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ジリ貧の日本企業で普通の社員が生き残る3つのシナリオ
https://diamond.jp/articles/-/177014
2018.8.13 秋山進:プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 ダイヤモンド・オンライン
ジリ貧企業の社員が生き残る方法とは? Photo:PIXTA
日本企業の不幸は
みんな同じストーリー?
トルストイは著書『アンナ・カレーニナ』で「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」(望月哲男訳、光文社古典新訳文庫、2013年)と書いた。僭越ながら、私は文豪トルストイの描写の射程は、日本企業の現状にまでは届いていないと思う(そんなことを言われてもトルストイの知ったことではないだろうが)。
今の日本の多くの会社の「不幸」は、それぞれの不幸の形があるというより、同一の原因と過去の失敗の影響を受けて、かなり似たような状況に陥っているように思われてならないからだ。すなわち、「不幸な会社はどれもみな同じように見える」。
ご存じの通り、現在の日本では人口減少から需要が減退し、この先、多くの企業で国内売上の低迷と過当競争が避けられない状況にある。
その昔、バブルの折には、それなりの大企業はこぞって多角経営をし、海外に進出した。しかし、バブルは弾け、多角化もグローバル化も失敗し、莫大な特損を出して沈んだ。その後は本業回帰を叫び、同時にコストダウンのため、正社員を減らして、外注化で収益力を高めた。そして、国内依存ではやはり将来がないと考え、海外市場に再チャレンジをした。
結果、競争力のあるいくつかの企業群は海外でのビジネスで成功してグローバル企業化への道を歩み始めたが、やはり多くは苦渋をなめた。そして再び、国内に注力してコストダウンをして収益力を高める。しかし、やはりこのままではいけないと今度はM&Aを中心に海外や新領域への進出を図るものの、やはりそう簡単にはことは運ばず(※)……という失敗と復興を繰り返してきたのである。
(※)海外企業の買収については、『海外企業買収 失敗の本質』に定量的なデータ分析があるので、参照されたい。
10年前にはリーマンショックの到来で、いよいよ終わりか……と思ったところに、金融緩和と円安誘導による景気回復で息を吹き返し、なんとか今はうまくいっているように見える。しかし実際には縮小均衡への道をレミングのようにまっしぐらに進んでいるのを、素知らぬ顔をして日々過ごしているというのが、大方の国内型大企業の現状だろう。
新規事業はタブーの歴史
社内にノウハウが蓄積されない
このような企業では、経営陣は思いついたように「新しいことがやりたい」と勝手なことを言う。『20XXビジョン』とやらを作って、新規事業比率を〇〇%まで高める、などと宣言する。しかしながら、事業に投資するといっても、幹部層の中には新規事業を成功させた者がほとんどいないから、どう進めていいかわからない。そこで研修に出てこい、と言って送り出す。そんなことから、事業開発の研修はどこも盛況だし、事業開発のためのコラボレーションを売りにした共同オフィスなどもたいへんな人気だ。
しかしながら、これまで新規事業は、やってもやっても、結局失敗して赤字になることを運命づけられた鬼子であったのだ。そのため過去の歴史から会社には数限りないタブーが蓄積されているのである。なにか新しいアイデアが出ても、「ああ、それは以前すでにやって失敗したからダメ」と言われてしまう。
例えば「ミャンマーに出たい」と提案すると「東南アジアは、政府関係者とのつきあいが難しく、以前ヒドい目にあったからやらない」と言われる。ヒドい目にあったのは10年前の某国であって、今日のミャンマーではなくても同じように扱われてNGを出されるのである。
ベンチャーと合弁を作りたいと言うと、「いやいや、ベンチャー企業のオーナーというのは自分勝手で、1つのことをやり遂げないからダメだ。前にもこんな会社とこんなことをして大失敗した」などと言われてGOサインが出ない。
新規事業をやらなければと思う企業は多いようだが、現実の仕事のプロセスでは、上記のようなタブーが蒸し返されて四方八方から潰されてしまう。以前とは一体いつのことか、ベンチャーの社長といってもいろいろいるだろう、などと首をかしげざるを得ないのだが、とにかくそう言われるのだ。
できることは本業の収益性を高めることだが、同業他社も同じように頑張り、大して差別化できないから、競い合って売り上げは伸びない。そうすればコストダウンしかない。ポストは増えず、給与もさして上がらない。そして、お茶を濁したような新規事業(や新商品)はやるが、大型の投資を要する新規事業には乗り出さないのが「不幸な会社の共通の姿」である。
もちろんそうでない会社もある。ジリ貧だったのに、一発逆転できた会社だ。ミクシィも気息奄々だったが、モンストで甦った。富士フイルムも写真フィルムから医療領域への注力や化粧品で起死回生を遂げた。大型スポンサーを獲得したJリーグもそうかもしれない。思えばIBMもアップルも、不振時代を乗り越えた経緯がある。ただ、これらはごくごく一部にすぎない。しかもどの企業もそれなりの蓄えがあり、能力のある経営者と社員が社内にいるときのチャレンジだったからこそ、乾坤一擲の勝負ができたとも言える。じりじりと体力と能力が奪われてしまって、さらには気力もうせたあとの一発逆転は難しいかもしれない。
ジリ貧企業に勤める個人が
生き延びる3つのシナリオ
では、一発逆転が見込めそうもない、ジリ貧企業に所属する普通の個人はどう生きればよいのだろうか。大まかには3つのシナリオがあるだろう。
1)大きな流れの前にあっては個人の能力など無力と考え、さっさと転職する。
2)救国の英雄になるべく努力し、自ら新規事業を起こして会社を復活させる。
3)持ち場で全力を尽くして、思いもよらない何か良い展開が起こるのを待つ。
順不同になるが、2)の「救国の英雄になるべく努力する」場合から考えよう。ジリ貧企業にいるのは、状況的にはピンチだが、逆にチャンスだとも考えられる。
AIやIoTやビッグデータ解析などテクノロジーの進展はビジネスの形態を変えた。ゲームのルール、いや、ゲーム自体が変わったともいえるし、ゲームの場そのものが変わったともいえる。あらゆるものが総替えなのである。ルールが変わったのだから、やれることはいくらでもあるはずなのだ。
しかし、こうした新しいテクノロジーの利用に際しては、会社の偉い人たちはかなり懐疑的だろうし、知見も(まったく)ない。話をしても理解すらしてくれない可能性が高いだろう。お金も人ももらえず、現場からの協力も得られない新規事業担当者ほどみじめなものはない。そして失敗したら左遷され閑職に追いやられるのだから、まずやめておいたほうが無難だ。
3)の「持ち場で全力を尽くして、思いもよらない何か良い展開が起こるのを待つ」というのは人任せで無責任のように見えるかもしれないが、意外にありうるのだ。技術力やブランドなど磨けば光るところがある企業だと、海外の大手企業やファンドにM&Aされ、そこで返り咲く、というウルトラCが十分に可能だ。
私の知人で、ニッチな分野で特色を持つ企業でマーケティングを担当する女性がいた。彼女は真面目で発想力もあり英語が堪能だった。しかしながら社内の「ドメ組」に牛耳られて、あまり活躍の場が与えられていなかった。ところが、その企業が海外のエスタブリッシュな有名企業にM&Aされることになった。これが幸運だった。彼女の英語力やアイデアが新たな上司の目に留まり、チャレンジングな仕事を任された。すると、見事に期待に応え、あれよあれよという間に、本社のメインブランドのマーケティング担当に登用されるまでになったのだ。天下りならぬ“天上がり”とでも言うべきか(そして、別の企業にヘッドハントされた)。
こうした例は珍しくはない。日産自動車はもっとも華々しい例かもしれない。ファンドが買い上げて復活したケースも多々ある。その会社に勤める人にポテンシャルがあったり、伸びしろがあったりすれば、こうした逆転劇は十分考えられるのだ。したがって、3の選択肢は十分にありうる。ただし、条件は、(1)技術力やブランドなど磨けば光るところがある企業で、(2)あなたにも何らかの能力がある、ことである。
そうでなければ、一般的には1)「大きな流れの前にあっては個人の能力など無力と考え、さっさと転職する」方法を考えるのがいいだろう。実際、大きな流れの前には、大天才でもない限り、個人は無力だ。
とはいえ、今いる会社がそれなりに有名な企業であれば、将来は明るくないとはいっても、今日はそこそこの給与と安定した生活が保証されている。しかも、年間120日以上も休める。それなりに評価され、社内で「市民権」を得ていれば、わざわざ飛び出して、その評価を失うことも不安だろう。別の企業に転職できたとしても、変化の激しい時代に、その企業が同じようにジリ貧にならないとも限らない。
さらには、バブル崩壊以降の20年、これまでの日本の大企業は、意外にしぶとく、なかなか潰れない。これまでは、どうにかなってきたのである。
現在、適当に会議に出たりしていれば、休みもあり、給料をもらえている人が、ベンチャー企業で、それこそ寝る暇もなく働くことなどできるだろうか。ジリ貧かもしれないが、このまま会社に残って頑張り続けた人の方が、満足度は高いのではないだろうか。
もちろんこれからあと何年、そのような状況が続くのかはわからないし、逃げ切れるのかどうかもわからない。
したがって、最後は、自分にとっての評価軸、期待値を計算して、どういう状態なら我慢できるのか、あるいは満足といえるのかを冷静に見極めるしかないだろう。
ただ私個人としては、次の景気後退時が国内型大企業にとっては大きなヤマ場になると考えている。そして、動ける人は「求人難の今」こそ早めに動くのが正解だと確信している。当たり前だが、景気後退期には、よほどの能力と実績がある人でないと、声はかからないのである。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)
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