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ソフトバンクの深刻な問題…孫正義会長の後継者不在、16兆円超の有利子負債
http://biz-journal.jp/2018/06/post_23706.html
2018.06.15 文=真壁昭夫/法政大学大学院教授 Business Journal
ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長(ロイター/アフロ)
企業はゴーイング・コンサーンである。企業は長期にわたって事業を運営し、収益を獲得することが求められる。そのためには、継続的に優秀な経営者を選ぶ必要がある。多くの企業が直面するのが後継者の問題だ。
この問題は、中小企業から大企業まで共通だ。中小企業の場合、休廃業・解散件数は増加傾向にある。2016年、休・廃業した企業の数は2万9000件を超えた。理由は、事業承継がスムーズにいかないというもの。大企業でも、後継者選びは難しい。経営者の高齢化によって後継者の育成、あるいは確保は企業の死活問題だ。世界全体で変化のスピードも加速している。そのなかで求められる資質は、変化を見極め、成長に必要な発想を実行する能力である。
孫正義会長率いるソフトバンクも同じ問題を抱える。適切な後継者を見つけようとしているが、今のところ有望な人材が見当たらないようだ。孫会長の見据えるビジネス・ビジョンを共有できるのが、どのような人物なのかは大いに注目したい。それは、多くの企業の後継者選びにも参考になるポイントが多い。
■デジタル帝国を目指すソフトバンク
ソフトバンクの経営戦略を考えるキーワードは、“デジタル化”だ。孫会長は、デジタル化に関するテクノロジーを制覇するものが、今後の競争を優位に進めることができると考えている。端的に言えば、同氏はソフトバンクという企業を人工知能(AI)やネットワークテクノロジーを用いた“デジタル帝国”にしようとしている。
デジタル化とは、ビジネスそのものの変革だ。リアル(社会)での経済などに関する活動が、ネットワークに取り込まれることと考えればよい。小売業界がアマゾンに取り込まれてきたことは、そのよい例だ。デジタル化に伴い、企業の組織、経営管理など従来の発想が大きく変化する。それは、わたしたちの生き方=文化にも影響するだろう。
世界全体でネットワークテクノロジーの発達と普及が進むに伴い、デジタル化は加速する。それによって、わたしたちは従来には想像し得なかった変化に直面するだろう。どういった変化があるかといえば、市場経済にはなじまないと思われていた国や地域が、突如として有望な市場に変貌することが考えられる。
たとえば、アフリカ地域では携帯電話やスマートフォンが普及している。ネットワークテクノロジーの発達によって、固定通信網を敷設したインフラ整備の必要性は低下した。その分、政府は公衆衛生などに財源を配分できる。
加えて、ケニアでは携帯電話を用いた金融サービスが爆発的に普及した。それが“M-Pesa(エム・ペサ)”だ。MはモバイルのMであり、Pesaはスワヒリ語でお金を意味する。M-Pesaはそれまで銀行口座を持たなかった人に銀行サービスへのアクセスを提供した。それだけではない。モバイル決済に関する起業など、経済的な波及効果が大きい。
これは、店舗、審査など信用創造に関わる専門家、決済システムなど銀行のビジネスモデルが、ネットワークに取り込まれたことと言い換えられる。それによって、市場の開拓、需要の獲得などが可能になる。世界全体で潜在成長率が高まりづらい状況であっても、従来にはない新しいモノやサービスを提供することができれば、成長は実現できるということである。
■投資によるデジタル化の取り込み
それをソフトバンクは重視している。デジタル化という変化に対応するためには、新しいテクノロジーを自力で生み出すか、あるいは、外部にある要素を獲得することが必要だ。ソフトバンクの場合、人工知能、演算処理能力の高い半導体の設計技術、ロボットなど広範な分野での競争力向上を目指している。しかし今すぐ、そのすべてを自前で調達することは難しい。
新しいテクノロジーを取り込むために同社が重視したのが出資、買収などの投資だ。特に、中国のアリババへの出資は同社に大きく貢献してきた。16年6月、ソフトバンクはアリババへの出資比率を32%から28%程度に引き下げ、2,000億円超の売却益を得た。また、アリババ株を担保に借り入れも行っている。成長企業への投資は、ソフトバンクの成長に欠かせない。
その考えを実現するために組成されたのが、10兆円規模のファンド(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)だ。2018年3月期の決算を見ても、ファンド投資の影響は非常に大きい。当期、ソフトバンクグループの営業利益は1.3兆円(前期比27%増)だった。それには、ビジョン・ファンドが保有する米エヌビディア(画像処理を行う半導体企業)の株価上昇が寄与した。
問題となるのが、これまでの投資の多くが、孫会長の眼力によって実行されてきたことだ。デジタル関連企業の成長を取り込むためには、スタートアップ段階にある企業の成長性、今後の社会の変化の方向性などを見極めなければならない。それはかなり難しい。同時に、孫会長に比肩する先見性、眼力を持つ人材の確保が、ソフトバンクの成長には欠かせない。
そのために、投資の専門家を含む3名の副社長人事が発表された。この人事は、後継者選定のためのものであると考えられる。具体的には、ビジョン・ファンドの投資戦略の成否、グループ全体のテクノロジー関連投資の戦略の実行、買収企業の再建及び新しい提携・出資企業の発掘に分けて、3氏の実力が評価されていくだろう。さらに多くの後継者候補が浮上することも考えられる。
■終わらない後継者選び
ソフトバンクの目指す成長のタイムスパンは長い。一方、ときどきの市場環境をもとに、市場参加者は同社のリスクを評価する。足許、同社の有利子負債の額は16兆円を超えた。今後も、同社は投資を軸にしてテクノロジーの取り込みを加速しようとするだろう。資金調達のために借り入れを行う必要性は高まり、財務リスクも上昇しやすい。
そうしたリスクを考えた際、今回の副社長人事が市場参加者の安心感を高められるとは考えづらい。専門性の点では、やや投資偏重だ。孫会長のビジョンの大きさ、大胆さに比べ、各人の専門分野、実務経験は違うように感じる。
また、どこかのタイミングでソフトバンクが、投資以外の要素を成長戦略に付加しなければならなくなる可能性もある。今後の変化を見極め、競争に先行するには、投資対象として企業を評価するための知見だけでなく、テクノロジーに関する実務経験の有無も重要だ。それは、自社内でのテクノロジーの開発を進めるためにも欠かせない。投資先企業間のテクノロジーを融合し、イノベーションのシナジーを引き出すためにも、テクノロジーの専門家が経営に参画する意義は増すはずだ。
市場環境が良好であれば、投資ビジネスからの収益は増えるだろう。しかし、それを長期的に続けていくことは至難の業だ。現時点で、ソフトバンクは投資による成長を重視している。しかし、どこかで新しい発想を加えなければならなくなるときもあるだろう。将来の選択肢を確保するためにも、デジタル化を支えるテクノロジーの専門家の存在は大切だ。
孫会長が欲するのは、自らの専門的な知見と、今後の社会全体を変えてやろうとする野心を併せ持った、アニマルスピリット溢れる人材だろう。そのエネルギーを投資だけでなく、自社内部での新製品の開発につなげることができればよい。
常に企業は旧来の発想と新しい要素の結合を目指すことによって、革新を目指す必要がある。それがゴーイング・コンサーンの本質だ。ソフトバンクがどのようにして孫会長のスピリットを次世代につなぎ、ビジネスの永続性を高めることができるかは、多くの企業の参考になるだろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
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