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廃墟と化す「既存不適格マンション」 それでも建て替えが進まない理由
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180524-00021110-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 5/24(木) 7:30配信
kurosuke / Shutterstock.com
いま、世の中には廃墟になりそうなマンションの予備軍がごまんとあるのをご存知だろうか。
都内某所にある築40年、総戸数50戸の中古マンションは、築10年目に大規模修繕を行って以降、一度も大規模修繕を行ったことがない。というのも、毎月各戸から徴収される修繕積立金がわずか2000円程度に過ぎず、さらには滞納者への徴収も長年怠っていたため、修繕積立金が枯渇しているからだ。落下すれば凶器となりえるタイル張りの外壁でなく、塗装仕上げだったのがせめてもの救いだ。
建物というのは、とにかくカネがかかる。点検やメンテナンスを怠れば長持ちしないから、マンションは定期的に修繕を行う。この修繕には大小様々なものがあるが、とりわけ足場をかけて外壁の修繕などを行ういわゆる「大規模修繕」は、建物の規模によって数千万から億単位の金がかかることがあるのだ。
こうした修繕は、所有者が積み立ててきた「修繕積立金」でまかなうが、積立金が足りなければもちろんできない。廃墟になるのを待つか、各住戸で数十万〜百万単位の一時金を出すか、はたまた所有者で構成する管理組合で、金融機関から借入れをしたうえで積立金をアップし借金を返済するなどの後ろ向きな選択肢しかない。
ならば「建て替え」という選択肢はどうだろうか。残念ながらほとんどのケースで期待はできない。これまでに行われたマンションの建て替えは2017年4月1日時点で実施準備中のものまで含めて256例に過ぎない。
マンションの建て替えを実現するためには当然、解体費や建設費などを捻出しなければならないが、所有者全員が足並みをそろえて費用を出すというのはなかなか容易ではない。
実は、建て替え事例の多くは「等価交換方式」に基づくもの。等価交換方式とは、居住者が所有している土地を出資し、その土地にマンションデベロッパーが建物を建設、建物完成後に、居住者と不動産会社それぞれの出資比率に応じた割合で土地建物を取得するといった手法だ。この手法は、建て替えをしたら今より建物が大きくなるのが前提で、その余剰分を販売することによって、所有者の建て替え資金を捻出できるというメリットがある。
つまりこれまでに建て替えが可能だったマンションは、容積率が余っていたために以前より大きな建物を建てることができ、それを売却することで資金を捻出できたから建て替えができたというわけだ。むろん、マンションデベロッパーがリスクをとって事業を行えるという前提があって初めて成立する手法でもあるゆえ、立地的に販売が難しいとデベロッパーが判断すれば実現しない。
さらには、世の中には多くの「既存不適格マンション」が存在する。既存不適格マンションとは簡単にいえば「建設当時は適法だったが、後の法改正で不適格となったもの」を指す。具体的には「建設時には容積率200%だったものが、現在は100%になっている」など。建て替えで建物が小さくなってしまうのでは、実現は到底不可能だ。
建て替えがうまく進まない要因
マンションの建て替えには、他にも様々な阻害要因がある。区分所有法では、5分の4が賛成すればマンションの建て替え決議は可能だということになっている。反対する人の権利を買い取る(売り渡し請求)こともできる。
しかし現実問題として、実際の現場では、買い取り価格を吊り上げられてしまったり、「ここで一生を終える」とおっしゃる高齢の方や、建て替え費用が捻出できない方がいたり、建物の老朽化を賃貸契約解消の正当事由としない借地借家法が立ちはだかり賃貸人がなかなか出ていかない、など様々な理由からマンションの建て替えがうまく進まないのだ。
マンション(RC/鉄筋コンクリート造)の寿命には諸説ある。例えば、117年(飯塚裕/1979「建築の維持管理」鹿島出版会)、68年(小松幸夫/2013「建物の平均寿命実態調査」)、120〜150年(大蔵省主税局/1951「固定資産の耐用年数の算定方式」)など。実際には配管の種類や箇所にも大きく左右されるが、思いのほか長持ちするイメージだろう。
しかしいずれにせよ、適切な点検と修繕が行われなければこんなに長持ちしない。マンションは廃墟と化し、資産価値はもちろん大幅下落。居住快適性は失われ「売れない、貸せない」といったお荷物となる。廃墟マンションは所有者の資産性を毀損するだけでなく、周辺の不動産価格にも悪影響を与えよう。
これからマンションを購入する人も、すでに買って住んでいる人も、マンション管理組合の運営には積極的に関与すべきだろう。手始めとしてまず、修繕積立金額は適切か調べるところから始めてはいかがだろうか。大抵のケースで、修繕積立金額が過小に見積もられていることに気づくだろう。なぜなら新築マンション販売のほとんどのケースでは、毎月の支払額を低めに見せるために、積立金額は非常に低く設定されているからだ。
国土交通省によれば修繕積立金の目安は15階・5000平米未満のマンションで専有面積平米あたり218円、5000〜1万平米で202円、1万平米以上なら178円程度を平均的な目安としている。機械式駐車場がある場合やタワーマンションなどの場合はさらにコストがかかることもふまえておこう。
長嶋 修
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