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金持ちの楽園化する東京・港区…出生率1位(東京23区)&人口流入始まったワケ
http://biz-journal.jp/2018/06/post_23795.html
2018.06.23 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal
六本木ヒルズ(「Wikipedia」より/A16504601)
今年2月、東京・港区の人口が25万人を突破した。港区は1956年に人口が25万人に達して以降、人口減少が続いてきた。
港区が半世紀以上にもわたって人口を減らしてきた理由は、なんといっても地価高騰が最大の理由だ。東京の中心部にあり、港区の不動産価格は高騰を続けてきた。とても庶民に手が届く住宅価格ではなく、人が住めるような住環境にはなかった。
しかし、東京23区の人口減少の兆しが顕著になると事態は一変。都心回帰の現象が顕在化した。都心回帰現象がもっとも顕著に表れているのが、湾岸エリアの江東区だ。昭和40年代までの江東区は工業地帯という趣が漂い、大規模工場もあちこちにあった。それが昭和50年代から次々と移転。広大な工場跡地は、タワーマンションなどに姿を変えた。
広大な工場跡地を再開発したこともあり、江東区のタワーマンションは隣接する中央区や港区などのタワマンよりも圧倒的に価格が安く供給できるというメリットがあった。そのために、購入者が殺到。タワマン人気によって、江東区の人口は爆発的に増加した。いまや、江東区の人口は52万人にまで迫る。
江東区が火を点けたタワマンブームは、歳月とともに中央区や千代田区、港区にも飛び火した。オフィス街を擁する中央区は利便性のよさから、人口は一気に増加。行政も人口増を後押しする政策に取り組み、中央区の人口は16万人を突破。20万人も視野に入っている。
2000年代に入ると、都心回帰現象はさらに加速。その追い風に乗って、さらに中心部に位置する港区も一気に人口が増加していった。
■ふるさと納税による財源の流出
順調に人口を増加させている東京23区、特に都心部は人口増が著しいが、目下、悩みの種になっているのがふるさと納税による財源の流出だ。東京23区には目立った特産品がない。それゆえに、高級な肉や魚などでふるさと納税を集める地方に対抗できない。本来なら自分たちの区が得られるはずだった住民税などは、ふるさと納税によって流出。その額は年々増えている。
2017年度におけるふるさと納税の年間流出額は、23区ワースト1の世田谷区が約31億円、ワースト2の港区は年間約23.5億円、ワースト3位の杉並区は13.9億円となっている。地方に多額の税が奪取されている23区は、危機感を強めている。
世田谷区は、テーマ型ふるさと納税を創設。肉や魚でふるさと納税をかき集める地方に対抗する構えを見せる。杉並区は消耗戦の様相を呈しているふるさと納税競争には参入せず、「返礼品合戦になっている、ふるさと納税制度がおかしいということを訴え続ける」(杉並区職員)という。
一方、ワースト2の港区は、そうした様子をいっさい見せない。港区から税が流出しているのは、ふるさと納税制度だけではない。東京23区には独自に適用されている都区財政調整制度という制度がある。これは、本来は市町村の税収となる固定資産税・法人住民税・特別土地保有税の3税が、東京23区に限っては都の税収になるというもの。同制度によって、港区は都に税を収奪されている。
同制度により、千代田区は年間で約3000億円を失っていると試算。港区も約2500億円前後が流出しているとされる。千代田区の職員はこう話す。
「同制度によって千代田区は多額の税収を都に収奪されてきました。そのため、千代田区はたびたび制度を見直すように訴えています。港区も同じように税収を奪われている立場ですが、制度の見直しには消極的です。たまに区議会が意見書を出すぐらいで、表立って反対していません。同じ都心部に位置する千代田区としては歯がゆい思いをしています」
■軽い行政の負担
なぜ港区は強硬な反対姿勢を見せないのか。ある港区職員は言う。
「確かに、ふるさと納税や都区財政調整制度による税の流出は、港区にとっても大きな痛手です。しかし、千代田区の人口は6万人。港区は25万人。4倍もの差があり、住民税などの税収にも大きな開きがあります」
港区が“金持ち喧嘩せず”の姿勢を崩さない理由はほかにもある。それが、民間企業が率先して再開発事業を実施し、街を整備してくれることだ。
本来、公園や街路、駐輪場などの整備や街の緑化・美化は行政が担当する領域だ。しかし、都市開発事業者は不動産価格を高めることを狙って、公開空地と呼ばれる公共スペースを自主的に開設している。
公開空地は誰でも利用できるスペースなので、これを地域住民などが“公園”として利用する。しかも、公開空地やその一帯は都市開発事業者が管理するので、行政が清掃や緑化といったコストをかける必要がない。税金を投じずに街を整備できるので、行政にとっては願ったり叶ったりなのだ。
同様の話は、小中学校といった学校建設にも及ぶ。港区の人口は、いまだ増加傾向にある。港区は1996年に人口が15万人を下回ったが、それ以降は都心回帰によって人口が増加。他区からの人口流入も顕著だが、最近では港区で生まれる子供の数も増えている。港区の合計特殊出生率は2014年に1.39、2015年に1.44を記録。これは、東京23区において1位という数字だ。
港区では、第2子以降の保育料を無料になるといった子育て支援策も実施し、それが出生率の向上に寄与している面はある。しかし、それよりも新たに流入してくる世帯が富裕層という点が大きい。通常、若年世帯が流入すると同時並行的に保育所不足による待機児童問題、小中学校の不足が発生する。江東区などは小中学校建設が追いつかず、タワマン規制を強める方針を打ち出した。
しかし、港区は保育所不足・小中学校不足もそれほど深刻ではない。その理由は、港区の富裕層は共働きによるものではなく、父親が企業役員などをしている“片稼ぎ富裕層”も多いからだ。また、“お受験”で私立小学校を目指す家庭が多いので、行政が公立小中学校の建設に多くリソースを割く必要がない。要するに、民間によるまちづくりが積極的に進められているので、結果的に行政の負担が軽くなっているのだ。
今般、年収300万円以下の世帯は4割を超えた。その一方、金融資産1億円超の富裕層の割合も増加している。“片稼ぎ”の富裕層が増加している自治体は、日本国内を見渡しても港区ぐらいしか見当たらない。
富裕層と貧困層の格差拡大が進むなか、港区は“金持ちの楽園化”し、最強の勝ち組になりつつある。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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