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トランプの関税発動が米企業の役に立たない理由
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180626-00021774-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 6/26(火) 17:00配信
Nicole S Glass / Shutterstock.com
ドナルド・トランプは2016年、大統領候補として選挙活動を行うなかで、各国との貿易協定を廃止し、「米国に雇用を取り戻す」ために一部製品に関税を課すとの公約を掲げた。国民の一部は当時、それを雑音としてはねつけた。
トランプ大統領がその公約を実行した今、米国の雇用は増加するどころか、減少する可能性に直面している。オートバイメーカーのハーレー・ダビッドソンは6月25日、欧州連合(EU)の報復関税を避けるため、生産拠点を米国外に移転すると発表した。同社が米国内での人員削減に踏み切る可能性は十分にある。
エコノミストらは、トランプがこれまでに検討してきた関税を全て実際に発動すれば、米国ではおよそ40万人の雇用が失われると予測している。また、米コンサルティング会社のトレード・パートナーシップ・ワールドワイドの報告書によれば、トランプが課す関税とそれに対する各国の報復関税は向こう1〜3年の間に、鉄鋼・アルミニウム製造における雇用を最大およそ2万7000人まで増やす可能性がある。ただ、全産業で見ればこの間に約43万人の雇用が失われる見通しであることから、関税の効果は相殺されることになるという。
トランプは11月の中間選挙を前に、有権者を意識して行動している。先の大統領選でトランプが僅差で勝利したに過ぎないミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンの各州では民主党支持者や無党派層が、トランプへの反発を強めている。
学校での銃撃事件、不法移民の親子を国境で引き離す措置、環境問題に悪影響をもたらすような対応、富裕層を優遇する税制改革、大統領選でのロシアとトランプ陣営の関係をめぐる疑惑への捜査に関心が一層高まっていること、そしてトランプ自身の振る舞いの粗暴さなどが原因だ。
「米国のため」なのか─?
トランプが課した関税のために生産拠点を移す企業は、ハーレーにとどまらないだろう。例えば、トランプはミシガン州での支持拡大に向けて自動車関税を引き上げる考えだが、自動車業界に関する実際のところは、次のとおりだ。
今年第1四半期の米国の自動車の輸出額は、約135億7000万ドル。主な輸出先は、トランプが貿易について最大の批判の対象としているカナダ、中国、ドイツ、メキシコだ。これら各国には、ホンダや日産のような外国自動車メーカーも、オハイオやテネシーなどの各州で生産する自動車を輸出している。
そして、トヨタやホンダ、日産、そしてドイツのフォルクスワーゲンやBMW、メルセデスベンツ、韓国のヒュンダイなどはいずれも、米国に大規模な投資を行い、組立工場その他で何十万人もの労働者を雇用している。
悪いのは貿易協定ではない
米国に進出した外国の自動車メーカー各社は、北米自由貿易協定(NAFTA)に基づき、カナダとメキシコにも投資を行ってきた。生産拠点を北米全体に拡大するためだ。そのNAFTAの発効によって、米国の「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」で雇用が減少したのかといえば、それは確かにそうだ。
だが、企業を誘致する上での米国の競争力を奪った本当の犯人は、他国に比べて膨大な金額に上る医療コストだ。カナダにもメキシコにも、そしてドイツや中国にも、国が運営するそれぞれの医療制度がある。そのため、米国より大幅に人件費を抑えることができる。米国の競争力を高め、雇用を増やすことにつながるのは、まさにその医療制度に関する政策の変更だ。
ホワイトハウスの戦略は、中間選挙が終わったずっと後まで、あるいはトランプが任期を終えるまで、有権者はこうしたことに気づかないだろうとの考えに基づいている。だが、ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスのカイル・ハンドリー助教(経営経済学・公共政策)は、「…これらの産業を成長させ、雇用を取り戻し、かつてのような輝きを取り戻せるというのは、口先だけの約束だ」と指摘している。
David Kiley
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