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利益1兆円達成のホンダが抱える爆弾…米国でセダンが売れない、中国でCR-V販売停止
http://biz-journal.jp/2018/05/post_23349.html
2018.05.16 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
ホンダ「CR-V」(「Wikipedia」より/Alexander-93)
日系自動車メーカーでトヨタ自動車に次いで2社目となる、1兆円の純利益を達成したホンダの先行きを不安視する声が強まっている。利益の柱である米国の市場動向の変化に対応できていないことや、米国に並ぶ規模にまで事業を拡大してきた中国では、主力モデル「CR-V」のリコール問題によって販売停止が長引いているからだ。
ホンダが4月27日に開いた決算発表の記者会見では、驚きの声が広がった。2018年3月期業績の当期利益が前年同期比71.8%増の1兆593億円と1兆円を超えて過去最高になる一方で、今期(19年3月期)業績見通しの当期利益が前年同期比46.2%減の5700億円と半減すると公表したためだ。
ホンダの18年3月期の業績が好調だったのは、中国の販売が好調で持分法投資利益が増加したのに加え、米国トランプ政権の法人税減税で「繰り延べ税金負債」を3461億円計上したためだ。本業でも四輪車販売が同3.4%増の519万9000台と過去最高となるなど、一見、順調に見えるが、先行き不安要素が見え隠れする。
ホンダの主力市場で利益の柱である米国の四輪車販売が同0.4%減の163万9000台と、わずかながら前年を割り込んだ。SUVの販売を伸ばしているが、セダン系の販売が大幅に落ち込んでいる。米国新車市場は人気がSUVに集中しており、日系自動車メーカーの得意分野であるセダン系の販売は落ち込んでいる。米フォードは、一部スポーツモデルなどを除いてセダンの次期モデルの開発中止を発表するなど、米国市場でのセダン離れは鮮明。ホンダもすでに「アコード」を減産しており、今後も「アコード」「シビック」といったセダン系が苦戦を強いられるのは必至だ。
ホンダの倉石誠司副社長は、「シビック、アコードといった代表的商品はこれからも売っていきたい。SUVとセダンの比率はガソリン価格によってかなり変わるので、セダンでもSUVでも市場に受け入れられる商品を投入して、過去最高の販売を目指す」と、セダンにも力を入れる戦略を変えない。しかし、「アコード」などの販売を促進するためのインセンティブ(販売奨励金)が上昇しており、今後、利益率の悪化は避けられない見通しだ。
■主力モデルが長期販売停止
先行き不安要素のもう一つが、米国に並ぶほどの販売規模にまで育ってきた中国事業だ。18年3月期の中国の四輪車販売は、同11.5%増の145万1000台と過去最高を記録した。「UR-V」「シビック」などの販売が好調だったためだ。順調に伸びていた中国事業に冷や水を浴びせかけたのがリコール問題だ。
ホンダの中国での販売台数がトップのモデルである小型SUV「CR-V」に不具合が見つかり、ホンダは当局にリコールを届け出たものの、受理してもらえなかった。中国ではリコールが認められなければ販売も停止しなければならない。ホンダの主力モデルであるCR-Vが1カ月以上にわたって販売できない状態が続いている。
倉石副社長は「影響は一時的。対策をテストしている最中で、対策のメドはついており、当局の許可をもらってリコールして販売を再開し、挽回したい」と述べ、事業的な影響は限定的との見方を示す。しかし、3月のホンダの中国販売は前年同月比13%減と大幅に落ち込んだ。今後も販売停止が長引けば業績にも影響が及ぶのに加え、品質問題によってホンダブランドにも影響する可能性をはらんでいる。
ホンダの19年3月期の業績は、四輪車販売が同3.4%増の537万5000台と過去最高を更新する見通しだが、営業利益が同16.0%減の7000億円と大幅減益を予想する。売上高営業利益率は0.9ポイントダウンして4.5%と、4%台の低水準に再び戻る。しかも今期の営業減益は為替変動の影響が大きく、「今後、米国の利益率の悪化、中国のリコール問題の状況によってはさらに収益が悪化するリスクがある」と見られている。18年3月期に1兆円を達成したホンダだが、最高益を喜んでいられる状況にない。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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