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財務省、年金支給開始68歳に引き上げ「検討」報道…引き上げはあり得ると考える理由
http://biz-journal.jp/2018/05/post_23387.html
2018.05.19 文=大江英樹/経済コラムニスト Business Journal
財務相庁舎(「Wikipedia」より/っ)
■年金支給開始年齢が68歳に?
4月11日に行われた財務省の財政制度等審議会の分科会において、社会保障の改革案が提示されました。そのなかで医療費の抑制と併せて、年金支給開始年齢の繰り下げということが提起されています。具体的なシミュレーションの案のなかで68歳にした場合、というのがあるため、報道では68歳への引き上げが検討されているという書き方がされています。
まず事実関係から考えてみますと、財政制度等審議会というのは、財務省に付属して設けられている財務大臣の諮問機関で、基本的な財政制度や各年度の予算のあり方などについて重要な勧告や提言を行うという役割を持っています。6月に策定される予定の財政健全化計画のなかにおいて、社会保障費の増大をいかに抑制するかという提言を盛り込むために議論されたもののまとめといって良いでしょう。
ただ、これはあくまでも財務省が財政上の懸念から作成したもので、実際に年金制度を管掌しているのは厚生労働省ですから、この提言でもってただちに支給開始年齢が繰り下げられるというわけではありません。ただ、厚生労働省が5年に一度行っている年金の財政検証、直近では平成26年に実施された検証のなかで年金支給開始年齢を繰り下げた場合のシミュレーションが出ていますので、それらの数字も踏まえた上での財務省の資料ということになるでしょう。
別に両者が対立しているというわけではありませんが、年金の原資は厚労省が管轄の社会保険料と財務省が管轄する税金の両方から出ていますから、財務省としても口を出すのはある意味当然だといえます。ただ、年金支給開始年齢は60歳から65歳までの引き上げがようやく完了しようとしているところですから、ここからただちに68歳とか70歳まで繰り下げられる可能性は少ないでしょう。マスコミはややもすれば国民的に関心の高い年金問題をセンセーショナルに取り上げる傾向がありますが、あまり短絡的に心配する必要はないと思います。
■将来は繰り下げが起こり得る2つの理由
さて、ここからが本題です。では今後は年金支給開始年齢の繰り下げはないのか? ということになると、私が考える答えはノーです。すぐに実施されることはないと思いますが、いずれその可能性はあります。その理由は2つあります。
理由のひとつ目は平均寿命が延びてきていることです。現在の公的年金の基本となっている国民年金は、その基礎となる制度が生まれたのが1961年(昭和36年)です。その当時の平均寿命は男性が66.03歳、女性が70.79歳です。したがって60歳から年金の支給が開始された後の余生というのは、せいぜい5〜10年ぐらいのものでした。ところが現在では男性は80.98歳、女性だと87.14歳ですから現時点での年金支給開始年齢となっている65歳で考えても16〜22年という非常に長い期間になります(2016年 厚生労働省簡易生命表より)。
一方、他の先進国で見ると、男性の平均寿命でいえば、米国は76.4歳、ドイツは78.18歳、そして英国は79.09歳といずれも日本よりは短いのに対して、年金の支給開始年齢は米・独は67歳、そして英国は68歳ですから、いずれも日本よりは後になっており、年金の支給期間でみると10年前後ということになるため、日本の16年(男性の場合)よりはかなり短いといえます。つまり最も高齢化が進んでいる国が最も早い時期から年金を支給しているわけですから、将来これは是正される可能性はあるといえます。
2つ目の理由は高齢者の労働人口の増加です。前述のように平均寿命が伸長したということは、元気な高齢者が増えているということです。現時点で65〜69歳までの間で働いている人の割合は男性でいえば54.8%、つまり2人に1人以上は働いているのです(17年総務省統計局「労働力調査」より)。企業でも2013年の高年齢者雇用安定法の改正に伴い、定年年齢を引き上げたり、再雇用制度によって65歳までの雇用を確保したりするようになりました。一方、定年後に起業する人も増えており、起業した人の中に占める60歳以上の比率は35%と、すべての年代の中で最も多くなっています(17年版中小企業白書より)。
この背景は、この15年ぐらいの間で起きた年金支給年齢の繰り下げという理由もあるでしょうから、卵が先かニワトリが先かという議論ともいえますが、むしろ平均寿命が延びたことによって労働力が増えたと考えるべきでしょう。このように考えていくと、1つ目と2つ目の理由及び背景は一致してきます。結論からいえば、「寿命が延びたことで元気に働ける高齢者の割合が増えてきた。であれば働く環境を整備するとともに年金支給開始年齢も将来は見直すことを検討すべきであろう」ということです。
ただ、私が思うのは、繰り下げよりも「給付の抑制」を決められた通りにしっかりやることのほうが先だということです。04年の年金財政検証で決まったマクロ経済スライドは長らく、デフレの影響による物価の下落と厳密に適用することを躊躇ってきた政治家の思惑もあり、実際に発動されたのはようやく15年になってからでした。しかしながらこの仕組みを活用することで、給付額を抑制する効果は大きいといえます。また、働いて高収入を得られる人であれば給付の見直しも考えるべきでしょう。事実、冒頭に出てきた「財政制度等審議会」の資料においても、一定以上の高収入の高齢者への給付の見直しについて触れられています。
■起こり得る年金の繰り下げに備えて考えておくべきこと
したがって、すぐに68歳や70歳への繰り下げはないといえるものの、将来を見据えれば可能性はあるし、その対策は考えておくべきと言えるでしょう。対策としては大きく2つあります。
まず、ひとつ目は働けるうちはできるだけ長く働くことです。現在でももし70歳まで働いて年金の支給開始を自主的に65歳から70歳へ繰り下げると、その後の給付額が生涯にわたって42%増えます。どんな資産運用よりも高い利回りを実現できる可能性があるわけですから、70歳まで働くことを目標に考えるべきでしょう。仮に70歳でリタイアしたとしても、平均寿命まではあと11年あります。そう考えれば支給開始年齢が上がっても心配することはありません。
2つ目は自分自身での老後の備えを手厚くしておくことです。最近では老後の資産形成に向けて税制が優遇されているiDeCo(個人型確定拠出年金)のような制度もありますし、会社員と違って厚生年金のない自営業者は、その分多めに積み立てて将来に備えることのできる「国民年金基金」や「小規模企業共済」といった制度もあります。こうした制度はいずれも自助努力の部分です。現在の年金制度を否定したり悲観したりするのではなく、あくまでもベースに置きながら、プラス個人の自助努力の部分を積み上げていくことが大切といえるのではないでしょうか。
(文=大江英樹/経済コラムニスト)
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