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上得意失った米国の豚くず肉、貿易戦争が閉ざす中国販路(ロイター)
http://www.asyura2.com/18/hasan127/msg/835.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 7 月 24 日 21:08:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

上得意失った米国の豚くず肉、貿易戦争が閉ざす中国販路
https://diamond.jp/articles/-/175625
2018.7.24 ロイター


7月17日、米中貿易戦争が始まる以前には、米国の豚肉加工企業が輸出する豚の足や頭部の9割が、中国・香港市場向けだった。なぜなら、他のどの国よりも高い価格で売れたためだ。写真は米カンサスの食料品店で売られる豚の足や耳。15日撮影(2018年 ロイター/Theo Waters)


[シカゴ 17日 ロイター] - 米中貿易戦争が始まる以前には、米国の豚肉加工企業が輸出する豚の足や頭部の9割が、中国・香港市場向けだった。なぜなら、他のどの国よりも高い価格で売れたためだ。

 足や頭部以外にも、ほとんどの米国人が食べようとしない心臓、舌、胃、腸などの豚の部位は、中国の食文化の中でも、ひいては米国の豚肉輸出業者の利益率という点でも、特別なポジションにあった。

「こうした製品のおかげでプラントを維持していける、という声をよく耳にする」と、米国食肉輸出連合会でエコノミストを務めるエリン・ボラー氏は語る。

 高い利益率を誇るこうした豚肉の部位は総称で「くず肉」と呼ばれるが、中国が米国産豚肉輸入に課す2種類の関税を合計で50%に引き上げたことで、その販路は急速に閉ざされつつある。

 このため、米豚肉加工企業は、これらの部位をペットフードや畜産飼料の原料として、安い価格で売らざるを得ない状況に陥っている。


写真はカンサスの食料品店で売られている豚足。15日撮影(2018年 ロイター/Theo Waters)

 米農務省の最新のデータによれば、中国が4月に初めて25%の関税を米国産の豚肉に課したことで、副産物であるこれらの部位の米国輸出量は、4月から5月にかけて約3分の1減少した。

 世界の2大経済大国が互いに340億ドル(約3.8兆円)相当の製品に対して関税を導入する中で、中国政府は今月6日、米国産の豚肉に対してさらに25%の関税を上乗せした。

 中国による同規模の報復関税を招いた米国の関税について、トランプ米大統領は、自国が抱える年3350億ドルに上る対中貿易赤字を縮小することが目的だと述べている。

 豚くず肉の輸出減少について、米農務省はコメントしなかった。

 中国向けに輸出される豚くず肉の収益性が高かったのは、中国の消費者がその強い風味を好むためだ。たとえば豚足を白花豆と一緒に煮込んだ「老媽蹄花」は、中国食文化の中心地の1つである四川省に由来する人気料理だ。

 また、中国向けに輸出される部位のうち、豚の後足は他の国ではほぼ無価値だという。

 米アイオワ州立大学で農業エコノミストを務めるダーモット・ヘイズ氏によれば、後足には食肉処理工場で豚を逆さまに吊す際につけられた穴が空いており、消費者から嫌がられるため、中国以外でこれを販売することは不可能に近いという。

「中国市場が完全に開放されているならば、中国以外の国ではほとんど価値のない後足にもかなりの値がつくだろう」とヘイズ氏は語る。

中国の打撃は限定的か


写真は冷凍した豚のくず肉。シカゴのマーケットで6月撮影(2018年 ロイター/Tom Polansek)

 中国が、米国に代る新たな豚くず肉の供給源を見つけることは、それほど難しくないとアナリストはみている。

 中国の養豚産業は拡大しており、貿易を巡る対立が始まる以前から、バイヤーのあいだでは米国産豚肉への依存度が低下していた。

 また、中国バイヤーが、欧州から豚肉を輸入することも可能だとアナリストは指摘する。欧州における豚肉価格は、少なくともここ2年間で最も低い水準で取引されている。

「米国産豚肉に対する今回の報復関税導入によって、中国側が打撃を受けることはない」。米最大手の豚肉生産社マシュホフスのケン・マシュホフ会長はそう断言する。「チリや欧州、あるいは他の誰かが、『使われない豚の胃やレバー、足はたくさんある』と言い出すだろう」

 スミスフィールド・フーズや、シーボード傘下のシーボード・フーズ、そしてブラジルJBS傘下のJBS米国事業部といった米国の大手食肉加工会社は、今回の輸出鈍化によって打撃を受けている。

 昨年、米国全体で豚くず肉の収益が過去最高の11億ドル超に達する中で、こうした企業もその恩恵にあずかっていた。

 豚肉の加工業者として、そして中国輸出でも米国で最大手のスミスフィールドはコメントを拒否した。中国万洲国際(WHグループ)<0288.HK>傘下の同社は、くず肉や顎肉、ラードを販売している。

 食肉加工企業タイソン・フーズもコメントしなかった。シーボードとJBSにもコメントを求めたが、回答はなかった。

 米中貿易摩擦の影響によって、米豚肉加工企業の利益率は圧迫されつつあり、先月は過去3年間で最低の水準まで低下している。

 WHグループの株価は17日時点で、年初来から28%下落。タイソンとシーボードの株価もそれぞれ19%、13%下がっている。

損失規模

 米国食肉輸出連合会によれば、米国が中国に輸出する豚くず肉の平均価格は、2017年には1ポンド当たり約76セントだった。

 人間が食べる食品として他国に販売しないのであれば、豚くず肉は同約18セントの価格で国内販売することになる。連合会によれば、中国への輸出量を考えると、豚1頭あたり1.55ドルの損失に相当する。

 こうした豚くず肉の価格低下によって、来年にかけて米豚肉産業は全体で約8億6000万ドル(約970億円)の損失を被る羽目に陥る、と連合会は試算している。

 前出のヘイズ氏は、豚1頭あたりの仕入れ価格を抑えることによって、農家にこの損失を転嫁しようとするだろうと予想する。

「苦しむのは養豚農家だ」とヘイズ氏。

 需要低下に伴い、加工企業がより多くの豚くず肉を動物用飼料の原料として提供することになると、連合会は予想。ただ、市場シェア拡大に努める加工企業が増えるにつれて、このセグメントにおける価格も下降圧力に晒される可能性がある。

 オハイオに本社を置くJHルース・パッキング・カンパニーの営業担当マネジャー、トニー・スターンズ氏によれば、同社は生産する豚くず肉のほとんどを動物用飼料として1ポンドあたり20セント以下で販売しているという。

「この部位を売る可能性があるのは、現状でも売れる物はすべて売っている企業だ」とブルックス代表は語る。

 米国での供給増加に対応して、ペットフードメーカーは、原料として使用する豚くず肉を増やす可能性がある、と業界団体ペットフード・インスティチュートのダナ・ブルックス代表は語る。そうした企業には、「ピュリナ」ブランドを持つネスレや「ペディグリー」「ウィスカス」ブランドを擁するマースなどが含まれる。

「米国で人間が食べない豚肉の部位は、ペットにとっては高い栄養価を持っている場合が多い」とブルックス代表は語る。

(Tom Polansek/翻訳:エァクレーレン)




 

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コメント
 
1. 2018年7月25日 06:27:54 : hesCGq807o : As0RjqNJN@0[337]
記事から保護貿易が貿易の多極化とか経済関係の再構築の推進と読めますね

全くお遊びのコメントですが
沖縄では豚足を脂をとりながら1日煮込んで、おでんの具にしたりします
値段は安く骨の髄もストローのように吸って美味です
我が家でも3ヶ月に1回程度、料理します
熊本でも豚足の唐揚げがありました(学生の頃に食べた)
耳は「ミミガー」と言って、ピーナツあえにして、こりこりして美味です
真空パックされて売られているのでお土産におすすめ


2. 2018年7月25日 11:58:26 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1023]

#関税と補助金=トランプ式マッチポンプ

#常に保護主義で、損をするのは、一般大衆

#関税に加え、バラマキの負担を押し付けられ、実質所得は減るばかり


 


 

ワールド2018年7月25日 / 07:39 / 2時間前更新
トランプ米政権、農家に最大120億ドル支援 貿易摩擦の影響緩和で
2 分で読む

[ワシントン/カンザスシティー(ミズーリ州) 24日 ロイター] - 米トランプ政権は24日、全米の農家に対し最大120億ドルを支払う支援策を発表した。中国や欧州連合(EU)などとの貿易摩擦で生じる悪影響から農家を保護するのが狙い。

トランプ大統領はこの日、カンザスシティーで演説。貿易摩擦の相手国からの製品に関税をかける通商政策を遂行する方針を確認した上で、最終的には農家が最も恩恵を受けるとし、「もう少し辛抱してほしい」と語った。

中西部の農業州は2016年の大統領選でトランプ氏を支持した。しかし、トランプ政権が導入した中国製品への追加関税に対する中国の報復措置や、EU、カナダ、メキシコによる米鉄鋼・アルミニウム関税への対抗措置は、米国産の大豆などの農産品や乳製品、肉などを標的にしており、 米国の農家は打撃を受けている。

今年11月の中間選挙の上院選に向けた一部農業州の予備選では、トランプ政権の通商政策が主な争点となっている。

政府当局者は、今回発表した支援策について、米国と中国が通商交渉を行う間の農家の一時的な支援を目指すものだと指摘。

パーデュー農務長官は、支援資金は農務省の農産物信用公社から調達するため議会承認は必要ないとした上で、「トランプ大統領が長期的な通商政策に時間をかけて取り組むための短期的な解決策だ」と説明した。

農産物信用公社は、農産物の価格が低い場合、生産者への融資や直接支援を行う権限を持つ。

イリノイ大学の農業経済学者、スコット・アーウィン氏は、報復関税への対応策として、これほどまで大規模な農家への直接補償は前例がないと指摘する。

農業支援の発表を受け、農業機械メーカーの株価が上昇。ディア(DE.N)は3.1%高、キャタピラー(CAT.N)が1.2%高、AGCO(AGCO.N)は0.6%高で引けた。

米大豆先物は1.2%上昇した。

ミズーリ州農業会のトップ、ブレーク・ハースト氏は、米政権の通商政策が変わらない限り、米農業部門は引き続き打撃を受けることになると強調。「支援金は返済期限が過ぎている融資を抱える農家には役に立つが、関税や貿易戦争が当面続くという前提ならば、支援策としては全く不十分だ」と述べた。

Deere & Co
139.84
DE.NNEW YORK STOCK EXCHANGE
+4.31(+3.18%)
DE.N
DE.NCAT.NAGCO.N
今回発表された農家への支援策を巡っては、共和党内で意見が分かれている。農家支援に賛同する意見がある一方、共和党が伝統的に反対してきた「大きな政府」の政策だとして批判する声も上がる。

ケンタッキー州選出のランド・ポール上院議員は「関税は米国の消費者と生産者を痛めつける税金だ」とツイート。関税を撤廃することで問題が解決すると主張した。

一方、中間選挙でノースダコタ州の民主党上院議員の議席奪取を狙う共和党のケビン・クレーマー下院議員はツイッターで農業支援を称賛した。

トランプ大統領は今週、農業が盛んなアイオワ州とイリノイ州を訪れ、共和党候補への支持を訴える見通し。

 

トップニュース2018年7月25日 / 07:54 / 4時間前更新
米農家支援:識者はこうみる
1 分で読む

[東京 25日 ロイター] - 米トランプ政権は24日、全米の農家に対し最大120億ドルの支援を行うと発表した。中国や欧州連合(EU)との貿易摩擦で生じる悪影響から農家を保護する。識者の見方は以下のとおり。

<マクレスキー・コットンのゼネラルマネージャー、ロン・リー氏>

農産物信用公社を使って120億ドルを拠出する大恐慌時代のような政策だ。個人的には、トランプ政権が新たな貿易協定での合意を目指して長期戦の構えだという印象を受ける。

メキシコとカナダはこのところ協議加速へ意欲をみせているが、中国との協議はおおむね行き詰まっている。

私が知る農家のほとんどは、政府の支援を受けるより、良好な貿易を通じて市場から収入を得ることを好むだろうが、貿易協議がここ数カ月間、農家に金銭面で確実に痛手となっている中、今回の支援策はトランプ大統領と農務省が農業地帯の支持者層を支援しようとしていることを示している。

<全米豚肉生産者協議会(NPPC)の代表、ジム・ハイマール氏>

トランプ米大統領は以前に米国の農家を支援すると語ったが、きょうの支援パッケージでこのコミットメントが示された。

全米豚肉生産者は、前例のないほどの世界的な需要に対応すべく事業拡大を目指していたが、現在は輸出する豚肉の40%に報復関税を課されている。昨年の2大輸出先である中国とメキシコなど重要市場における米国産豚肉の輸入制限によって、米国の養豚農家は経済的苦境に陥った。われわれは大統領の即座の行動に感謝している。

<イリノイ大学の農業経済学者、スコット・アーウィン氏>

今回発表された支援パッケージの中で、最大かつ議論を呼ぶ可能性の高い部分は、農家に支援金が直接支払われるプログラムだろう。

報復関税への対応策として、これほどまで大規模な農家への直接補償は前例がない。

支援額120億ドルの大半は主に中西部の農家に直接払いの形で送金される。

 

 
2018年7月25日 熊野英生 :第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
米中が貿易戦争拡大で抱える、自国経済への無視できない悪影響
米中貿易戦争が行き着く先は何なのでしょうか
Photo:PIXTA
 2018年はトランプ大統領に振り回される年になりそうだ。北朝鮮の「非核化」では首脳会談後の実務者協議が難航し、中国との「貿易戦争」も先が読めない状況だ。貿易戦争の本格化で、世界の貿易取引の縮減が起きないことをただ祈るばかりだ。だが問題はそれだけにとどまらない可能性がある。

大減税と関税引き上げ
掟破りのポリシーミックス
 心配なのは報復関税の応酬がエスカレートすることだ。

 トランプ大統領が7月5日に追加の関税賦課を表明した金額を累計すると、中国製品に対して5500億ドルにも達する。この金額は、2017年の対中輸入額5056億ドルを上回っている。中国からの輸入額すべてに追加関税をかけるつもりである。

 中国側も、米国の関税適用に反撃して同規模の報復関税をかけているが、米国からの輸入額は1299億ドルと小さく、早晩、同額の報復関税では、追いつかなくなるのは明らかだ。その先はどうなるのか。

 次なる報復として、米国企業の対中投資などに何らかのペナルティーをかけることが警戒される。人民元レートを操作するのではないかという不安もある。

 一方、米国経済にとって関税率の引き上げは、物価上昇リスクとなる。連邦準備制度理事会(FRB)は、輸入物価の上昇に対して、予想されているよりも利上げの回数を増やすかもしれない。

 そうなると、金融引き締め効果が景気に思いのほかマイナス作用を及ぼすことが気になる。物価上昇+金利上昇+景気悪化という帰結が心配される。

 一方、景気は強いという見方は根強い。ひとつの根拠が減税政策だ。2018年1月から法人税率を引き下げ、所得税も減税された。今のところは、米経済にはこちらの好影響が大きい。トランプ大統領は、関税率を引き上げる前に、減税によって家計などの購買力をサポートすることを怠りなくやっている。

 トランプ大統領は、「自国第一」の政策として確信犯的に保護主義的政策を強くアピールしているが、減税によって景気が悪化することにはならないと考えて、中国との関税引き上げの応酬に挑んでいるのだ。

 米国は巨大な減税政策という栄養剤を飲みながら、関税率の引き上げという劇薬に耐えようとしている。まさしく掟破りのポリシーミックスである。

 こうした一連のトランプ政権の経済政策を総合的にどう捉えるべきだろうか。

 まず、米経済は完全雇用のもとで大減税を実施しているから、普通に考えて国内で需要超過が起こる。教科書的に考えると、(1)物価上昇圧力が強まり一方で(2)輸入が拡大(貿易赤字拡大)する。後者は、国内供給力が完全雇用下でフル生産のときに、国内需要(アブソープション、吸収)が膨らむと、海外製品が供給不足を補うという考え方だ。

 輸入拡大の作用を念頭に置くと、関税率引き上げは国内需要が海外に逃げるのを防ぐ役割を持つ。その副作用として、より物価上昇圧力を高めるというのが、減税+関税率引き上げのポリシーミックスの効果になる。

金利上昇、ドル高に
貿易不均衡拡大の可能性
 それに対して、FRBが物価上昇の加速を見て、追加利上げを行うとどうなるか。

 現在、多くの人は、2019年末から2020年初にかけて利上げの打ち止めを予想している。これは連邦公開市場委員会(FOMC) の見通しに沿ったものだろうが、減税+関税率引上げが予想以上に物価上昇を後押しすると、どうなるかは読めない。さらに、利上げが追加されることも十分にあり得る。

 このシナリオが、利上げによる物価上昇圧力の抑制をもたらすとすると、金利上昇+成長抑制という組み合わせとなる。このときは、ドル高が進むだろう。

 ドル高は相対価格の変化による輸入拡大を招いて、トランプ大統領に関税率の追加引き上げを拡大させることになるだろう。

 ちなみに日本経済にとっては、米国の関税率引き上げは鬼門だが、米国経済が成長を持続する状況でドル高・円安となれば悪い話ではない。関税率が引き上げられないとすれば、日本の対米貿易黒字が増えやすくなることは警戒すべき点だろう。

 減税+関税引き上げによる作用が、金利上昇+ドル高だというのは、トランプ政策の効果の結果なのだが、どうやらトランプ大統領自身はそれに不満らしい。

 為替市場がドル高に振れるなかで、7月19・20日と続けて、FRBの利上げとドル高に不満を漏らした。大統領が金融政策を批判するのは極めて異例である。

 だがこうした「口先介入」は、一時的には為替相場に対するドル安圧力になったとしても、継続的に効果を発揮することはないだろう。

中国は景気対策で対抗?
過剰債務の処理遅れる懸念
 米国と同額の追加関税をかけ合っている中国には、自国経済へのストレスは米国以上に厳しいはずだ。

 中国が米国の掟破りのポリシーミックスに対抗するためには、米国の減税と同じような景気対策を打たなければ、貿易戦争に耐え抜くことはできないという考え方もできる。

 インフラ投資を積み増し、金融緩和に転じることがあり得るのか。リーマンショック後の4兆元の超大型景気対策のことが思い出される。

 もっとも、こうした総需要対策を打っても貿易戦争のダメージを受ける製造業の競争力強化にはつながりにくい。むしろ、内需型企業が抱える過剰債務の処理を遅らせるなどの弊害が気になる。

 折からの人件費高騰にも油を注ぐことになり、製造業の輸出競争力にマイナスの効果がもたらされる。

 中国政府は、これまで成長率が多少は鈍化したとしても、産業構造の高度化で成長の質的向上を目指すとしてきた。

「中国製造2025」は、ハイテク分野としてIT、ロボット、航空宇宙といった産業の国際的シェア拡大を狙って構想された。米国の対中関税率の引き上げは、そうした動きを封じ込めようという意図もある。米中の貿易戦争には、覇権争いの側面がある。

 中国にとって、成長の質的転換を図ろうとするときに、米国が貿易戦争を仕掛けてきたのはタイミングが悪い。

 場合によっては、伝統的な総需要対策に動かざるを得なくなる。その結果、質的転換は遅れて、過剰債務企業を延命させるという逆の効果をもたらすことになりかねない。

 不良債権処理が必要な局面で、全く正反対の延命を助ける政策に動かざるを得ないことは、将来のより大きな調整に向けて反動をためこんでいるようなものだ。

 米国から見れば、「中国製造2025」は輸出企業が政府から補助金をもらって規模の利益を獲得しつつ、競争力を高めていく姿がアンフェアに見える。

 1980〜90年代に一部の経済学者たちから語られた戦略的貿易対策をそのまま地で行く政策誘導に見えるのだろう。寡占的競争を仕掛けてくる中国が、自由貿易の競争ルールを壊そうとする点で許されないということになる。

 だがトランプ政権は、寡占的競争がアンフェアだと考えているはずなのにそれへの対抗措置として、保護主義に一気に走っているところが甚だしく倒錯している。

 本来なら、自由貿易ルールを守る同盟を強化して、アンフェアな運営を排除するべきなのだ。それなのに、従来、自由貿易を標榜する仲間だったEUなどにも追加関税をかけ、報復合戦を招くことになっている。

 米中は、チキンゲームのような関税の報復合戦やそれに対抗するための景気対策の負荷で自国経済が持たなくなってようやく自由貿易の尊重と世界経済のリーダーとしての意識が戻ってくるのだろうか。

 歴史は繰り返すというが、大恐慌を契機にした保護主義や「自国優先」が戦争へと結びついた過ちを繰り返す愚は避けるべきだ。

(第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト 熊野英生)

 

【社説】大恐慌時の経済政策を試すトランプ氏
貿易戦争犠牲者の米農民に税金投入の愚

米大豆協会によると、米国の生産者は2017年産大豆140億ドル相当の31%を中国に輸出 PHOTO:JOHN MINCHILLO/ASSOCIATED PRESS
2018 年 7 月 12 日 12:23 JST 更新
 大恐慌時代に世界的な貿易戦争の中で豚肉価格が暴落すると、ルーズベルト米政権は1933年に1つの対策を思い付いた―それは600万頭の子豚を処分することだった。供給を大幅削減することで安値の下限価格を設けたのである。しかしそれは機能しなかった。トランプ政権は現在、大統領が発動した関税で大打撃を受けた穀物価格を下支えするため商品金融公社(CCC)を活用して、独自のデプレッショノミクス(大恐慌時の経済政策)を試そうとしている。農民に損害を与え、次に彼らに補助金を支給するようなものだ。まず彼らに損害を与えないようにしたらどうか。
 トランプ氏が貿易戦争をエスカレートさせている中で、浮かび上がってくる疑問がそれである。大統領は、新たに2000億ドル(約22兆3000億円)に上る中国製品に対し10%の追加関税を課す方針を明らかにした。中国側は新たな関税に「衝撃を受けた」とし、追加報復措置を検討すると表明した。その場合、再び米国の農業が主要な標的の1つになりそうだ。
 そうなった場合、忘れ去られたが、いまだに解体されていない公的金融機関であるCCCに融資を申し込んでもらうのだ。CCCは、農産物価格が需要減退に伴い崩落した問題を解決するため、ルーズベルト大統領が設立した。農家は下限価格の設定の見返りに作付けを削減するよう求められる。CCCは、余剰農産物を担保に農家にノンリコースの「融資」を行い、それら農産物を倉庫に保管する。
 市場で需要が回復すれば、農務省は保管していた農産物をより高い価格で売却するはずだった。「ノンリコース」とは、農家が融資を返済する必要がないことを意味する。農務省はしばしば、需要が回復しないため余剰農産物を売却できないという状況に陥った。

米国とブラジルの対中国大豆輸出量
Source: Trade Map

 大恐慌は終わったが、CCCは存続した。オバマ政権は、コストのかさんだ2009年災害復興プログラムに議会の承認を得ずにCCCを利用した。これを受けて議会は2012年に、CCCの余剰農産物購入量と価格下支えに制限を設定した。しかし今年になって突然、議会はこの制限を撤廃した。
 トランプ政権は、自ら引き起こした貿易戦争により、米国産農産物が受けている価格面の打撃を緩和したいと望んでおり、それに応じる形で共和党議員らは、政策を変更したのだ。6月25日付のUSAトゥデーに掲載された寄稿文の中で、ソニー・パーデュー農務長官は、政府は「今回の貿易戦争で被害を受ける生産者を支援するという約束の履行を開始する」準備があると述べている。味方の誤爆によって米国内にこうした被害者が出たことは、極めて残念なことだ。
 パーデュー長官はこの寄稿文で「損失に直面した農家を支えるために、われわれが自由に使えるツール」に言及していたが、これがまさにCCCだ。CCCが財務省から借り入れられる権限は300億ドルに限定されている。だが、未回収の融資で純損失を抱えたり、農産物を売却して損失を出したりした場合は、同省から支出額を増やしてもらえる。CCCの純損失は2016年が212億9000万ドルだったし、17年が142億8000万ドルだった。しかもこれは、トランプ氏が中国と貿易戦争を始める前のことだ。中国は米国の農産物に25%の関税をかけることで報復した。
 米大豆協会(ASA)によると、米国の生産者は2017年産大豆140億ドル相当、つまり全体の31%を中国に輸出した。中国政府系シンクタンクの中国農業科学院は、こうした関税により、中国による米農産品の購入額が40%減るほか、米国からの牛肉、綿花、大豆と穀物の輸入額が50%落ち込む可能性があると述べている。
 米国の農産品が売れずに大量に残る見通しを受けて、既に市場価格は落ち込んでいる。大豆相場は、中国が最初に報復措置に出る構えを見せた4月から6月半ばまでの間に10%以上下落した。ジョン・スーン上院議員(共和、サウスダコタ州)は6月20日の上院公聴会で、「トウモロコシ、小麦、牛肉、豚肉も同様に、現在の貿易政策による相場下落に軒並み見舞われている」と指摘した。
 もっと大きな危険は、パーデュー長官の「支え」の必要は一時的で終わる公算がほとんどないことだ。本社説に添付したチャートが示すように、ブラジルは長年にわたって米国の農家から市場シェアを奪ってきた。2017年には、ブラジルは中国の大豆輸入全体の53%強を供給する一方、米国からの供給比率は34%にとどまり、2006年以来最低だった。今回の関税引き上げによって、中国は大豆と穀物輸入でブラジル産とアルゼンチン産に、果物・ナッツ・ワイン輸入でオーストラリア産とチリ産に一段と頼るだろう。他の輸入の一部あるいはすべてで、カナダと欧州連合(EU)に頼るだろう。
 ASA会長で、アイオワ州で農業を営むジョン・ハイスドーファー氏は、警戒されるのは「旺盛な市場」へのリスクであり、それは生産者たちが「何十年にもわたって中国に関して一生懸命に確立した旺盛な市場」へのリスクだと述べる。スーン議員は「日ごとに、米国は我々の農産物市場で競争している他の諸国に市場シェアを失っている。その一部は奪還できる公算がほとんどない」と述べた。
 CCCはダストボウル・アメリカ(1930年代に中西部を中心に砂嵐の被害に遭った米国)の遺産だ。今日、米国の農家はハイテクを備え、生産的で、競争の意欲に満ちている。トランプ氏の貿易政策は、存在しなかった問題を作り出しており、今度は、彼がもたらした痛みを緩和するためにもう一つ別の問題を引き起こすかもしれない。
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