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上場メルカリの次の一手「米国シフト」の勝算と不安 海の向こうは「競合」だらけ(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/18/hasan127/msg/546.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 6 月 21 日 02:41:10: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


上場メルカリの次の一手「米国シフト」の勝算と不安 海の向こうは「競合」だらけ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56179
2018.06.20 加谷 珪一  現代ビジネス


フリマアプリのメルカリがとうとう上場した。初値は公開価格を2000円も上回る5000円となり、時価総額は約7000億円近くに達した。同社は日本では数少ないユニコーン企業(未上場でありながら、時価総額10億ドルを超える企業のこと)と言われてきたが、その実力が十分に発揮された形だ。

メルカリは言わずと知れたフリマ・アプリ最大手である。個人が不要になったものを出品し、別の個人が購入するという、リユース品の仲介プラットフォームを提供している。同社は起業家の山田進太郎氏が2013年に立ち上げ、スタートからわずか5年で1000万人の利用者を抱える巨大ビジネスに成長させた。

取り扱うリユース品の流通総額は急ピッチで増大しており、2018年6月期には3000億円を突破するのがほぼ確実とみられている。経済産業省がまとめた日本国内のフリマアプリ市場規模は4835億円だったので(2017年)、単純計算では半分以上をメルカリが占めていることになる。



同社のビジネスモデルは極めてシンプルだ。出品したい利用者は商品をアプリに登録して売れるのを待ち、購入したい利用者はアプリで欲しい商品をタップして代金を支払う。メルカリは出品者から10%の手数料を徴収しており、これが同社の売上高となる。

2017年6月期における同社の流通総額は約2300億円(国内)となっており、同年の売上高は220億円だった。手数料の10%分がそのまま売上高になっているとみて差し支えない。

2017年7月〜2018年3月期(2018年6月期の3四半期合計)の売上高は260億円を超えており、流通総額の推移などから考えると、2018年6月期における売上高は300億円台になっているはずだ。

現時点ではまだ営業赤字だが、利用者獲得のため積極的にテレビCMなどを行っており、2017年6月期には142億円の広告宣伝費を計上している(海外分含む)。広告宣伝費を調整すれば黒字化は可能なので、実質的に黒字転換を果たしていると考えてよいだろう。

今後、リユース品の市場はさらに拡大が見込まれていることや、ネットビジネスは先行者が有利に事業を展開できること、業績も申し分ないことなどを考え合わせると、7000億円の時価総額に割高感はない。

米国進出の課題は「コスト」

同社は、上場で調達した資金の多くを米国での事業展開に振り向けるとしている。創業者の山田氏は、グローバルなユニバーサル・サービスを事業の基本コンセプトに据えており、その点からすれば、米国展開は自然な流れといってよい。

山田氏は早稲田大学在学中、社員がまだ20数人しかいなかった楽天にインターンとして参加。楽天オークションの立ち上げに従事している。

起業を志していた山田氏は楽天には入社せず、その後、フリーランスとして仕事をしつつ、何度か渡米。同氏はこの時期に、多くの人が使えるユニバーサル・サービスの重要性を強く認識し、これがメルカリの根幹となった。

ネットビジネスの中心地である米国での成功なくして、グローバルな展開はあり得ないので、今後、同社は多くのリソースを米国事業に投入することになるだろう。



だが、過去の事例からも分かるように、日本発サービスの米国展開は容易ではない。楽天も当初は積極的に海外進出を試みたがほとんど失敗に終わっているし、LINEの海外展開もあまりうまくいっていない。

米国におけるアプリの累計ダウンロード数は3700万と、すでに日本の半分の水準に達している。だが2017年6月期における米国での流通総額はわずか160億円と、日本の10分の1の規模であり、米国事業はほとんど立ち上がっていない。

米国はもともとリユース品のやり取りが活発な国であり、ネット以外の市場でも活発にリユース品が売買されている。一方の日本は、一部を除いてリユース品を売買する市場が整備されておらず、逆にメルカリの一人勝ちという状況を生み出している。

米国は、市場規模は大きいが、リアルビジネスも含めて競合が多い。こうした中で知名度を高めていくには、コストをかけたマーケティングが必要となる。事業を軌道に乗せることは可能だろうが、コストとの兼ね合いでどの程度の収益を得られるのかは未知数だ。

「ネットワーク外部性」が期待できるビジネス

一方、国内市場に目を転じると、メルカリを中心としたシェアリング経済圏が形成されつつある。

同社は新規事業を行う子会社ソウゾウを通じて、本やDVDなどに特化したメルカリカウル、ブランド品に特化したメルカリメゾンズ、自転車シェアリングサービスであるメルチャリをスタートさせている。また2017年11月には金融サービスを提供するメルペイを設立しており、本格的に金融サービスに乗り出す構えを見せている。

また、関連するスタートアップ企業への投資も進めており、ネット通販支援サービスを手がけるBASEや、外国語学習シェアリング・サービスのフラミンゴなど、すでに11社に資本参加している。

メルカリ本体と出資企業が緩い連合体を形成し、シェアリング経済圏を構築していくという姿が想像できる。こうしたサービスは、利用者が増えれば増えるほど、その経済圏から得られる効用が大きくなってくるので、一定規模までなら自己増殖できる(これを経済学の世界では「ネットワーク外部性」と呼ぶ)。



例えば、メルカリが出品者から徴収する手数料は10%だが、これは競合他社と比較すると高い。それでも多くの出品者がメルカリを利用するのは、利用者の母集団が大きく、すぐに商品が売れるからである。

出品者の最大の関心事は手数料を安くすることではなく、商品を素早く、そして高く売ることなので、手数料の優先順位は下がってしまうのだ。このメカニズムが働く限り、後発企業が先行企業を追い抜くのは至難の業となる。メルカリはそのフェーズに入った可能性が高く、しばらくの間は、持続的な拡大が見込めるだろう。

「貧困ビジネス」の側面も

さらに言えば、メルカリのビジネスは特に日本で伸びる余地が大きいと筆者は考えている。それは日本の貧困化と密接に関係している。

日本における給与所得者の平均年収は過去20年間で15%も減少した。この間、物価は横ばいが続き、消費税は3%から8%に上昇。厚生年金の負担は年収の13.6%から18.3%まで増加している(会社負担分含む)。

つまり、給料は下がっているのに、公的な負担は増える一方であり、消費者が実質的に使えるお金は減少の一途を辿っているのだ。

このところ、高齢の著名人が、若年層に対して「お金がないというのは言い訳」「努力が足りない」といった批判をして炎上するケースをよく見かけるが、こうした批判をする人は、使えるお金の絶対値が大幅に減っているというマクロ的な現実を理解できていない可能性が高い。

年収の低下や貧困化は若年層ほど顕著だが、この傾向は今後も続く可能性が高く、若い人の中には、新品を購入する際、使用後にフリマで売って、購入代金の一部を取り返すことを大前提にしている人もいる。

つまり、リユース品を有効活用するという一般的なニーズに加え、日本の場合、経済的な理由からそうせざるを得ないという切実な事情があるのだ。そうであればこそ、メルカリは金融サービスへの本格進出を狙っている。メルカリのビジネスが日本において顕著な伸びを示す可能性が高いと筆者が考えているのはこうした理由からである。

今後の注目点が、米国事業の進捗であることは確かだが、一方で、上記のように国内にも大きなポテンシャルがある。だが国内事業のポテンシャルというのは日本特有の事情であり、グローバルスタンダードとはニュアンスが異なる。両者のバランスをどう取っていくのかが、今後のカギとなるだろう。


 

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