http://www.asyura2.com/18/hasan127/msg/391.html
Tweet |
「銀行員がここまでダメになった」歴史的な理由 もはや生き残る道は2つしかない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55788
2018.06.01 杉山 智一 現代ビジネス
ビジネスモデルの大転換
歴史からたどっていけば、銀行員という職業がなぜここまで厳しいものになったのかがよくわかる。順を追ってみていきたい。時計の針を今から30年ほど前まで戻してみよう。
1990年初頭から始まったバブル崩壊により、日本の銀行は、未曽有の不良債権を抱える事になった。
バブル崩壊から現在にいたるまでの道のり――それは、戦後、高度経済成長から続く日本の経済発展モデルの崩壊・終焉と、それに替わる、日本の新しい経済発展モデルが出現した歴史といえる。
銀行業界はこのモデルの変更がもっとも目に見える形で起こった業界の一つなのだ。
どういうことか。
バブル期までは、経済成長とリンクする形で、預金者からの預金を企業や人に貸し付け、その利ザヤが銀行の収益となる、いわゆる「間接金融モデル」により、銀行も成長・巨大化してきた。
ところが、バブルの崩壊により、貸し出す先がどんどん減ってしまった。数少なくなった貸出先には担保価値を大幅に超えた過剰融資が行われ、結果として「回収不能の貸付金」が巨額の規模の不良債権となってしまった。
日本のバブル崩壊で発生した不良債権は、約200兆円とも言われており、政府は約45兆円もの公的資金を投入したが、1997年には北海道拓殖銀行や山一証券、1998年には日本長期信用銀行をはじめとする多くの金融機関が破綻し、日本の経済モデルの転換とともに日本の銀行・金融機関もビジネスモデルの転換を迫られることになった。
金融ビッグバンが引き金に
そこにもうひとつの要素が加わる。
日本の金融制度大改革、いわゆる日本版金融ビッグバンによって、従来の護送船団方式から銀行・金融機関が競争原理にさらされるようになった。
その一環が、投資信託の窓口販売の導入(1998年12月から解禁)であり、2002年以降には、銀行業・保険業・証券の各代理業解禁だったのである。これらの措置により、銀行も投資信託の販売や証券仲介業務ができるようになり、直接金融業務が可能となった。
さて――、前述したとおり、日本の経済環境は「失われた10年・20年」の状態が続いており、ゼロ金利政策が維持される中で、銀行は預金を貸し出して利ザヤを取る業務、つまり間接金融による業務では収益が上がらなくなってしまった。
ゼロ金利政策から現在に続くマイナス金利政策によって、ますますこの貸出業務収益の縮小に拍車をかけた。
そこで、銀行側が新たな「稼ぐ手段」として目を付けたのが、この投資信託の窓口販売や金融証券仲介業務だったのだ。
銀行員の「なんちゃって証券マン」化
不景気により顧客の投資意欲は後退しており、マイナス金利政策下であっても、銀行の預金は増え続ける一方であったが、しかし貸出先はなく、銀行は利ザヤを稼げない。
そうなると、銀行としては溜まる一方の預金とその利払い負担を、なんとか利益に転嫁するしかない。
そこで銀行は、投資信託の窓口販売、金融証券仲介業務、保険代理業による販売手数料や信託報酬に注目し、増え続ける預金をこれらの投資信託や証券仲介・保険代理販売の手数料収入に振り替えることで収益(銀行では「役務収益」という)を稼ぐモデルに注力し始めたのである。
こうした大きな変化によって、法人融資担当を除く銀行員、つまり支店の個人部門に配属されている行員は、ほぼ全員が投資信託や保険の販売員となり、証券(債券など有価証券)を系列証券会社に繋ぐ代理人のような存在となってしまったのだった。
つまり証券会社や保険代理店の人間と変わらない仕事を銀行員がやっていることになる。証券マンや保険マンと違い、その道の専門でもない銀行員が、「なんちゃって証券マン」や「なんちゃって保険マン」と化しており、支店個人部門の主業務となっている――これが現在の銀行の本当の姿なのである。
銀行の「信用」使って荒稼ぎ
顧客からすれば、銀行・銀行員だと思っているところに、投資信託や保険、有価証券を勧誘されるわけだ。ただし、証券マンや保険代理店から勧誘されるのとは違って、なんといっても銀行員だから断然信用度が高い。
かくして、なんちゃって証券マン・なんちゃって保険マンである銀行員による投資信託の販売手数料収益は、銀行の支店個人部門のコア収益となった。ちなみに、メガバンクによるその投資信託の販売金額は、いまや本家本元の野村證券や大和証券に次ぐほどの規模となっている。
従来の支店は、住宅ローンを組んだり、振り込み・送金・預金手続きなどをするといった業務に多くの人員が割かれていたが、これらは昨今の報道にもあるように、AIやFinTech(フィンテック)の普及によって、みずほFGで全従業員7万9000人のほぼ4分の1にあたる1万9000人が2026年までに、三菱UFJFGもデジタル技術の活用などで23年度までに9500人分の業務量を削減するとそれぞれ発表した。
そうなってくると、ますます銀行員の生き残る道は、投資信託や保険を販売する金額・手数料実績に頼らざるを得なくなるのだ。
怪しいセールストーク
証券会社と違って、銀行には預金の詳細が「見えている」から、その預金を投資信託に切り替える手続きをするだけ――つまり、証券会社とは比較にならないほど簡単に販売することができる。
かつ、日本の場合、銀行の信用は特に高齢者には絶大で、顧客も「銀行さんが言っているから」とリスクも考えず(説明もそれほど受けずに?)、購入するケースがあまりにも多いのだ。
筆者が知る例では、顧客が投資信託の分配金を利息だと思っていたり、あるいは「分配金は年金代わりです」という銀行員の説明をそのまま信じていた顧客の例もある。
当然ながら、こういった顧客は、分配金が元本を切り崩して支払われる事もあるというリスク面を知らないし、そうした最低限の説明さえ行われていなかったりすることも多々ある。
こうした銀行員の「なんちゃって証券マン」化に、さらに拍車をかけるのが、日本の金融機関の特異性だ。
これは自著『プライベートバンカー 驚異の資産運用砲』でも述べたことだが、一般的に海外の金融機関は、残高に対する「口座管理フィー」を主収益とする。わかりやすく言えば、顧客の残高から一定額を報酬として貰う方式である。
これに対して日本の銀行・証券会社は、主に「売買手数料」を主収益としているために、頻繁に顧客に売り買いさせることがそのまま収益実績に繋がる。
するとどんなことが起こるか。銀行員が手数料欲しさに、顧客にどんどん投資信託のような金融商品を買わせようとするのである。
森金融庁長官は警告する
顧客は、マーケットが上がっている時には、どれも上がっているからそのまま保有すればよいにもかかわらず、上がっている所で乗り換えさせられる事例が多々ある。もちろん、当の顧客はそんなことは知らない。
こうして利益相反が起こり、銀行:顧客がWin:Loseの関係になってしまう。
現在は、さすがに金融当局も行き過ぎた販売実態を把握するようになった。
2017年5月10日、金融庁の森信親長官は、東京都内での講演で、投資信託を販売する金融機関について「手数料稼ぎが目的になっていて、顧客不在の経営をしているのではないか」と厳しく批判し、顧客利益優先に営業姿勢を改めるよう求めた。
さらに長官は、日米の投信を比較したところ、日本は販売手数料や信託報酬が約5倍高いと指摘。「日本は規模の小さい複雑な商品を作って、(顧客に頻繁に売り買いをさせる)回転売買を行っている」と辛辣(しんらつ)に批判した。
その上で金融機関に対し、販売価格の根拠などを顧客に明示するよう求めた。
――以上が「銀行・銀行員がダメになった」経緯である。
1、ビジネスモデルの大転換 2、投資信託販売などの解禁 3、AIやITの発展に伴う人余り 4、日本の金融界に特有の収益構造――これら1から4の要素がすべて絡み合った形で起こったのが銀行・銀行員の地位低下であり劣化なのだ。
モチベーションが急速に低下
さらなる問題は、銀行の支店の人員のほとんどが、この販売ノルマに追われ、モチベーションを失い、離職率が増加しているという現状だろう。
そもそも銀行員の専門分野は「融資」だ。その判断プロセスにおいては、財務分析や担保評価能力が必要となる。
将来の株価予測や為替予測のような、銀行員にとっては専門分野でもない株式や債券を組み込んだ投資信託の勧誘・販売をするような仕事を、銀行員も本音ではやりたくないと思っているはずだ。
今や若手銀行員は、投資信託・保険商品販売員養成学校に入行したようなものである。
近い将来、AIやフィンテックに簡易業務は移行するだろうし、本業の融資業務も拡大は見込めない。
そこで巨大な人員を抱える銀行は、育成にコストのかかる銀行員の本業である融資業務人員より、育成の安価な投資信託・保険商品などの販売に特化させた販売員を作り出す方が銀行経営戦略としては儲かると考えているはずだ。
現在の銀行のこのビジネスモデルは、すでに限界に達している。明らかに現在の銀行の人員は過剰であるし、販売手数料ビジネスを銀行員に負荷を課すビジネスモデル――販売側がWinで、顧客がLoseであるようなビジネスは遠くない将来、崩壊に向かうことになるだろう。
顧客に損をさせるようなビジネスは、銀行に限らず必ず行き詰まるからである。
銀行員として生き残る2つの道
そのような中で、今後、銀行員・銀行が生き残れるビジネス・ビジネスモデル――それは2種類に絞られるだろう。具体的には富裕層に特化したプライベートバンクビジネス、そして、投資銀行ビジネスである。
プライベートバンクビジネスは、富裕層に資産運用・管理アドバイスを行う、個々の富裕層へのオーダーメイド型個人富裕層向けビジネスである。まさに私の仕事である。
金融商品などの資産運用・管理に限らず、顧客によっては不動産に関するアドバイスやそれらに付随した相続、税務、会計などの専門知識が必要とされる(特に日本の富裕層は不動産保有者が多い)。
それらのアドバイスができる人材・金融機関は、AIやフィンテックに取って代わられる事のないヒューマンタッチなビジネスとなる。
また、資金調達業務(株式や債券の引き受け等)やM&A(買収・合併)のアドバイザリー業務、証券化ビジネス業務、事業再生業務などにより、顧客企業の企業価値を向上させ、その手数料で利益を得る投資銀行ビジネスも、個々の企業に沿った提案やアドバイスが必要となる上、税務・会計や個々の案件のデューディリジェンス(資産価値を計る)能力のような専門能力も必要とされる。
これもヒューマンファクターの強いビジネスであり、AIやフィンテックに取って代わられる事のないビジネスモデルとなるだろう。
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民127掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民127掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。