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「宅配便の値上げ」はまだ続くのか? 受け取る私たちがやるべきこととは
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180503-00010003-nikkeisty-bus_all
NIKKEI STYLE 5/3(木) 12:10配信
ヤマト運輸と佐川急便に続いて、日本郵便のゆうパックも個人向け料金を3月に値上げした。写真はイメージ
宅配便の値上げが相次いでいるそうね。今後も続くのかな? 人手不足を解決する手段はあるの? 私たちが利用する上で考えるべきことは? 宅配サービスの動向について、田中陽編集委員に話を聞いた。(ニッキィの大疑問)
――宅配便の値上げが相次いでいるのですか?
ヤマト運輸と佐川急便が2017年秋に基本料金を値上げし、18年3月からは日本郵便のゆうパックも個人向け料金を平均12%引き上げました。ヤマト運輸の値上げは27年ぶりです。
ただ、荷物を受け取る利用者には値上げをあまり実感できないでしょう。ネット通販などで宅配サービスを使う際、送料無料や送料込みで価格が示され実際は料金を負担しないことが多いためです。
百貨店の顧客向け配送から始まった宅配便は、料金を払わない受け取り手の利便性を最優先して発展したユニークなビジネスモデルです。再配達や時間指定が代表で、きめ細かいサービスが配送コストを押し上げています。
日本の労働力人口が減って高齢化が進む中、人手不足が深刻になったことも値上げの背景です。宅配便のドライバーを含む「自動車運転の職業」の有効求人倍率は3倍を超え、全体の平均よりかなり高い状況です。若手ドライバーが減り、40歳代以上が全体の7割にもなりました。長距離ドライバーは1回の運行の拘束時間が16時間を超える人が43%もいて、過酷な仕事です。賃金を上げないと人手が集まりません。値上げによって配達する荷物の数を減らすしかなくなってしまいました。
――サービスの需要は増えているのですか?
ネット通販の普及などを背景に、宅配便の16年度の取扱個数は20年前に比べて2.6倍に増えました。10年代に入ってトラック輸送量は減少傾向なのに、宅配便の取り扱い実績は経済成長を上回って伸び続けています。個人向けを中心に1件当たりが小口化し、小さなトラックやバンなどを使う配達が増えました。今や宅配サービスは生活を支えるインフラともいえます。
ヤマト運輸の18年3月期の1個当たりの配送単価は、17年3月期より6%上がったようです。値上げに伴い配送した荷物の個数は1%減りましたが、12年3月期に比べれば、まだ単価が低いのです。
トラックドライバーの人手不足が深刻化
――今後も値上げが続くのですか?
追随する事業者はあるかもしれませんが、企業努力もしていますから同じ企業による第2、第3の値上げは当分ないと思います。配送コストを抑えるため、宅配業者は効率化に取り組んでいます。仕分けにロボットや人工知能(AI)を活用して人手を減らそうとしています。
ドライバー不足に対応し、自動運転やドローンで運ぶ実験が始まりました。再配達を減らすためにコンビニや駅、駐車場といった様々な場所で荷物を受け取れるサービスも実用化しそうです。
構想段階ですが、全国をくまなく走る宅配便の車両にセンサーを付けて道路の状況確認もできるようになり、自治体に情報提供することも視野に入れているようです。
また、24時間365日、稼働する配送拠点もあります。これを生かし、東京・大田の羽田にあるヤマトグループの大型配送拠点では、医療機器の洗浄などを請け負っています。多様なサービスが収益源になれば、値上げが抑制されるかもしれません。
増え続ける宅配便取扱個数
――宅配便を受け取る側も努力が必要ではないですか?
ヤマト運輸が値上げに成功した背景は、宅配便の仕事がいかに大変か、利用者にわかってもらえたことでした。
会員登録すると荷物の配送予定通知や受取時間帯・場所の変更ができるサービスを活用したり、自宅以外で荷物を確実に受け取ったりする動きが広がれば、無駄な再配達が減って配送コストも抑えられます。宅配業者の様々なサービスを消費者が賢く使いこなすことが、人手不足を解消する手助けになるでしょう。
■ちょっとウンチク デフレ脱却の試金石
「サービスの質の向上に欠かせない社員の増員、待遇改善のためには100円は上げねば無理だ」。1990年、宅急便値上げを決めた都築幹彦・ヤマト運輸社長(当時)の言葉だ。クール宅急便がヒットし取扱量が急増、現場は疲弊した。
今回はネット通販の取扱量増と人手不足による現場の混乱が背景だ。山内雅喜・ヤマトホールディングス社長が口にしたのが「現場の待遇改善と生産性向上、生活インフラの維持、新たな価値創造」。取引先と利用者の理解は価値向上を伴わないと難しい。27年ぶりのヤマト値上げはデフレでその方法を忘れた産業界へのメッセージでもある。
(編集委員 田中陽)
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