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グーグルはいつから「市場競争を阻む独占者」になったのか 劇変する「GAFA」への評価と評判
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56061
2018.06.12 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
グーグルに過去最大の制裁金
イギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は先週木曜日(6月7日)、欧州委員会(EC)が7月をめどに、携帯電話メーカーと供給契約を結ぶ際に、圧倒的な市場シェアを持つ携帯端末用OS「Android(アンドロイド)」と自社アプリ「Chrome(クローム)」を抱き合わせ販売するなどして消費者利益を損ないEU競争法(欧州独占禁止法)に違反したとして、グーグルに巨額制裁金の支払いを命じる見通しになったと報じた。
ECがグーグルに制裁金の支払いを命じるのは、2017年6月に検索機能の利用者に自社のショッピングサービスを優先的に表示して市場競争を損ねたとしたケースに続いて、今回が2回目だ。ECの命令を不服として、グーグルが提訴すれば係争が長期化する可能性もあり、先行きは混沌としている。
とはいえ、第4次産業革命の原動力であるイノベーション(技術革新)の主たる担い手として、これまで「GAFA」(Geogle、Amazon.com、Facebook、Apple)と呼ばれる、アメリカの大手プラットフォーマー(基盤提供者)各社は、世界各地でポジティブな評価を受けることが多かった。その経済社会における位置づけが、ネガティブな、市場競争を阻む独占者という評価に音を立てて大きく変わり始めたようである。
そもそもECがグーグルのアンドロイド事業に対する調査を開始したのは2015年のこと。2016年には、スマホ向けOSで圧倒的シェアを誇るアンドロイドを、自社の検索エンジン、クロームやグーグルマップといった自社製アプリを抱き合わせ販売し、応じなければアンドロイド用のアプリストアへのアクセス制限をかける行為などにEU競争法違反の疑いがあるとの警告も出していた。
EU競争法は違反企業に対し、最大で世界売上高の10%に相当する制裁金の支払いを命じることができる。グーグルの場合は親会社の米アルファベット社の連結売上高が算出基準で、理論上、制裁金が最大110億ドル(約1兆2000億円)に膨らむ可能性がある。110億ドルには達しなくても、前回(2017年6月)の制裁額を上回れば、EC案件として過去最大の制裁金額になるという。
2019年中に施行される見通し
OSとの抱き合わせ販売という今回の疑義は、ITの世界では古典的な問題だ。かつて最も大きな関心を集めたのは、米司法省が1998年に提訴したマイクロソフトによるPC用OS「ウィンドウズ」とブラウザ(インターネット閲覧ソフト)「インターネット・エクスプローラ」の抱き合わせ販売だろう。当時、ライバルだったネットスケープ社の社名と同じブラウザの普及を不当に制限したとされた。
ECも同種の問題を提起し、マイクロソフトが世界的に他社ブラウザの搭載や選択可能措置をとらざるを得なくなったことから、Mozilla Firefox(モジラ・ファイアーフォックス)や、クロームの今日があると言えるが、今回、クロームが抱き合わせ商法で制裁を受けるというのだから、なんとも皮肉な巡り合わせである。
ECのGAFAに対する独禁法上の追及は、こうした古典的な分野に限らない。各社の強みの源泉であるネット広告やネット検索の分野にも広がっていく見通しだ。実際、ECはすでに、グーグルのネット広告Google AdSense(グーグル・アドセンス)について競争法違反の疑いがあるとして本格調査を進めている。
アドセンスは、ウェブサイトの運営者がグーグルに使用申請をおこない、承認を受けることで利用できるインターネット広告サービスだ、その広告コードを貼り付けると、内容に則した広告が配信される仕組みになっている。商品やサービスの売買が成立しないと報酬が発生しない成果報酬型広告と異なり、ウェブサイトの閲覧者が広告をクリックするだけでサイト運営者に報酬が発生する。
2016年7月にECが発した文書では、グーグルがアドセンスの使用にあたって、アドセンスの広告を最も目立つ場所に一定期間以上掲載することを義務づけたり、競合するサービスの広告掲載を禁じたり、競合サービスの広告掲載について事前にグーグルの了承を取り付けることを義務づけていることが、競争法違反にあたる可能性があるとしていた。
米国市場における調査だが、調査会社イーマーケターによると、グーグルのデジタル広告のシェアは約42%、ネット検索広告シェアは約80%にのぼるという。
事情は欧州でも似通っており、ECは現行のEU競争法の積極的運用に加えて、今年4月、GAFAを含むプラットフォーム企業が取引先に一方的な契約を押しつけることを防ぐための調停制度を含む新規制の策定方針を打ち出した。対象は雇用者数が50人以上、売上高が1000万ユーロ(約13億円)超のプラットフォーマーだ。本社所在地にかかわらず、利用する企業や個人がEU域内にいれば対象になるため、楽天など日本企業も監視されるという。
新規制では、取引先企業の商品やサービスをネット検索に基づいてランキング付けする場合、評価基準の情報開示を義務づけることによって、プラットフォーマーが自前サービスを優遇できないようにする。スマホのアプリストアのランキングも規制対象で、報復を恐れて「泣き寝入り」する企業を減らすため、ランキングからの削除には事前告知を義務づけるという。
このほか、フェイクニュース対策としての自主規制の強化を促す。新規制は早ければ2019年中に施行される見通しだ。
日本の公正取引委員会はどう動くか
課税なども含め、欧州的な手法は米政府の姿勢にも影響を及ぼし始めている。
欧州と違い、アメリカでは、ブッシュ(ジュニア)、オバマ政権と閣議メンバーやポリティカル・アポインティに反トラスト法(米独占禁止法)のアグレッシブな運用を目指す人物があまり登用されず、司法省や連邦取引委員会(FTC)といった独禁当局の力がそがれる一方、パソコン時代の「Wintel」(MicrosoftとIntelの2社)に代わって、第4次産業革命の主要な担い手になったGAFAがアメリカ経済の牽引役を担ったため、取り締まりや規制の議論が乏しかった。
しかし、最近は、フェイスブックが膨大な個人情報の流出事件やデータの不正使用事件を起こしたことを機に、アメリカ議会やFTCがこれまでの自由放任主義を改め、欧州委員会と同様に、GAFAを厳しく監視する体制に切り替わりつつある。
新興国でも、インド競争委員会(CCI)が今年2月、インド競争法(独占禁止法)に違反したとしてグーグルに13億5000万ルピー(約23億円)の課徴金を課すと公表した。インターネット検索市場での支配的地位を乱用し、自社の航空券予約サービスを検索結果の目立つ位置に表示するなどして公正な競争を阻害したと判定したのだ。GAFAを取り巻く各国の姿勢は着実に厳しさを増している。
そうした中で気掛かりなのが、長年、「吠えない番犬」と揶揄されてきた、日本の公正取引委員会の動向だ。つい先日も、同委員会の最高幹部の一人が財界の集まりで「GAFAに独占力があることは明らかだが、乱用されているのかどうかが掴めない」と自嘲気味に話し、周囲のひんしゅくを買っていたという。この期に及んで、世界的に見て競争当局として弱体と言われる状況が改善されていないことの証左だろう。
GAFAの問題は個人情報の取得方法や管理の在り方、収集したビッグデータのユーザー企業への公平な提供など多岐に及んでおり、幅広い規制の整備が必要だ。そうした規制の要であるべき独占禁止法の分野で、公正取引委員会の能力不足が原因で欧米や途上国に後れを取って、GAFAの独占力の乱用から取引先の日本企業や消費者が保護されないとすれば、由々しき事態と言わざるを得ない。
財政再建が急務になる中で、国民の血税で公正取引委員会の職員たちの給与が賄われているのだから、自主申告で課徴金を減免するリニエンシー制度で摘発が容易な談合ばかりにエネルギーを集中しないで、独占企業GAFAの独占力乱用問題にも真摯に取り組んでほしいものである。
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