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最大の報復は「米国債売却」 米中の貿易戦争が勃発しない理由
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180425-00000011-sasahi-bus_all
AERA dot. 4/27(金) 7:00配信 週刊朝日 2018年5月4−11日合併号
藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務努めた。2013年7月の参院選で初当選。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)
日米首脳会談後の共同記者会見に臨むトランプ米大統領(右)(c)朝日新聞社
米国、中国がそれぞれに高い関税をかけあい、米中貿易戦争が懸念されているが、“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、その可能性を否定する。
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JPモルガン勤務時、オフィスのビル内の店で子供ブランド服の7割引きバーゲンがあった。11時の開店と同時に大量に買ったが、部下のウスイ嬢に「みっともないから、国債を買うみたいに洋服を買いあさらないでください」と怒られた。子供たちには「お父さんとは趣味が合わない」と言われ、ほとんどの服がバザーへ直行となった。
ビル内にはプールもあり、昼休みに毎日泳いでいた。部下のクスノキ君にある日、こう言われた。「支店長、泳いだ後、タダだと思って整髪料をむやみにつけないでください。ディーリングルームが臭くてたまりません」。何事もやりすぎは良くないようだ。
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米中貿易戦争の懸念が続いている。関連ニュースが出るたびに株価や為替が乱高下し、今やマーケットを動かす注目材料の一つだ。
中国は資本の国外への自由な出入りを禁止し、人民元を低位安定させている。通貨が国力より強すぎたために没落した日本経済の教訓に、よく学んでいる。1980年に160円だった1人民元は、今や約17円ぽっちで買える。安い人民元をバックに貿易立国となった。元を切り上げろ、貿易黒字を何とかしろ、と米国が怒るのももっともだ。
貿易戦争懸念の一連のニュースを聞き、まず思い出したのは橋本龍太郎元首相の97年の発言。世界最大の米国債券保有国(当時)の日本の首相が「大量の米国債を売却しようという誘惑にかられたことは、幾度かあった」と述べた。
米国株式市場の関係者が大慌てしたのもよくわかる。本当に貿易戦争が起きるならば、中国の取りうる最大の報復手段は当時と同じ「米国債売却」だろう。
3月24日付の日本経済新聞朝刊でも、
<中国の米国債保有額は1兆1800億ドルと海外勢で最大。米財務省は「米国債を売られれば米経済はひとたまりもない」(関係者)と恐れる>
と報じられた。
私は現時点で貿易戦争勃発を想定していない。両国とも報復合戦による共倒れリスクを十分に理解していると思うからだ。
しかし、米財務省の関係者のこの発言は、色々な意味で考えさせられる。今年3月末時点で、米国債の発行残高は21兆896億ドル。うち1兆1800億ドル(発行残高の5.6%)をだれかが売り出せば、米経済はひとたまりもないということだ。売り手は中国でなくとも、日本でもドイツでも米連邦準備制度理事会(FRB)でもよいはずだ。
日本経済に当てはめると、国債発行残高は昨年末時点で956兆円だから、5.6%の54兆円分をだれかが売り出せば、日本経済はひとたまりもないことになる。日銀は2月末時点で452兆円もの日本国債を持つ。その一部を売り出すだけで、日本経済はひとたまりもなくなる。
日銀は金融緩和のために国債を爆買いし、買いすぎた。インフレが加速すれば、反対に爆売りしなくてはならないはずだ。しかし、保有額が大きく、難しい。金融緩和前の状態に戻すには、国が満期で元本を償還するのを待つしかない。
しかし、巨額の財政赤字を抱える政府は償還に回すお金がない。日銀はインフレを止める手段がない、と指摘する一つの理由である。
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