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【改正相続法】現在住んでいる家に残された配偶者がそのまま住み続けられる権利 「配偶者居住権」のメリット、取得法とその課題
https://manetatsu.com/2018/08/140198/
2018/08/17 by 小木曽 浩司 マネーの達人
平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(いわゆる改正相続法)が成立し、同年7月13日に公布されました。
今回はそのなかでも大きな目玉となった「配偶者居住権」についてお話したいと思います。
※ 法務省のHPでは、配偶者の居住の権利については、公布の日から2年以内に施行される(別途政令で指定します)こととされています。
ですので、2020年7月13日までに施行されることになります。
※「配偶者短期居住権」というものもありますが、性質が異なるため今回は触れません。
「配偶者居住権」とは、どんな権利?
配偶者居住権とは、現在住んでいる家に生存配偶者(残された配偶者)が無償でそのまま住み続けられる権利のことです。
「え、これまでも別に住み続けられたでしょ?」と思われるかもしれませんが、それは遺産分割協議等によって現在住んでいる土地・家屋の所有権を生存配偶者が相続されていたからです。
そうでなければ、新所有者の厚意や承諾があって住み続けられたということなのです。(これまでの家族像ではそんな感覚はないと思いますが)
ですので、法的に所有権を相続されていなかったら、確実に住める保証はない訳です。
生存配偶者が所有権を相続することで起き得る弊害とは?
これまでの相続法では、確実に住めるようにするために所有権を相続すると大きな弊害が起こることがありました。
どういうことでしょうか?
具体例でご説明しますので、下図をご覧ください。(図は法務省HP内のpdfより引用)
≪画像元:法務省HP≫
生存配偶者が自宅に確実に住めるようにするために所有権を相続すると、u上図のようになり生存配偶者への預貯金の相続分がかなり減ってしまい、今後の生活費等の不安が付きまとうことになりました。
配偶者居住権を取得するには?
実際に配偶者居住権を取得するのに一般的には、
(1) 遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされた場合
(2) 配偶者居住権が遺贈の目的とされた場合
のどちらかに該当する場合となります。
その他、家庭裁判所の「遺産分割審判」にて決定されての取得もありますが、その場合は、生存配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出る必要があります。
また、申し出たとしても居住所有者の受ける不利益の程度と生存配偶者の生活の維持の必要性の比較衡量になりますので、「特に必要がある」と認められなければ取得できないことになります。
配偶者居住権は、原則として終身(つまり亡くなるまで)存続する権利となっていますが、協議や遺言でその期間を短くすることもできます。
(審判においても、家庭裁判所が期間を定めることがあります)
配偶者居住権を取得すると、その権利と義務は?
配偶者居住権を取得すれば権利者は、次のような権利と義務があります。
・ 存続期間中、居住建物を使用収益できます。
・ 居住建物の所有者に対し、「配偶者居住権」の登記設定を請求できます。
・ 登記があれば、第三者に配偶者居住権を対抗できます。
・ 居住建物にかかる通常の必要費を負担する義務を負います。
・「配偶者居住権」は譲渡することができません。
配偶者居住権で先程の弊害がどう変わるのか?
所有権ではなく、配偶者居住権を取得して確実に住める保証が得られ、そして配偶者居住権は所有権に比べ財産評価が低い為、その分多くの預貯金を相続できることになるのです。
具体的には、下図ようになります。
≪画像元:法務省HP≫
配偶者居住権が1,000万円と評価されることで、預貯金の相続分が1,000万円増加し、今後の生活費等の不安が緩和されることになります。
配偶者居住権の評価は今後の課題になりそうです
配偶者居住権の評価については一応、法務省が簡易的な評価方法を下記のように示しております。
配偶者居住権の価値 = 建物敷地の現在価値 − 負担付所有権の価値(注)
※ 相続人間で簡易的な評価方法を用いて遺産分割をおこなうことに合意がある場合を想定。
※ 負担付所有権の価値は、建物の耐用年数、築年数、法定利率等を考慮し配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物敷地の価値を算定した上、これを現在価値に引き直して求めることができる。
(負担消滅時までは所有者は利用できないので、その分の収益可能性を割り引く必要がある)
しかし正直、簡易的といっても一般の方には、具体的に計算できるものではないと思えます。
又、相続人間で評価について争いが生じるようであれば、建物の賃料相当額から計算する方法等になり、不動産鑑定士など専門家を入れてまずは賃料相当額を計算、そして評価することになってくると思われます。
評価方法につきましては、実務においてまだまだ課題が残されています。
家族像が多様化、複雑化してきている
最後に、ここまでお話しても、なぜ配偶者居住権というものが新設されたのかピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。
それは、これまでの家族像で考えておられるからでしょう。
しかし現実として、その家族像が多様化、複雑化してきており、これまでの相続法では対応が難しかったのです。
例えば上記の具体例で、被相続人再婚後の生存配偶者と前妻との子との遺産分割という事例はどうでしょうか。
それなら配偶者居住権が新設されたことも理解できるのではと思います。
今回の相続法改正により、遺言などの対策をせずに被相続人が亡くなった場合の配偶者居住権の保護の選択肢は広がりましたが、しかし本来は遺言などによって配偶者の居住権と生活費の確保をしておくべきです。
今回の相続法改正ではこの他、自筆証書遺言の作成・管理についても簡便化されましたので、その利用についても積極的におこなっていただきたいと思います。(執筆者:小木曽 浩司)
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リップ ラボ 代表
1969年生まれ。大学卒業後、新卒で大手住宅メーカーに入社。約10年間、戸建住宅や賃貸住宅の営業に従事。その後、生損保乗合代理店に転職し、生命保険を使った企業の決算対策や退職金準備などを提案・営業する。そして、平成18年(2006年)6月にリップ ラボ(独立系FP事務所 兼 生損保乗合代理店)を開業し、独立する。現在は、生命保険・損害保険・住宅(不動産)・住宅ローンをひとつの窓口で、トータルにご相談に乗らせていただいております。また、専門家のネットワークを構築し、税金や相続、登記などの相談の窓口にもなっております。
<保有資格>:CFP認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、住宅ローンアドバイザー、ライフ・コンサルタント、損害保険プランナー
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