#現状では、悲観的な見方と、楽観的な見方が、交錯しているということだ ビジネス2018年8月9日 / 19:24 / 1時間前更新 関税引き上げや保護主義で、世界経済のリスク高まる=ECB 1 分で読む
[フランクフルト 9日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は9日に公表した定例の経済報告で、保護主義のリスクや米関税引き上げの可能性が信頼感を損ねており、世界経済成長へのリスクは拡大していると指摘した。 ECBは「米国の関税引き上げを巡る行動や警告、また対象となる国が報復措置を講じる可能性を背景に、世界経済への下方リスクは高まっている」とした。 また、導入の可能性が発表されている措置がすべて実施されれば、米国の平均関税率は過去50年でみられなかった水準に上昇すると指摘した。 このほか、外的リスクは高まっているものの、域内の成長は堅調とみられ、短期的な指標は経済の広範囲で底堅い拡大を示しているとの見解を示した。 外為フォーラムコラム2018年8月9日 / 14:28 / 2時間前更新 コラム:人民元安の後に来る「リスクオン相場」の足音=高島修氏 高島修 シティグループ証券 チーフFXストラテジスト 5 分で読む
[東京 9日] - 米中による貿易戦争が熾烈化する中、人民元安が進行中で、中国株の値崩れも目立つ。特にハイテク株への依存度が高い深セン株式市場は2015年初来の安値圏にまで下落している。 この中国市場の混乱を横目に、市場で渦巻くリスク回避志向はなかなか払拭されずにいる。 だが、今回の人民元安とそれを促している中国政府・当局による大胆な金融緩和策が、中国最大の懸念材料だった資本流出問題を引き起こしていないことを思えば、数カ月後にわれわれが目にするものは、失速気味だった中国経済の回復と、資源国・新興国を中心とした世界的なリスク選好の回復ではなかろうか。 この7―9月期のドル円は7月につけた113円台の高値を上限に、引き続きレンジ色の濃い展開が続きそうだが、今年10―12月期から来年1―3月期にかけてはその水準を超えるドル高円安が進行する可能性が強まると見込んでいる。 <予想外の人民元安> 白状するならば、筆者にはこの間、人民元に絡んで、いくつかの誤算があった。1つは予想以上の人民元安が進行したことだ。通貨バスケット制を建て前とする人民元の対米ドル相場は従来、ユーロドルとほぼ並行的に変動してきた。 そのユーロドルは2月に1.25ドル台の高値をつけた後、5月には1.15ドル台まで値崩れした。その時点で人民元は対米ドルで6.3元台で推移していたが、2017年以降の両者の関係から推察するに、筆者はざっと6.6元前後まで元安が進行する事態を警戒していた。 そうした中、6月のシンガポールでの米朝首脳会談の直後にトランプ大統領が対中関税政策の実施を表明。米中貿易戦争の勃発が明確になった6月中旬以降、中国では金利低下が鮮明になった。 その時点での人民元安進行には筆者はあまり強い違和感は覚えていなかった。だが、人民元相場は7月後半に入ると、6.7元台に続落し、今月は2016年末につけた6.9元台の安値に迫る下落となってきた。3カ月前にはまさかここまで急激な人民元安が進行するとは考えていなかった。 <予想外に起こらない資本流出> 筆者にとってもう1つの誤算は、ここまで急激な人民元安が進行しているにもかかわらず、中国から海外への資本流出問題に火がついていないことだ。中国は3年前の2015年8月に突如、人民元切り下げを発表した。当時も上海株が急落するなど、中国経済の減速懸念が高まっていた。 日本もそうだが、ある国が景気刺激に動く時には通貨安は欠かせない。その意味では、3年前に中国が人民元切り下げという通貨安政策に踏み切ったことは経済政策としては正しい選択肢だった。 ただ、それは思わぬ副作用を生んだ。中国の通貨当局はその時、人民元切り下げの理由として、事実上、ペッグしている米ドルが通貨高になったことで、人民元がユーロや円、韓国ウォンなどアジア通貨に対して割高化し、国際競争力を失っていることを強調した。そのため、先々の人民元安を警戒した中国国内外の投資家(含む預金者)が金融資産を中国から海外へシフトさせ始めたのだ。 正確な数字は分からないが、ある試算に基づくと、2015年後半の中国から海外への資本流出額は月々10兆円を超えていた模様だ。これは昨年の日本貿易黒字額(年間約4兆円)の2倍を超える。当時の中国からの資本流出がいかに凄まじかったかが分かろう。 この資本流出とそれに伴うさらなる人民元安という負のスパイラルに中国政府が当初は為替介入で対処したため、2014年に4兆ドルに達していた外貨準備は2016年には3兆ドルまで急減することになった。 最終的にはその頃から中国は資本規制の強化と、米国を上回る金融引き締めによって人民元安と資本流出に歯止めをかけた。その時に中国政府・当局は相当な恐怖を味わったと思われ、再び資本流出を引き起こしかねない人民元安には相当、慎重だろうと筆者は思っていた。だが、実際には上記の通り、中国は6月以降、金融緩和によって急激な人民元安を促してきた。 しかも、それにもかかわらず、今回は現在までのところ目立った資本流出の兆しはうかがえない。外貨準備もそれを裏付けるように、6月、7月と緩やかな増加を示している。金融緩和策を用いて人民元安誘導を図ることは、筆者には極めてリスキーなゲームに思えたが、実際には中国はそれを断行し、そればかりか、現在までのところ予想外にうまく状況をコントロールしているのである。 昨年7月に香港経由で中国本土の債券市場に投資する「債券通(ボンドコネクト)」が創設されるなど、海外から中国への投資フローの流れが従来よりも多様化したことが、こうした大胆な策を可能性にさせているのかもしれない。 <中国株底入れは米中間選挙後か> こうなってくると、少なくとも中期的には人民元安が世界市場に与える影響について、筆者の従来の考えを改める必要がありそうだ。 つまり、筆者は従来、人民元安は資本流出問題、ひいては中国による引き締め措置を引き起こす、リスクオフ的な要素と捉えてきた。だが、現実的には現在の人民元安は中国の景気刺激策の反映であり、リスクオン的な要素として捉えることが妥当になってきた。 思い起こせば、3年前の2015年8月に実施された突如の人民元切り下げにしても、その時こそ中国や海外の株式市場を下落させるなど、リスク回避的な反応を生んだが、それを契機に中国の経済政策が景気抑制から景気刺激に変化したことが、最終的には世界的にも原油安など2015年のリスクオフ相場から2016年以降のリスクオン相場への転換を促すことにつながった。 今回の中国の緩和策と人民元安が今年後半から来年にかけて中国国内外で同じような景気刺激効果をもたらすのではなかろうか。急落・低迷してきた銅や鉄鉱石を含め資源相場もここにきて底入れの兆しが散見されるようになってきた。実際、8日に発表された中国の貿易統計(7月)では、銅や石炭など資源輸入(数量)が力強い回復を見せた。 もしこの解釈が正しければ、4月以降調整局面にある新興国市場も2016年に急反発したブラジル市場のように回復傾向を強めることになろう。豪ドルなど資源国通貨も持ち直し色を強めていくはずだ。2015年の例で言うと、8月の人民元切り下げの後、中国株が底入れしたのは約半年後の2016年2月だった。 今回、人民元安が鮮明になったのが5―6月だったことを思うと、今年11―12月ぐらいが中国株底入れの時期として意識される。これは米国で中間選挙が終わるタイミングと重なる。 もちろん、トランプ大統領が容易に貿易戦争を終結させることはなかろう。実のところ今回、トランプ政権は高関税政策で中国に貿易戦争を仕掛けるだけでなく、現在、中国を念頭に米国企業への投資を制限する法案の検討を進めている。欧州でも最近、ドイツが中国からの投資の制限に動き始めた。 一方、中国は米ハイテク企業クアルコムによるオランダ企業買収に許可を下さず、その実現を阻んだ。先般、習近平国家主席からの強い要請で、中国のハイテク企業・中興通訊(ZTE)の制裁を解除したトランプ大統領としては煮え湯を飲まされた思いだろう。 もはや、米中関係の緊迫化は貿易戦争にとどまらず、投資を含めた経済分野全般に広がり始めている。米国と中国は単なる通商摩擦ではなく、産業覇権を巡る争いを始めている。だが、こうした長期的な懸念がくすぶる中でも、中間選挙という、いったんのクライマックスを過ぎれば、市場は不透明感が後退したと解釈し、リスクオフからリスクオンへの切り替えを進めていくのではなかろうか。 高島修氏(写真は筆者提供) *高島修氏は、シティグループ証券のチーフFXストラテジスト。1992年に三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行し、2004年以降はチーフアナリスト。2010年シティバンク銀行入行、チーフFXストラテジストに。2013年5月より現職。 *本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです筆者の個人的見解に基づいています。 (編集:麻生祐司) 外為フォーラムコラム2018年8月9日 / 11:13 / 2時間前更新 コラム:貿易戦争を乗り越える米中経済、日本への教訓=村上尚己氏 村上尚己 アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト 4 分で読む
[東京 9日] - 前回7月11日付のコラムでは、関税引き上げの対象幅が広がり貿易戦争となっても、米国経済の成長が継続し得るとの見通しを述べた。 7月にはトランプ米政権が新たな関税リストを発表。米中間の通商摩擦が一段と激化したが、米国株が上昇するなどリスク資産の多くは値を戻した。7月末に米国と欧州連合(EU)の間で通商政策がとりあえず合意に至ったこともあるが、米中が水面下で交渉を行っているとの思惑、さらには米国経済が依然好調を保っていることが、米国株式市場を支えるという構図が続いている。 2018年1月から7月末までの世界株式市場のパフォーマンスをみると、米国株式市場のアウトパフォームが目立ち、ほぼ一人勝ちの状況である。米国では、イノベーティブなインターネット関連サービスを提供する企業の株式市場に占めるウエートが他国よりも高い。これらの企業は、関税引き上げのリスクが高まっても、その影響は限定的だ。 そうした企業の株式がリスク資産の投資対象として選ばれやすいだろう。貿易戦争に起因する不確実性があっても、裾野の広さが米国株式市場を支えているということである。 <為替市場でも米国一人勝ち> もちろん、強硬な通商政策を続ける中で、トランプ政権による減税や財政支出を受けて米国経済の高成長が続いていることも、株高を支えている。 言うまでもなく、米国は国内需要の規模が大きい。そのため、多くの企業の売上げ・利益が増え、貿易戦争に直面するグローバル企業の業績下振れリスクを相殺できている、ということだろう。 株式市場が米国のほぼ一人勝ちとなる中で、7月末時点で日本、欧州、新興国全体などの株式は総じて年初来のリターンが小幅ながらマイナスとなっている。そして、新興国の中でも、6月から中国、韓国などのアジアの株価指数の悪化が目立つ。貿易戦争を仕掛けている米国の株式市場は6月から7月に上昇したが、アジアの株式市場などは追随できないだけでなく、むしろ停滞している。 経済的には、貿易依存度が高いアジア新興国において通商摩擦の悪影響が大きい。中国も、600億ドルの輸入に対して新たな関税引き上げを公表したことで、1300億ドル規模の対米輸入のほとんどの品目に対して追加関税が適用されることになったが、少なくとも関税引き上げについては、中国の対応は限界に近づいているようにみえる。 米中関税引き上げの「最大値」がみえつつある中で、現在水面下で行われているとされる交渉や自国経済への悪影響などを勘案すると、今後、対象品目が削減される可能性もあるだろう。米中政治情勢を予想することは難しく、米中間選挙(11月実施)が近づく9月にかけて、株式市場が再び上下する可能性はあるが、通商摩擦のさらなる深刻化がないとすれば米国株式の年初来高値超えも十分あり得るのではないか。 米中による関税引き上げといった通商政策、投資制限政策などは、長期的にみれば自国経済に悪影響を及ぼす「悪手」ではある。軍事的な覇権を保つという米国の政治方針がより優先され、経済的に望ましくない政策が実現している。ただ、関税引き上げは長期的な悪影響をもたらすが、短期的には雇用・生産拡大などの効果もある。拡張的な財政政策の支えもあり、1―2年程度の時間軸では米国経済へのネガティブ要因は限定的にとどまるとみられる また、関税引き上げに伴う輸入コスト上昇は、米連邦準備理事会(FRB)の利上げなどによるドル高によって、その影響をある程度和らげることができる。 なお、2018年の米国の一人勝ちは、為替市場でも観察されている。成長率が高まる中でFRBが利上げを続けていることを背景に、ドルは7月末時点で世界通貨に対して5%ほど上昇している。トランプ大統領による為替市場への言及などで、一時的なドル安をもたらす場面があるとしても、金利上昇やドル高が進む経済環境もまた変わらないと思われる。 <中国経済の安定成長は可能> 一方、中国については、前述した通り関税引き上げがほぼ限界に達していると思われ、政治的にも経済的にも立場は苦しいようにもみえる。 ただ、通商政策において中国の打つ手は限られるとしても、自国経済の成長を刺激する政策により、米国が仕掛ける貿易戦争の悪影響を緩和することは、一定程度可能だろう。 中国は資本移動が完全に自由ではなく、またインフレ率は低位で安定している。春先から大幅な通貨安に見舞われ、利上げを迫られている他の高金利新興国とは状況は異なると位置付けられる。 実際、中国人民銀行(中央銀行)は4月から預金準備率の引き下げなどの金融緩和によって、銀行に対する流動性供給を増やし、また社債市場のリスクプレミアムを和らげるなど、信用緩和政策を行っている。さらに、中国政府は7月、インフラ投資などの財政政策を拡大させる方針を打ち出した。 これらの政策が、経済成長率全体を押し上げるかどうかは、現状不透明な部分が大きいが、圧力を強める米国に対抗するために、中国経済を支える可能性があるのではないか。 ちなみに、当社の中国担当エコノミストは、今後、景気刺激策がスムーズに行われることが、中国経済の安定成長が続くために重要であるとし、これまでの金融政策などの対応に関して総じて前向きに評価している。 また、関税引き上げは広がっているが、経済成長率の想定については、年初からほぼ変わらない。そして、3月末以降の人民元安は、金融緩和と総じて整合的であると位置付け、緩やかではあるがさらなる人民元安があり得るとみている。 拡張財政で高い成長を謳歌する米国に続き、今後、仮に中国が成長下支えに本腰を入れ、拡張的な財政・金融政策を行えばどうなるか。米中を中心に通商政策への懸念が晴れないままでも、世界経済の安定成長が2019年まで長期化する可能性はあるのではないか。 米国の景気回復がリーマン・ショック以降10年近く続いてきた中で、財政・金融政策がその役割を終えたといった議論があることは承知している。だが実際には、インフレ安定の状況が続く中で、トランプ政権が通商政策を仕掛けたことによって、財政政策を含めた経済安定化政策の方向が、経済成長、金融市場のパフォーマンスを左右する状況に変わりつつあると認識すべきなのではないか。 それは、脱デフレの道半ばにある日本についても当てはまる可能性がある。2018年の日本の株式市場がさえない一因は、財政・金融政策がしっかりと機能していないことを意味するのかもしれない。 最後に言い添えれば、日銀が7月末に決めた新たな政策方針には、「金融緩和徹底」「金融引き締め」の双方の措置が取り入れられた。これは、経済や市場にはほぼ中立的な影響を及ぼすとみられる。 低インフレが問題となっている日本経済の状況を踏まえると、金融引き締めよりも、金融緩和強化あるいは拡張的な財政政策が必要だと筆者は考えている。 村上尚己氏(写真は筆者提供) *村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。近著に、「日本の正しい未来 世界一豊かになる条件」(講談社刊、2017年11月)。 *本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。 (編集:麻生祐司)
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