。財務報告の期間が空けば空くほど、投資家は株式について一層リスクが高いとみなすようになる。3カ月で起こることより、6カ月の間に起こることの方がずっと多いからだ。どちらの場合でも株価は結果的に同じところに落ち着くだろうが、そこへ至るまでの時間が長引き、短期的な値動きは大きくなる。そうなれば、他の全条件が平等だと仮定すると、株価水準は若干低めになり、企業の資本コストがやや上昇することになる。 学術雑誌「会計・経済ジャーナル」に2011年に掲載された論文は、決算報告が年1回のみだった1950年代初頭から四半期ごとの報告が義務付けられた70年代までを対象に研究し、報告頻度が高いほど資本コストが低いことを明らかにした。 半期に一度の報告となれば、投資家の間で競争条件が不平等になる恐れもある。企業の内部関係者や、クレジットカード情報などの特殊情報にアクセスできた投資家は、そうでない投資家に比べ、事業を詳しく知る手掛かりにより長く触れていたことになる。 会計分析会社シリト・フォレンジックスの創業者、ハワード・シリト氏によると、報告頻度が減った場合のもう一つの問題は、投資家や規制当局にとって不正会計を見抜くのが一層難しくなることだ。 シリト氏は決算報告の頻度を減らす案を企業幹部が支持するのには驚いていない。「もちろん、企業はやりたいようにやって、縛りが少ない方を望む」と指摘。「重視されるべきなのは投資家にとっての利点だ」と語った。 関連記事 トランプ氏、四半期決算の廃止を提言 SECに検討指示
四半期決算の終わり? 率直に歓迎できない理由 上場企業の決算発表を年2回にすべきとの提案は名案なのか By Jason Zweig 2018 年 8 月 19 日 14:24 JST 更新
――筆者のジェイソン・ツヴァイクはWSJパーソナル・ファイナンス担当コラムニスト *** トランプ大統領は17日、上場企業の決算発表に関して年4回ではなく、2回だけにすべきだと提案した。 そうすることで企業は官僚的形式主義に従うためのコストを削減でき、企業トップは長期目標に専念しやすくなるとトランプ氏は示唆した。トランプ氏は決算発表の回数の削減について実現可能性の検討を証券取引委員会(SEC)に要請した。 著名投資家ウォーレン・バフェット氏と米金融大手JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿で、経営陣による四半期利益の見通し発表を廃止するか、回数を減らすべきだと提言したが、トランプ氏の提言はこれと同じ考え方だ。 果たしてそれは名案なのだろうか。回数が減ることでどのような違いが出てくるのか。 同僚のジェームズ・マッキントッシュ記者が指摘してきたように、企業が短期的な決算のプレッシャーから長期的な目標での妥協を強いられるという考え方を裏付けるマクロ経済的証拠はあまりない。例えば企業は研究開発にかつてないほどの大金を費やしている。 ところが、企業の内部関係者の見方は違っている。デューク大学のキャンベル・ハーベイ教授(金融論)とその同僚らが上場企業の最高財務責任者(CFO)を対象に実施した2003年の調査では、78%が四半期目標を達成するためなら長期的な価値を犠牲にすると回答した。CFOの多くは短期的な利益見通し達成のため、投資の削減、将来的に利益をもたらすプロジェクト開始の延期、売り上げ前倒し計上などもすると認めた。 「本当に驚いたのは、78%が利益目標達成のために(長期的な)価値を犠牲にすると認めたことだ」とハーベイ教授は話す。「実際の割合はさらに高い可能性もある。企業トップには足元の四半期だけではなく、長期的な目線でわが国の繁栄に寄与する決断をしてもらいたい」 ハーベイ教授が巨大な年金基金の運用者を対象に実施した2014年の調査では、回答者の大半が年4回よりも年2回または1回の決算を選好しているということが分かった。その理由の1つが、企業トップが粉飾決算の誘惑に駆られる回数が減りそうだという点だ。 とはいえ、決算を年4回から2回に減らしたからと言って企業トップによるあらゆるごまかしがなくなるとは限らない。ハーバード大学ロースクールのマーク・ロー教授は「企業の決算発表が半年に一度だけになれば、悪影響は少なくなるどころか、拡大する可能性がある」と指摘する。四半期ごとの情報更新がないと「株価はファンダメンタルズからさらにかけ離れたものになるかもしれず、そうなれば経営陣が粉飾決算の誘惑に駆られる可能性はさらに高まる」というのだ。 もちろん、企業情報への確実なアクセスというコンセプトは、頻度にかかわらず比較的新しいものだ。1930年代の前半まで、投資家が決算報告書を見るためには企業の本社まで行かなければならない場合が多かった。本社まで行ったとしても、株主でなければ、閲覧を拒否されるかもしれなかった。財務調査会社インフォメーション・フォー・ビジネスが1974年に400以上の米大手上場企業を対象に実施した調査では、20%の企業が投資家に年次決算書のコピーを無料で提供していなかった。 ハーベイ教授とオハイオ州立大学で金融論を教えるイツァーク・ベンデービッド教授にはさらに思い切ったアイデアがある。企業は資産、負債、売上高、経費といった基本的財務情報を毎日、あるいはリアルタイムで更新すべきというものだ。すでに年次、四半期決算報告書に掲載されている項目以外については開示する必要がないので、競合他社にリアルタイムの情報を利用されるということはない。その一方で、そうした継続的な情報更新によって「偽情報が流されたり、価値が歪められたりする可能性が減少する」とハーベイ教授は主張する。 現時点では多くの企業にそれを導入する技術がないが、ビッグデータの時代に入ったので、将来的にそうなることはほぼ確実だろう。 SECがすぐに検討できる単純な措置が1つある。企業には四半期利益の見通し公表が義務付けられていないということをはっきりさせるのだ。それを公表しているのは上場企業の約27%に過ぎないが、企業経営の長期志向を推進するための企業や機関投資家から成る非政府組織(NGO)「FCLTグローバル」のサラ・コヘイン・ウィリアムソンCEOは「特に新規上場企業の間で利益見通しを公表しなければいけないという考え方が一般化しているようだ」と指摘する。 一つ言えそうなことは、たとえ決算の回数を減らしたとしても、短期的な失望に対する投資家の過剰反応は恐らく防げないということである。 関連記事 トランプ氏、四半期決算の廃止を提言 SECに検討指示 トランプ氏の四半期決算廃止案、資本コスト上昇も 【寄稿】短期志向は経済に有害=バフェット氏とダイモン氏 「短期予想の公表停止を」バフェット氏らが寄稿
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