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三菱UFJ銀行、従来型銀行モデル破壊…行員接客の店舗半減、業務の担い手をシステムに
http://biz-journal.jp/2018/05/post_23498.html
2018.05.29 文=真壁昭夫/法政大学大学院教授 Business Journal
三菱UFJ銀行の店舗(撮影=編集部)
わが国では多くの企業がコストの削減を重視し、ネットワーク・テクノロジーの活用を通した省人化を進めている。ただ、コスト削減だけでは企業の成長は難しい。企業のトップライン(売上高)の拡大も必要だ。具体的には、成長率が高い=期待収益率が高い地域、分野への進出が求められる。
金融機関のなかで、コスト削減と、期待収益率の高い分野への進出を強化する三菱UFJ銀行の動きが注目される。これまでには見られなかったほどのスピードとマグニチュードが感じられる。それだけ、将来への危機感が強いのだろう。特に、今後3年間で同行が支店数を90程度削減することは見逃せない。高度成長期であれば、旺盛な資金需要に支えられ、支店を増やせば収益が増えた。もはや、これまでの常識で成長を追求することは困難になっている。いい換えれば、同行は新しい発想によって成長を追求しようとしている。
そのひとつに、他企業との連携がある。オープンなかたちで新しい金融サービスの普及や、ICT(情報コミュニケーションテクノロジー)の実用を目指す金融機関が増えれば、わが国の金融サービスのあり方も大きく変わるだろう。
■金融ビジネスの生産性革命
2013年4月に日本銀行が開始した“量的・質的金融緩和”は、2年間で2%程度の物価目標(インフレ・ターゲット)を達成し、デフレ経済から脱却することを目指した。それから5年以上が経過したが、消費者物価指数でみた物価は2%に達していない。この状況下、日銀は異次元の金融緩和を継続せざるを得ない。
その結果、国内では低金利環境が続いている。加えて、資金への需要も弱い。昨年末時点で、金融と保険業を除く企業部門は417兆円のキャッシュを保有している。一般事業法人としては、投資しようにも、需要が見込める案件が少ないということだ。
資金需要が高まらないなか、銀行の収益は、内外の債券や政策保有目的による株式などの運用収益に依存している。規模の小さい金融機関ほど有価証券運用(ディーリング)への依存度は高い。それは金融市場の動向に左右され、持続性ある収益基盤ではない。
そのなかで、収益性の改善を目指している筆頭が、三菱UFJ銀行だ。同行の取り組みは、費用の削減にとどまらない。それは、従来の銀行ビジネスから脱却する“変革”ととらえるべきだ。同行の取り組みは、削減できるコストは徹底的にカットする。その上で、新しい発想・テクノロジーを用いてリスクを管理しつつ収益の引き上げを目指すことと表現できる。端的にいえば、銀行ビジネスの生産性革命だ。
国内で同行は、ヒトから機械へ、業務の担い手をシフトさせようとしている。省人化によって国内従業員の30%が削減される計画だ。それに加え、今後5年程度で行員が接客する店舗数を半分に削減することも計画されている。突き詰めて考えると、預金・決済などの銀行サービスは人が支えるのではなく、IT関連のテクノロジーによって運営されることが目指されている。
■これまでの自前主義からの脱却
今後の経営を支えるIT分野でも、同行は変革を目指している。従来、大手銀行はITインフラを自行内で整備し、運用してきた。傘下のIT子会社がIT企業と連携し、サーバーや勘定系システムの設計から保守を行ってきた。その他の分野でも、経済調査は総合研究所(シンクタンク)が担うなど、多くのビジネスを自社のグループ内で成立させようとしてきた。いわば、自前主義だ。
社会の変化に伴って、ITの規格は秒進分歩のスピードで進化する。それに企業単独で対応することが合理的とは限らない。むしろ、社外と規格を合わせ、他企業とITインフラを共有したほうが効率的なケースも出てくる。楽天が他社の通信網を借りて携帯電話事業を進めようとしているのはその例だ。
三菱UFJ銀行は、従来の発想を転換しようとしている。三井住友銀行とのATMの相互開放に向けた取り組みは、自行の支店網を維持することへのこだわり、自前の規格に基づいたIT管理の発想を改め、社外との連携によって変化に対応しようとする姿勢の表れだ。
今ではコンビニにATMが設置されている。銀行の支店がなければ預金を引き出せないわけではない。イオン銀行が進めるキャッシュアウトサービス、モバイル決済や電子マネーを用いたキャッシュレス化が進めば、顧客の銀行離れは加速するだろう。
その動きを食い止めるには、銀行が満足度の高いサービスを提供するしかない。支店が閉鎖され、行員が配置された店舗が減ることに不満を持つ人も多いだろう。その不満を解消し、使いやすく安心できる銀行サービスを生み出すためには、自行内外のインフラを共通化し、規模の経済効果を追求する意義は大きい。
支店の削減、ATMの共同運用に加え、三菱UFJ銀行はMUFGコイン(デジタル通貨)の開発・実用化にも取り組んでいる。それは、同行がこのままでは経営基盤がぜい弱化すると危機感を抱き、新しい発想に基づいた経営を目指していることにほかならない。IT分野を中心に、サービス創出の面でも銀行同士の関係は強まるだろう。
■加速する銀行間の連携の動き
国内最大手の三菱UFJ銀行が他企業との連携を重視し始めたマグニチュードは大きい。ATMの共有化は、各行間の支店網をつなぎ、金融サービスへのアクセスィビリティを確保するために欠かせない。利用時間、料金が異なるATMの規格を統一し、その上、無料にできれば銀行サービスの利便性は高まる。
今後は大手銀、地銀をまたいで業務やIT面での連携が進むだろう。そのなかでICT関連のテクノロジーを用いて、銀行がITベンチャーと高齢者にも使いやすいアプリを開発し、実用化できれば相応の変化が見込める。つまり、「支店がなくなると銀行は使いにくくなる」ではなく、「支店がなくても、従来以上に使いやすい」と利用者が感じられるサービスを提供することが求められる。
その上で、銀行がどのような社会的な役割を発揮するかが重要だ。それは、成長の源泉を発掘することだろう。2019年度、三菱UFJ銀行は人工知能(AI)を用いた中小企業への融資を開始する見込みだ。創業して間もない企業への融資も目指されている。加えて、同行はアジア地域での事務処理をマニラに集中し、タイやインドネシアでは貸し出しを増やし、収益基盤を強化しようとしている。
銀行間の連携は、実体経済にも変化をもたらすだろう。中小企業の海外進出支援は、潜在的なニーズが期待できる分野だ。海外進出に関するコンサルティング・サービスや現地での資金調達をアレンジする力が地銀に備われば、需要を取り込むことができる。国際業務を行うための自己資本比率の基準を考えれば、地銀にとって、三菱UFJ銀行のように海外ネットワークを強化している銀行と組むメリットは大きい。それが連携を加速させる。
現在の三菱UFJ銀行は、コストの削減と新しい発想の導入を通して、総合金融のプラットフォーマーを目指しているといえる。今後も他企業との連携や規格の共有を目指した取り組みは増えるだろう。国内の銀行勢の多くがコストカットを優先するなか、同行の取り組みが多くの企業や金融機関が、潜在的な成長の源泉を見いだし、社会の活力向上につながることを期待したい。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
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